
太陽光発電を長期間安定して利用するためには、日頃から発電状況を確認することが大切です。この記事では、モニタリング機器の種類や使い方、異常の見つけ方などを解説します。発電効率を維持し、トラブルを早期発見するためのポイントを押さえましょう。
太陽光発電のモニタリングとは
太陽光発電のモニタリングとは、太陽光パネルがどれだけ発電しているか、どのくらい売電・消費しているかなどを「見える化」する仕組みのことです。設置当初は順調に発電していても、時間の経過とともに発電効率が低下したり、何らかの不具合が生じたりする可能性があります。
モニタリングを行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 発電状況を常に把握できる:日々の発電量や売電量、消費量などをリアルタイムで確認できます
- 異常の早期発見につながる:通常より発電量が落ちている場合に早く気づくことができます
- メンテナンス時期の判断材料になる:データの変化から機器の劣化や点検のタイミングがわかります
- 節電意識が高まる:電力の使用状況が見えることで節電行動につながります
特に設置から10年以上経過した太陽光発電システムでは、パネルの劣化やパワーコンディショナー(パワコン)の故障リスクが高まるため、モニタリングの重要性がさらに増します。
モニタリングで確認できる内容
モニタリング機器やシステムでは、主に以下のような情報を確認することができます。
- 発電電力量:現在の発電量や日々の積算値、月間・年間の合計など
- 売電・買電量:電力会社へ売った電力、買った電力の量
- 消費電力量:家庭内で使用している電力量
- CO2削減量:発電によって削減できた二酸化炭素の量
- 発電状況のグラフ:時間帯別・日別・月別などの発電量推移
- 機器の動作状態:パワコンなどの機器が正常に動作しているか
これらの情報はモニター画面上に数値やグラフとして表示され、発電システムの健全性や効率を判断する材料となります。
モニタリングの必要性
太陽光発電は一度設置すれば20年以上にわたって使用できるシステムですが、その間ずっと最初と同じ性能を維持できるわけではありません。経年による自然な劣化だけでなく、様々な要因で発電量が低下することがあります。
モニタリングが必要な主な理由は以下の通りです。
- 機器の異常を早期発見できる:パネルやパワコンの故障を早く見つけることで、長期間の発電ロスを防げます
- メンテナンス時期を適切に判断できる:データの変化からパネル清掃や部品交換の時期がわかります
- 設備の寿命を延ばせる:適切なタイミングでの対応により設備の長寿命化が期待できます
- 売電収入の減少を防げる:FIT(固定価格買取制度)終了後も、発電効率を高く維持することで電気代節約につながります
設置から10年以上経過すると、パワコンの寿命(一般的に10〜15年)が近づき、パネルも徐々に劣化してくるため、より一層モニタリングが重要になってきます。
モニタリング機器の種類と特徴
太陽光発電システムのモニタリング機器は、住宅用と産業用でやや異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
住宅用モニタリング装置
住宅用太陽光発電システムには、主に以下のようなモニタリング装置があります。
1. パワコン一体型モニター
多くのパワコンには簡易的な表示パネルが付いており、現在の発電量や累積発電量、エラーコードなどを確認できます。ただし設置場所が屋外や納戸の中など、日常的に見る機会が少ない場所にあることが多いです。
2. 専用表示モニター
リビングなど見やすい場所に設置する専用モニターです。タッチパネル式のものが多く、発電量や消費電力量、売買電量などをリアルタイムで確認できます。グラフ表示や過去データの閲覧も可能で、家庭内のエネルギー管理に役立ちます。
3. HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)
太陽光発電だけでなく、家全体のエネルギー管理を行うシステムです。発電状況に加え、家電製品の電力使用量なども管理でき、効率的なエネルギー利用をサポートします。
4. Webモニタリングサービス
インターネット経由でパソコンやスマートフォンから発電状況を確認できるサービスです。専用のアプリを使って外出先からでも発電状況をチェックできます。シャープの「COCORO ENERGYモニタリング」やパナソニックの「Eco Manager」などがあります。
遠隔監視システム
近年普及してきているのが、インターネットを活用した遠隔監視システムです。特に卒FIT(FIT期間満了)後の太陽光発電システムを長く使い続けるためには、こうした監視システムの活用が有効です。
主な遠隔監視システムの特徴
- 常時監視が可能:24時間365日システムの状態を監視できます
- 異常時の通知機能:発電量の低下や機器の異常を検知した場合にメールなどで通知します
- データの蓄積と分析:長期的なデータを蓄積し、性能低下の傾向などを分析できます
- スマホでの確認:専用アプリで外出先からでも発電状況を確認できます
代表的な遠隔監視サービス
- エコめがね:低圧向け遠隔監視サービスとして普及率が高く、累計出荷台数No.1のサービスです
- L-eye(エルアイ):ラプラス・システム社の提供する高機能な遠隔監視システムです
- スマートPV:パワコンのデータを直接取得する方式の遠隔監視システムです
- ソーラーモニター:シンプルな操作性が特徴の監視システムです
これらのサービスは月額数百円〜数千円で利用できるものが多く、発電異常の早期発見によるメリットを考えると費用対効果は高いと言えます。
モニタリングデータの見方
モニタリング機器に表示されるデータを正しく理解することで、太陽光発電システムの状態を適切に判断できるようになります。
日々の発電量データを確認する
日々の発電量データを確認する際は、以下のポイントに注目しましょう。
1. 発電カーブの形状
晴れた日の発電量は、朝から徐々に増えて正午前後にピークを迎え、夕方に向けて減少していくカーブを描きます。このカーブに不自然な凹みがあったり、特定の時間帯だけ発電量が極端に少なかったりする場合は、パネルの一部に影がかかっている、または故障している可能性があります。
2. 天候と発電量の関係
晴れ・曇り・雨などの天候によって発電量は大きく変わります。一般的な目安としては、以下のようになります。
- 晴れの日:定格出力の70〜80%程度の発電
- 薄曇りの日:定格出力の40〜60%程度
- 曇りの日:定格出力の20〜30%程度
- 雨の日:定格出力の10%以下
天候に対して極端に発電量が少ない場合は、システムに何らかの問題がある可能性があります。
3. 同じような天候の日との比較
似たような天候の日と比べて発電量に大きな差がある場合は注意が必要です。例えば、先週の晴れた日と今日の晴れた日で発電量が30%以上違う場合などは、何らかの異常が疑われます。
長期的なデータ分析の重要性
日々の変動だけでなく、月間・年間の長期的なデータ分析も重要です。
1. 月間データの比較
前月や前年同月と比較することで、季節的な要因を考慮した上での性能低下を確認できます。太陽光パネルは経年劣化により年間0.5〜1%程度の出力低下が一般的ですが、それ以上の低下がある場合は何らかの問題がある可能性があります。
2. 年間トレンドの確認
複数年のデータがあれば、年間の発電量トレンドを確認できます。自然な劣化を超える急激な発電量低下がある場合は、点検や清掃などの対策を検討する必要があります。
3. 季節変動の理解
太陽光発電は季節によって発電量が変動します。一般的に春と秋が最も効率が良く、夏は気温上昇によるパネル効率の低下、冬は日照時間の減少により発電量が減ります。この季節変動を理解した上で、不自然な発電量低下がないか確認することが重要です。
異常を発見するためのポイント
モニタリングデータから設備の異常を見つけるためのポイントをいくつか紹介します。
発電量低下のサイン
以下のような状況が見られる場合は、設備に何らかの異常がある可能性があります。
1. 急激な発電量低下
天候に関係なく発電量が急に落ちた場合は、以下のような原因が考えられます。
- パワコンの故障:完全に発電が停止している場合はパワコンの故障が疑われます
- パネルの故障:一部のパネルが故障すると、ストリング(直列接続されたパネルのグループ)全体の発電量が低下します
- 配線トラブル:断線や接触不良により発電量が減少することがあります
2. 特定時間帯だけの出力低下
特定の時間帯だけ発電カーブに凹みがある場合は、以下が考えられます。
- 部分的な影の影響:樹木や周辺建物、アンテナなどの影がパネルにかかっている
- 部分的な汚れ:鳥のフンや落ち葉などでパネルの一部が汚れている
- 一部パネルの故障:特定のパネルだけが正常に発電していない
3. 長期的な発電効率の低下
年間を通じて徐々に発電量が落ちている場合は、以下の原因が考えられます。
- パネル全体の汚れ:長期間の汚れの蓄積により発電効率が下がっている
- パネルの経年劣化:自然な劣化を超えるペースでの効率低下
- パワコン変換効率の低下:パワコンの経年劣化による変換効率の低下
エラーコードと警告表示
モニタリング機器やパワコンに表示されるエラーコードや警告表示は、異常を示す重要なサインです。
1. 代表的なエラーコード
パワコンの表示パネルに表示されるエラーコードは、機種によって異なりますが、一般的な例としては以下のようなものがあります。
- 系統異常:電力会社側の電力系統に問題がある場合に表示されます
- 直流異常:太陽光パネルからパワコンへの入力に異常がある場合
- 温度異常:パワコン内部の温度が高すぎる場合
- 絶縁抵抗低下:配線の絶縁不良や水分侵入などの場合
2. 警告表示への対応
エラーコードや警告表示が出た場合は、取扱説明書を確認して対応方法を調べるか、設置業者または製造メーカーに問い合わせましょう。一時的な表示であれば様子を見ても構いませんが、頻繁に表示される場合は専門業者による点検が必要です。
3. アラート機能の活用
遠隔監視システムの多くは、異常を検知するとメールやアプリ通知でアラートを送信する機能があります。これらのアラートを見逃さず、迅速に対応することが重要です。
効果的なモニタリング活用法
日常的にモニタリングを活用するためのコツをご紹介します。
定期チェックの習慣化
モニタリングを効果的に活用するには、定期的なチェックを習慣化することが大切です。
1. 毎日のチェックポイント
- 発電量が天候に見合った値になっているか
- エラーコードや警告表示が出ていないか
- パワコンが正常に動作しているか
2. 月に一度のチェックポイント
- 月間の発電量が前年同月と比べて大きく変わっていないか
- 発電量の推移に不自然な変動がないか
- システム全体の外観に異常がないか(可能であれば)
3. チェックリストの作成
以下のような簡単なチェックリストを作成しておくと、定期点検の漏れを防ぐことができます。
- □ 発電量の確認(天候に見合った発電量か)
- □ エラー表示の有無
- □ パワコンの動作音や熱に異常がないか
- □ パネル表面の汚れや影がないか(目視可能な範囲で)
- □ 前月比や前年同月比での発電量チェック
まとめ
太陽光発電システムのモニタリングは、設備を長く効率的に使い続けるための重要な手段です。日々の発電状況を把握し、異常の早期発見につなげることで、修理費用の抑制や発電ロスの軽減が可能となります。
特に設置から10年以上経過したシステムでは、パワコンの寿命や太陽光パネルの劣化が進行する時期に入るため、より一層モニタリングの重要性が高まります。
モニタリング機器やシステムを活用し、定期的なデータチェックを習慣化しましょう。また、必要に応じて遠隔監視システムなどの導入も検討すると、より安心して太陽光発電システムを使い続けることができます。
何か異常を発見した場合は、無理に自分で対処せず、専門業者に相談することをおすすめします。適切な点検・メンテナンスを行うことで、太陽光発電システムはFIT終了後も長く安定した発電を続けることができるでしょう。