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太陽光パネルを設置してから数年、あるいは10年以上経過した方にとって、「これからどれくらい使えるのだろう?」という疑問は切実なものです。特にFIT(固定価格買取制度)の期間が終了した、または終了が近づいている方は、設備の寿命や今後の活用法について知りたいと思われていることでしょう。この記事では、太陽光パネルの実際の寿命や20年後の発電効率、長持ちさせるためのポイントなどを詳しく解説します。

太陽光パネルの平均寿命は何年?

太陽光パネルの寿命は一般的に20~30年と言われています。この期間、発電効率は徐々に低下するものの、適切なメンテナンスを行えば30年以上発電し続けることも十分可能です。

実際に、京セラの佐倉ソーラーエネルギーセンター(千葉県)では、1984年に設置された太陽光パネルが設置から36年経過した2020年時点でも元気に発電を続けています。また、シャープの奈良県の壷阪寺に設置されたパネルも1980年代から稼働し続け、現在も発電しているという事例もあります。

このように太陽光パネルは、品質の良い製品であれば、当初の想定よりもさらに長く使えることが実証されています。重要なのは定期的なメンテナンスと、異常の早期発見・対処です。

法定耐用年数と実際の寿命は異なる

太陽光パネルの法定耐用年数は国税庁の定めにより17年とされています。しかし、この「法定耐用年数」は税法上の減価償却期間を示すもので、実際の使用可能期間(物理的寿命)とは異なります。

法定耐用年数は会計上の概念であり、設備投資の費用を何年間にわたって経費計上できるかを定めたものです。実際には、この17年を超えて十分に使用できることが一般的です。つまり、「法定耐用年数=使用限界」と考える必要はありません。

20年後の発電効率はどれくらい?

太陽光パネルは年数が経つにつれて、太陽電池セルの劣化などにより発電効率が低下していきます。一般的には年間0.5%程度の割合で出力が低下すると言われています。

この劣化率に基づくと、20年経過後の発電効率は新品時の約80~90%程度になることが多いです。例えば、初期に100kWhだった月間発電量が、20年後には80~90kWh程度になるということです。

太陽光パネルメーカーの多くは出力保証として「20年後も初期の80%以上の出力を保証」といった条件を設定しています。この数値からも、20年経過後もある程度の発電能力を維持できることがわかります。

太陽光パネルの寿命に影響する要因

太陽光パネルの寿命は、製品の品質や設置環境、メンテナンス状況などによって大きく左右されます。特に以下の要因が重要です。

パネルの品質:高品質な素材を使用し、厳格な品質管理のもとで製造されたパネルは長寿命である傾向があります。有名メーカーの製品は初期費用は高めですが、長期的に見ると安心して使い続けられることが多いです。

設置環境:直射日光の強さ、気温の変化、降雪量、海からの距離(塩害の影響)などの環境要因も寿命に影響します。例えば、極端な高温にさらされる環境や塩害の影響を受けやすい沿岸部では、内陸部よりも劣化が早まる可能性があります。

設置方法:適切な角度と方向、しっかりとした架台への固定など、正しい設置方法も長寿命化に貢献します。逆に、取り付けが不適切だと早期劣化や故障のリスクが高まります。

メンテナンス頻度:定期的な点検や清掃などのメンテナンスを行うことで、発電効率の低下を最小限に抑え、寿命を延ばすことができます。

パネルが劣化する主な原因

太陽光パネルの劣化や故障の主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

経年劣化:太陽電池セル自体が時間の経過とともに少しずつ劣化します。半導体材料の変質や封止材(EVA)の黄変などにより、光の透過率や発電効率が徐々に低下します。

パネル表面の汚れ:砂埃、鳥のフン、花粉、黄砂などがパネル表面に堆積すると、太陽光の透過率が下がり発電効率が低下します。雨で流れる汚れもありますが、長期間経つと頑固な汚れとなって残ることもあります。

物理的な破損:強風で飛んできた物や雹(ひょう)などの衝撃でガラス面が割れたり、積雪の重みでパネルが変形したりすることがあります。

ホットスポット:パネルの一部に影が落ちたり、セルの一部が劣化したりすると、その部分だけ高温になる「ホットスポット」が発生し、パネル全体の寿命を縮める原因となります。

パワーコンディショナーの寿命との関係

太陽光発電システムにおいて、パワーコンディショナー(パワコン)は太陽光パネルよりも寿命が短く、一般に10~15年程度と言われています。パワコンは電子機器であるため、太陽光パネルよりも早く劣化・故障する傾向があります。

パネルが20~30年持つのに対し、パワコンは10~15年で交換が必要になることが多いため、太陽光発電システムを長期間運用する場合は、少なくとも1回以上のパワコン交換が必要になると考えておくべきでしょう。

パワコン交換の費用目安は、住宅用(5kW程度)で20~30万円程度です。自治体によっては交換費用の補助金制度を設けているところもあるので、交換時期が近づいたら調査してみるとよいでしょう。

太陽光パネルを長持ちさせるメンテナンス方法

太陽光パネルを長く効率よく使い続けるためには、適切なメンテナンスが欠かせません。以下に主なメンテナンス方法を紹介します。

定期的な点検:少なくとも年に1回程度は、パネルの外観や架台の状態、配線の接続部などを点検しましょう。特に10年以上経過した設備では、経年劣化による不具合が出やすくなるため、より頻繁な点検が望ましいです。

パネル表面の清掃:地域や環境によりますが、1~3年に一度程度、パネル表面の清掃を行うことで発電効率の低下を防ぐことができます。特に鳥のフンなどが付着している場合は早めに除去するのが効果的です。

発電データの監視:日々の発電量をチェックし、天候との関係を見ながら平常値を把握しておくことで、異常の早期発見につながります。急激な発電量低下があれば、何らかの不具合の可能性があります。

周辺環境の管理:パネルに影を落とす樹木などは定期的に剪定し、常に十分な日照が得られるようにしましょう。また、周囲の雑草なども定期的に刈り取り、虫や小動物による被害を防ぎます。

自分でできる基本的なメンテナンス

太陽光パネルの所有者でも、安全に配慮しながら以下のような基本的なメンテナンスを行うことができます。

目視点検:地上から、または屋根の上から安全に見える範囲で、パネルの表面に割れやひび、著しい汚れがないか確認します。また、架台のボルトの緩みや腐食、配線のたるみや被覆の劣化なども可能な範囲でチェックします。

発電量のチェック:パワコンの表示やモニターシステムを活用して、日々または月々の発電量をチェックします。前年同月や前月と比較して、天候の違いを考慮しても明らかに低下している場合は、専門業者に点検を依頼することをお勧めします。

簡易的な清掃:安全に手が届く範囲であれば、柔らかい布や長柄のモップなどを使って、パネル表面の埃や落ち葉などを取り除くことができます。ただし、高所作業は危険を伴うため、無理はせずプロに依頼しましょう。

パワコンの確認:パワコンの表示ランプが正常に点灯しているか、エラー表示がないか、異常な音や臭いがしないかなどを定期的に確認します。

プロによる定期点検の重要性

自分でできる基本的なメンテナンスに加え、専門業者による定期点検も重要です。専門知識と経験を持ったプロによる点検では、素人では気づきにくい異常や不具合を早期に発見できます。

点検の頻度:一般的には、設置後1年目に初回点検を行い、その後は4~5年ごとに定期点検を行うことが推奨されています。10年以上経過した設備では、2~3年ごとにより詳細な点検を行うとよいでしょう。

点検の内容:プロによる点検では、以下のような項目が確認されます。

  • パネルの外観検査(割れ、変色、腐食など)
  • 架台の固定状態やボルトの緩み
  • 接続箱や配線部分の腐食や断線
  • パワコンの動作状態や冷却ファンの確認
  • 絶縁抵抗測定などの電気的な検査
  • 各ストリングの発電性能測定

点検費用:点検費用は設備の規模や点検内容によって異なりますが、一般的な住宅用太陽光発電(4~6kW程度)では、1回あたり2~5万円程度が相場です。ただし、地域や業者によって差があります。

寿命が近づいている太陽光パネルの見分け方

太陽光パネルの寿命が近づいているかどうかを判断するには、以下のような兆候に注目します。

発電量の大幅な低下:年間0.5%程度の出力低下は正常な範囲内ですが、短期間で発電量が10%以上低下した場合や、年率1%を超える劣化が見られる場合は、寿命が近づいているサインかもしれません。

パネル表面の著しい変色:太陽電池セルや封止材(EVA)が著しく変色(黄色や茶色)している場合は、内部で劣化が進行している可能性があります。特に複数のパネルで同様の症状が見られる場合は注意が必要です。

物理的な損傷の増加:ガラス面のひび割れや破損、フレームの変形や腐食などが複数のパネルで見られる場合は、寿命が近づいている可能性があります。

ホットスポットの発生:サーモグラフィーなどで確認できますが、パネル上の一部だけが異常に高温になる「ホットスポット」が多発している場合は、内部セルの劣化が進んでいる可能性があります。

交換を検討すべき状況とは

以下のような状況では、太陽光パネルの交換を検討すべきタイミングと言えるでしょう。

著しい発電効率の低下:発電量が新品時の70~75%以下まで低下した場合は、経済的に見て交換を検討する時期です。特に高額な売電収入を得ている場合は、発電量の低下が収入減に直結するため、より早めの判断が必要です。

複数の物理的損傷:複数のパネルにひび割れや破損がある場合、個別に修理するよりもシステム全体を更新した方が経済的な場合があります。特に製造終了した型番のパネルは、同等品での交換が難しくなります。

メーカー保証期間の終了:多くのメーカーの出力保証期間(20~25年)が終了する頃には、パネルの出力低下も進んでいることが多いため、保証期間終了と合わせて交換を検討するのも一つの目安です。

周辺機器の大規模更新時:パワコンなど周辺機器を交換する必要がある場合、パネルも併せて更新することで、システム全体の整合性や効率を高められます。特にFIT期間終了のタイミングで、次の運用形態に合わせたシステムにリニューアルする選択もあります。

パネル交換の費用と選択肢

太陽光パネルを交換する場合、部分交換と全面交換のどちらかを選択することになります。それぞれの特徴と費用について説明します。

部分交換(一部のパネルのみ交換)

  • 費用:パネル1枚あたり約5~15万円(工事費込み)
  • メリット:初期投資を抑えられる、まだ使えるパネルを無駄にしない
  • デメリット:新旧パネルの混在により発電効率のバラつきが生じる可能性がある、同型パネルが入手できない場合がある

全面交換(システム全体の更新)

  • 費用:4kW程度のシステムで約100~200万円(工事費込み)
  • メリット:最新の高効率パネルにより発電量が増加する、新たな保証期間が始まる、システム全体の整合性が良い
  • デメリット:初期投資が大きい、まだ使えるパネルも交換することになる

交換を検討する際は、現在の発電状況、残りの使用予定期間、投資回収の見込みなどを総合的に判断するとよいでしょう。また、最近では古いパネルのリユース・リサイクル市場も徐々に整備されつつあるため、全面交換の際も環境に配慮した処分方法を選ぶことができます。

卒FIT後の太陽光パネルはどうするべき?

固定価格買取制度(FIT)の買取期間(住宅用は10年間)が終了した「卒FIT」となった太陽光発電設備は、どのように活用すべきでしょうか。主な選択肢と特徴を紹介します。

余剰電力の売電継続:卒FIT後も電力会社に余剰電力を売ることは可能ですが、買取価格はFIT期間中より大幅に下がります(市場価格連動の7~10円/kWh程度)。しかし、設備投資は既に回収済みであれば、わずかでも収入になるので売電を継続する価値はあります。

自家消費の最大化:発電した電力を自宅でより多く使うことで、購入電力を減らし電気代を節約する方法です。特に近年は電気料金が高騰しているため、自家消費のメリットも大きくなっています。

蓄電池の導入:昼間の余剰電力を蓄電池に貯めて夜間に使用することで、自家消費率を高められます。初期投資は必要ですが、電気代削減と停電時の非常用電源としても役立ちます。

V2H(Vehicle to Home)の活用:電気自動車を「動く蓄電池」として活用するV2Hシステムを導入すれば、太陽光で発電した電力で車を充電し、必要に応じて車から家に給電することができます。

システムのリプレース:設備が老朽化している場合は、高効率な最新パネルへの更新も選択肢となります。リプレース後は、新たな保証期間が始まり、同じ面積でより多くの発電が可能になることが多いです。

自家消費を増やす方法

卒FIT後の太陽光発電を最大限に活用するには、自家消費率を高めることが重要です。以下に自家消費を増やすための具体的な方法をいくつか紹介します。

電化製品の使用時間の工夫:洗濯機や食洗機などの家電は、太陽光発電量が多い日中の時間帯に使用するようにします。タイマー機能がある家電は、昼間に動作するようにセットしておくとよいでしょう。

蓄電池の導入:蓄電池を導入すれば、日中の余剰電力を貯めておき、夜間や早朝に使用することができます。近年は蓄電池の価格も徐々に下がってきており、投資回収の見通しも立てやすくなっています。

電気温水器やエコキュートの活用:太陽光発電の余剰電力で温水を作り、貯めておくという「熱」としての蓄電方法も効果的です。特にエコキュートは、太陽光発電と相性が良く、昼間のタイマー運転で効率的に温水を作ることができます。

電気自動車(EV)の充電:電気自動車を所有している場合、昼間の余剰電力で充電することで、ガソリン代の節約にもつながります。V2H(Vehicle to Home)システムがあれば、車から家への給電も可能になります。

生活習慣の見直し:可能な範囲で、掃除機かけやアイロンがけなど電力を使う家事を、日中の時間帯に行うようにします。また、在宅勤務が可能な方は、パソコンやエアコンなどの電力消費を、太陽光発電の時間帯に合わせられます。

パネルのリプレースと売却の選択肢

卒FITを迎えた太陽光パネルが古くなってきた場合、リプレース(交換)や売却という選択肢もあります。

パネルのリプレース(更新)

  • 古いパネルを最新の高効率パネルに交換することで、同じ設置面積でより多くの発電が可能になります。
  • 技術の進歩により、20年前のパネルと比べて現在のパネルは効率が30~50%程度向上している場合があります。
  • リプレース費用は4kWシステムで約100~200万円程度ですが、電気料金の節約や新たな売電収入により、10~15年程度で投資回収できる可能性があります。
  • 最近では、リプレースに対する補助金制度も一部地域で始まっています。

中古パネルの売却

  • 使用済みパネルでも、まだ発電能力があれば中古市場で売却できる可能性があります。
  • 特に状態の良いパネルは、海外や国内の再利用市場で需要があります。
  • ただし、古いパネルの中古価格はあまり高くないため、大きな収入は期待できません。
  • 中古売却を検討する場合は、専門の業者に相談するのがよいでしょう。

廃棄とリサイクル

  • 使用できなくなったパネルは適切に廃棄・リサイクルする必要があります。
  • 太陽光パネルは「産業廃棄物」に分類され、専門の処理業者に依頼する必要があります。
  • 廃棄費用は1kWあたり5,000~10,000円程度かかります。
  • 現在、パネルのリサイクル技術も発展しており、ガラスや金属部分などの再資源化が進められています。

まとめ:太陽光パネルを長く効率的に使うポイント

太陽光パネルを長期間効率よく使い続けるためのポイントをまとめます。

定期的なメンテナンスが重要:パネルの清掃や設備の点検を定期的に行い、不具合を早期に発見・対処することで寿命を延ばすことができます。特に設置から10年以上経過した設備では、より丁寧なメンテナンスが必要です。

発電量の監視を習慣に:日々または月々の発電量をチェックし、異常な低下がないか確認することで、故障や劣化を早期に発見できます。モニタリングシステムを活用すれば、より簡単に監視できます。

環境条件に配慮:パネル周辺の樹木や障害物による影の発生を防ぎ、常に良好な日照条件を維持することも重要です。また、鳥のフンなどの汚れが付着した場合は早めに清掃しましょう。

長期的な運用計画を立てる:パワコンの交換時期(10~15年目)やFIT期間終了(10年目)などのタイミングを見据え、長期的な運用計画を立てておくことをお勧めします。

卒FITを契機に運用方法を見直す:FIT期間終了後は、自家消費の最大化や蓄電池の導入、システムのリプレースなど、新たな活用方法を検討するよい機会です。

太陽光パネルは適切に管理すれば、20年、30年と長期間にわたって再生可能エネルギーを生み出し続けることができる設備です。初期投資はかかりますが、長期間の運用によって十分に元が取れるだけでなく、環境にも貢献できる優れた投資と言えるでしょう。

卒FITを迎えた今こそ、あなたの太陽光発電設備を見直し、これからの10年、20年を見据えた活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。

 

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