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太陽光発電を設置してから10年が経過し、固定価格買取制度(FIT制度)の買取期間が満了する「卒FIT」を迎える方が年々増えています。本記事では、卒FIT後の新たな売電契約の手続き方法や注意点について分かりやすく解説します。

卒FITとは?これから何が変わるの?

「卒FIT」とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)による買取期間が満了することを意味します。住宅用太陽光発電の場合、買取期間は10年間と法律で定められています。

FIT制度では、発電した電気を国が定めた固定価格(住宅用の場合、設置年度によって1kWhあたり42円や38円など)で電力会社が買い取ってくれました。しかし、この買取期間が終了すると、自動的に高額買取は終了します。

卒FIT後に何も対応しないと、余剰電力は電力会社に無償で引き取られてしまいます(いわゆる「タダ漏れ」状態)。これを避けるためには、新たな売電契約を結ぶか、蓄電池などを導入して自家消費に切り替えるなどの対応が必要です。

ただし、太陽光パネルの発電機能自体は問題なく継続するため、卒FIT後も適切に活用すれば、引き続き経済的メリットを得ることができます。

卒FITのタイミングはいつ?調べ方と確認方法

自分の太陽光発電設備がいつ卒FITを迎えるのか、以下の方法で確認できます。

1. 買取期間満了通知で確認 買取期間満了の4~6か月前頃に、現在の売電先(電力会社)から「FIT制度 買取期間満了のご案内」という通知が届きます。この書面には買取満了日が明記されているので、必ず確認して大切に保管しましょう。通知には設備IDや発電出力など、今後の手続きに必要な情報も記載されています。

2. 契約書や検針票で確認 買取期間満了通知を待たずに知りたい場合は、売電契約書や毎月の検針票(購入電力量のお知らせ)を見て、「売電開始時期」または「FIT買取開始年月日」を確認しましょう。そこから10年後が満了時期です。

3. 電力会社のWebサービスで確認 一部の電力会社では会員向けWebサイト上で卒FIT予定日を確認できます。例えば東京電力管内では「購入電力量のお知らせ」Web画面の発電設備情報欄に満了日が表示されます。未登録の場合でも無料で登録できるので便利です。

卒FIT後の選択肢を理解しよう

卒FIT後の主な選択肢は以下の3つです。それぞれメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて検討しましょう。

1. 新たな電力会社と契約して売電を継続する 最も手軽な選択肢です。地域の電力会社や新電力と新たな契約を結び、引き続き余剰電力を売ることができます。初期費用はほぼかからず、設備をそのまま活用できます。ただし、買取価格はFIT期間中より大幅に下がります。

2. 蓄電池を導入して自家消費を増やす 日中発電した電気を蓄電池に貯めて夜間に使うことで、電力会社から買う電気を減らせます。電気料金の節約効果が高く、停電時のバックアップにもなります。ただし、蓄電池の導入費用が高額(100~200万円程度)なのがネックです。

3. 電気自動車(EV)と連携する EVを所有している場合、太陽光で発電した電気を車に充電したり、V2H(Vehicle to Home)システムで家庭に給電したりできます。ガソリン代や電気代の節約になりますが、EVや関連設備の導入費用がかかります。

卒FIT後も売電するメリットと買取価格の相場

卒FIT後も売電を継続する場合のメリットと買取価格について解説します。

売電継続のメリット

  • 初期費用がほとんど不要(設備はそのまま利用可能)
  • 手続きが比較的簡単
  • 定期的に売電収入が得られる
  • 昼間不在が多い家庭に適している

卒FIT後の買取価格相場 卒FIT後の買取価格はFIT期間中より大幅に下がり、一般的には7~10円/kWh程度が相場です。地域や電力会社によって異なりますが、例えば以下のような買取価格が提示されています:

  • 大手電力会社:7~9円/kWh程度
  • 新電力各社:8~11円/kWh程度

新電力の中には大手電力より1~2円高く買い取るプランもあるため、複数社の条件を比較検討することをおすすめします。地域別・時期別の最新買取価格は各社のホームページで確認できます。

卒FIT後の新契約手続きの流れ

卒FIT後も売電を継続する場合の契約手続きの流れは以下の通りです。

1. 買取満了通知の確認 まず、電力会社から届く「買取期間満了のお知らせ」を確認します。通知には買取満了日や現在の契約内容、今後の選択肢などが記載されています。

2. 売電先の検討・決定 資源エネルギー庁のWebサイトや各電力会社のホームページを参照し、新しい売電先を検討します。買取価格だけでなく、契約期間や支払い方法なども比較しましょう。

3. 新しい売電先への申込み 新しい売電先が決まったら、その会社のWebサイトや電話で申込み手続きを行います。申込みの期限は買取満了日の1~2か月前までが安全です。

4. 必要書類の提出 申込書に必要事項を記入し、場合によっては満了通知書のコピーなどの添付書類と一緒に提出します。多くの会社はWeb申込みにも対応しています。

5. 契約内容の確認と同意 新しい売電先から契約内容の案内があるので、買取単価や契約期間などを確認し、同意します。

6. スマートメーター設置確認 スマートメーターが未設置の場合は、送配電会社が無料で設置工事を行います。立ち会いは原則不要です。

7. 契約開始・売電スタート 買取満了日の翌日から新しい契約での売電が始まります。新しい売電先への切替手続き(スイッチング)は申込先の会社が行うので、自分で特別な作業をする必要はありません。

必要な書類と情報の準備

新たな売電契約には以下の書類や情報が必要になります。事前に準備しておきましょう。

必要な書類

  • 買取期間満了のお知らせ(通知ハガキ/書面)
  • 現在の売電契約書(コピー可)
  • 直近の検針票(購入電力量のお知らせ)

必要な情報

  • 契約者氏名・住所・連絡先
  • 設備ID(経産省の認定ID、10桁のアルファベットと数字)
  • 発電設備の容量(kW)
  • FIT買取期間の満了日
  • 現在の売電先名(例:○○電力送配電)
  • 電力受給契約番号や受電地点特定番号
  • 支払い用の振込口座情報

もし必要書類を紛失した場合は、現在の売電先や太陽光発電協会代行申請センターに問い合わせれば再発行可能です。また、設備IDがわからない場合も、設置者名と住所から検索できる場合があります。

契約先の選び方とポイント

卒FIT後の売電契約先を選ぶ際のポイントは以下の通りです。

買取価格 最も重要なのは1kWhあたりの買取価格です。同じ地域でも会社によって1~2円の差があることも。地域の大手電力会社より新電力の方が高く買い取るケースが多いです。

契約期間と解約条件 契約期間の縛りや中途解約時の違約金の有無を確認しましょう。政府からの要請で、多くの大手電力会社は違約金なしで解約できるプランを提供しています。

支払い方法 売電料金の支払い方法も会社によって異なります。月ごとの振込み、一定額貯まってからの振込み、ポイント還元など、自分に合った方法を選びましょう。

追加サービス 一部の売電先では、発電量のモニタリングサービスや家庭の電気料金とのセット割引などの特典を提供しています。こうした付加価値も比較検討材料にすると良いでしょう。

信頼性と実績 売電先の企業としての信頼性や実績も重要です。卒FIT対応の実績が豊富な会社を選ぶと安心です。なお、万が一契約先が倒産しても電力系統からの遮断はされず、一時的に一般送配電事業者が無償で受け皿になる仕組みがあります。

スマートメーターへの切り替え

卒FIT後の売電契約では、スマートメーターが必要になります。スマートメーターとは、通信機能を備えたデジタル式電力量計のことです。

スマートメーターのメリット

  • 30分ごとの電力量データを自動で電力会社に送信
  • 検針員の訪問が不要になる
  • 売電・買電の正確な計量が可能
  • リアルタイムに近い電力データの取得
  • HEMSやアプリと連携すれば発電・消費の見える化が可能

設置費用と手続き スマートメーターへの交換費用は基本的に電力会社(送配電事業者)の負担で行われ、お客様の初期費用はかかりません。契約先を変更する際、まだスマートメーターでない場合は、送配電会社から案内があり、自動的に交換工事の段取りが組まれます。

交換工事は10~30分程度で完了し、多くの場合立ち会い不要です。工事の際は短時間の停電が発生しますが、事前に日時の連絡があります。未設置の場合でも特に心配する必要はなく、指示に従って対応すれば問題ありません。

新契約における注意点とよくある質問

卒FIT後の新契約に関する注意点とよくある質問をまとめました。

買取価格の変動 卒FIT後の売電契約では「市場連動型」のプランも増えています。このタイプは電力の市場価格によって買取単価が変動します。単価の安定性を重視する場合は、固定型のプランを選ぶことも検討しましょう。

契約の自動更新 契約期間終了後の更新条件も確認しておきましょう。自動更新される場合もあれば、更新時に条件が変わる場合もあります。契約内容をよく確認し、不明点は事前に問い合わせることをおすすめします。

売電量の減少対策 太陽光パネルは経年劣化により発電量が徐々に低下します。10年経過時点で当初の80~90%程度の発電量になっていることが一般的です。定期的なパネル清掃や点検を行うことで、できるだけ発電効率を維持しましょう。

よくある質問 Q: 卒FIT後に何もしないとどうなりますか? A: 何も対応しないと、余剰電力は電力会社に無償で引き取られてしまいます。必ず新たな契約を結ぶか、蓄電池導入などの対策を取りましょう。

Q: 卒FIT後も同じ電力会社と契約できますか? A: はい、可能です。現在の電力会社も卒FIT向けの買取プランを用意しています。ただし、買取価格は大幅に下がります。

Q: 複数の会社から見積もりを取っても良いですか? A: むしろ積極的に比較検討することをおすすめします。買取価格や条件は会社によって異なるため、複数社から情報を集めると良いでしょう。

電力会社変更による影響と対応

売電先を変更した場合の影響と対応すべきことについて解説します。

買電契約(電気の購入)への影響 売電契約と買電契約(ご家庭で電気を購入する契約)は別物です。売電先を変更しても、家庭で使用する電気の契約には原則として影響しません。ただし、同じ会社と両方契約していてセット割引などの特典がある場合は確認が必要です。

メーターの変更 売電先を変更する際、前述のようにスマートメーターへの交換が必要になる場合があります。これは送配電会社が無料で対応します。

支払方法の変更 新しい売電先によって、売電料金の振込先口座や支払いサイクルが変わることがあります。新契約時に支払い関連の情報を確認し、必要に応じて口座情報などを提供しましょう。

モニタリングシステムへの影響 太陽光発電のモニタリングシステムは電力会社の変更の影響を受けないケースがほとんどです。ただし、電力会社提供のモニタリングサービスを利用している場合は、継続利用できるか確認が必要です。

トラブル時の対応窓口 設備の不具合や発電に関する問題は、基本的に太陽光パネルやパワーコンディショナのメーカー、または施工業者に相談します。売電に関する問題(買取単価や支払いなど)は新しい売電先に問い合わせましょう。

卒FIT通知を受け取ったらすぐにやるべきこと

卒FIT通知を受け取ったら、以下のチェックリストに沿って対応しましょう。

1. 通知内容の確認

  • 買取期間満了日を確認
  • 現在の売電先を確認(一般送配電事業者の場合は特に注意)
  • 設備IDなど必要情報をメモに整理

2. 選択肢の検討

  • 売電を継続するか、蓄電池導入などで自家消費を増やすか方針を決定
  • 家族とも相談し、ライフスタイルや予算に合わせて検討

3. 情報収集

  • 売電継続なら複数の電力会社の買取条件を比較
  • 蓄電池導入なら複数メーカーの製品や価格を調査

4. 必要書類の準備

  • 満了通知書を保管
  • 設備IDや契約内容に関する書類を整理
  • 紛失書類があれば再発行を依頼

5. 新契約の申込み

  • 遅くとも満了日の1~2か月前までに手続き開始
  • 必要事項を正確に記入して申込み

早め早めの対応を心がけ、満了日までに手続きを完了させましょう。特に紛失書類の再発行には時間がかかる場合があるため、書類確認は早めに行うことをおすすめします。

まとめ:スムーズな卒FIT移行のために

卒FIT後も太陽光発電設備は20年以上発電し続けるため、適切に活用すれば引き続き経済的メリットを得られます。スムーズな移行のためのポイントをまとめます。

1. 早めの情報収集と準備 卒FIT通知を受け取ったら、すぐに情報収集を始めましょう。満了日の3~4か月前には方針を決定することをおすすめします。

2. 選択肢の比較検討 単に売電単価だけでなく、契約条件や将来的な電気料金の動向、設備の状態なども考慮して総合的に判断しましょう。

3. 必要書類・情報の整理 設備ID、満了日、契約者情報など、新契約に必要な情報をしっかり整理しておきましょう。不明点は現在の電力会社に確認を。

4. 余裕を持った手続き 契約手続きは満了日の1~2か月前までに済ませるようにしましょう。直前だと間に合わない可能性があります。

5. 将来を見据えた選択を 電気料金の上昇傾向や災害対策なども考慮し、単に目先の経済性だけでなく、長期的な視点で選択することも大切です。

卒FIT後も太陽光発電は価値ある資産です。本記事を参考に、ご自身にとって最適な選択をし、引き続き太陽光発電のメリットを享受してください。

 

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