
「11年目以降から太陽光発電の売電価格は下がるの?」「効率よく太陽光発電を運用する方法を知りたい」
太陽光設備を活用している人には、このような悩みがあるのではないでしょうか。
今回の記事では、「太陽光発電の売電価格がどう変化するのか」「11年目以降におすすめの運用方法」について解説します。
太陽光発電を安心かつ経済的に運用したいと考えている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
太陽光発電の売電制度(FIT制度)とは?
FIT制度は、太陽光発電設備で生み出した電力を固定価格で売却(売電)できる制度です。
この章では、「FIT制度の終了時期」「FIT終了後の売電価格」について解説します。
FIT制度は10年で終了する
住宅で使用される太陽光発電設備(10kW未満)は、導入から10年後に卒FITとなります。
卒FITとは、電力会社などの事業者に固定価格で売電できる期間が終了することです。
卒FITとなっても売電自体はでき、11年目以降は事業者の定める単価が適用されます。
しかし、多くの事業者はFIT制度適用中よりも買取単価が低下するため、売電収入は減少するでしょう。
また、太陽光発電設備の寿命は次の通りとされています。
- パネル:約20〜30年
- パワーコンディショナ(生み出した直流電力を家庭用の交流電力に変換する装置):約10〜15年
設備の寿命がFIT制度適用期間よりも長いため、11年目以降にどのような運用を行うかを検討しなければなりません。
11年目以降(卒FIT後)の売電価格
卒FITとなった11年目以降の売電価格は、2024年8月時点で以下の通りとなります。
事業者名 | 1kWhあたりの買取単価 |
大和ハウス工業 | 10〜22円 |
北陸電力 | 1〜17円 |
藤田商店 | 11〜16円 |
はりま電力 | 9〜15円 |
宮崎電力 | 10〜13円 |
エネクスライフサービス | 7.1〜12.5円 |
東急パワーサプライ | 12円 |
旭化成ホームズ | 10〜12円 |
中部電力ミライズ | 7〜12円 |
北海道ガス | 11円 |
ENEOS | 10〜11円 |
おいでんエネルギー | 10〜11円 |
丸紅新電力 | 9〜11円 |
エバーグリーン・リテイリング | 8〜11円 |
大阪ガス | 9.5〜10.5円 |
出光興産 | 8.5〜10.5円 |
坊っちゃん電力 | 10円 |
全農エネルギー | 7.5〜10円 |
おきなわコープエナジー | 8.8〜9.57円 |
有明エナジー | 9.5円 |
東邦ガス | 9〜9.5円 |
沖縄ガスニューパワー | 8.6〜9.1円 |
東北電力 | 9円 |
みんな電力 | 8.5〜9円 |
東京電力エナジーパートナー | 8.5円 |
関西電力 | 8円 |
北海道電力 | 8円 |
沖縄電力 | 7.7円 |
中国電力 | 7.15円 |
九州電力 | 7円 |
四国電力 | 7円 |
2025年度にFIT認定されると売電価格は1kWhあたり15円となるため、卒FIT後は多くの場合で売電収入が下がります。
<h2>FIT制度11年目以降におすすめの運用方法
卒FITした11年目以降は、次のような運用を行うのがおすすめです。
- 売電先を切り替えて売電を続ける
- 非常用電源として活用する
- 蓄電池を導入して自家消費する
- エコキュートを設置する
- HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を導入する
- 電気自動車やプラグインハイブリッド車を充電する
この章ではそれぞれの運用方法について解説します。
売電先を切り替えて売電を続ける
FIT制度終了後における選択肢の1つは、売電先の事業者を切り替えて引き続き売電することです。
FIT制度適用期間中は売電先が大手電力会社に限られますが、卒FIT後は新電力会社にも電力を売却できます。
売電先を新電力会社に切り替えるメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 大手電力会社よりも買取価格が高くなる傾向にある
- プランによっては電気代を抑えられる
【デメリット】
- 電力の売買以外に本業がある新電力会社は、電力事業の撤退や倒産のリスクがある
- 契約の切り替え手続きをする必要がある
- 市場状況に応じて買取価格が低下する可能性がある
売電先の切り替えを行う際は、複数の電力会社を比較・検討し、高く買い取ってくれる電力会社がどこかを見極めるとよいでしょう。
非常用電源として活用する
太陽光発電を導入してから11年目以降は、非常用電源として使うのもおすすめです。
太陽光発電設備は自力で発電できるため、地震などの災害による停電が発生しても電力を供給できます。
停電が起こった際は、太陽光のある日中であれば「自立運転モード」に切り替えられます。
自立運転モードとは、発電した電力を家庭内で直接利用できるモードのことです。
停電で電力の供給がストップしても、パワーコンディショナに備わる非常用コンセントで1,500Wまでの電化製品を使えます。
非常用コンセントを使用する場合は以下の点に注意しましょう。
- 1,500W以上の電化製品(エアコンなど)は利用できない
- 1,500W未満でも使用できない電化製品がある
- 部屋のコンセントは使えなくなるため、延長コード・電源タップを用意する
蓄電池を導入して自家消費する
家庭用の蓄電池を設置して自家消費するのも、FIT終了後におすすめの選択肢となります。
蓄電池を導入するメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- 日中生み出した電力を蓄電池に貯めれば、夜になっても電力を使える
- 夜や消費電力の多い時間帯に電力を購入する必要がなく、電気代が節約できる
- ポータブル電源などの軽量な蓄電池であれば、アウトドアなどで電力を使用できる
【デメリット】
- 初期費用やメンテナンス費用が発生する
- 蓄電池の設置スペースを確保しなければならない
住宅用蓄電システムの導入にかかる費用は、1kWhあたり11万1,000円が相場となります(2023年時点)。
蓄電池の導入費用を抑えるには、国や自治体の補助金を活用するとよいでしょう。
エコキュートを設置する
エコキュート(空気中の熱を利用する電動給湯器)を導入して自家消費するのも、11年目以降におすすめの運用方法です。
エコキュートには次のようなメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- 湯を作る際に電気ヒーターを使わないため、電気料金が抑えられる
- 日中に太陽光の電力で湯を沸かせば、沸かし直しが不要となり、さらに電気代を節約可能
- 夜間のみ電気料金が安いプランと組み合わせれば、給湯のコストを抑制できる
【デメリット】
- 施工費用を含めて60万円ほどの費用がかかる場合もある
- 太陽光発電との組み合わせができないエコキュートもある
太陽光発電と連携できるエコキュートは以下の通りです。
- おひさまエコキュート(ダイキン工業)
- S・A・P・EXシリーズ(三菱電機)
- JP・J・N・C・W・S・NS・H・FP・F・LS・Lシリーズ(パナソニック)
これらのエコキュートを活用すれば、効率良く太陽光発電のエネルギーを消費できます。
HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を導入する
11年目以降は、HEMS(「Home Energy Management System」の略)の導入もおすすめです。
HEMSとは、太陽光発電を含む家庭内エネルギーを管理するシステムのことです。
太陽光発電設備や各種家電などをHEMSにつなげば、電力使用量の計測やエネルギーの自動制御ができます。
HEMSを導入するメリット・デメリットは次の通りです。
【メリット】
- 家庭内の消費電力量を自動で減らし、太陽光パネルで生み出した電力の売電量を増やせる
- 日中は太陽光発電の電力を積極的に使うよう制御できるため、電気代が節約できる
【デメリット】
- 15〜20万円ほどの導入費用がかかる
- 国の補助金がない(一部の地方自治体は補助金を交付している)
電気自動車やプラグインハイブリッド車を充電する
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)をお持ちであれば、太陽光の電力を充電に使用するのも手です。
EV・PHEVを充電するメリット・デメリットは以下の通りとなります。
【メリット】
- 充電ステーションやガソリンスタンドに行く頻度が減り、電気代やガソリン代を節約できる
- 非常時に車が蓄電池の役割を果たせる
【デメリット】
- 充電には2〜3時間ほどかかり、その間は車を動かせない
- 蓄電池として活用できない車種もある
EV・PHEVを蓄電池の代わりにする場合は、V2H(Vehicle to Home)を導入しなければなりません。
V2Hとは、EV・PHEVの電力を家庭内で使用できるように変換するシステムのことです。
V2Hを設置する際は、車がV2Hに対応しているかどうかを必ず確認しましょう。
まとめ
今回の記事では、「太陽光発電の売電価格が11年目以降どうなるか」「卒FIT後におすすめの運用方法」について解説しました。
太陽光発電設備は導入してから10年でFIT制度が終了し、11年目以降は売電収入が減りやすくなります。
そのため、卒FIT後にどのような運用方法をするかを考える必要があります。
ご家庭でのライフサイクルに合う運用方法を選択し、卒FITした後も経済的で安心な太陽光発電ライフを送りましょう。