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太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)の期間終了を迎えたご家庭では、発電した電気を有効活用するための選択肢として蓄電池が注目されています。本記事では、蓄電池の基本から種類、選び方まで詳しく解説します。

蓄電池とは?仕組みと役割

蓄電池は電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵し、必要なときに再び電気として取り出せる装置です。太陽光発電と組み合わせることで、発電した電気を無駄なく活用できるようになります。

蓄電池の仕組み

蓄電池は充電時に電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵し、放電時には逆の過程で化学エネルギーを電気エネルギーに戻します。この変換を繰り返し行えるのが「二次電池(充電可能な電池)」の特徴です。家庭用蓄電池のほとんどは、このような二次電池を採用しています。

家庭での役割

家庭用蓄電池の主な役割は以下の3つです。

  1. 余剰電力の有効活用:太陽光発電で日中に発電した余剰電力を蓄えて、夜間に使用できます。特に卒FIT後は売電価格が下がるため、自家消費によるメリットが大きくなります。
  2. 電気代の節約:電力会社から購入する電力量を減らせるため、電気代の削減につながります。また、時間帯別料金プランと組み合わせると、さらに経済効果を高められます。
  3. 非常用電源:停電時にも電気を使えるため、災害対策としても重要な役割を果たします。太陽光発電と連携すれば、長期停電にも対応できます。

主な蓄電池の種類と特徴

家庭用蓄電池にはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。ここでは代表的な蓄電池の種類について解説します。

リチウムイオン電池

特徴

  • 小型軽量で高いエネルギー密度を持つ
  • 充放電効率が高い(約90%以上)
  • 自己放電が少なく、保存性能が良い
  • サイクル寿命が長い(一般的に3000~6000回程度の充放電が可能)

現在、家庭用蓄電池の主流となっているのがリチウムイオン電池です。スマートフォンや電気自動車にも使われている技術で、小さなサイズながら多くの電力を蓄えられます。最近では安全性や寿命を向上させたリン酸鉄リチウム(LFP)電池も増えています。

デメリットとしては、高温環境での使用や満充電状態での長期保管により劣化が早まる点が挙げられますが、メーカー各社は温度管理や充放電制御を工夫して長寿命化を図っています。

鉛蓄電池

特徴

  • 歴史が長く、技術が確立されている
  • 価格が比較的安い
  • 低温性能が優れている
  • 大電流の放電に強い

鉛蓄電池は自動車のバッテリーなどに使われる古くからある技術です。開発から150年以上経った今でも広く使われているのは、その信頼性と安定性の証です。家庭用蓄電池としては現在主流ではありませんが、コスト重視の場合や産業用途では今でも選ばれることがあります。

一方で、リチウムイオン電池に比べると重量が重く、エネルギー密度も低いため、同じ容量なら大きなスペースが必要になります。また過放電に弱く、完全に放電させると劣化が早まる点に注意が必要です。

ニッケル水素電池

特徴

  • 安全性が高い
  • 環境負荷が比較的低い
  • メモリー効果が少ない
  • 温度特性がバランス良い

ニッケル水素電池は安全性に優れており、ハイブリッド車などに採用されています。リチウムイオン電池ほどのエネルギー密度はありませんが、その分安全性が高く、比較的安価に製造できるメリットがあります。

家庭用蓄電システムでは現在あまり見かけませんが、小型の非常用電源などには使われることがあります。自己放電がやや大きいため、長期保存には向かない点がデメリットです。

その他の蓄電池

NAS電池(ナトリウム硫黄電池) 大型の産業用や電力系統用として使われる高温作動型の蓄電池です。長時間の大容量蓄電に向いていますが、作動温度が300℃前後と高温なため、家庭用には適していません。

レドックスフロー電池 電解液に蓄えられた化学エネルギーを利用する方式で、大容量・長寿命が特徴です。主に産業用途で使われ、家庭用としては普及していません。

燃料電池 厳密には蓄電池ではなく、水素などの燃料と酸素の化学反応で発電するシステムです。エネファームなど家庭用コージェネレーションシステムとして普及が進んでいますが、蓄電池と異なり電気を貯める機能はありません。

家庭用蓄電池としては、現在はリチウムイオン電池が主流となっており、性能や価格のバランスから選ばれることが多くなっています。

蓄電システムの構成タイプ

蓄電池システムは、電池の種類だけでなく、その構成方法や接続形態によっても分類されます。ここでは代表的な構成タイプについて解説します。

単機能型とハイブリッド型

単機能型(AC連系型) 太陽光発電システムと蓄電池システムが別々のパワーコンディショナ(PCS)を持ち、それぞれが独立して動作するタイプです。既に太陽光発電を導入している家庭に後から蓄電池を設置する場合に適しています。

メリット:

  • 既存の太陽光発電システムをそのまま活かせる
  • 設置が比較的簡単
  • 初期費用がハイブリッド型より抑えられることが多い

デメリット:

  • 機器が2台になるためスペースを取る
  • 電力変換のロスがやや大きくなる
  • 停電時に太陽光発電からの充電ができない機種もある

ハイブリッド型 太陽光発電と蓄電池の両方を1台のパワーコンディショナで制御するタイプです。太陽光発電と蓄電池を同時に導入する場合や、太陽光のパワコンが寿命を迎えるタイミングでの更新に適しています。

メリット:

  • 機器点数が少なく、省スペース
  • 電力変換ロスが少なく効率が良い
  • 停電時も太陽光発電から蓄電池への充電が可能なことが多い

デメリット:

  • 既存の太陽光発電システムとの互換性に注意が必要
  • 単機能型より初期費用が高い場合がある
  • 故障時に太陽光発電も蓄電池も使えなくなるリスクがある

特定負荷型と全負荷型

特定負荷型 停電時に特定の回路(冷蔵庫やリビングの照明など)のみに電力を供給するタイプです。専用の分電盤を設置し、そこに重要な回路だけを接続します。

メリット:

  • 比較的安価
  • 重要な電気機器を選んで接続できる
  • 蓄電池容量が小さくても重要機器だけは長時間動かせる

デメリット:

  • 停電時に使える電気機器が限られる
  • 配電盤の工事が必要

全負荷型 停電時に家全体の電力をバックアップできるタイプです。通常の分電盤を経由して家中のコンセントに電力を供給します。

メリット:

  • 停電時も普段通りの電気の使い方ができる
  • 別途非常用回路を用意する必要がない
  • 使用する部屋や機器を選ばない

デメリット:

  • 特定負荷型より高価
  • 大きな容量が必要
  • 同時に多くの機器を使うと蓄電池の持続時間が短くなる

トライブリッド型

トライブリッド型は、太陽光発電、蓄電池に加えて電気自動車(EV)の充放電機能(V2H:Vehicle to Home)を統合したシステムです。EVの大容量バッテリーを家庭用電源として活用できるため、エネルギーマネジメントの幅が大きく広がります。

メリット:

  • 太陽光発電で作った電気をEVに充電できる
  • EVから家に電力供給できるため、大容量バックアップが可能
  • エネルギーの自給自足性が高まる

デメリット:

  • 導入費用が高い
  • EVを所有していないと恩恵を受けられない
  • 対応製品がまだ限られている

今後、EVの普及とともにトライブリッド型システムの需要も高まると予想されています。特に電力の地産地消や災害対策の観点から、注目を集めています。

家庭用蓄電池の選び方

蓄電池の導入を検討する際、どのような基準で選べばよいのでしょうか。ここでは家庭用蓄電池を選ぶ際のポイントについて解説します。

容量の選び方

蓄電池の容量(kWh)は、経済効果や停電時の持続時間に直結する重要な要素です。適切な容量を選ぶためには、以下の点を考慮します。

  1. 太陽光発電の余剰電力量:晴れた日に余る電力をほぼ貯められる容量が理想的です。例えば4kWの太陽光発電システムなら5〜8kWh程度、6kWなら8〜12kWh程度が目安となります。
  2. 夜間の電力消費量:日没から翌朝までに使う電力量をカバーできる容量があると、夜間の電力購入を大幅に減らせます。一般的な家庭では夕方から朝までで4〜7kWh程度使用します。
  3. 停電対策の重要度:非常時に使いたい電気機器と時間から逆算することも重要です。例えば照明・テレビ・冷蔵庫・スマホ充電器程度(約0.85kW)なら、4kWhの蓄電池で約4.5時間、11kWhなら約12.5時間バックアップできます。
  4. 予算とのバランス:容量が大きいほど価格も高くなります。費用対効果を考慮し、必要十分な容量を選びましょう。一般家庭では5〜10kWh程度の製品が人気です。

家庭の電力消費パターンや太陽光発電の規模に合わせて最適な容量を選ぶことが大切です。迷った場合は、販売店に過去の電力データを渡してシミュレーションしてもらうとよいでしょう。

設置場所と条件

蓄電池の設置場所を決める際は、以下のポイントを考慮します。

  1. 設置スペース:家庭用蓄電池は一般的にエアコンの室外機より一回り大きく、重量も100〜200kg超と重いものが多いです。設置面積と床の耐荷重を確認しましょう。
  2. 設置環境:屋外に設置する場合は、直射日光や雨を避けられる場所が望ましいです。また、水はけが良く、浸水の恐れがない場所を選びます。
  3. 温度条件:極端な高温や低温は蓄電池の性能や寿命に影響します。特にリチウムイオン電池は適切な温度範囲での使用が重要です。
  4. アクセス性:メンテナンスや点検がしやすい場所に設置することも大切です。
  5. 安全性:子どもやペットがいたずらできない場所、または施錠できる環境が安全です。

一般的には屋外の軒下や物置、ガレージなどに設置されることが多いですが、設置場所によっては基礎工事が必要になる場合もあります。設置前に必ず専門業者による現地調査を受けましょう。

メーカー選びのポイント

蓄電池のメーカーを選ぶ際は、以下の点を確認するとよいでしょう。

  1. 実績と信頼性:累積販売台数や市場シェア、創業年数などから企業の安定性を判断します。国内大手メーカー(ニチコン、長州産業、シャープ、パナソニック、京セラなど)は実績が豊富です。
  2. 保証内容:蓄電池の保証期間や保証条件を確認しましょう。一般的には10年程度の製品保証が付いていますが、内容は各社で異なります。特に「容量保証」(何年後に何%の容量を維持するかの保証)は重要です。
  3. アフターサービス:故障時のサポート体制や定期点検の有無、部品の供給期間なども確認しましょう。地域に販売代理店やサービス拠点があると安心です。
  4. 互換性:既存の太陽光発電システムとの互換性も重要なポイントです。特にハイブリッド型を検討する場合は、現在の太陽光システムと接続できるかを事前に確認してください。
  5. 機能性:遠隔モニタリング機能や、AIによる最適充放電制御など、便利な機能が搭載されているかも比較ポイントです。

国内の主要メーカーとしては、ニチコン(国内シェア約17%)、長州産業(約17%)、シャープ(約15%)、パナソニック(約10%)などが挙げられます。アフターサービスの充実度も含めて総合的に判断するとよいでしょう。

卒FIT世帯におすすめの蓄電池活用法

FIT(固定価格買取制度)の期間が終了した卒FIT世帯では、蓄電池の導入が特に有効です。ここでは卒FIT世帯における蓄電池の効果的な活用法を紹介します。

自家消費率を高める運用方法

卒FIT後は売電単価が大幅に下がるため(10円/kWh前後)、発電した電気をできるだけ自家消費することが経済的です。蓄電池を活用して自家消費率を高める方法には以下のようなものがあります。

  1. 余剰電力の蓄電と夜間利用:日中に余った太陽光発電の電力を蓄電池に貯め、夕方以降に使用します。これにより昼間余っていた電力を有効活用でき、夜間の電力購入を減らせます。
  2. 時間帯別料金の活用:電力会社の時間帯別料金プランを契約し、深夜電力(安価)で蓄電池を充電して日中(高価)に使用するという方法も効果的です。太陽光発電と組み合わせれば、さらに電気代削減効果が高まります。
  3. 賢い充放電制御:天気予報と連動した充放電制御機能を持つ蓄電システムもあります。翌日が晴れる予報なら蓄電池を積極的に使い切り、雨の予報なら節約モードで運用するなど、効率的な運用が可能です。

実際のシミュレーション例では、4kWの太陽光発電に6kWhの蓄電池を組み合わせることで、自家消費率を30%から70%以上に高め、年間電力購入量を大幅に削減できたケースもあります。電気代にして年間4〜5万円の削減効果が期待できます。

非常時の電力確保

蓄電池のもう一つの大きなメリットは、停電時の電力確保です。特に近年、台風や地震などによる大規模停電が増えていることから、非常用電源としての価値も高まっています。

  1. 優先度の高い機器への給電:停電時には、まず命や安全に関わる機器(照明、通信機器、医療機器など)に電力を供給します。次に情報収集のためのテレビやラジオ、食品保存のための冷蔵庫などを優先すると良いでしょう。
  2. 太陽光発電との連携:ハイブリッド型蓄電システムであれば、停電中でも日中は太陽光発電から蓄電池を充電できます。これにより、晴天が続く限り電力を継続的に確保できます。
  3. 持続時間の目安:一般的な家庭用蓄電池(容量5〜10kWh)で、最低限の電力(照明、テレビ、冷蔵庫、スマホ充電など約0.85kW)なら約6〜12時間程度使用できます。消費電力を抑えれば、さらに長時間持ちます。
  4. 非常用コンセントの確認:停電時に使えるコンセントは限られています。特定負荷型の場合は専用コンセントや回路のみが使用可能です。設置時に非常時に使いたい機器の配置と電源確保について、よく検討しておきましょう。

非常時の備えとして、蓄電池と太陽光発電を組み合わせれば、「エネルギーの自給自足」に近い環境を作ることができます。災害大国日本において、この安心感は大きな価値があるでしょう。

まとめ:自分に合った蓄電池を選ぼう

蓄電池は太陽光発電と組み合わせることで、電気代の節約や停電時のバックアップなど、多くのメリットをもたらします。特に卒FIT世帯にとっては、余剰電力の有効活用による経済効果が期待できます。

蓄電池を選ぶ際のポイントをまとめると:

  1. 目的を明確にする:電気代削減が主目的か、非常用電源としての役割を重視するか、目的によって選ぶべき蓄電池の種類や容量は変わります。
  2. システム構成の選択:単機能型かハイブリッド型か、特定負荷型か全負荷型かなど、既存設備との兼ね合いや予算に応じて適切なタイプを選びましょう。
  3. 適切な容量の検討:太陽光発電の規模や電力消費パターンに合わせて、過不足ない容量を選ぶことが費用対効果を高めるポイントです。
  4. 信頼できるメーカーと施工業者の選定:蓄電池は10年以上使う設備です。アフターサポートや保証内容も含めて信頼できる会社を選びましょう。
  5. 補助金の活用:国や自治体の補助金制度を活用することで、導入コストを抑えられる可能性があります。最新の補助金情報をチェックしましょう。

蓄電池の導入は決して安い買い物ではありませんが、長期的な視点で見れば、エネルギーの自給自足に近づき、電気代の節約や災害時の安心につながります。自宅の状況や家族のライフスタイルに合った蓄電池を選び、太陽光発電をより効果的に活用していきましょう。

卒FIT後も太陽光発電を最大限に活かし、環境にも家計にも優しい、持続可能なエネルギーライフを実現するために、蓄電池の導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

 

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