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卒FITとは?太陽光発電の買取制度の基本を理解しよう

太陽光発電を導入されているご家庭では、「卒FIT」という言葉を耳にする機会が増えていることでしょう。この「卒FIT」がご自身のお金に関わる重要な問題であることは間違いありません。しかし、FIT制度がどのような仕組みで、「卒FIT」が具体的に何を意味するのか、理解されていない方も多いのではないでしょうか。

まずは基本的な仕組みと、卒FIT後の選択肢について理解することが、最適な判断への第一歩となります。

太陽光発電の固定価格買取制度のしくみ

固定価格買取制度(FIT)とは、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取ることを義務付けた制度です。この制度は2012年7月に始まり、「再生可能エネルギーの普及」と「エネルギー自給率の向上」を目的としています。

FIT制度下では、太陽光発電で作った電気のうち、家庭で使い切れなかった分(余剰電力)を電力会社に売ることができます。買取価格は設置した年度によって異なり、例えば2012年に設置した住宅用太陽光発電の場合は42円/kWhという高い価格で、10年間の買取が保証されました。

この制度を支えているのは私たち電気利用者全体です。月々の電気料金に含まれる「再エネ賦課金」が、高い買取価格の原資となっています。

なぜ「卒FIT」が話題になっているのか

「卒FIT」とは、固定価格買取制度(FIT)による買取期間が終了することを指します。住宅用太陽光発電の場合、買取期間は設置から10年間と定められています。

2012年にFIT制度がスタートして以降、多くの家庭が太陽光発電を導入しました。そのため、2022年以降、次々とFIT買取期間が満了を迎える家庭が増えています。2012年度に設置した方は2022年に、2013年度設置の方は2023年に、というように順次「卒FIT」を迎えることになります。

卒FIT後も太陽光パネルは発電し続けますが、買取価格が大幅に下がることが最大の問題です。例えば42円/kWhで買い取られていた電気が、8〜10円/kWhにまで下がるケースも珍しくありません。これは売電収入が4分の1以下になることを意味します。

こうした状況から「卒FIT後はどうすればよいのか」という疑問が生まれ、多くの方が新たな対応策を検討されています。

買取価格の変化:FIT期間中と卒FIT後の大きな差

FIT制度で最も注目すべき点は、太陽光発電の電気の買取価格です。FIT期間中と卒FIT後では、この価格に大きな差があります。この価格差を理解することが、卒FIT後の対策を考える上で重要です。

太陽光発電の買取価格の推移

FIT制度が始まった2012年度、住宅用太陽光発電(10kW未満)の買取価格は42円/kWhという高水準でした。これは太陽光発電の設備費用が高額だった当時、投資回収の見通しを立てやすくするための政策でした。

しかし、普及が進むにつれて買取価格は年々引き下げられてきました。

  • 2013年度:38円/kWh
  • 2014年度:37円/kWh
  • 2015年度:33円または35円/kWh(地域による)
  • 2019年度:24円/kWh
  • 2022年度:17円/kWh
  • 2023年度以降:16円/kWh

このように、FIT制度開始から10年で買取価格は半分以下となりました。これは太陽光パネルなどの設備コストが低下したことに合わせた調整です。

設備コストの低下により、現在では設置費用が下がっているため、買取価格が下がっても投資回収は可能とされています。しかし、高い買取価格で始めた方にとっては、卒FIT後の価格下落は大きな収入減となります。

卒FIT後の買取価格はどう決まるのか

FIT期間が終了した後の買取価格は、自由競争の市場原理で決まります。電力会社や新電力(新しい電力事業者)が独自に設定しており、政府による価格保証はありません。

一般的に、卒FIT後の買取価格は以下のような要素で決まります。

  1. 市場の電力価格:電力の需給バランスや燃料費などによって変動
  2. 電力会社の経営戦略:顧客獲得のための価格設定
  3. 再エネ電源の価値:環境価値や供給の安定性

地域の大手電力会社(東京電力、関西電力など)が提示する卒FIT後の買取価格は、概ね7~9円/kWh程度です。これに対し、新電力の中には顧客獲得のために10~12円/kWhといった比較的高い買取価格を提示する会社もあります。

ただし、これらの価格も市場環境によって変動する可能性があり、長期的な保証はありません。また、地域や電力会社によって買取条件(契約期間や解約条件など)も異なりますので、価格だけでなく総合的に判断する必要があります。

誰があなたの太陽光発電の電気を買うのか

太陽光発電で作られた電気は、どのような仕組みで取引されているのでしょうか。ここでは、電力会社と買取制度の関係性、そして卒FIT後の売電先について解説します。

FIT制度における電力会社の役割

FIT制度では、電力会社に対して「再生可能エネルギー電力の買取義務」が課されています。この「電力会社」とは、具体的には以下の会社を指します。

  • FIT制度開始当初(2012年):地域の電力会社(東京電力、関西電力など10社)
  • 電力自由化後(2016年以降):送配電事業者(東京電力パワーグリッドなど)

電力システム改革により、従来の電力会社は「発電」「送配電」「小売」の3つの部門に分社化されました。このうち、FIT電気の買取義務を負うのは「送配電」を担当する会社です。

送配電事業者は買い取った再エネ電力を卸電力市場に供出し、そこで小売電気事業者が調達します。買取に要した費用は「再エネ賦課金」として電気利用者全体で負担する仕組みになっています。

つまり、FIT制度は以下の流れで機能しています。

  1. 太陽光発電所有者:発電した電気を売る
  2. 送配電事業者:FIT電気を買い取る義務がある
  3. 小売電気事業者:卸市場からFIT電気を調達
  4. 電気利用者:再エネ賦課金を通じて費用を負担

この仕組みにより、再生可能エネルギーの導入が急速に進みました。

卒FIT後はどの会社が買い取るのか

FIT期間が満了すると、電力会社の買取義務もなくなります。そのため卒FIT後は、自由に売電先を選ぶことができるようになります。

卒FIT後の主な売電先としては、以下のような選択肢があります。

  1. 地域の電力会社:東京電力、関西電力などが提供する「卒FIT買取プラン」
  2. 新電力:ENEOSでんき、Looopでんきなどの新しい電力会社
  3. 住宅メーカー系サービス:パナソニック、大和ハウスなどの住宅関連企業のサービス
  4. ガス会社:東京ガス、大阪ガスなどのエネルギー会社

これらの会社はそれぞれ独自の買取価格や条件を設定しており、比較検討することが重要です。一般的に新電力の方が買取単価は高い傾向にありますが、契約条件や付帯サービスなどの違いもありますので、総合的に判断する必要があります。

買取先を選ぶ際には、買取単価だけでなく、以下のような点も確認しましょう。

  • 契約期間(短期か長期か)
  • 解約時の違約金の有無
  • 申込手続きの簡便さ
  • 電気の供給との組み合わせサービス

卒FIT後は国の保証がなくなる分、自分で最適な売電先を探す必要があります。自分の状況に合った選択をするために、複数の会社の条件を比較してみましょう。

卒FIT後の選択肢:電気の売り方・使い方

卒FIT後、太陽光発電システムをどのように活用していくべきでしょうか。大きく分けると「売電を続ける」か「自家消費にシフトする」という2つの方向性があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、最適な選択をしましょう。

売電を続けるメリットとデメリット

【メリット】

  • 追加投資が不要:現状の設備をそのまま使えるため、新たな費用がかからない
  • 手続きが簡単:多くの電力会社では、Webサイトや電話での簡単な手続きで契約切替が可能
  • 継続的な収入:価格は下がるものの、売電収入を得続けられる
  • メンテナンスの手間が少ない:特別な操作や管理は不要

【デメリット】

  • 大幅な収入減:FIT期間中と比べて売電単価が1/4〜1/5程度に下がる
  • 電気代削減効果が限定的:昼間発電した電気を売却するため、自家消費による電気代削減効果が限られる
  • 長期的には設備の価値が低下:年数が経つにつれて発電効率が下がり、収入も減少する

売電を続けるのは、追加費用をかけずに太陽光発電を活用し続けたいという方に適しています。特に高齢の方や、今後の住まいの予定が不確かな方には、シンプルな選択肢と言えるでしょう。

自家消費へシフトする方法

【自家消費シフトの主な方法】

  1. 蓄電池の導入:昼間の余剰電力を蓄え、夜間に使用する
  2. 電気自動車(EV)との連携:太陽光で発電した電気を車の充電に使用する
  3. エネルギー管理システム:発電量に合わせて家電の使用をコントロールする

【メリット】

  • 電気代削減効果が大きい:売電より自家消費の方が経済的メリットが大きい(電気の買値>売値)
  • 停電時の非常用電源:蓄電池があれば、災害時も電気を使える安心感がある
  • 環境負荷の低減:自分で発電した電気を使うことで、CO2排出削減に貢献できる

【デメリット】

  • 初期投資が必要:蓄電池導入には100万円程度のコストがかかる
  • 投資回収に時間がかかる:蓄電池の投資回収には7〜10年程度必要
  • 設備の管理やメンテナンス:定期的な点検や管理が必要

自家消費へのシフトは、長期的な視点で太陽光発電を活用したい方や、環境への配慮に重点を置く方に適しています。特に電気使用量が多い家庭や、今後も長く同じ住宅に住み続ける予定の方には、メリットが大きい選択肢です。

近年は蓄電池の価格低下や補助金制度の充実により、導入のハードルが下がってきています。自治体によっては補助金を出しているケースもありますので、お住まいの地域の制度も確認してみるとよいでしょう。

卒FIT買取サービスの比較ポイント

卒FIT後も売電を続ける場合、どの会社のサービスを選ぶべきでしょうか。単に買取価格だけで選ぶのではなく、様々な角度から比較することが重要です。ここでは、買取サービスを選ぶ際の重要なポイントを解説します。

買取単価以外の重要な比較ポイント

買取サービスを選ぶ際は、以下のポイントもチェックしましょう。

  1. 契約期間と更新条件
    • 契約期間は1年、2年、無期限など様々
    • 自動更新か、更新時に条件変更があるか確認する
  2. 違約金・解約条件
    • 途中解約時に違約金がかかるか
    • 解約手続きの簡便さ
  3. 申込手続きの簡便さ
    • オンライン完結か、書類提出が必要か
    • 必要書類の多さ(検針票、FIT認定通知書など)
  4. 支払い方法
    • 口座振込か、電気料金との相殺か
    • 振込手数料は誰が負担するか
  5. セット割引の有無
    • 電気やガスとセットにすると優遇されるか
    • 他のサービスとの組み合わせ割引
  6. 付帯サービス
    • 設備点検サービスがあるか
    • 保証期間の延長サービスがあるか

特に「契約期間」と「違約金」は重要です。市場環境の変化で条件が変わる可能性もあるため、長期拘束されないプランが安心と言えます。また、手続きの簡便さも選択の重要な要素です。

地域別・会社別の買取サービス比較

買取サービスは地域(電力会社エリア)によって選択肢が異なります。ここでは主な電力会社エリア別の特徴を紹介します。

【東京電力エリア】

  • 買取価格の相場:8〜11円/kWh
  • 主な事業者:東京電力エナジーパートナー、ENEOSでんき、Looopでんき、東京ガスなど
  • 特徴:事業者数が多く、競争が活発で選択肢が豊富

【関西電力エリア】

  • 買取価格の相場:7〜10円/kWh
  • 主な事業者:関西電力、大阪ガス、ENEOSでんき、Looopでんきなど
  • 特徴:ガス会社の参入が活発で、ガスとのセット割が充実

【地方エリア】

  • 買取価格の相場:6〜9円/kWh
  • 主な事業者:地域電力会社、地域ガス会社、全国展開の新電力など
  • 特徴:選択肢が都市部より少ない傾向があるが、地域密着型のサービスもある

会社のタイプ別に見ると、以下のような特徴があります。

【大手電力会社】

  • 買取単価:比較的低め(7〜8円/kWh)
  • 特徴:安定性があり、手続きがシンプル、地域密着のサポート

【新電力】

  • 買取単価:比較的高め(8〜12円/kWh)
  • 特徴:柔軟なプラン設計、オンライン手続きが充実、顧客獲得のための特典あり

【ガス会社】

  • 買取単価:中程度(8〜10円/kWh)
  • 特徴:ガスとのセット割が魅力、総合エネルギー会社としてのサポート充実

卒FIT後の選択肢は年々増えており、競争も活発化しています。定期的に市場の動向をチェックし、自分に合った最適なサービスを選びましょう。また、契約後も他社の条件と比較し、必要に応じて乗り換えを検討するとよいでしょう。

電力会社タイプ買取単価(目安)契約期間違約金手続きメリットデメリット
大手電力会社7〜8円/kWh1年(自動更新)なし〜少額電話・Web手続き簡単、安定性あり買取単価が低め
新電力8〜12円/kWh1〜2年条件により発生主にWeb買取単価が高め、特典あり会社により安定性に差
ガス会社8〜10円/kWh1〜2年条件により発生電話・Webガスとのセット割引あり地域限定のサービスも
住宅メーカー系8〜10円/kWh1〜3年あり電話・訪問設備点検などのサポート契約条件が複雑なケースも

太陽光発電の売電収入と税金

太陽光発電による売電収入は、税金面でも重要な影響があります。適切に管理し、必要に応じて確定申告を行うことが大切です。ここでは売電収入の計算方法と税金について解説します。

売電収入の計算方法

売電収入は、以下の単純な計算式で求められます。

売電収入 = 売電量(kWh)× 買取単価(円/kWh)

例えば、1年間の売電量が3,000kWhで、買取単価が8円/kWhの場合、年間の売電収入は: 3,000kWh × 8円/kWh = 24,000円 となります。

FIT期間中と卒FIT後では、同じ発電量でも収入に大きな差が出ます。例えば:

【FIT期間中】

  • 売電量:3,000kWh/年
  • 買取単価:42円/kWh(2012年設置の場合)
  • 年間売電収入:126,000円

【卒FIT後】

  • 売電量:3,000kWh/年
  • 買取単価:8円/kWh
  • 年間売電収入:24,000円

このように、卒FIT後は同じ発電量でも収入が約1/5になることがあります。このため、できるだけ有利な買取条件を探すか、自家消費にシフトして電気代を削減する方向を検討することが重要です。

売電収入の税金について

太陽光発電による売電収入は、所得税法上、原則として「雑所得」として扱われます。ただし、事業規模で行っている場合は「事業所得」となる場合もあります。

【確定申告が必要なケース】

  • 給与所得者の場合:売電収入を含む雑所得の合計が年間20万円を超える場合
  • 個人事業主の場合:売電収入の金額にかかわらず、事業所得として申告が必要

【確定申告に必要な書類】

  • 売電収入の明細(電力会社からの支払明細書など)
  • 必要経費の証明書(設備の減価償却費、メンテナンス費用など)

住宅用太陽光発電の場合、売電収入から以下の経費を差し引いた金額が課税対象となります。

主な経費項目

  • 設備の減価償却費(太陽光パネル、パワーコンディショナーなど)
  • メンテナンス費用
  • 修理費用
  • 保険料(加入している場合)

減価償却費は、設備の法定耐用年数(一般的に17年)に基づいて計算します。例えば200万円の設備なら、年間約11万円が経費として認められます。

また、売電収入が年間20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、市区町村によっては住民税の申告が必要な場合があります。お住まいの自治体の規定を確認しておきましょう。

売電収入と税金の扱いに不安がある場合は、税理士や最寄りの税務署に相談することをお勧めします。

まとめ:卒FIT後の最適な選択肢を考える

卒FIT後の太陽光発電の活用方法について、これまでの内容をまとめてみましょう。

卒FIT後の主な選択肢

  1. 売電を続ける
    • メリット:追加投資不要、手続き簡単
    • デメリット:売電収入が大幅減少
  2. 自家消費にシフト
    • メリット:電気代削減効果大、停電時も安心
    • デメリット:蓄電池などの初期投資が必要
  3. ハイブリッド活用
    • 蓄電池で自家消費率を高めつつ、余った電気は売電する
    • バランスの取れた選択肢だが、初期投資が必要

自分に合った選択をするためのポイント

最適な選択は、以下のような条件によって変わってきます。

【売電を続けるのが適している場合】

  • 追加投資を控えたい方
  • 住宅の居住予定が短い、または不確かな方
  • 電気の使用量が少ない家庭
  • 高齢の方など、設備管理の手間を避けたい方

【自家消費へのシフトが適している場合】

  • 長期的な視点で投資できる方
  • 同じ住宅に長く住む予定の方
  • 電気使用量が多い家庭
  • 停電対策を重視する方
  • 環境への配慮を重視する方

まとめと今後の展望

太陽光発電は卒FIT後も価値ある資産です。発電効率は年々少しずつ低下するものの、適切なメンテナンスを行えば、20年以上発電し続けることが可能です。

最近では電気料金の高騰により、自家消費の価値が高まっています。また、カーボンニュートラルの観点からも再生可能エネルギーの重要性は増しており、今後も太陽光発電の価値は維持されるでしょう。

卒FIT後の選択に正解はありません。ご自身のライフスタイルや経済状況、将来計画に合わせて、最適な活用方法を選ぶことが大切です。定期的に市場の動向を確認し、必要に応じて方針を見直していくことをお勧めします。

太陽光発電は、これからも皆さんの暮らしを支える大切なエネルギー源です。卒FIT後もその価値を最大限に活かしていきましょう。

 

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