
再生可能エネルギーとは?基本的な仕組みと種類
再生可能エネルギーとは、太陽、風、水、地熱など自然界に存在するエネルギーを利用して電気や熱を作り出す方法です。最大の特徴は「枯渇しない」「持続可能」という点で、従来の化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)とは根本的に異なります。
主な再生可能エネルギーには以下のようなものがあります。
- 太陽光発電:太陽の光エネルギーを直接電気に変換します
- 風力発電:風の力で風車を回して発電します
- 水力発電:水の流れる力を利用して発電します
- 地熱発電:地中の熱エネルギーを利用します
- バイオマス発電:木材や生ゴミなどの有機物から発電します
このうち、家庭で最も導入しやすいのが太陽光発電です。太陽光発電は、太陽電池(ソーラーパネル)を使って太陽の光エネルギーを直接電気に変換します。日光が当たると、パネル内部のシリコン素材で電子が動き、電気が発生する仕組みです。
太陽光発電は昼間・晴れた日にしか発電できないという制約はありますが、静かで、動く部分がなく、メンテナンスが比較的簡単という特長があります。また設置場所の自由度が高く、屋根や壁面など建物の一部として設置できるため、家庭用として普及が進みました。
これらの太陽光発電による電力は、FIT制度のもとで電力会社に売電されてきましたが、買取期間が終了する「卒FIT」を迎えた住宅も増えています。
卒FITとは?固定価格買取制度の終了後の選択肢
「卒FIT」とは、固定価格買取制度(Feed-in Tariff:FIT)による買取期間が終了した状態を指します。FIT制度は再生可能エネルギーの普及を促進するため、2012年7月に始まった制度で、太陽光などで発電した電力を、一定期間、決められた価格で電力会社が買い取ることを義務付けるものです。
住宅用太陽光発電の買取期間は10年間と定められているため、2012年に設置した方々から順次「卒FIT」を迎えています。2019年時点で約53万件もの住宅用太陽光が卒FITを迎え、その後も増え続けています。
卒FITを迎えると、これまでのような高い価格での売電ができなくなりますが、太陽光パネル自体はまだ十分に発電能力を持っています。一般的に太陽光パネルの寿命は20〜30年程度とされているため、FIT終了後も10〜20年は使えるのです。
卒FIT後の主な選択肢と特徴
卒FIT後の太陽光発電設備の活用方法には、主に以下のような選択肢があります。
1. 自家消費を増やす 発電した電力をできるだけ自宅で使用する方法です。昼間の電気使用量を増やしたり、タイマー機能付き家電を活用したりして、自家消費率を高めます。電気代の節約になるだけでなく、環境にも優しい選択です。
2. 新たな電力会社と契約して売電する 卒FIT後も余った電力は売ることができます。ただし、買取価格はFIT期間中よりも大幅に下がります(1kWhあたり7〜10円程度)。地域の電力会社や新電力会社などが買取プランを提供しています。
3. 蓄電池を導入する 昼間の余剰電力を蓄電池に貯めておき、夜間や天候不良時に使用する方法です。初期投資は必要ですが、自家消費率が大幅に向上し、災害時の非常用電源としても活用できます。
4. 環境価値として活用する 発電した電力の「環境価値」(CO2を排出しないクリーンな電気である価値)を証書化して活用する方法も広がりつつあります。
どの選択肢を選ぶにせよ、太陽光パネルを撤去せずに継続利用することで、環境への貢献を続けることができます。
卒FIT後も太陽光発電を活用する環境的意義
卒FITを迎えた後も太陽光発電設備を継続して使用することには、大きな環境的意義があります。それはなぜでしょうか?
まず、太陽光発電は稼働中にCO2をほとんど排出しないクリーンなエネルギーです。発電時にCO2を出さないため、火力発電所で作られる電気の代わりに使えば、その分のCO2排出を抑えられます。売電単価が下がったからといって設備を止めてしまうと、その環境効果も失われてしまいます。
日本は2050年までに「カーボンニュートラル」(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)を目指しています。この目標達成には、新規の再エネ設備導入だけでなく、既存設備を長く活用することも欠かせません。すでに設置済みのパネルは初期投資も回収済みですから、稼働を続けることで「純利益」の再エネ電源と言えるのです。
また、既に製造・設置したパネルを長く使うことは資源の有効活用にもなります。太陽光パネルの製造には様々な資源やエネルギーが使われているため、寿命いっぱい使い切ることが環境負荷の観点からも望ましいのです。
環境省も卒FIT後の太陽光発電の継続利用を推奨しており、自家消費や地域内での有効活用を促進しています。
家庭用太陽光発電のCO2削減効果
家庭用太陽光発電がどれくらいCO2削減に貢献しているのか、具体的な数値で見てみましょう。
一般的な家庭用太陽光発電システム(4〜6kW程度)では、年間でおよそ1kWあたり1,000〜1,200kWhの電力を生み出します。つまり、4kWのシステムであれば、年間約4,000〜4,800kWhの発電量となります。
この電力が火力発電からの電力を代替すると考えると、1kWhあたり約0.4〜0.5kgのCO2削減効果があります。単純計算すると、4kWシステムでは年間約2トンのCO2削減効果があることになります。
この2トンという数字がどれくらい大きいのか、別の角度から見てみましょう。
- 一般家庭の約7.5か月分の電力消費によるCO2排出量に相当します
- スギの成木約200本が1年間で吸収するCO2量に匹敵します
つまり、4kWの太陽光発電を続けることは、毎年200本の木を植え続けるのと同じくらいの環境効果があるのです。卒FIT後も太陽光パネルを使い続けることで、毎年このような環境貢献ができます。
卒FIT電力がもつ「環境価値」とは
卒FIT後の太陽光発電で作られた電力には、「環境価値」があることをご存知でしょうか?環境価値とは、再生可能エネルギーが持つ「CO2を排出しない」という環境上の価値のことです。
通常、電力会社から購入する電気は、火力発電や原子力発電、水力発電など様々な電源が混ざっています。しかし再生可能エネルギーで発電した電力には「グリーン電力」としての付加価値があります。この環境価値は、電気そのものとは別に取引できるようになっています。
例えば、自宅の太陽光で発電した電力を自分で使えば、その分の電力会社からの購入が減りますから、間接的にCO2排出削減に貢献できます。また余った電力を売電しても、その電力が他の家庭や企業で使われれば、火力発電による電力を代替することになり、やはりCO2削減につながります。
経済産業省でも、卒FIT後の電力の環境価値を適切に評価する仕組みの整備を進めています。
環境価値の証書化と取引の仕組み
環境価値を「見える化」したものが「環境価値証書」です。主なものには以下のようなものがあります。
- 非化石証書:発電時にCO2を排出しない非化石電源(再エネ、原子力など)の環境価値を証書化したもの
- J-クレジット:CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が認証する制度
これらの証書は、自分で使うだけでなく、売買することも可能です。特に企業が脱炭素の取り組みとして購入するケースが増えています。例えば、「RE100」(事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的な企業連合)に参加する企業や、「カーボンオフセット」を行いたい企業が、家庭の太陽光発電などから生まれた環境価値を買い取るというビジネスも始まっています。
卒FIT後の太陽光発電の継続利用は、このような形でも社会の脱炭素化に貢献できるのです。
再生可能エネルギーとSDGsの関係
再生可能エネルギーは、国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」とも深い関わりがあります。SDGsは2030年までに達成すべき17の目標からなり、特に太陽光発電は以下の2つの目標に直接貢献します。
目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに 太陽光発電は、クリーンで持続可能なエネルギー源として、この目標に直結しています。太陽の光さえあれば発電できるため、電力網が未整備な地域でも利用可能です。日本では2010年から2018年の間に太陽光発電設備容量が約13倍に拡大し、再エネ比率向上に貢献しています。
目標13:気候変動に具体的な対策を 太陽光発電は発電時にCO2を排出しないため、その導入自体が気候変動対策になります。火力発電による電力を太陽光由来の電力に置き換えることで、大幅なCO2排出削減が可能となります。
卒FIT後も太陽光発電を継続利用することは、これらのSDGs達成に向けた具体的な貢献となります。自宅の屋根の上で静かに発電を続けるパネルが、実は世界規模の持続可能な社会づくりに役立っているのです。
規模の大小を問わず、太陽光発電の取り組み自体がSDGsの理念に沿った社会貢献となっています。環境意識の高い企業や団体も、再エネ利用率向上に力を入れており、家庭でも同様の取り組みが広がっています。
家庭でできる再生可能エネルギー100%生活への道
理想的には、自宅で使うエネルギーをすべて再生可能エネルギーでまかなう「再エネ100%生活」が望ましいでしょう。これは難しそうに思えますが、技術的には一般家庭でも実現可能になりつつあります。
再エネ100%生活の中心となるのは太陽光発電ですが、発電は天候や時間帯に左右されるため、それだけでは安定した電力供給は難しいです。そこで重要となるのが蓄電池の活用です。昼間の余剰電力を蓄電池に貯めておき、夜間や曇りの日に使うことで、自給率を大幅に高められます。
近年では蓄電池の価格も徐々に下がってきており、卒FIT後の自家消費型太陽光発電と組み合わせる家庭が増えています。蓄電池には容量10kWh前後の家庭用蓄電池のほか、電気自動車(EV)のバッテリーを活用するV2H(Vehicle to Home)システムもあります。EVの大容量バッテリーを家庭用電源として使えるため、災害時のバックアップにもなります。
また、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という考え方も広がっています。ZEHとは、高断熱・省エネで消費エネルギーを減らしながら、太陽光発電で創エネすることで、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅です。政府は2030年以降の新築戸建住宅でZEHを標準にする目標を掲げています。
完全な「オフグリッド」(電力会社の系統から独立した状態)を実現するには大掛かりな設備投資が必要ですが、「基本は自給自足、不足分だけ買う」という形であれば、現実的に高い自給率を達成できます。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏の住宅では、太陽光約10kWとEV・V2Hの組み合わせで、年間80%以上の電力自給率を達成しています。
太陽光発電と他の再エネ技術の組み合わせ
再エネ100%生活の実現には、太陽光発電だけでなく、他の再生可能エネルギー技術との組み合わせも効果的です。
小型風力発電:太陽光と異なり、夜間や曇りの日でも発電可能なため、太陽光発電の補完的役割を果たします。ただし、設置場所の風況や法規制をよく確認する必要があります。
太陽熱温水器:太陽の熱で直接お湯を作るシステムです。発電ではなく熱として直接利用するため効率が高く、給湯エネルギーを大幅に削減できます。
地中熱ヒートポンプ:地中の温度が一年を通じて安定していることを利用した冷暖房システムです。エアコンよりも少ないエネルギーで冷暖房ができます。
これらを組み合わせることで、効率よくエネルギーを自給することが可能になります。
また、エネルギーを「作る」だけでなく「減らす」ことも重要です。高効率家電への買い替えや、住宅の断熱性能向上、省エネ行動などにより、必要なエネルギー量自体を減らすことで、より少ない設備でも高い自給率を達成できます。
住宅メーカーや電機メーカーからは、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)と呼ばれる家庭のエネルギー使用を最適化するシステムも登場しています。天気予報や電力使用予測に基づいて、発電、蓄電、消費のバランスを自動的に調整するもので、より効率的なエネルギー利用が可能になります。
まとめ:卒FIT後も継続する価値がある再生可能エネルギー
卒FIT後も太陽光発電設備を継続して活用することは、環境的にも経済的にも意義のある選択です。
設備投資はすでに回収済みであり、定期的なメンテナンスを行えば、まだ10〜20年は発電能力を維持できます。売電単価は下がっても、自家消費を増やすことで電気代節約になりますし、蓄電池を導入すれば自給率をさらに高められます。
何より、卒FIT後も発電を続けることは、CO2削減に貢献し続けるということです。4kW程度のシステムであれば、年間約2トン(スギ約200本分)のCO2削減効果があり、この環境価値は決して小さくありません。
また、再エネ電力には「環境価値」があり、企業のカーボンオフセットなどに活用される仕組みも整いつつあります。太陽光発電の継続利用は、SDGsの目標7(クリーンエネルギー)と目標13(気候変動対策)にも直接貢献します。
技術の発展により、家庭での再エネ100%生活も現実味を帯びてきました。蓄電池、V2H、HEMSなどの技術を組み合わせることで、より高い電力自給率を実現できるようになっています。
日本が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現には、すべての再エネ源を最大限活用する必要があります。卒FITを迎えた太陽光発電も、その重要な一翼を担っているのです。
自宅の屋根の上で静かに発電し続ける太陽光パネルは、皆さんの生活を支えながら、同時に地球環境を守る力にもなっています。卒FIT後もぜひ太陽光発電を活用し続け、持続可能な社会づくりに貢献していきましょう。