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HEMSとは?基本的な仕組みを解説

HEMS(ヘムス)とは、Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の頭文字を取った言葉で、家庭内のエネルギー消費を可視化し、効率的に管理するためのシステムです。

簡単に言えば、HEMSは「家庭のエネルギー使用を見える化して、スマートに制御できるようにする仕組み」です。電気やガスなどの使用状況をリアルタイムで計測・表示し、無駄なエネルギー消費を減らすことで、省エネ・節電につなげることができます。

HEMSが日本で注目され始めたのは、2011年の東日本大震災以降の電力不足がきっかけでした。現在では特に卒FIT(固定価格買取制度の期間満了)を迎えた太陽光発電ユーザーにとって、発電した電気を効率よく自家消費するためのツールとして注目されています。

HEMSの主な機能と役割

HEMSの基本機能は大きく分けて「見える化」「遠隔操作」「自動制御」の3つがあります。

1. エネルギー使用量の見える化

  • 全体の電力使用量や電気代の確認
  • 太陽光発電の発電量、売電・買電の状況
  • 家電ごとの消費電力量の内訳
  • 時間帯別・日別・月別の使用量推移

2. 遠隔操作機能

  • 外出先からスマホで家電のオン・オフなどの操作
  • 帰宅前に遠隔でエアコンをつけて、快適な室温に調整

3. 自動制御機能

  • 太陽光発電量が多い時間帯に自動で洗濯機や食洗機を動かす
  • 電力消費が一定値を超えそうになると、優先度の低い家電の使用を抑制

HEMSに必要な機器と基本構成

HEMS導入には、基本的に以下の機器が必要です。

1. HEMSコントローラー(中央制御装置) HEMSの中核となる機器で、各種センサーからのデータを収集・処理し、家電などを制御します。

2. 計測機器 家庭の電力使用量を測定するセンサーです。分電盤に設置するCTセンサー(電流センサー)が代表的です。

3. 表示機器 電力使用状況などを表示する専用モニターや、スマートフォン・タブレット用のアプリがあります。

4. 通信機器 HEMSコントローラーと各種機器をつなぐための通信装置です。

既存住宅への後付けは、分電盤に電流センサーを取り付け、HEMSコントローラーと接続するのが一般的です。費用は機器の種類や機能により異なりますが、基本的なシステムで5万円前後から、高機能なものでは15万円程度かかります。

HEMSと太陽光発電の相性

太陽光発電とHEMSは非常に相性が良く、組み合わせることで大きなメリットが生まれます。太陽光発電システムは発電こそしてくれるものの、その電力をいつ、どのように使うかについての「賢い管理」はできません。ここにHEMSを導入することで、発電した電力を最大限有効活用できます。

特に卒FITを迎えた家庭にとっては、売電価格が下がる分、自家消費をいかに増やすかが重要になります。HEMSはまさにこの課題を解決するための強力なツールとなります。

発電量と消費量の最適化

太陽光発電の最大の課題は、発電のタイミングと電力消費のタイミングがずれることです。HEMSを導入すると、この「タイムラグ」を解消し、自家消費率を高める工夫が可能になります。

自家消費率を高める具体的な方法

  1. 時間帯シフト運転 太陽光発電量が多い日中に、電力消費の多い家電(洗濯機・食洗機・エアコンなど)の運転をシフトさせます。
  2. 蓄電池との連携 HEMSと蓄電池を組み合わせると、発電量が消費量を上回る時間帯に蓄電池に充電し、夕方以降に放電するよう自動制御します。
  3. 電気自動車(EV)の活用 EVを所有している場合、太陽光発電の余剰電力でEVを充電することで、自家消費率を高められます。
  4. 見える化による行動変容 発電状況が「見える」ようになるだけでも、「今、発電しているから洗濯しよう」といった意識が生まれます。

卒FIT後の自家消費を支えるHEMS

FITの期間が満了すると、これまで高い価格で買い取られていた余剰電力の買取価格が大幅に下がります。例えば、初期に1kWhあたり42円で買い取られていた電力が、卒FIT後は7~12円程度になるケースが一般的です。

このような状況では、発電した電力をできるだけ自宅で使う「自家消費」の重要性が高まります。

卒FIT後のHEMS活用法

  1. 見える化による無駄の削減 発電量、消費量、売電量、買電量をリアルタイムで把握することで、「売電するなら自分で使おう」という意識が高まります。
  2. 蓄電池との組み合わせ 昼間の余剰電力を蓄電池に貯めて夜間に使用することで、自家消費率を大幅に高められます。HEMSがあれば、充放電のタイミングを最適制御できます。
  3. V2H(Vehicle to Home)との連携 電気自動車と住宅を繋ぐV2Hシステムと組み合わせれば、EVを大容量の蓄電池として活用できます。

主なHEMSメーカーと製品比較

現在、日本国内では多くのメーカーがHEMS製品を提供しています。主要なHEMSメーカーと製品を紹介します。

人気のHEMS製品とその特徴

パナソニック「AiSEG2(アイセグツー)」 幅広い機器との互換性があり、拡張性が高いのが特徴です。特にパナソニック製の太陽光発電システムや蓄電池と組み合わせると、より詳細な情報が得られます。

シャープ「COCORO ENERGY」 クラウド型で、太陽光発電や蓄電池とスムーズに連携します。スマートフォンアプリでの操作性に優れています。

メディオテック「ミルエコmini」 比較的低価格で導入しやすい後付けタイプのHEMSです。分電盤にセンサーを取り付けるだけで導入でき、工事も簡単です。天気予報との連携やEVとの連携機能も備えています。

選ぶポイントとチェックリスト

自分の家庭に最適なHEMSを選ぶには、以下のポイントをチェックしましょう。

  1. 太陽光発電システムとの互換性 現在使用している太陽光発電システムとの互換性を確認
  2. 蓄電池・EV対応 蓄電池やEVとの連携機能の有無
  3. 見える化の内容 どこまで細かく「見える化」できるか
  4. 制御できる機器 どの家電をどこまで制御できるか
  5. 拡張性 将来的な機能拡張の可能性
  6. 操作性 モニターやアプリの使いやすさ

HEMS導入のメリットとデメリット

HEMSを導入するかどうか迷っている方のために、メリットとデメリットを整理します。

HEMSのメリット

  1. 電気の使用状況が見える化される 「見える化」だけでも約10%の省エネ効果があるという調査結果もあります。
  2. 太陽光発電の自家消費率が向上する 特に卒FIT後は売電価格が下がるため、自家消費を増やすことで経済メリットが大きくなります。
  3. 電気代の節約につながる HEMS導入家庭では、平均で5~15%程度の電気代削減効果があるという報告もあります。
  4. 災害時の電力管理に役立つ 停電時でも太陽光発電と蓄電池で電力を確保している場合、HEMSで残りの電力量を確認しながら計画的に使用できます。

HEMSのデメリット

  1. 初期投資コストがかかる 基本的なシステムでも数万円、高機能なシステムでは10万円以上の投資が必要です。
  2. 効果を実感するまで時間がかかる 電気代の節約効果がすぐに大きく表れるわけではありません。
  3. 追加機器の購入が必要な場合がある 家電を制御したい場合、HEMS対応の家電や専用アダプターが必要になることがあります。

電気代節約効果と投資回収の目安

HEMS導入による電気代節約効果は家庭によって異なりますが、一般的に以下のような効果が期待できます。

太陽光発電設置家庭の場合

  • 自家消費率の向上により、買電量を5~20%程度削減可能
  • 卒FIT後は特に効果が大きく、自家消費率を10%上げるだけで年間1万円以上の経済効果も

投資回収の目安

  • 基本システム(5万円)+年間節約額1万円の場合:約5年で回収
  • 高機能システム(15万円)+年間節約額1.5万円の場合:約10年で回収

「HEMSはいらない」と言われる理由

HEMSについては「本当に必要なのか」という声もあります。自分の家庭に合っているかを判断する材料として、以下の点を考慮しましょう。

HEMSが「いらない」と言われる主な理由

  1. コストパフォーマンスへの疑問 初期投資に対して、すぐに大きな節約効果が出るわけではないため
  2. 設定・操作の煩雑さ 高度な機能を使いこなすには、それなりの設定や操作方法の習得が必要
  3. 対応家電が限られる 古い家電や特定のメーカー以外の製品はHEMSで制御できないことも多い

HEMSが向いている家庭

  • 太陽光発電や蓄電池を導入している、または導入予定の家庭
  • 卒FIT後の自家消費率向上を目指している家庭
  • 電気使用量が多く、節電の余地がある家庭
  • 省エネやエネルギー管理に関心が高い家庭

HEMS導入の流れと費用

HEMS導入を検討する場合、以下のような流れになります。

  1. 現状分析と目的の明確化 何のためにHEMSを導入するのか(省エネ、太陽光発電の最適化、快適性向上など)を明確にします。
  2. 製品選び 自分の目的や予算に合った製品を選びます。太陽光発電システムとの相性も重要なポイントです。
  3. 見積もり依頼 複数の業者から見積もりを取り、費用や工事内容を比較します。
  4. 設置工事 専門業者による設置工事を行います。基本的には半日〜1日程度で完了します。
  5. 初期設定と使い方の説明 設置後、初期設定と基本的な使い方の説明を受けます。

導入費用の目安

  • 基本的なHEMSシステム:3〜7万円程度
  • 高機能なHEMSシステム:10〜15万円程度
  • 工事費:1〜3万円程度
  • 追加オプション(追加センサーなど):機能による

HEMS導入の補助金・支援制度

現在、国の直接的なHEMS補助金制度は終了していますが、地方自治体レベルではHEMSを対象とした補助や支援が残っています。

地方自治体の補助金例

  • 愛知県:HEMS設置に対して1万円の補助(条件あり)
  • その他の自治体:太陽光発電や蓄電池とセットで導入する場合に補助対象となるケースが多い

ZEH関連の補助金

  • ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の要件としてHEMS導入が定められており、ZEH補助金の一部としてHEMS導入を支援する制度があります。

まとめ:卒FIT時代の賢い選択

HEMSは単なる「見える化」ツールではなく、太陽光発電システムの能力を最大限に引き出すための重要な装置です。特に卒FIT後は売電価格が下がるため、自家消費率を高めることが重要になります。

HEMSを導入することで、発電と消費のタイミングを最適化し、電気の無駄遣いを減らすことができます。蓄電池やEVと組み合わせれば、さらに効果的なエネルギー管理が可能になります。

初期投資はかかりますが、長期的な視点で見れば電気代の節約につながり、環境にも貢献できます。自分の家庭の状況や生活スタイルに合わせて、最適なHEMSを選ぶことが大切です。

卒FIT時代の太陽光発電は「売る」から「賢く使う」へと転換する時期です。HEMSはその転換を支える重要なツールとなるでしょう。

 

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