
太陽光発電の売電収入はどう計算される?FIT制度のしくみ
太陽光発電を設置されている方にとって、毎月の売電収入は嬉しい副収入となっています。しかし、卒FITを迎える方が増える中、売電収入の仕組みや今後の選択肢について知っておくことが大切です。この記事では、太陽光発電による売電収入の基本的な仕組みから計算方法、税金の取り扱い、卒FIT後の対応策まで、わかりやすく解説します。
太陽光発電で売電収入を得る仕組み
太陽光発電システムで発電した電気は、自宅で使用するだけでなく、余った電気を電力会社に売ることができます。この仕組みによって得られるのが「売電収入」です。ここでは、その基本的な仕組みについて解説します。
FIT制度とは何か
固定価格買取制度(FIT制度)は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取ることを義務付けた制度です。2012年7月に始まったこの制度により、太陽光発電の導入が飛躍的に進みました。
FIT制度の主なポイントは以下の通りです。
- 固定価格での買取:設置した年度の買取価格が適用され、住宅用太陽光の場合は10年間、事業用は20年間その価格が保証されます
- 買取義務:電力会社は発電された再生可能エネルギーの電気を買い取る義務があります
- 費用負担の仕組み:買取費用は「再エネ賦課金」という形で電気利用者全体で負担します
この制度のおかげで、太陽光発電の設置者は安定した収入を見込むことができ、初期投資の回収計画が立てやすくなりました。
売電の流れを理解しよう
家庭用太陽光発電での売電の流れは、基本的に以下のようになります。
- 発電:太陽光パネルで電気を発電します
- 自家消費:発電した電気を自宅で使用します
- 余剰電力の売電:自宅で使い切れなかった電気を電力会社に売ります
この仕組みを「余剰売電」と呼びます。一方、事業用では発電した電気をすべて売電する「全量売電」という方式もあります。
余剰売電と全量売電の違いは以下の通りです。
種類 | 特徴 | 主な設置場所 |
---|---|---|
余剰売電 | 自宅で使い切れなかった電気を売る | 住宅の屋根 |
全量売電 | 発電した電気をすべて売る | 遊休地、工場の屋根など |
住宅用太陽光発電の場合は、日中に発電した電気を自宅で使い、余った分を売電するのが一般的です。発電量が多い日中に自宅で電気をたくさん使えば使うほど、電気代の節約になりますが、売電量は減ります。逆に日中に電気をあまり使わなければ、売電量が増えて売電収入が増えます。
売電収入の具体的な計算方法
売電収入を計算するのは意外と簡単です。基本的な計算式と、実際の売電収入例を見ていきましょう。
売電単価(買取価格)について
FIT制度での買取価格(売電単価)は、太陽光発電を設置した年度によって異なります。制度開始当初は高めの価格設定でしたが、太陽光発電の普及に伴いコストが下がったことから、年々引き下げられています。
以下に、住宅用太陽光発電(10kW未満)のFIT買取価格の推移を示します。
設置年度 | 買取価格(税込) | 買取期間 |
---|---|---|
2012年度 | 42円/kWh | 10年間 |
2013年度 | 38円/kWh | 10年間 |
2014年度 | 37円/kWh | 10年間 |
2015年度 | 33-35円/kWh | 10年間 |
2016年度 | 31-33円/kWh | 10年間 |
2017年度 | 28-30円/kWh | 10年間 |
2018年度 | 26-28円/kWh | 10年間 |
2019年度 | 24-26円/kWh | 10年間 |
2020年度 | 21円/kWh | 10年間 |
2021年度 | 19円/kWh | 10年間 |
2022年度 | 17円/kWh | 10年間 |
2023年度 | 16円/kWh | 10年間 |
2024年度 | 15円/kWh | 10年間 |
このように、初期のFIT価格と比較すると、現在の買取価格は大幅に下がっています。しかし、同時に太陽光発電システムの導入費用も下がっているため、投資回収の観点では今でも十分なメリットがあります。
一般的な売電収入の目安
では、実際にどれくらいの売電収入が得られるのでしょうか。一般的な住宅用太陽光発電での年間売電収入の目安を、システム容量別に見てみましょう。
売電収入の計算式
年間売電収入 = 年間売電量(kWh) × 買取価格(円/kWh)
例えば、4kWの太陽光発電システムで年間4,000kWhを発電し、そのうち50%を自家消費、残り50%を売電すると仮定します。
2014年に設置(買取価格37円/kWh)の場合
- 年間売電量:4,000kWh × 50% = 2,000kWh
- 年間売電収入:2,000kWh × 37円/kWh = 74,000円
同じシステムでも、2024年に設置(買取価格15円/kWh)の場合
- 年間売電収入:2,000kWh × 15円/kWh = 30,000円
システム容量別の一般的な年間売電収入目安(自家消費率50%と仮定)
システム容量 | 年間発電量目安 | 年間売電量目安 | 売電収入(37円/kWh) | 売電収入(15円/kWh) |
---|---|---|---|---|
3kW | 3,000kWh | 1,500kWh | 55,500円 | 22,500円 |
4kW | 4,000kWh | 2,000kWh | 74,000円 | 30,000円 |
5kW | 5,000kWh | 2,500kWh | 92,500円 | 37,500円 |
6kW | 6,000kWh | 3,000kWh | 111,000円 | 45,000円 |
実際の売電収入は、地域の日照条件や屋根の向き、自家消費率などによって変わります。日本の平均的な住宅用太陽光発電の年間発電量は、1kWあたり約1,000kWhと言われています。
また、発電量は季節によっても大きく変動します。一般的に夏季は日照時間が長く発電量が多くなり、冬季は日照時間が短いため発電量が少なくなります。
売電収入と税金の関係
売電収入にも税金がかかります。ここでは、売電収入と税金の関係について解説します。
確定申告が必要になる条件
太陽光発電による売電収入がある場合、一定の条件を満たすと確定申告が必要になります。主な条件は以下の通りです:
給与所得者(会社員など)の場合
- 給与以外の所得(売電収入から必要経費を差し引いた額)が年間20万円を超える場合に確定申告が必要
- 20万円以下の場合は原則として確定申告不要
事業所得者(個人事業主など)の場合
- 売電を事業として行っている場合は、金額に関わらず確定申告が必要
また、自治体によっては、所得税の確定申告が不要な場合でも住民税の申告が必要なケースがあります。お住まいの自治体の窓口に確認するとよいでしょう。
売電収入の所得区分と経費
売電収入は通常、「雑所得」として扱われます。ただし、太陽光発電を事業として行っている場合は「事業所得」となります。
雑所得として申告する場合の計算式
売電による所得 = 売電収入 - 必要経費
必要経費として認められる主なものは以下の通りです:
- 減価償却費:太陽光発電設備の取得価額を法定耐用年数(17年)で償却した金額
- メンテナンス費用:点検や清掃にかかった費用
- 修繕費:故障や不具合の修理にかかった費用
- 保険料:太陽光発電設備に関する保険料
なお、太陽光発電設備の設置に住宅ローンを利用した場合、そのローンの利息のうち、太陽光発電設備相当分も経費として認められる場合があります。
減価償却費の計算例 設置費用200万円の太陽光発電システムの場合、年間の減価償却費は約11.8万円(200万円÷17年)となります。売電比率が50%の場合、売電に係る減価償却費は約5.9万円(11.8万円×50%)となります。
卒FITとその後の選択肢
FIT制度での買取期間(住宅用は10年間)が終了した状態を「卒FIT」と呼びます。卒FIT後はどのような選択肢があるのでしょうか。
卒FIT後の売電価格
卒FIT後の売電価格は、FIT期間中と比べて大幅に下がります。一般的には、以下のような価格帯になります:
- 大手電力会社の買取価格:7~9円/kWh程度
- 新電力(地域電力以外の電力会社)の買取価格:8~12円/kWh程度
例えば、FIT期間中に42円/kWhだった買取価格が、卒FIT後には8円/kWhになるケースも珍しくありません。この場合、同じ売電量でも売電収入は約5分の1に減少します。
そのため、卒FIT後の対応は慎重に検討する必要があります。
卒FIT後の対応策
卒FIT後の主な選択肢は以下の通りです:
1. 引き続き売電を続ける
- 地域の電力会社や新電力と新たな買取契約を結び、余剰電力を売電する
- メリット:特別な設備投資なしで収入を継続できる
- デメリット:売電収入は大幅に減少する
2. 自家消費率を高める
- 昼間の電力消費を増やし、自家消費率を高める(例:日中に洗濯や掃除機をかける)
- メリット:電気代の節約効果が高まる
- デメリット:生活習慣の変更が必要
3. 蓄電池を導入する
- 余剰電力を蓄電池に貯めて、夜間や朝方に使用する
- メリット:自家消費率が大幅に向上し、電気代削減効果が高まる
- デメリット:蓄電池の導入には新たな投資が必要
4. 電気自動車(EV)と連携する
- 余剰電力でEVを充電し、移動用エネルギーとして活用する
- メリット:ガソリン代の節約になる
- デメリット:EVの所有が前提となる
どの選択肢が最適かは、各家庭の電力使用パターンや設備の状態、経済性などを総合的に判断する必要があります。
卒FIT後の選択肢別メリット比較
選択肢 | 初期投資 | 売電収入 | 電気代削減効果 | 停電時の対応 |
---|---|---|---|---|
売電継続 | なし | 少ない | 変化なし | 基本的になし |
自家消費率向上 | なし | 減少 | やや増加 | 基本的になし |
蓄電池導入 | 高い | 大幅減少 | 大幅増加 | 対応可能 |
EV連携 | EVの費用 | 減少 | 増加+ガソリン代削減 | 場合により可能 |
まとめ:売電収入を最大化するポイント
太陽光発電による売電収入を最大化し、長期的なメリットを得るためのポイントをまとめます。
- 適切なメンテナンス
- パネルの定期的な清掃や点検を行い、発電効率の低下を防ぎましょう
- 特に落ち葉や鳥の糞などによる汚れは発電量に影響します
- 発電量のモニタリング
- 日々の発電量をチェックして、異常がないか確認しましょう
- 急な発電量の低下は機器の故障のサインかもしれません
- 税金対策
- 確定申告が必要な場合は、減価償却費などの経費をしっかり計上しましょう
- 住民税の申告も忘れずに行いましょう
- 卒FIT対策
- FIT期間終了の1年前から対策を検討しましょう
- 複数の電力会社の買取条件を比較検討しましょう
- 蓄電池の導入も視野に入れ、経済性を計算しましょう
- 新技術への関心
- 太陽光発電や蓄電池の技術は日々進化しています
- 新しい制度や技術に関する情報をチェックして、最適な選択をしましょう
太陽光発電は適切に管理すれば、FIT期間終了後も家計の節約や環境への貢献など、さまざまなメリットをもたらします。ぜひ長期的な視点で太陽光発電システムを活用していきましょう。