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家庭用の太陽光発電は、これまでは余った電気を売る「余剰売電」が一般的でした。

しかし、近年は売電価格の下落や電気料金の値上がりにより、自家消費率が注目されています。
 

自家消費率を高めると、電気代の節約につながるうえ、災害時の備えができるなどのメリットがあります。

本記事では、自家消費率の計算方法や、自家消費率を高める方法などを解説します。

 

太陽光発電の自家消費率とは

太陽光発電の自家消費率とは、太陽光パネルで発電した電力のうち、自宅で消費する電力の割合を指します。

まずは、自家消費の意味や、自家消費率の計算方法を確認しましょう。

 

太陽光発電の自家消費とは

太陽光発電の「自家消費」とは、発電した電気を家庭内で使うことをいいます。

使い切れずに余った電気は「売電」といって電力会社に買い取ってもらいます。

 

家庭用の太陽光発電では、発電した電気がまず自家消費にまわり、使い切れなかった分を売電する「余剰売電」が原則です。

 

自家消費率の計算方法

自家消費率の計算式は非常にシンプルです。

自家消費率(%)= 自家消費した電力量(kWh)÷ 発電した電力量(kWh)× 100

 

例えば、年間の発電量が4,000kWhで、そのうち1,200kWhを自宅で消費した場合: 1,200kWh ÷ 4,000kWh × 100 = 30% となります。

この数値が高いほど、発電した電力を無駄なく自宅で活用できていることになります。

 

一般的な家庭の自家消費率は約3割

標準的な家庭の自家消費率は、おおよそ20〜40%の範囲内に収まることが多いです。

平均的には約30%程度とされています。

 

つまり、発電した電力の3割程度しか自宅では使えておらず、残りの7割は売電されているのが現状です。

この自家消費率はライフスタイルによって大きく変わり、日中に在宅している家庭では自家消費率が高くなる傾向にあります。

 

たとえば、共働きで日中は不在という家庭では20%程度に留まることもありますが、在宅勤務が多い家庭や高齢者のいる家庭では40%以上になることもあるでしょう。

 

売電よりも自家消費がお得

太陽光発電は「発電した電気を売る」「家庭で使う」の2通りの使い道があります。

かつては高い売電価格が魅力でしたが、近年は売電価格の下落と電気料金の上昇により、売るより使った方がお得というケースが増えています。

 

その理由を具体的に見ていきましょう。

 

自家消費を優先する方がお得な理由

太陽光発電で作った電気は「自家消費」と「売電」の2通りの使い方があります。

一見、売電で収入を得た方がお得に思えるかもしれませんが、実は電気代を節約できる自家消費の方が経済的メリットは大きいのです。

 

FIT期間中の買取価格は、導入年度によって異なります。

たとえば2024年度に導入した場合、住宅用(10kW未満)の売電価格は16円です。
 

一方、電気料金の全国的な目安単価は31円です。

売電するより購入する方が約2倍も高くなります。

そのため、太陽光発電で作った電気は、できるだけ自家消費率を高めた方がお得なのです。

 

さらに、FIT期間が終わった後の売電価格は8〜11円程度に下がるケースが多く、電気代は上昇傾向なので、今後は売るより使うことの価値がより高まっていくといえるでしょう。

 

卒FIT後こそ自家消費が重要

FIT期間中は売電価格が高く、初期には1kWhあたり42円といった時期もありました。

そのため、発電した電気は自家消費よりも売電した方が経済的でした。

 

しかし、卒FIT後は状況が大きく変わります。

卒FIT後の売電価格は、大手電力会社で7〜9円/kWh程度となり、FIT期間中の1/4以下になってしまいます。

 

一方で、電力会社から購入する電気料金は年々上昇傾向にあります。

このような状況では、発電した電力を売るよりも、できるだけ自家消費して電力会社からの購入電力を減らすことが経済的に最も賢い選択となります。
 

自家消費率を高めることは、卒FIT後の太陽光発電システムを最大限に活用するための重要なポイントなのです。

 

自家消費率を増やすとどのくらいお得かシミュレーション

自家消費率をアップすることで、具体的にどれくらいの経済効果が得られるのでしょうか。

4kWの太陽光発電システムを例に試算してみましょう。

 

年間発電量を4,000kWhとし、電気料金を30円/kWh、卒FIT後の売電単価を8円/kWhとして計算します。
 

自家消費率30%の場合

  • 自家消費電力量:1,200kWh
  • 売電電力量:2,800kWh
  • 自家消費による電気代節約:1,200kWh × 30円 = 36,000円/年
  • 売電収入:2,800kWh × 8円 = 22,400円/年
  • 合計経済効果:58,400円/年

 

自家消費率50%の場合

  • 自家消費電力量:2,000kWh
  • 売電電力量:2,000kWh
  • 自家消費による電気代節約:2,000kWh × 30円 = 60,000円/年
  • 売電収入:2,000kWh × 8円 = 16,000円/年
  • 合計経済効果:76,000円/年
     

自家消費率70%の場合

  • 自家消費電力量:2,800kWh
  • 売電電力量:1,200kWh
  • 自家消費による電気代節約:2,800kWh × 30円 = 84,000円/年
  • 売電収入:1,200kWh × 8円 = 9,600円/年
  • 合計経済効果:93,600円/年

 

自家消費率を30%から70%に高めることで、年間35,000円以上の経済効果の違いが生まれます。

この金額は、蓄電池導入などの初期投資を回収する原資となります。

 

さらに、この試算は現在の電気料金を基にしていますが、今後も電気料金の上昇が予想されるため、自家消費率を高めることの経済的メリットはさらに大きくなる可能性があります。


 

自家消費率自家消費電力量売電電力量自家消費による節約効果売電収入合計経済効果
30%1,200kWh2,800kWh36,000円22,400円58,400円
50%2,000kWh2,000kWh60,000円16,000円76,000円
70%2,800kWh1,200kWh84,000円9,600円93,600円
FIT買取時1,200kWh2,800kWh36,000円59,200円

95,200円


 

 

 

自家消費率を高めるメリット

太陽光発電の自家消費率を高めることには、いくつかの大きなメリットがあります。

 

電気代を節約できる

自家消費率を高める最も大きなメリットは、電気代の削減効果です。

自宅で発電した電気を使えば、その分だけ電力会社から購入する電気が減るため、電気代の支払いが少なくなります。

近年は電気料金が高騰しているため、自家消費率を高めると節約効果が大きいです。

 

災害時も電源を確保できる

住宅用の太陽光発電設備のほとんどは、停電時に自立運転を行う機能を標準装備しています。

昼間の日照がある時間帯であれば、太陽光で発電した電気を専用コンセントから利用できます。

 

自家消費率を高めるには蓄電池の導入が効果的ですが、太陽光発電と蓄電池の組み合わせは災害時の電源確保に有効です。

 

余剰電力を蓄電池に貯めておけば、停電時も電力を確保できるため、災害対策として役立ちます。

 

CO2排出量を削減できる

太陽光発電は、温室効果ガスの1つであるCO2排出量を削減できます。

 

日本では今も発電の多くを化石燃料による火力発電に依存しており、これに比べるとCO2排出量を大幅に抑えることが可能です。

 

自家消費を増やす6つのコツ

具体的には、どのような方法で自家消費を増やすことができるのでしょうか。

ここでは、比較的取り組みやすいものから設備投資が必要なものまで、6つの方法をご紹介します。

 

電気の使用時間を太陽光発電時間に合わせる

最も手軽に実践できる方法は、家電の使用タイミングを太陽光の発電時間帯に合わせることです。

 

太陽光発電は基本的に日中(10時〜14時頃)に最も多く発電します。

この時間帯に電力消費の多い家電を使えば、自家消費を増やせます。
 

例えば、洗濯機や食洗機、掃除機などは、朝や夜ではなく日中に使うのがおすすめです。

タイマー機能を使えば、外出中でも昼間に動作するようにセットできます。
 

また、冬は昼間に暖房温度を少し高めに設定しておくと、夜の暖房負荷を減らすことが可能です。

夏は朝のうちに冷房を効かせておくことで、日中の冷房効率が上がり、結果的に省エネにもつながります。

 

エコキュートを昼間運転に切り替える

エコキュートをお使いの家庭では、運転時間を夜間から昼間に切り替えるだけで、大幅に自家消費を増やせます。

 

通常、エコキュートは夜間の安い電気料金で動作するよう設定されていますが、太陽光発電を設置している家庭では、昼間の太陽光を活用する方が経済的です。

 

特に卒FIT後は、夜間電力のメリットよりも太陽光の自家消費メリットの方が大きくなります。

最近の機種には「おひさまモード」や「ソーラーモード」といった機能が搭載されているものもあり、晴れた日の昼間に自動的に沸き上げを行ってくれます。
 

エコキュートの昼間運転により、年間で数万円の電気代削減につながるケースもあります。

 

家電の使い方を工夫する

家電の使い方を少し工夫するだけでも、自家消費を増やすことができます。

 

例えば、電子レンジや炊飯器、電気ケトルなどの調理家電は、できるだけ日中に使いましょう。

パソコンやタブレットの充電も日中に行うと良いでしょう。

 

冷蔵庫は1日中稼働していますが、日中に冷蔵庫の温度設定を少し低くしておくことで、夜間の稼働を減らすことも可能です。
 

外出時はタイマー機能を活用して、日中の余剰電力を有効に使いましょう。

 

HEMSで電力使用状況を見える化する

HEMS(Home Energy Management System)を導入すると、発電量や消費電力をリアルタイムで確認できます。

 

どの家電がどれくらい電力を消費しているかが一目でわかり、効率的な家電の使用タイミングを判断できます。

過去の使用履歴も確認できるため、自家消費を増やすための改善点も見つけやすくなります。

 

最新のHEMSではAIが電力使用パターンを学習し、自家消費を増やすための提案をしてくれる機能や、スマートフォンアプリと連携し、外出先からでも家電を操作できるものもあります。

 

蓄電池を導入する

蓄電池があれば、日中の余剰電力を貯めておき、夜間や曇りの日に使えるため、自家消費を大幅に増やせます。

 

例えば、5kWhの容量を持つ家庭用蓄電池があれば、平均的な家庭の夜間の電力需要をほぼカバーできるでしょう。

これにより、自家消費率を70〜80%まで高めることも可能になります。

 

蓄電池のもう一つの大きなメリットは、停電時の非常用電源として使えることです。

太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、数日間の停電にも対応できる電力を確保できます。
 

導入費用は容量にもよりますが、工事費込みで100万円以上することが一般的です。

大きな投資になりますが、補助金を活用できる可能性があります。

 

蓄電池導入を検討する際は、自家消費率向上による経済効果と初期投資のバランスを見極めることが重要です。
 

一般的には、卒FIT後の家庭や電気料金の高い地域では、蓄電池の導入メリットが大きくなります。

 

電気自動車(EV)を活用する

電気自動車(EV)のバッテリーは、家庭用蓄電池よりもはるかに大容量です。

例えば、日産リーフのバッテリー容量は40kWh以上あり、家庭用蓄電池の数倍の容量があります。

 

V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、昼間は太陽光でEVを充電し、夜間はEVから家庭に電力を供給できます。

家庭の条件によっては自家消費率を80〜90%まで高めることも可能で、ガソリン代の節約にもなります。

 

また、V2Hシステムは停電時の非常用電源としても機能します。

EVのバッテリー容量は家庭用蓄電池よりも大きいため、より長期間の停電に対応できます。

ただし、V2Hシステムの導入には機器本体と工事費を合わせて200万円以上かかることもあり、現状かなり高額です。

 

自家消費のみを目指すなら?

太陽光発電でつくった電気を最大限に活用し、自家消費のみを目指すなら、蓄電池の導入を検討するのが効果的です。

 

蓄電池がない場合の自家消費率は20〜30%程度

蓄電池がない場合の自家消費率は、一般的に20~30%程度にとどまります。

発電した電気を使えるのは昼間だけで、夜間の消費をまかなうのは難しいのが実情です。

 

蓄電池を導入する場合は50〜70%まで高められる

蓄電池を導入すれば、昼間に余った電力を夜間や悪天候で発電量が少ない日に回せるため、自家消費率は50~70%ほどまで高められます。

 

EVとV2Hを組み合わせると、さらに高い自家消費率を目指すことも可能です。

 

ただし、蓄電池やV2Hの導入には費用がかかるため、費用対効果を意識して検討すると安心です。

補助金を活用すれば、初期費用を抑えられるケースもあります。
 

自家消費型太陽光発電を支援する補助金

自家消費型太陽光発電や蓄電池の導入には、国や自治体の補助金を活用できる場合があります。
 

たとえば、国のDR補助金では、DRに対応可能な蓄電池の導入に対して補助金が交付されます。

 

補助額は「導入費用の1/3」または「蓄電容量×3.7万円/kWh」のいずれか低い方で、上限は60万円です。

ただし、2025年は7月時点で予算上限に達し、締め切られました。

 

また、東京都の「令和7年度 家庭における蓄電池導入促進事業」では、住宅用蓄電池の導入に対し、1kWhあたり12万円、増設する場合は1kWhあたり8万円が補助されます。

いずれもDR実証に参加する場合は、10万円が上乗せされます。

 

事前申し込みは令和7年5月30日に開始され、交付申請兼実績報告は令和7年6月30日から令和11年3月30日(17時公社必着)までです。

 

補助内容や上限額は自治体や年度によって異なります。

導入を検討する際は、最新の制度を公式サイトなどで確認しましょう。

 

また、補助金の申請には一定の条件や手続きが必要になるため、設備の販売施工業者に相談するのもよいでしょう。

 

まとめ:自家消費率を上げて太陽光発電を最大限活用しよう

太陽光発電の自家消費率を高めることは、卒FIT後の太陽光発電システムを最大限に活用するための重要なポイントです。

 

売電価格が大幅に下がる卒FIT後は、いかに発電した電力を自宅で消費するかが経済的なメリットを左右します。

自家消費率を高める方法はライフスタイルの工夫から始まり、設備投資を伴うものまで様々です。

 

自家消費率を30%から70%に高めることで、年間3万円以上の経済効果が得られる可能性があります。

特に電気料金の上昇傾向を考慮すると、このメリットは今後さらに大きくなるでしょう。

 

卒FITを迎えた、または今後迎える太陽光発電システムの所有者は、自家消費率を高めるための工夫を積極的に取り入れ、太陽光発電の恩恵を最大限に享受しましょう。

 

それが、電気代の節約につながるだけでなく、災害時の電力確保や環境への貢献にもつながります。

 

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