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太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が終了した後も、発電した電気をお得に売電できることをご存じですか?卒FIT後は大手電力会社だけでなく「新電力」と呼ばれる電力会社にも売電できます。多くの場合、新電力の方が高い買取価格を提示しています。この記事では、卒FIT後の売電先の選び方や手続き方法を徹底解説します。

卒FIT後の売電先はどこがお得?大手電力会社と新電力の違い

卒FIT(固定価格買取制度の期間満了)を迎えた後も、余剰電力は引き続き売電することができます。FIT期間中は国が決めた価格で電力会社に買い取ってもらえましたが、期間終了後は自分で売電先を選べるようになります。

大手電力会社の買取価格は一般的に1kWhあたり7~9円程度です。例えば東京電力では8.5円/kWh、九州電力では7.0円/kWhという水準です。これはFIT期間中(10年前に契約した場合で42円/kWh程度)に比べると大幅に下がります。

一方、新電力各社(電力自由化以降に参入した電力会社)は、もっと高い価格を提示することが多く、10~13円/kWhの買取単価を提示する会社もあります。中には期間限定で16円/kWhという高値を提示した例もあります。

大手電力会社のメリット・デメリット

メリット

  • 手続きが簡単: FIT期間中の契約から自動的に切り替わることが多く、新たな申込手続きが不要
  • 安心感: 長年の実績がある大手企業なので、倒産リスクや急な契約変更の心配が少ない

デメリット

  • 買取価格が低め: 新電力に比べて買取単価が1~4円程度低いことが多い
  • 付加サービスが少ない: 単純に買い取るだけのプランが中心で特典が限られる

新電力会社のメリット・デメリット

メリット

  • 買取価格が高め: 大手電力より1~4円程度高い場合が多く、売電収入アップが期待できる
  • 多様な特典: 電気料金プランとのセット割引や、ポイント還元など付加価値サービスが充実

デメリット

  • 契約条件の確認が必要: 自社の電力購入契約とセットが条件のプランもある
  • 将来的な価格変更リスク: 買取価格が将来下がる可能性や、事業継続性の不安がある

売電先を選ぶ際のチェックポイント

売電先を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

対応エリアの確認

電力会社が自宅のエリアで卒FIT電力の買取サービスを提供しているか確認します。東京電力のプランは関東甲信越の特定地域のみ、というように限定されていることがあります。

セット契約条件

電力購入契約とのセットが前提のプランがあります。電気の購入先を変えると電気料金単価がどうなるか、総合的に得かどうかを検討しましょう。

支払い方式

売電収入を毎月現金振り込みで受け取るタイプと、電気料金と相殺して電気代を値引きするタイプがあります。前者は収入として明確ですが確定申告が必要な場合も。後者は電気代負担が減るメリットがあります。

契約期間・変更条件

基本的に1年ごとの自動更新が多いですが、買取価格が事業者判断で変更される可能性があります。価格変更時の通知方法や、違約金の有無も確認しておきましょう。

代表的な新電力会社の買取プラン比較

卒FIT後の余剰電力を買い取っている新電力会社は数多くありますが、その買取価格やサービス内容は各社で異なります。代表的な会社のプランを見てみましょう。

丸紅新電力(大手商社系)

東電エリアで11~13.5円/kWhという高い買取価格を提示しています。電気購入契約なしでも売電契約のみOKで、契約手数料や工事費も無料という手軽さが特徴です。

伊藤忠エネクス(大手商社系)

期間限定キャンペーンで最大16円/kWhという高値を提示した実績があります。ただし通常時は9~10円台に戻ることが多いです。

出光興産(石油元売系)

「idemitsuでんき」のスタンダードプランで9.5円/kWh、自社と電力購入契約をセットにすると11.5円/kWhに上乗せされる特別プランもあります。

ENEOSでんき(石油元売系)

卒FIT向けの「余剰電力買取サービス」を提供。最大の特徴は売電契約のみで加入可能な点です。首都圏では10~11円/kWhという報告例があります。

大阪ガス(都市ガス大手)

関西エリア中心に、基本買取単価約8円/kWh+自社電気セット契約で+1円という「電気セットプラン」を提供しています。

新電力会社選びで失敗しないポイント

新電力会社を選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。

価格競争力

新電力は大手より高単価提示が多いですが、期間限定や将来変動の可能性もあります。キャンペーン終了後の価格も確認しましょう。

セット契約と単体契約

電気購入とセットでメリットを出す会社がある一方、ENEOSでんきのように購入契約なしで売電だけOKの会社もあります。自分のニーズに合った形態を選びましょう。

支払い方法

現金振込型か相殺型か、どちらが自分のライフスタイルに合うか考えましょう。確定申告の手間も考慮すると、電気代との相殺が便利な場合もあります。

独自サービス

Amazonギフト券やWAONポイントでの還元など、独自ポイントサービスを提供する会社もあります。日常的に利用するものなら魅力的かもしれません。

会社の信頼性

大手資本系列(商社・石油・ガス系)は比較的安心感があります。新興企業の場合は事業継続性やサポート体制も確認しておくと安心です。

卒FIT後の売電プラン種類と特徴

卒FIT後の売電プランには、大きく分けて「固定価格型」と「市場連動型」の2種類があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったプランを選びましょう。

固定価格型プランは、契約期間中は買取単価が一定に固定されるプランです。例えば「10円/kWh」と決められ、市場変動に関係なくその価格で買い取られます。

  • メリット:収入の見通しが立てやすい、家計計画を立てやすい
  • デメリット:市場価格が上昇しても契約単価は上がらない

市場連動型プランは、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格など市場価格に連動して買取単価が変動するプランです。

  • メリット:市場価格高騰時に収入が増える可能性がある
  • デメリット:価格変動リスクがあり、収入が不安定になる可能性がある

電力市場の動きをあまり気にせず、安定した収入を希望する方には固定価格型がおすすめです。特に高齢世帯や、毎月の売電収入を生活費に組み込んでいる方に向いています。

一方、電力市場の動向に関心があり、収入変動を許容できる方には市場連動型も検討の余地があります。特に最近のような電力価格不安定な時期には、高騰時の収入アップを狙えるチャンスもあります。

契約時には、市場連動型の場合は手数料や最低保証の有無、固定価格型の場合は価格見直し条項の有無など、細かい条件も確認することが大切です。

売電先変更の手続き方法

卒FIT後の売電先変更手続きは、思ったよりも簡単です。基本的な流れを解説します。

FIT満了通知の確認

FIT買取期間が終了する約4~6か月前になると、「買取期間満了のお知らせ」が郵送されます。この通知にはFIT終了日や今後の選択肢に関する案内が記載されているので、しっかり確認しましょう。

売電先(買取事業者)の決定

新たに契約したい売電先の電力会社を選びます。価格やサービス内容を比較し、自宅のエリアで利用可能なプランを絞り込みましょう。

必要情報・書類の準備

手続きには「受給地点特定番号」(22桁の番号)やお客様番号が必要です。検針票や買取満了通知書を用意しましょう。また本人確認書類や銀行口座情報なども求められる場合があります。

新しい売電先へ申し込み

選んだ電力会社の指定する方法(多くは公式サイト上の専用フォームや電話)で申し込みます。必要情報を入力・送信すれば完了です。現在の契約先への解約連絡は基本的に不要です。新しい電力会社が手続きを代行してくれます。

切り替え手続きの完了と売電開始

申込後、約1か月程度で切り替えが完了します。完了すると新電力から契約内容書面や開始日の案内が届きます。その後は新しい契約に基づいて売電収入が入金されます。

手続きのタイミングに注意しましょう。FIT満了日までに余裕を持って(1~2か月前までには)申し込むことをおすすめします。手続きが間に合わないと、一時的に売電収入がゼロになる可能性もあります。

また、手続きは基本的にオンラインで完結することが多いですが、一部のケースでは郵送書類の提出が必要になることもあります。不明点があれば各社のカスタマーサポートに問い合わせましょう。

卒FIT後何もしないとどうなる?

卒FITを迎えた後、何も対処せずに放置するとどうなるのでしょうか?

FIT期間中は電力会社に買い取り義務がありましたが、卒FIT後はその義務がなくなります。売電契約を結ばないまま余剰電力が発生すると、その電気は電力系統に無償で引き取られることになります。つまり、せっかく発電した電気をタダ同然で電力網に流してしまうことになるのです。

これは大きな経済的損失につながります。例えば卒FIT後の標準的な買取単価8.5円/kWhで年間3,000kWhを売電できるとすると、年間約25,500円の収入になります。10年間では25万円以上の損失になってしまいます。

何もしない場合の対策としては、以下のような方法が考えられます。

徹底自家消費

余剰が出ないよう、発電した電気は自宅で使い切るようにしましょう。昼間にエアコンや洗濯乾燥機などの電力消費の大きい家電を使うスケジュールにするのも一案です。

電気自動車(EV)充電

EVやプラグインハイブリッド車をお持ちなら、昼間に余剰電力で充電すれば走行コストを下げられます。

蓄電池の導入

昼間の余剰電力を蓄えて夜間に使用できます。卒FIT後は「売るより貯めて使う」方が経済的なケースも多いです。

実は、多くの大手電力会社では、特に申し出がなければFIT満了後に自動的に自社の買取プランに移行する措置を取っています。例えば中国電力では7.15円/kWhの買取プランに自動移行するよう案内されています。低単価であっても、何も契約せずに無償提供するよりはマシなので、最低限この自動移行を活用することをおすすめします。

卒FIT向け特別プランの活用法

通常の買取プラン以外にも、各社は卒FITユーザー向けの特別プランを用意しています。ここでは代表的な特別プランを紹介します。

仮想蓄電サービス(お預かりプラン)

大手電力が提供する「再エネお預かりプラン」(東京電力)や「貯めトクサービス」(関西電力)などのサービスです。余剰電力を仮想的に「預かり」、後で必要な時に電気料金から差し引いてもらえます。

例えば東京電力のプランでは、月250kWhまでの余剰電力を預かり対象とし、それを電気料金に充当できます。月額利用料(4,000円程度)がかかりますが、上手く活用すれば売るよりもお得になる場合も多いです。

ポイント・商品券プラン

現金ではなくポイントや商品券で還元するプランもあります。中部電力ミライズではAmazonギフト券8.1円分/kWhやWAONポイントで実質9円相当/kWhにできるプランがあります。普段からそのポイントを使う方には魅力的かもしれません。

セット契約・他サービス連動

ガス+電気契約セットで売電単価がアップするプランや、蓄電池導入と連動した特典もあります。例えば東京ガスの蓄電池導入サポートプランでは、導入後半年間は余剰電力を23円/kWhという高単価で買い取る特別キャンペーンを実施したこともあります。

卒FIT特化プラン

「卒FIT買取プラン」「プレミアム買取」などのわかりやすい名称で、高単価を売りにしたプランも増えています。特徴はシンプルで申し込みが簡単な点、特別な条件なしで高単価を提示している点です。

これらの特別プランを利用する際は、必ず適用条件や期限を確認しましょう。仮想蓄電サービスには月額利用料がかかることが多く、セット契約では他のサービスへの加入が条件となります。キャンペーンには期限があることも多いので、「いつまでそのメリットが続くのか」を事前に把握しておくことが大切です。

最後に、卒FIT後の選択肢は常に変化しています。各社のサービス内容や価格は頻繁に更新されるため、定期的に最新情報をチェックすることをおすすめします。卒FITはゴールではなく新たなスタートです。賢く選んで、太陽光発電を長期的に有効活用しましょう。

 

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