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蓄電池の価格相場はいくら?最新情報を解説

家庭用蓄電池の導入を検討する際、まず気になるのは「いくらかかるのか」という点です。蓄電池は決して安い買い物ではありませんが、近年は徐々に価格が下がってきており、補助金なども活用することで導入のハードルが下がってきています。

家庭用蓄電池の価格相場は、容量やタイプによって大きく異なります。経済産業省の調査によれば、2023年時点の住宅用蓄電システムの平均価格水準は約11.1万円/kWhでした(2022年の11.7万円/kWhから低下)。実際の販売価格は容量やメーカー、設置工事の難易度などによって幅がありますが、概ね1kWhあたり13〜15万円程度(工事費込み)が一つの目安となります。

蓄電池選びで混乱しがちなのは、カタログやメーカーサイトに掲載される「本体価格」と実際の「設置費用合計」の差です。蓄電池の導入には本体価格のほか、設置工事費、配線材料費、場合によっては基礎工事費なども加わります。実際に支払う金額は、これらを全て含めた「総額」で考える必要があります。

蓄電池の容量による価格の違い

蓄電池は容量(kWh)によって価格が大きく変わります。一般的に容量が大きくなるほど総額は高くなりますが、1kWhあたりの単価は安くなる傾向があります。

小容量(5kWh未満): 本体価格は概ね15万~60万円(容量が小さい分、単価は高めで約15万円/kWh)、これに工事費約33万円が加わります。実質の総額は約100万円前後が目安です。主に非常用電源としての利用や、日中不在で電力消費が少ない家庭向けです。

中容量(5~10kWh未満): 本体価格約70万~126万円(単価約14万円/kWh)に工事費約34万円程度で、総額130~160万円前後が一般的です。一般家庭で最も選ばれているのがこの容量帯で、夜間の基本的な電力需要をカバーできます。

大容量(10kWh以上): 本体価格131万~183万円(単価約13万円/kWh)+工事費約33万円で、総額160~200万円程度となります。容量あたりコストは下がるものの絶対額は大きくなります。大容量タイプは、省エネ性能の低い家や大家族、停電時に長時間の電力確保を重視する方に適しています。

蓄電池のタイプ別価格比較

蓄電池には様々なタイプがあり、それぞれ価格や特徴が異なります。主に「ハイブリッド型」と「単機能型(AC連系型)」の2種類に大別されます。

ハイブリッド型蓄電池: 太陽光発電用パワーコンディショナーと蓄電池用パワーコンディショナーが一体化したタイプです。価格は単機能型よりやや高めですが、パワーコンディショナーを一台に集約できるため省スペースになります。特に、卒FIT(固定価格買取制度終了)に伴い古いパワーコンディショナーの更新が必要な場合には合理的な選択肢です。

単機能型蓄電池(AC連系型): 既存の太陽光発電システムとは別に設置する独立したタイプです。既設の太陽光発電システムを活かしたまま後付けできるのが特徴で、初期費用はハイブリッド型よりも抑えられます。ただし、パワーコンディショナーが2台になるため、設置スペースが必要です。

また、「全負荷型」と「特定負荷型」という区分もあります。全負荷型は停電時に家中すべての回路に電力を供給できるタイプで、特定負荷型は指定した回路(冷蔵庫や照明など)だけバックアップするタイプです。全負荷型は特定負荷型より20~30万円程度高価になりますが、停電時の利便性は格段に高くなります。

蓄電池の設置費用の内訳

蓄電池導入の総費用は、主に以下の要素から構成されています:

  1. 蓄電池本体価格:最も大きな比重を占め、5kWhで約70~100万円、10kWhで約140~180万円程度が一般的です。
  2. パワーコンディショナー(PCS):単機能型の場合は別途必要になることがあり、約20~40万円程度です。
  3. 設置工事費:平均すると約30~50万円程度で、基礎工事、本体設置、配線工事、分電盤への接続などが含まれます。
  4. 付属部材費:配線材料、接続箱、特定負荷用分電盤、ブレーカーなどの部材費で約5~15万円程度です。
  5. リモコン・モニター装置:蓄電池の状態や発電・消費電力を確認するためのモニター機器で、約3~10万円程度です。

工事費用の目安と内容

蓄電池の設置工事は専門知識を要する作業で、工事費用は地域や建物の状況、設置場所の条件などによって変動しますが、一般的には30~50万円程度が相場です。

工事費用の内訳は主に以下のようになっています:

  1. 基礎工事:蓄電池本体を設置するための基礎工事で、約5~15万円程度です。
  2. 配線工事:蓄電池から分電盤までの電気配線工事で、約10~15万円程度が目安です。
  3. 分電盤工事:「特定負荷用分電盤」の設置などで、約8~15万円程度かかります。
  4. 試運転調整・設定:設置後の動作確認や初期設定、不具合チェックなどで、約3~5万円程度です。

メーカー別の価格傾向

同じ容量でもメーカーによって価格差があるのは、使用している電池セルの品質、制御システムの性能、保証内容などの違いによるものです。

国内主要メーカーの価格傾向:

  • パナソニック:高品質で信頼性が高く、5.6kWhモデルで約150万円前後、11.2kWhモデルで約200万円前後(工事費込み)が目安です。
  • シャープ:太陽光発電との連携に強みを持ち、6.5kWhモデルで約140万円前後から。AIによる充放電制御機能など付加価値が高いです。
  • ニチコン:蓄電池国内トップシェアを誇り、6.5kWhで約130万円前後から。EVとの連携機能を持つトライブリッド型も展開しています。
  • 長州産業:比較的手頃な価格帯で、9.5kWhで約150万円前後から。太陽光発電とのセット販売で価格メリットを出しているケースが多いです。

海外メーカー:

  • テスラ(Powerwall):デザイン性に優れ、容量13.5kWhと大きく、設置工事費込みで約200万円前後。ただし日本での販売網がまだ限られています。

蓄電池の補助金制度を活用しよう

蓄電池の導入を検討する際、国や自治体が提供する補助金制度を活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できる場合があります。補助金制度は毎年内容が更新されるため、最新情報の確認が必要です。

重要なポイントは、「先に契約・設置してから後から申請」というのは基本的にできないことです。必ず補助金の申請要件や申請期間を事前に確認し、申請が通ってから設置工事に進むようにしましょう。

国の補助金制度

2024年度の主な補助金制度は以下の通りです。

1. DR対応蓄電池補助金 DR(デマンドレスポンス)機能に対応した蓄電池に対する補助制度です。

  • 補助額:1kWhあたり32,000円または37,000円(性能要件により異なる)
  • 上限額:最大60万円/台
  • 対象:DR機能を持つ家庭用蓄電池

2. ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)関連補助金 ZEH住宅向けの補助金の中に蓄電池に対する支援も含まれています。

  • 「子育てエコホーム支援事業」:蓄電池に一律64,000円/台の補助
  • 主に新築住宅や大規模リフォームが対象

自治体の補助金制度

国の補助金制度に加えて、都道府県や市区町村レベルでも独自の蓄電池補助制度を設けているところが多くあります。自治体の補助金は地域の防災力向上や再生可能エネルギー普及を目的としており、金額は数万円〜数十万円程度が一般的です。

主な自治体補助金の例:

  • 東京都:太陽光発電と蓄電池のセット導入に最大100万円程度の補助
  • 神奈川県:蓄電池に対し1kWhあたり数万円の補助
  • 大阪府:自治体によって異なるが、10〜30万円程度の定額補助を実施しているケースが多い
  • その他の市区町村:5〜20万円程度の補助を実施しているところが多い

国と自治体の補助金を最大限に活用すれば、場合によっては蓄電池導入費用の30〜40%程度を補助金でカバーできるケースもあります。

蓄電池は本当に元が取れる?投資回収の考え方

蓄電池導入の大きな関心事の一つが「投資回収できるのか」という点です。結論からいえば、蓄電池の投資回収は可能ですが、条件によって回収期間は大きく異なります。

蓄電池導入による経済効果は主に「電気料金の削減」によってもたらされます。太陽光発電と組み合わせることで、昼間の余剰電力を蓄電池に貯め、夜間に使用することで購入電力を減らします。特に卒FIT後は売電単価が大幅に下がる(10円/kWh前後)ため、売電するよりも自家消費した方が経済的です。

様々な試算例によると、蓄電池の回収期間は条件によって10年〜20年程度と幅があります。短くて10年程度、長いと15年以上かかるケースが多いようです。

投資回収期間の計算方法

蓄電池の投資回収期間を計算するための基本的な考え方は以下の通りです:

投資回収期間 = 初期投資額(補助金適用後の実質負担額)÷ 年間経済メリット

ここでいう「年間経済メリット」は主に次の要素から成り立ちます:

  1. 電気代削減効果:蓄電池で自家消費が増えることによる購入電力量の減少
  2. 売電収入の変化:自家消費が増えることによる売電量の減少(この部分はマイナス要素)
  3. 時間帯別料金の活用効果:深夜電力で充電し日中に放電することによる節約

具体的な計算例:

  • 初期投資:蓄電池システム10kWh 200万円(工事費込み)
  • 補助金:国の補助金40万円+自治体補助金30万円
  • 実質負担額:130万円
  • 年間電気代削減効果:10万円
  • 年間売電収入減少:3万円
  • 年間経済メリット:7万円

この場合の投資回収期間は:130万円 ÷ 7万円 ≒ 18.6年となります。

投資回収期間が短くなる条件としては、補助金の活用、電気料金の高騰、卒FIT後の低い売電単価、余剰電力量の多さなどが挙げられます。

卒FIT世帯の蓄電池導入メリット

卒FIT(固定価格買取制度終了)を迎えた太陽光発電所有者にとって、蓄電池の導入は特に魅力的な選択肢です。FIT期間中は高い価格(42円/kWhなど)で余剰電力を売電できましたが、FIT終了後は大幅に安い価格(8〜10円/kWh程度)での買取となります。

このような状況下では、余剰電力を売電するよりも自家消費に回した方が経済的です。例えば、10円/kWhで売電するよりも、25〜30円/kWhの夜間電力購入を減らせるため、差額の15〜20円/kWhが実質的な節約となります。

また、卒FIT時期は太陽光発電設備の導入から10年程度経過しているため、パワーコンディショナーの寿命(10〜15年)も近づいています。ハイブリッド型蓄電池を導入すれば、パワーコンディショナーの更新と蓄電池の設置を同時に実現できるため、コスト面でも合理的です。

蓄電池の長期的な価値を考える

蓄電池の価値を考える際には、単純な経済性(投資回収)だけでなく、長期的な視点での総合的な価値を評価することが重要です。

1. 非常時のバックアップ電源としての価値 近年、大規模な自然災害による停電が各地で発生しています。蓄電池があれば、停電時でも冷蔵庫や照明、通信機器などの重要な電気機器を使用できます。この「安心感」は金銭に換算しにくいものの、大きな価値があります。

2. 電力自給率向上による環境貢献 蓄電池により太陽光発電の自家消費率が高まれば、化石燃料による発電への依存度が下がり、CO2排出削減に貢献できます。環境意識の高まりとともに、こうした価値も重要性を増しています。

3. 将来の電気料金高騰へのヘッジ 世界的なエネルギー価格の上昇傾向を考えると、将来的に電気料金が上がる可能性は高いと言えます。蓄電池導入は将来の電気料金高騰リスクに対する「保険」としての側面も持ちます。

4. 住宅の資産価値向上 太陽光発電と蓄電池を備えた住宅は、省エネ性能が高く災害にも強いため、将来的な住宅の資産価値向上につながる可能性があります。

よくある質問

Q: なぜ蓄電池は高いのですか? 

A: 高品質なリチウムイオン電池セルを多数使用していること、安全管理システムや制御機器が高度であること、まだ大量生産による価格低減が進んでいないことなどが主な理由です。ただし、技術の進歩や市場競争の活性化により、徐々に価格は下がってきています。

Q: 蓄電池の価格は今後下がりますか? 

A: EVの普及に伴うバッテリー生産の拡大や技術革新により、今後も緩やかに価格は下がると予想されています。ただし、劇的な価格下落は近い将来には見込みにくいと言われています。導入を何年も先送りするより、現在利用可能な補助金を活用する方が経済的なケースも多いです。

Q: リース契約は得ですか? 

A: 初期費用を抑えられるメリットがありますが、長期的には購入より総支払額が多くなる傾向があります。ただし、メンテナンスがサービスに含まれていたり、一定期間後に買取オプションがあったりするプランもあるので、契約内容をよく確認して判断することが重要です。

Q: 蓄電池の寿命はどれくらいですか? 

A: 一般的なリチウムイオン蓄電池の寿命は10〜15年程度です。多くのメーカーでは10年後に初期容量の70〜80%以上を維持することを保証しています。使用環境(特に温度)や充放電パターンによって寿命は影響を受けます。

 

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