
卒FIT対策の費用対効果比較:期待できる経済効果と初期投資
太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が終了する「卒FIT」。せっかく設置した太陽光パネルを今後どう活用すれば最も経済的なのでしょうか?本記事では、卒FIT後の選択肢とそれぞれの費用対効果を徹底比較します。初期投資と将来的なメリットをバランスよく考え、あなたに最適な選択をサポートします。
卒FITとは?基本を理解しよう
卒FITとは、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)による買取期間が終了することです。住宅用太陽光発電のFIT買取期間は10年間と法律で定められています。この期間が終わると、これまでの高額な固定価格での売電ができなくなります。
多くの家庭では、買取期間満了の4~6ヶ月前に電力会社から「FIT制度 買取期間満了のご案内」という通知が届きます。この通知に買取満了日が明記されているので、まずはいつ卒FITを迎えるのかを確認しましょう。
FIT期間中は42円/kWhなど高い価格で余剰電力を買い取ってもらえていましたが、卒FIT後は大幅に下がります。何も対策をしないと、余った電力が無償で電力会社に吸い上げられてしまう「タダ取り」状態になってしまいます。
卒FIT後の選択肢と費用対効果
卒FITを迎えた後、主に以下の4つの選択肢があります。それぞれの初期費用と期待できる経済効果を比較してみましょう。
売電先を変更して余剰電力を売り続ける
初期費用: ほぼゼロ円(契約変更手数料もほとんどの場合無料)
経済効果:
- 売電単価はFIT期間中より大幅に下がり、1kWhあたり7~10円程度が相場
- 以前42円/kWhで売電していた家庭では収入が大幅減(例:年間3,000kWh発電の場合、年間12.6万円→2.4万円)
- 電力会社によって買取価格に差があるため、比較して選ぶことで1~2円/kWh上乗せできる可能性あり
メリット:
- 追加投資なしで収入が得られる
- 手続きも比較的簡単で、すぐに始められる
- 昼間家を空けることが多い家庭では特に有効
デメリット:
- 収入額が大幅に減少する
- 市場連動型プランの場合、収入が安定しない
蓄電池を導入して自家消費を拡大する
初期費用: 約100~200万円(設置工事費込み、補助金適用前)
経済効果:
- 日中の余剰電力を夜間に使用できるため電気代削減効果が大きい
- 売電(7~10円/kWh)よりも自家消費(電気代20~30円/kWh相当)の方が2~3倍の価値
- 例:1日10kWh余剰がある家庭が全て蓄電して夜間利用→年間約7~11万円の節約
- 長期的には「太陽光のみ継続」より「太陽光+蓄電池」の方が経済的という試算も
メリット:
- 電気代削減効果が大きい
- 停電時のバックアップ電源としても活用できる
- 電気代高騰のリスクに備えられる
デメリット:
- 初期費用が高額
- 初期費用の回収に時間がかかる(補助金利用でも10~15年程度)
- 蓄電池自体の寿命(15~20年程度)も考慮する必要がある
電気自動車(EV)と連携して余剰電力を活用する
初期費用:
- 新たにEVを購入する場合は数百万円
- すでにEV所有の場合は、V2H(Vehicle to Home)システム導入費用約50~100万円(工事込み)
- 単に太陽光でEVを充電するだけなら追加設備費用はほぼ不要
経済効果:
- 太陽光の余剰でEVを充電することで燃料代を節約(1kWhで約6~7km走行可能)
- 例:日中10kWh充電できれば60~70km分のガソリン代節約
- V2H導入で家庭用蓄電池と同様の効果も得られる
メリット:
- 既にEV所有者なら追加投資少なく大きな経済効果
- EVの大容量バッテリー(30~60kWh)を活用できる
- 災害時の非常用電源として頼りになる
デメリット:
- 日中の車の使用状況に左右される
- 満充電の状態では余剰電力を受け入れられない
- EVを新規購入する場合、太陽光活用だけを目的にするとコスト効率が悪い
何もしない(全量自家消費または無償逆潮流)
初期費用: ゼロ円
経済効果:
- 売電契約を結ばないと余剰電力は無償で電力会社に吸収される
- 自家消費できる範囲の電気代は削減できるが、昼間の余剰を活かせていない
- 経済効果は最小限
メリット:
- 追加投資が不要
- 手続きや管理の手間がない
デメリット:
- せっかく発電した電力が無駄になる
- 機会損失が大きい
どの選択肢が最適?家庭別のシミュレーション
どの選択肢が最適かは、各家庭の状況によって異なります。いくつかのケースでシミュレーションしてみましょう。
ケース1:昼間留守がちな共働き世帯
昼間は家を空け、夕方以降に電力消費が集中する世帯の場合:
おすすめ選択肢: 蓄電池導入または売電継続
理由:
- 昼間発電した電力を有効活用するには蓄電が効果的
- 蓄電池導入で夜間の電力を自給できれば長期的に電気代削減効果が大きい
- 初期投資を抑えたい場合は売電継続も選択肢
- 電気自動車を既に所有または購入予定なら、V2Hの導入も検討価値あり
ケース2:日中も在宅している家庭
在宅勤務や高齢者世帯など、日中も電力消費がある場合:
おすすめ選択肢: 売電継続または家電の使用時間シフト
理由:
- 日中の自家消費率が既に高いので、余剰電力が少ない
- 少ない余剰は売電した方が費用対効果が良い
- 洗濯機や食洗機などを日中に使うよう工夫すれば自家消費をさらに増やせる
ケース3:電気代が高い大家族
多人数世帯で電力消費量が多く、電気代負担が大きい場合:
おすすめ選択肢: 蓄電池導入
理由:
- 電気使用量が多いほど、自家消費のメリットが大きい
- 年間の電気代削減額が大きく、初期投資の回収も早まる
- 将来的な電気料金上昇にも強い
卒FIT後の経済効果を最大化するポイント
卒FIT後に経済効果を最大化するためのポイントをご紹介します。
売電を選択する場合
- 買取価格の比較:大手電力会社だけでなく、新電力各社の買取プランも比較する
- 契約条件の確認:契約期間や解約条件も重要なチェックポイント
- 買取プランの特徴把握:固定価格型・市場連動型・ポイント還元型など、プランの特徴を理解する
- 自家消費の工夫:日中の電力消費を増やす工夫をして余剰電力を減らす
蓄電池を導入する場合
- 適切な容量選び:家庭の電力消費パターンに合った容量を選ぶ
- 補助金の活用:国や自治体の補助金を最大限活用して初期コストを下げる
- 長期的な視点:初期投資は大きくても、15~20年で見ると経済的にプラスになるケースが多い
- 非常時の備え:経済面だけでなく、防災対策としての価値も考慮する
電気自動車と連携する場合
- 充電タイミングの最適化:日中の余剰電力発生時に充電するよう習慣づける
- V2Hの活用法研究:V2H導入なら夜間の家庭用電力としての使い方を工夫する
- 車の使用パターン考慮:日中車を使うことが多い場合は、他の選択肢も並行検討する
まとめ:あなたに最適な選択は?
卒FIT後の選択肢には、それぞれメリット・デメリットがあります。初期投資の予算、電力消費パターン、将来のエネルギー価格予測など、様々な要素を考慮して判断することが大切です。
- 初期投資を抑えたい方:売電先変更が最もシンプルで手軽
- 長期的な経済効果を重視する方:蓄電池導入が有利
- EVユーザーまたは購入予定の方:V2Hシステムの導入が効果的
- 総合的なエネルギー自給を目指す方:蓄電池+EVの組み合わせが理想的
太陽光発電設備は卒FIT後も20年以上発電し続ける資産です。この資産を最大限活用する方法を選び、環境にもお財布にも優しい暮らしを実現しましょう。
卒FIT対策は一度決めたら終わりではなく、エネルギー価格や技術の変化に応じて見直すことも大切です。定期的に自分の選択が最適かどうか確認してみてください。