
太陽光発電を設置されている皆様は、自宅の屋根でクリーンな電気を作りながら、知らず知らずのうちに地球環境に大きく貢献されています。この記事では、FIT(固定価格買取制度)終了後も太陽光発電を続けることで得られる環境的な価値と、脱炭素社会へどのように貢献できるのかをご紹介します。
脱炭素社会とは?私たちに関わる理由
脱炭素社会とは、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出を大幅に削減し、最終的には排出量と吸収量を均衡させた社会のことです。地球温暖化による気候変動は、異常気象や海面上昇など、私たちの生活に直接影響を及ぼし始めています。
日本政府は**2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)**の実現を目指すことを宣言しました。この大きな目標の達成には、大規模な産業界の取り組みだけでなく、家庭レベルでの対策も重要な役割を果たします。
家庭からのCO2排出量は日本全体の約15%を占めており、その大部分が電気やガスなどのエネルギー消費によるものです。つまり、家庭での脱炭素への取り組みは、国全体の目標達成に大きく貢献するのです。
特に、すでに太陽光発電を導入されている皆様は、脱炭素社会実現の先駆者です。FITの期間が終了しても、引き続き太陽光発電を活用することで、地球環境保全に継続的に貢献できます。
太陽光発電が脱炭素社会に貢献する仕組み
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを電気エネルギーに変換するシステムです。太陽電池(パネル)に光が当たると、シリコンなどの半導体に電子の流れが生じ、電気が発生します。この仕組みにより、燃料を燃やさずに発電できるため、発電時にCO2を排出しないクリーンエネルギーとして注目されています。
一方、従来の火力発電では、石油や石炭などの化石燃料を燃やして発電するため、多量のCO2を排出します。例えば、1kWhの電気を火力発電で作ると、約400〜600gのCO2が排出されます。これを太陽光発電に置き換えることで、その分のCO2排出を抑制できるのです。
太陽光発電の環境貢献の仕組みは次の通りです。
- 直接的な効果: 自宅で発電した電気を自家消費することで、火力発電による電気の使用量が減少
- 間接的な効果: 余剰電力を電力会社に売ることで、社会全体の再生可能エネルギー比率が向上
- 長期的な効果: 太陽光発電の普及により、エネルギー供給の分散化や災害時のレジリエンス(回復力)が向上
このように、家庭の太陽光発電は、単に電気代を節約するだけでなく、社会全体の脱炭素化に貢献する重要な役割を担っています。
太陽光発電によるCO2削減量の目安
では、実際にご家庭の太陽光発電はどれくらいのCO2削減に貢献しているのでしょうか?具体的な数値を見てみましょう。
一般的な家庭用太陽光発電システム(4kW程度)は、年間で約4,000〜5,000kWhの電力を生み出します。これは、一般的な家庭の年間電力消費量とほぼ同等です。
この発電量がもたらすCO2削減効果は、年間約2トンと試算されています。これは、以下のようなインパクトがあります。
- 乗用車で約10,000km走行した時のCO2排出量に相当
- スギの木約200本が1年間で吸収するCO2量に匹敵
- 一般家庭の約7.5ヶ月分の電力消費によるCO2排出量に相当
太陽光発電協会によると、太陽光パネル1kWあたり年間約0.5トンのCO2削減効果があるとされています。つまり、4kWのシステムなら年間2トン、6kWのシステムなら年間3トンのCO2削減に貢献していることになります。
10年間のFIT期間中に削減したCO2は、4kWシステムの場合、約20トンにも達します。これだけでも大きな環境貢献ですが、FIT終了後も発電を続けることで、さらにCO2削減に貢献できるのです。
太陽光発電のメリットとデメリット
太陽光発電には環境面だけでなく、様々なメリット・デメリットがあります。FIT終了後も継続利用を検討する際の参考にしてください。
メリット
- CO2排出がないクリーンエネルギー:前述の通り、発電時に温室効果ガスを出しません
- 繰り返し使える再生可能資源:太陽光は無尽蔵で枯渇する心配がありません
- 設置場所を選ばない:屋根さえあれば、都市部でも山間部でも設置可能です
- メンテナンスが比較的容易:可動部分が少なく、定期的な点検と清掃程度で長期使用可能です
- 自家消費による電気代削減:電力会社からの購入電力を減らせるため、電気代の節約になります
- 非常用電源としての活用:災害時、晴れた日中は電気を使うことができます
デメリット
- 発電量が天候に左右される:曇りや雨の日は発電量が大幅に減少します
- 夜間は発電しない:蓄電池がなければ、夜間は電力会社から電気を購入する必要があります
- 設備の経年劣化:年月とともに発電効率が低下します(年間0.5%程度)
- FIT終了後は売電価格が下がる:余剰電力の売却による収入は大幅に減少します
FIT終了後は経済的メリットが減少する面もありますが、すでに初期投資は回収済みの方がほとんどだと思います。環境面や非常時の備えを考えると、引き続き太陽光発電を活用する価値は十分にあります。
卒FITとは何か?これからどうすれば良いのか
卒FITとは、固定価格買取制度(FIT)による10年間の買取期間が終了した太陽光発電設備のことを指します。2009年から始まった余剰電力買取制度、2012年から始まったFIT制度により設置された住宅用太陽光発電は、順次買取期間が満了し「卒FIT」状態となっています。
FIT終了後の選択肢としては、主に以下の3つがあります。
- 自家消費を増やす:発電した電気をできるだけ自宅で使う
- 新たな売電先を探す:電力会社や新電力などに余剰電力を売る
- 蓄電池を導入する:余った電気を蓄えて、夜間や雨天時に使用する
実際には、これらを組み合わせるのが理想的です。昼間の電気はできるだけ自家消費し、余った電気は蓄電池に貯めるか売電する、というように柔軟に対応することで、太陽光発電の価値を最大化できます。
重要なのは、FIT終了後も太陽光発電設備を稼働させ続けることです。設備を止めてしまうと、クリーンエネルギーを生み出す機会が失われてしまいます。
卒FIT後も太陽光発電を続ける環境的価値
卒FIT後も太陽光発電を継続することには、大きな環境的価値があります。
まず、太陽光パネルの寿命は20年以上と言われています。FIT期間の10年が終わっても、まだまだ発電能力は十分あります。設備を稼働させ続けることで、引き続きCO2削減に貢献できます。
また、すでに初期投資の回収が済んでいることから、卒FIT後の太陽光発電は「純利益」の再生可能エネルギー源とも言えます。発電コストは実質的にゼロであり、経済的にも環境的にも効率の良いエネルギー源なのです。
そして何より重要なのが、地球温暖化対策への継続的な貢献です。国内で数百万件に上るとされる卒FIT太陽光が全て発電を続ければ、その総量は原子力発電所複数基分に相当する規模になります。個々の小さな力が集まれば、大きな環境貢献になるのです。
太陽光発電協会も「環境保護に貢献できるので、使い続けて未来の子ども達に美しい地球を残しましょう」と呼びかけています。
卒FIT後の電力活用術
卒FIT後の太陽光発電をより効果的に活用するための方法をいくつかご紹介します。
自家消費を増やす工夫
- 太陽が出ている日中に、洗濯や掃除機がけなどの電力消費の多い家事を行う
- タイマー機能付きの家電を活用し、昼間に自動的に動作するようにする
- 在宅勤務が可能な方は、昼間の時間帯に自宅で仕事をする
- 電気温水器のタイマーを昼間に設定する
蓄電池との組み合わせ
蓄電池を導入すれば、昼間の余剰電力を貯めておき、夜間や雨天時に使用できます。近年は蓄電池の価格も下がってきており、卒FIT太陽光とセットで導入する家庭が増えています。
蓄電池のメリットとしては、
- 太陽光発電の自家消費率が大幅に向上する
- 停電時にも電気を使用できる安心感がある
- 電力会社からの購入電力をさらに減らせる
などが挙げられます。
新たな売電先の検討
卒FIT後は地域の電力会社による買取のほか、新電力会社の中には卒FIT電力を積極的に買い取るところもあります。中には、環境価値に注目して、一般的な買取価格よりも高い価格で買い取るプランを提供している会社もあります。
各社の買取条件を比較し、ご自宅の状況に合った売電先を選ぶことで、少しでも経済的なメリットを享受できます。
家庭の太陽光発電とSDGsの関係
国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の中で、太陽光発電は特に以下の2つの目標に貢献しています。
目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに 太陽光発電は、クリーンで再生可能なエネルギーの代表格です。化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源として、この目標の達成に直接貢献します。
目標13:気候変動に具体的な対策を 太陽光発電によるCO2排出削減は、気候変動対策の具体的な一歩です。一般家庭でも取り組める現実的な気候変動対策として重要な役割を果たしています。
このように、家庭の太陽光発電を継続することは、世界共通の持続可能な開発目標の達成に貢献する意義ある行動なのです。
環境に配慮したライフスタイルへの関心が高まる中、太陽光発電を導入していることは、SDGsへの貢献をアピールできる点でもあります。お子さんやお孫さんに、家庭でできる環境対策の実例として伝えることもできるでしょう。
家庭でできる脱炭素への取り組み
太陽光発電以外にも、家庭でできる脱炭素への取り組みはたくさんあります。以下に具体例をご紹介します。
エネルギー消費を減らす
- 高効率な省エネ家電への買い替え
- LED照明への切り替え
- エアコンの適切な温度設定(夏28℃、冬20℃目安)
- 断熱リフォームによる冷暖房効率の向上
日常生活での工夫
- マイバッグ・マイボトルの使用でプラスチック削減
- 地産地消の食材選びで輸送によるCO2削減
- 公共交通機関や自転車の利用
- 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)への乗り換え
その他の再エネ活用
- 太陽熱温水器の導入
- グリーン電力プランへの切り替え
- 小型の家庭用風力発電(条件が合う場合)
これらの取り組みを組み合わせることで、家庭からのCO2排出量を大幅に削減できます。
省エネと再エネの組み合わせが効果的
脱炭素社会の実現には、「省エネ」と「再エネ」を両輪で進めることが効果的です。
まず、断熱性の高い住宅づくりや省エネ家電の導入で、エネルギー消費量自体を減らします。そして、消費するエネルギーは太陽光発電などの再生可能エネルギーで賄うという考え方です。
例えば、高効率エアコンに買い替えると同時に、その電力を太陽光発電でまかなうことで、冷暖房による環境負荷を大幅に削減できます。
「使うエネルギーを減らし、使うエネルギーはクリーンに」という原則を実践することで、家庭の脱炭素化が進みます。
太陽光と蓄電池の相性の良さ
太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、脱炭素の取り組みとしてとても効果的です。
太陽光発電は天候や時間帯によって発電量が変動するという弱点がありますが、蓄電池を導入することでこの弱点を補うことができます。昼間の余剰電力を蓄電池に貯めておけば、夜間や悪天候時にもクリーンな電力を使用できます。
また、蓄電池には以下のようなメリットもあります。
- 電力の自給自足率向上:外部からの電力購入を最小限に抑えられます
- 災害時のレジリエンス強化:停電時も太陽光で発電した電力を使用できます
- ピークカット効果:電力需要のピーク時に蓄電池から電力を供給できます
蓄電池の価格は年々下がってきており、卒FIT後の太陽光発電の活用策として注目されています。国や自治体によっては蓄電池導入への補助金制度もありますので、ぜひ検討してみてください。
まとめ:脱炭素社会に向けて私たちができること
ここまで見てきたように、家庭用太陽光発電は脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩です。特に、すでに太陽光発電を導入済みの皆様は、FIT終了後も発電を継続することで、引き続き環境保全に貢献できます。
FIT終了後の太陽光発電の活用方法として、自家消費の拡大、蓄電池の導入、新たな売電先の検討など、様々な選択肢があります。ご自宅の状況に合わせて最適な方法を選ぶことで、環境貢献と経済的メリットの両立が可能です。
また、省エネの取り組みやその他の再生可能エネルギーの活用を組み合わせることで、さらに効果的な脱炭素化を進められます。
私たち一人ひとりの小さな取り組みは、集まれば大きな力になります。太陽光発電を通じた脱炭素への貢献は、持続可能な社会づくりに欠かせない重要な一歩です。未来の世代のためにも、ぜひ太陽光発電を継続的に活用していきましょう。
卒FITは終わりではなく、新たな環境貢献の始まりです。これからも太陽の恵みを活かして、クリーンなエネルギー社会の実現に貢献していきましょう。