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カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリントとは、個人や家庭、企業などの活動によって排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの総排出量を指します。「炭素の足跡」という意味で、私たちの生活や事業活動が地球環境にどれだけ負荷をかけているかを数値化したものです。

カーボンフットプリントは、地球温暖化対策において重要な概念となっています。温室効果ガスの排出量を「見える化」することで、個人や企業が自分たちの活動による環境影響を理解し、削減に向けた具体的な行動を取ることができるようになります。

日本では製品やサービスのライフサイクル(原材料調達から生産、流通、使用、廃棄までの全過程)で排出される温室効果ガス量を表示する「CFP(Carbon Footprint of Products)制度」も運用されており、環境に配慮した消費行動を促進しています。

家庭のカーボンフットプリントの主な要因

一般家庭のカーボンフットプリントを構成する主な要素は以下の通りです。

  • 電気の使用: 照明、家電製品、冷暖房など
  • ガスの使用: 給湯、調理など
  • 自動車の利用: ガソリンや軽油の消費
  • 水道の使用: 上下水道の処理に伴うエネルギー消費
  • ごみの排出: 廃棄物処理に伴う排出

中でも、電気の使用は家庭からのCO2排出量の約40%を占めると言われています。そのため、電力由来のCO2排出を削減することは、家庭のカーボンフットプリントを減らす上で最も効果的な方法の一つです。

太陽光発電の導入は、この電力由来のCO2排出を大幅に削減できるため、家庭全体のカーボンフットプリント低減に直結するのです。

太陽光発電によるCO2削減の仕組み

太陽光発電がCO2削減に貢献する仕組みは、従来の化石燃料による発電を再生可能エネルギーに置き換えることで成り立っています。

日本の電力の多くは、石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃焼させる火力発電によって作られています。この過程で大量のCO2が排出されます。一方、太陽光発電は発電時にCO2をほとんど排出しません。太陽光パネルが太陽の光エネルギーを直接電気に変換するため、発電過程での燃料燃焼がないからです。

太陽光発電システムを家庭に設置することで、電力会社から購入する電気の量を減らし、その分のCO2排出を削減できます。さらに、余った電力を電力会社に売ることで、他の家庭や企業が使用する電力の一部が太陽光由来のクリーンな電力に置き換わり、社会全体のCO2削減にも貢献します。

太陽光発電と従来の発電方法の違い

太陽光発電と従来の火力発電では、CO2排出量に大きな差があります。

火力発電のCO2排出係数

  • 石炭火力発電:約0.9kg-CO2/kWh
  • 天然ガス(LNG)火力発電:約0.5kg-CO2/kWh
  • 石油火力発電:約0.7kg-CO2/kWh

これに対し、太陽光発電のCO2排出係数は、製造や設置工程も含めて約0.017〜0.048kg-CO2/kWhと言われています。これは火力発電の約1/20〜1/50という非常に小さな値です。

つまり、1kWhの電力を太陽光発電で作ることで、同じ量の電力を火力発電で作る場合と比べて、約0.45〜0.85kgのCO2排出を削減できる計算になります。

日本の電力平均のCO2排出係数(電源構成による平均値)は0.4〜0.5kg-CO2/kWh程度と言われていますので、これを基準にしても太陽光発電によって1kWhあたり約0.4kgのCO2削減効果があります。

家庭用太陽光発電のCO2削減効果

一般的な家庭用太陽光発電システムは、設置容量が4kW〜6kW程度です。こうしたシステムによるCO2削減効果はどのくらいになるのでしょうか。

標準的な家庭用太陽光発電システム(4kW)の年間発電量は、設置場所や気象条件によって異なりますが、一般的には約4,000〜5,000kWh程度と言われています。これは1kWあたり年間約1,000〜1,200kWh発電することを意味します。

この発電量に、先ほどの日本の電力平均のCO2排出係数(0.4〜0.5kg-CO2/kWh)を掛けると、4kWのシステムで年間約1.6〜2.5トンのCO2削減効果があることがわかります。

同様に、6kWのシステムであれば年間約2.4〜3.6トンのCO2削減効果が見込めます。

CO2削減量の計算方法

太陽光発電によるCO2削減量は、以下の簡単な式で計算できます。

CO2削減量(kg-CO2) = 発電量(kWh) × CO2排出係数(kg-CO2/kWh)

例えば、年間発電量が4,500kWhの太陽光発電システムの場合、CO2削減量は以下のようになります。

  • CO2排出係数が0.4kg-CO2/kWhの場合: 4,500kWh × 0.4kg-CO2/kWh = 1,800kg-CO2 = 1.8トン-CO2
  • CO2排出係数が0.5kg-CO2/kWhの場合: 4,500kWh × 0.5kg-CO2/kWh = 2,250kg-CO2 = 2.25トン-CO2

このように、自宅の太陽光発電の年間発電量さえわかれば、簡単にCO2削減効果を計算することができます。

削減効果の具体的な例え

「年間2トンのCO2を削減」と言われても、その効果の大きさがピンとこないかもしれません。そこで、別の指標に置き換えて考えてみましょう。

2トンのCO2削減効果は

  • 一般家庭の電力使用による年間CO2排出量のほぼ全てに相当します(4人家族の平均的な電力消費量は年間約4,000kWh、CO2排出量は約1.6トン)
  • スギの成木約226本が1年間で吸収するCO2量に匹敵します(スギ1本あたり年間約8.8kg-CO2を吸収)
  • 自家用車(燃費10km/L)で約8,000km走行する際のCO2排出量に相当します(ガソリン1Lあたり約2.3kg-CO2排出)

このように、家庭用太陽光発電による年間数トンのCO2削減は、決して小さな効果ではなく、家庭レベルでは非常に大きな環境貢献になるのです。

卒FIT後の太陽光発電と環境価値

FIT(固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを国が約束する制度です。住宅用太陽光発電の場合、この買取期間は10年間と定められています。

2012年にFIT制度が始まってから10年以上が経過し、すでに多くの住宅用太陽光発電システムが買取期間を終了(卒FIT)しています。2019年時点で約53万件、合計200万kW以上の住宅用太陽光発電が卒FITを迎えており、その数は年々増加しています。

卒FIT後は売電単価が大幅に下がるため、経済的なメリットは小さくなりますが、環境面での貢献は変わりません。むしろ、初期投資の回収が終わった「純利益」の再生可能エネルギー源として、その環境価値はより高まると言えるでしょう。

卒FIT太陽光の環境貢献

卒FIT後も太陽光発電設備を継続して使用することには、以下のような環境的・社会的意義があります。

  1. 継続的なCO2削減効果 卒FIT後も発電性能が維持されていれば、同じように年間数トンのCO2削減効果が続きます。太陽光パネルの寿命は一般的に20〜30年と言われており、FITの買取期間(10年)よりも長く発電が可能です。
  2. 環境価値の活用 卒FIT後の電力には「環境価値」が認められており、非化石証書やJ-クレジットなどの形で証書化することが可能です。この環境価値は、企業のRE100(事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする取り組み)やカーボンオフセットなどに活用されています。
  3. 脱炭素社会への貢献 日本政府は2050年カーボンニュートラルを宣言しており、そのためには既存の再エネ設備も最大限活用する必要があります。卒FIT太陽光の継続利用は、この国家目標の達成に直接貢献します。
  4. 自家消費のメリット拡大 電気代の高騰により、自家発電した電力を自宅で消費するメリットが高まっています。卒FIT後は売電よりも自家消費に回すことで、より大きな経済的・環境的効果を得られます。

太陽光発電協会からは「環境保護に貢献できるので、使い続けて未来の子ども達に美しい地球を残しましょう」というメッセージも出されています。設備を止めたり放置したりせず、蓄電池の併用や新たな受け皿サービスを活用してでも発電を継続させることが、地域全体の再エネ比率向上とCO2排出削減につながるのです。

SDGsと太陽光発電の関係

国連の持続可能な開発目標(SDGs)において、太陽光発電は特に以下の2つの目標に大きく貢献します。

目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」

この目標は、全ての人々が安価で信頼できる持続可能なエネルギーにアクセスできるようにし、世界のエネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げることを目指しています。

太陽光発電は、太陽さえあれば発電できることから、電力網が未整備な地域への電力供給手段にもなり得る技術です。日本においても、FIT制度などの促進策により2010年から2018年の間に太陽光発電設備容量が約13倍に拡大しました。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

この目標は気候変動への緊急対策を促すもので、温室効果ガス排出の削減が柱になっています。

太陽光発電は発電時にCO2をはじめとする温室効果ガスを排出しないクリーンエネルギーであるため、その導入拡大自体が気候変動対策(緩和策)となります。前述のように、家庭用太陽光発電は年間で数トンのCO2削減効果があり、これは家庭レベルでの具体的な気候変動対策として大きな意味を持ちます。

太陽光発電を導入することは、これらのSDGs目標達成に直接貢献する具体的な行動なのです。家庭での太陽光設置は小さな一歩かもしれませんが、その取り組み自体がSDGsの理念に沿った社会貢献となります。

家庭でできるカーボンフットプリント削減方法

太陽光発電の導入に加え、家庭でできるカーボンフットプリント削減方法をいくつか紹介します。

  1. 省エネ家電への買い替え 冷蔵庫やエアコンなどの大型家電を省エネタイプに買い替えることで、電力消費を大幅に削減できます。特に10年以上経過した家電は、最新モデルに比べてエネルギー効率が大きく劣ります。
  2. LED照明への切り替え 白熱電球や蛍光灯からLED照明に切り替えることで、照明の電力消費を約80%削減できます。
  3. 住宅の断熱性能向上 窓の二重化や断熱材の追加など、住宅の断熱性能を高めることで、冷暖房のエネルギー消費を抑えられます。
  4. 電気自動車(EV)への乗り換え ガソリン車からEVに乗り換え、太陽光発電の電力で充電することで、移動に伴うCO2排出を大幅に削減できます。
  5. エコな生活習慣の実践 こまめな消灯、適切な冷暖房温度設定、待機電力の削減など、日常生活での省エネ行動も大切です。

自家消費の最大化

太陽光発電システムのある家庭では、発電した電力を自家消費することでカーボンフットプリントを最大限削減できます。

自家消費のポイント

  • 昼間の電力消費を増やす 洗濯機や食器洗い機、掃除機などの使用時間を、太陽光発電量の多い日中に変更します。
  • タイマー機能の活用 炊飯器や電気温水器など、タイマー機能のある家電は、太陽光発電量の多い時間帯に作動するようにプログラムします。
  • 電化製品の導入 給湯や調理にガスを使用している場合、電気給湯器(エコキュート)やIHクッキングヒーターなどに切り替えることで、より多くの発電電力を活用できます。

自家消費率を上げることで、環境負荷を減らすだけでなく、電気代の節約にもつながります。特に卒FIT後は売電価格が下がるため、自家消費によるメリットがより大きくなります。

蓄電池との組み合わせ

太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、さらに自家消費率を高め、カーボンフットプリントを削減できます。

蓄電池のメリット:

  1. 夜間や悪天候時もクリーンエネルギーを使用可能 日中に余った太陽光発電の電力を蓄電池に貯め、夜間や曇りの日に使用することで、24時間クリーンな電力の使用が可能になります。
  2. 電力の自給自足率向上 蓄電池の導入により、電力の自給自足率は一般的に20〜30%向上すると言われています。
  3. ピークカット効果 電力需要の高い時間帯(夕方〜夜)に蓄電池から放電することで、電力系統の負荷を減らし、社会全体の環境負荷低減にも貢献します。
  4. 災害時のバックアップ電源 停電時には蓄電池から電力を供給できるため、災害対策にもなります。

蓄電池の価格は年々下がってきており、家庭用蓄電池(5〜10kWh)の価格は100〜200万円程度になっています。太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、将来的に一般家庭でのカーボンフットプリント削減の主流になると考えられています。

再生可能エネルギー100%生活への挑戦

自宅のエネルギーを全て再生可能エネルギーで賄う「再エネ100%生活」は、技術的には一般家庭でも実現可能です。

完全な再エネ100%生活(オフグリッド)を実現するには、十分な発電能力と蓄電容量の確保が必要です。太陽光発電だけでは夜間や天候不順時の電力供給ができないため、家庭用蓄電池やEVの車載電池を家と繋ぐV2H(Vehicle to Home)システムを組み合わせることが重要です。

現状では、完全なオフグリッド(自給率100%)を達成するには大規模な設備投資が必要で、一般家庭では経済的・物理的制約から難しい面もあります。しかし、「電力は基本自給し、不足分だけ最小限系統から買う」という高自給率の生活であれば、多くの家庭で実践可能な段階に来ています。

実際の事例として、太陽光パネル約10kWとEV・V2Hを組み合わせて運用することで、年間の約80%以上を自家発電でまかなう電力自給を達成している家庭もあります。天候の良い月には自給率86〜87%という高い独立度を実現し、雨の多かった月でも約67%を自給することに成功しています。

また、日本政府も住宅のゼロエネルギー化を推進しており、2030年以降新築される戸建住宅はZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を標準にする目標を掲げています。ZEHとは、高断熱・省エネによりエネルギー消費を減らす一方で太陽光発電等でエネルギーを創り出し、年間の一次エネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことです。

太陽光発電以外の再エネとしては、家庭用の小型風力発電、家庭用地熱/地中熱利用、太陽熱温水器なども組み合わせることで、より高い再エネ率を実現できます。さらに、需要側の省エネ(高効率な家電や断熱性能向上)も並行して行うことで、エネルギー自給自足率を飛躍的に高めることが可能です。

まとめ

カーボンフットプリントの削減は、地球温暖化対策において私たち一人ひとりができる重要な貢献です。特に家庭部門のCO2排出量の約40%を占める電力消費を、太陽光発電のようなクリーンエネルギーで代替することは、非常に効果的なアプローチと言えます。

太陽光発電システム(4〜6kW)を導入することで、一般家庭は年間約1.6〜3.6トンのCO2排出を削減できます。これは家庭の電力由来のCO2排出量のほぼ全てに相当する量であり、スギの成木200〜400本分の年間CO2吸収量に匹敵する環境貢献です。

卒FIT後も太陽光発電設備を継続して使用することは、環境的にも社会的にも大きな意義があります。自家消費を最大化したり、蓄電池と組み合わせたりすることで、さらに効果を高めることができます。

太陽光発電は、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」と目標13「気候変動に具体的な対策を」に直接貢献する取り組みであり、脱炭素社会の実現に向けた具体的な一歩です。

将来的には、太陽光発電を核とした「再エネ100%生活」も視野に入れることで、より大きなカーボンフットプリント削減を目指すことができます。一人ひとりの小さな取り組みが集まれば、大きな変化を生み出すことができるのです。

太陽光発電は、環境への貢献だけでなく、電気代の節約や災害時の電力確保など、様々なメリットをもたらします。カーボンフットプリントを減らしながら、快適で持続可能な暮らしを実現する強力なツールとして、今後もその価値は高まり続けるでしょう。

 

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