
太陽光発電の昼間電力を活用するメリット
太陽光発電は日中の太陽光が強い時間帯に最も発電量が増加します。特に晴れた日の10時から14時頃にかけてがピークとなります。この発電のピーク時間帯に合わせて電力を効率的に使うことで、大きな経済的メリットが得られます。
太陽光発電による昼間の電力を自家消費するメリットは主に以下の点にあります。
電気代の節約効果 発電した電気を自家消費すれば、その分だけ電力会社から購入する電気を減らすことができます。電気料金の単価(現在は約25~30円/kWh)と同額の節約効果が得られるため、経済的です。
卒FIT後の経済性向上 FIT(固定価格買取制度)期間が終了すると、売電価格は大幅に下がります(約7~9円/kWh程度)。この状況では売電よりも自家消費に回した方が3~4倍の経済価値があります。
環境負荷の低減 自ら発電した再生可能エネルギーを使うことで、火力発電による二酸化炭素排出を間接的に削減できます。環境に優しい生活スタイルの実現につながります。
電力系統への貢献 昼間の電力需要が高い時間帯に自家発電・自家消費することで、電力系統全体のピーク需要を下げる効果もあります。これは地域全体の電力安定供給にも貢献します。
売電収入と自家消費のどちらがお得?
卒FIT後の選択肢として「売電を続けるか」「自家消費を増やすか」という判断が必要になりますが、数字で比較するとその差は明らかです。
売電と自家消費の経済価値比較:
- 売電時の価値:7~9円/kWh(大手電力会社の買取価格)
- 自家消費時の価値:25~30円/kWh(電気料金単価相当の節約)
つまり同じ1kWhの電力でも、売電するより自家消費した方が約3倍以上の経済価値があることになります。例えば、昼間に1kWhの電力を自家消費すれば約30円の節約になりますが、売電すれば8円程度の収入にしかなりません。
卒FIT世帯にとっては「いかに売電から自家消費にシフトするか」が最大の課題です。特に日中の在宅時間が短い共働き世帯では工夫が必要ですが、後述するような様々な方法で自家消費率を高めることができます。
昼間の電力活用で得られる節約効果
実際に太陽光発電の自家消費でどれくらいの節約ができるのか、具体的な数字で見てみましょう。
一般家庭の電力使用量と発電量:
- 一般的な4人家庭の年間電力消費量:約4,500kWh
- 4kW太陽光発電システムの年間発電量:約4,000kWh
これまでの調査では、何も対策しない場合の一般的な自家消費率は約20~30%といわれています。これを様々な工夫によって50%以上に高めることができれば、大きな節約効果が期待できます。
節約効果の目安(4kWシステムの場合):
- 自家消費率30%の場合: 年間自家消費電力量 1,200kWh × 30円 = 年間36,000円の節約
- 自家消費率50%の場合: 年間自家消費電力量 2,000kWh × 30円 = 年間60,000円の節約
つまり自家消費率を20%高めるだけで、年間約24,000円もの追加節約効果が得られる計算になります。月額にすると2,000円ほどの電気代削減になり、家計への貢献度は決して小さくありません。
太陽光発電の自家消費率を高める具体的な方法
効率よく太陽光発電の電力を使うには、「発電している昼間に電気をなるべく使う」という基本原則を意識することが大切です。以下に、具体的な方法を紹介します。
電力使用のタイミングを昼間にシフト 家電の使用時間を太陽が出ている時間帯に集中させることで、自家消費率を高めることができます。特に消費電力の大きい洗濯機、食器洗い機、掃除機、アイロンなどは昼間の使用がお勧めです。
タイマー機能の活用 タイマー機能付きの家電を活用し、日中の発電ピーク時(10時~14時頃)に稼働するよう設定しましょう。在宅していなくても自動的に電力を消費してくれます。
スマート家電との連携 スマートホーム機器やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入すれば、太陽光発電量に応じて自動的に家電を制御することも可能です。
エコキュートの昼間運転 多くの家庭で夜間電力を使うよう設定されているエコキュートですが、太陽光との組み合わせでは昼間運転に切り替えることで大きな節約効果が得られます。
これらの取り組みによって、太陽光で発電した電力を無駄なく活用し、電力会社から購入する電力量を減らすことができます。
家電の使用時間を昼間にシフトする
昼間の発電ピーク時間帯に電力消費を集中させる「ピークシフト」の具体的な方法を見ていきましょう。
電力消費の大きい家電を昼間に使う
特に以下の家電は昼間の使用をお勧めします。
- 洗濯機・乾燥機:朝出勤前に洗濯機をセットし、タイマーで10時頃に稼働開始するよう設定
- 食器洗い乾燥機:朝食後に食器をセットし、昼間に稼働するよう設定
- 掃除機・ロボット掃除機:日中に自動稼働させる
- 電子レンジ・オーブン:可能であれば昼食時に使用
- アイロン:在宅勤務日や週末の昼間に集中して使用
不在時でも活用できる方法
共働き世帯など昼間不在の家庭でも活用できる方法があります。
- タイマー機能の活用:洗濯機や食器洗い機のタイマー機能を使って日中に稼働させる
- スマート家電の遠隔操作:スマートフォンから遠隔で電気機器を操作
- エアコンの予冷・予熱:夏は帰宅前の15時頃から自動で予冷、冬は予熱を行うようタイマー設定
具体的な活用例
- 晴れた日の朝、洗濯機は11時スタートになるようタイマー設定
- 食洗機も同様に昼間稼働するよう設定
- ロボット掃除機は太陽発電のピーク時間帯に毎日自動稼働
- 在宅のリモートワーク日には、意識して掃除機かけやアイロンがけなど電力を使う家事を行う
これらの工夫を組み合わせることで、在宅していなくても昼間の発電電力を有効活用できます。
エコキュートとの連携で自家消費率アップ
エコキュートは家庭の電力消費の中でも大きな割合を占めるため、その運転時間を太陽光発電のピーク時間に合わせることで、自家消費率を大幅に高めることができます。
エコキュートの昼間運転のメリット
- 太陽光発電の余剰電力を有効活用できる
- 夜間電力ではなく、自家発電した電力で湯沸かしができる
- 追加設備投資なしで自家消費率を高められる
具体的な設定方法
- 運転モードの変更:エコキュートの設定を夜間運転から昼間運転(日中沸き上げ)に変更します。メーカーや機種によって設定方法は異なりますが、多くの場合は本体リモコンから変更可能です。
- 太陽光発電連携モードの活用:最近のエコキュートには太陽光発電との連携機能が搭載されたものがあります。例えば、コロナ社の「おひさまモード」やパナソニックの「ソーラーチャージ」など、太陽光発電の余剰電力を自動検知して湯沸かし運転を行う機能です。
- 天気予報連動機能の活用:天気予報と連動し、晴れの日は昼間の沸き上げ比率を高め、曇りや雨の日は夜間電力を中心に使うといった最適制御を行う機能もあります。
導入時の注意点
- エコキュートのリモコン設定で「昼間沸き上げ」や「ソーラーモード」に変更するだけで対応可能です
- 古い機種では対応していない場合もあるため、取扱説明書や販売店に確認しましょう
- 電力プランも見直し、夜間割引型から昼間太陽光発電と相性の良いプランに変更すると更に効果的です
エコキュートを昼間運転に切り替えるだけで、自家消費率が約10~20%向上したという事例も報告されています。特に追加費用がかからず、設定変更だけで効果が得られる点が大きなメリットです。
蓄電池なしでも昼間の太陽光を有効活用する方法
蓄電池の導入は自家消費率を大幅に高める効果的な方法ですが、導入コストが高いことがネックです。しかし蓄電池がなくても、工夫次第で自家消費率を高めることができます。
電気料金プランの見直し
- 夜間電力割引タイプから、シンプルな定額制プランに変更するケースが増えています
- 卒FIT後は電力会社から買う電気も含めて総合的に経済性を考える必要があります
- 中には卒FIT向けに特別な買取プランを用意している電力会社もあるため、比較検討しましょう
省エネ家電への買い替え
- 10年以上前の古い家電は消費電力が大きいため、最新の省エネ性能の高い機器に更新することで、電力消費を抑えつつ自家消費率を高められます
- 特に冷蔵庫・エアコン・テレビなど、常時稼働する家電の更新効果は大きいです
- LED照明への交換も効果的です
契約アンペアの見直し
- 昼間は太陽光発電で電力を賄えるため、契約アンペア数を下げられる可能性があります
- これにより基本料金を削減できますが、夜間や悪天候時の電力使用に注意が必要です
これらの方法を組み合わせることで、蓄電池を導入せずとも自家消費率を従来の20~30%から40~50%程度まで高めることが可能です。
スマート家電とHEMSの活用法
スマート家電やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入することで、太陽光発電の電力を効率的に使うことができます。
HEMSの機能と活用法
HEMSとは家庭内のエネルギー使用状況を「見える化」し、最適制御するシステムです。太陽光発電との連携では以下のような活用が可能です。
- 発電量と消費電力のリアルタイム表示:現在どれだけ発電しているか、どれだけ消費しているかを確認できます
- 家電の自動制御:発電量が増えると自動的に設定した家電の運転を開始するなど、自動制御が可能です
- エネルギー使用履歴の確認:日々の発電・消費パターンを分析し、生活習慣の改善に役立てられます
スマート家電の活用例
- スマート洗濯機:天気予報と連動して晴れた日に自動で稼働
- スマートエアコン:発電量に応じて設定温度を自動調整
- スマート照明:昼間の発電量が多い時に自動で明るさを上げるなど細かな制御が可能
導入時のポイント
- 初期費用はかかりますが、自家消費率向上による節約効果で数年で回収可能です
- スマートフォンと連携して外出先からも操作できるシステムが便利です
- 家電製品を一度に全て買い替える必要はなく、スマートプラグを使って既存の家電をスマート化することも可能です
HEMSやスマート家電は「家庭のエネルギーマネージャー」として機能し、太陽光発電の自家消費率を高める強力なツールになります。特に在宅時間が短い家庭では効果を発揮します。
電力のピークシフトで昼間の電力を無駄なく使う
ピークシフトとは、電力使用のタイミングを意識的に調整し、発電量が多い時間帯に合わせて消費電力を増やす取り組みです。太陽光発電の場合、昼間の発電ピーク時に消費を集中させることで自家消費率を高められます。
効果的なピークシフトの方法
- 朝型の電力消費パターンへの転換:夜に使っていた電化製品を昼間に使うよう習慣を変えます
- 充電式機器の活用:スマートフォン、ノートPC、電動工具など、充電式機器は昼間に集中して充電します
- バッチ処理での電力使用:複数の家事や電力を使う作業を昼間にまとめて行います
季節別のピークシフト戦略
- 夏季:
- 昼間にエアコンを強めに効かせて室内を予冷しておき、夕方以降の電力消費を抑える
- 冷蔵庫の温度設定を昼間はやや低めにして冷却しておき、夜間は設定を上げる
- 冬季:
- 電気カーペットや電気毛布などを昼間に強めに使い、室内や寝具を暖めておく
- 電気式の床暖房がある場合は、蓄熱効果を活かして昼間に運転する
在宅勤務日の活用
在宅勤務の日を効果的に活用することで、さらに自家消費率を高めることができます。
- テレワークの日に電力を多く使う家事(掃除、洗濯、アイロンがけなど)を集中させる
- パソコンの充電やプリンターの使用など、仕事関連の電力消費も太陽光で賄う
ピークシフトは特別な設備投資なしに実践できる方法ですが、生活習慣の変更が必要になるため、家族全員の協力が重要です。小さな意識改革から始めて、徐々に習慣化していくことをお勧めします。
法人・企業向け太陽光発電の昼間活用法
法人や企業にとっても、太陽光発電の昼間電力を有効活用するメリットは大きいです。特に事業活動が日中に集中している企業では、自家消費との相性が良く、直接的な電気代削減効果が期待できます。
法人向け自家消費のメリット
- 電気料金の大幅削減:企業の電力使用量は一般家庭より多いため、削減効果も大きくなります
- デマンド料金の抑制:ピーク時の電力使用量に応じて決まるデマンド料金を抑えられます
- BCP対策:災害時のバックアップ電源として活用でき、事業継続計画(BCP)の強化になります
- 環境対応のアピール:環境に配慮した企業としてのイメージアップにつながります
業種別の活用方法
- 工場・製造業:
- 日中稼働する製造設備の電力を太陽光でまかなう
- エアコンプレッサーなど電力消費の大きい設備の運転を太陽光発電量の多い時間帯に集中させる
- オフィス・事務所:
- 営業時間が日中に集中しているため、照明・空調・OA機器などの電力を直接賄える
- 社員食堂の調理機器や給湯設備に太陽光発電の電力を活用
- 小売店・サービス業:
- 店舗の空調・照明・冷蔵設備などに活用
- 来客が少ない時間帯に電力を多く使う作業(清掃機器の使用、商品の陳列替えなど)を集中させる
設備導入時のポイント
- 事業規模や電力使用パターンに合わせた適切な太陽光発電システムの容量設計が重要です
- 初期費用を抑えるため、補助金や減税措置を積極的に活用しましょう
- 発電量と消費電力のバランスを見て、蓄電池の導入も検討するとよいでしょう
- 電力の「見える化」システムを導入し、効率的な運用を心がけることが大切です
企業の場合、電力消費量が大きいため、太陽光発電導入による経済効果も大きくなります。特に電力単価の高騰が続く現在、自家発電・自家消費型のエネルギー戦略は経営面でも重要性を増しています。
まとめ:昼間の太陽光発電を最大限活用するポイント
太陽光発電による昼間の電力を効率的に活用するための重要ポイントを整理します。
自家消費を優先する考え方を持つ
卒FIT後は売電収入よりも自家消費による電気代節約の方が経済的メリットが大きいことを認識しましょう。売電単価(7~9円/kWh)よりも電気料金単価(25~30円/kWh)の方が3倍以上高いため、できるだけ自宅で使うことを優先しましょう。
生活習慣の見直し
- 電力消費の多い家電の使用を昼間にシフトする
- タイマー機能を活用して発電ピーク時間に家電を稼働させる
- エコキュートは夜間運転から昼間運転に切り替える
設備の効果的な活用
- スマート家電やHEMSを導入して発電状況に応じた自動制御を行う
- エコキュートの「ソーラーモード」や「おひさまモード」を活用する
- 電気料金プランを見直し、太陽光発電との相性の良いプランに切り替える
長期的な視点での投資
- 自家消費率を大幅に高めたい場合は蓄電池の導入も検討する
- EV(電気自動車)の購入を検討している場合は、V2H(Vehicle to Home)システムとの連携も視野に入れる
- 補助金や減税制度を上手に活用して初期投資を抑える
太陽光発電の自家消費率を高めることは、卒FIT後の経済性を大きく左右します。特別な設備投資をせずとも、生活習慣の見直しや既存設備の設定変更だけで自家消費率を10~20%高めることも可能です。日々の小さな工夫の積み重ねが、年間で大きな電気代削減につながります。
昼間発電した電力を無駄なく使い切るためには、家族全員の協力と継続的な取り組みが重要です。太陽の恵みを最大限に活かし、経済的にも環境にも優しい暮らしを実現しましょう。