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EV充電最適化の基本と重要性

電気自動車(EV)の充電を最適化することは、経済性と利便性を両立させる重要な取り組みです。特に卒FIT(固定価格買取制度終了)を迎えた太陽光発電オーナーにとって、発電した電力を売電するよりも自家消費に回す方が経済的なメリットが大きくなっています。

充電最適化により、電気代の削減はもちろん、EVのバッテリー寿命の延長、電力需給の安定化、再生可能エネルギーの有効活用といった多くのメリットが得られます。太陽光発電と組み合わせることで、エネルギーの自給自足率を高め、環境負荷を減らすこともできるのです。

充電スケジュール最適化で解決できる課題

充電スケジュールを最適化することで、様々な課題を解決できます。

まず、電気料金の高騰の問題があります。時間帯によって電気料金が変動する場合、充電タイミングを工夫するだけで、電気代を大幅に節約できます。

次に、充電設備のキャパシティ制限の問題です。家庭の電力契約容量には限りがあり、大電力を消費するEV充電と他の家電製品の使用が重なると、ブレーカーが落ちる可能性があります。充電タイミングを調整することでこの問題を回避できます。

また、急な外出時の充電不足という不安も解消できます。天気予報を確認し、翌日の太陽光発電量を予測しながら充電計画を立てることで、必要な時に必要な分の充電を確保できます。

太陽光発電とEV充電の相性

太陽光発電とEV充電は非常に相性が良い組み合わせです。太陽光で発電した電力をそのままEVに充電すれば、化石燃料を使わないクリーンな移動手段が実現します。

特に卒FIT後は、売電単価が8~10円/kWh程度まで下がる一方、買電単価は20~30円/kWh程度と高いままです。そのため、発電した電力を売るよりも自家消費した方が経済的にお得になります。

例えば、年間12,000km走行するEVの場合、ガソリン車なら年間約14万円の燃料代がかかるところ、太陽光発電の電力で充電すれば、そのコストをほぼゼロにすることも可能です。

太陽光発電を活用したEV充電の基本戦略

太陽光発電の電力をEV充電に最大限活用するには、「太陽光発電量が多い時間帯にEVを充電する」という基本戦略が重要です。

最も効率的な方法は、太陽光発電の余剰電力が発生した時に自動的にEVへの充電を開始することです。家庭の電力消費を差し引いても余りがある場合、その電力をグリッドに売電するよりもEVのバッテリーに蓄えた方が経済的です。

また、天気予報を見て晴れの日には意識的にEVを自宅に置いておくという工夫も有効です。週末など家にいる時間が長い日を充電日に設定するのも一つの方法でしょう。

太陽光発電量とEV充電量の関係

太陽光発電システムでどれだけEVを充電できるか、具体的な数字で見てみましょう。一般的に、太陽光発電の電力量1kWhあたり、EVは約5~10km走行できると言われています。

一般的な家庭用の4kWの太陽光発電システムの場合、晴れた日には1日あたり約16~20kWhの発電が期待できます。この半分の10kWhをEV充電に回せたとすると、電費が10km/kWhのEVなら約100km、電費6km/kWhのSUVタイプのEVでも約60km走行できる計算になります。

年間で見ると、同じ4kWシステムなら、関東地方で年間約4,800kWh程度の発電量が見込めます。これをすべてEV充電に使えれば、電費6km/kWhのEVで約28,800km、電費10km/kWhのEVなら約48,000kmも走行可能です。一般的な自家用車の年間走行距離5,000~10,000kmを考えると、太陽光発電だけでEVの走行に必要なエネルギーをまかなえる可能性は十分にあります。

最適な充電タイミングの見極め方

太陽光発電を最大限活用するには、発電量が最も多くなる時間帯を把握し、その時間にEVを充電するのが理想的です。一般的に太陽光発電の出力は、10時から14時頃にピークを迎えます。

休日と平日では最適な充電戦略が異なります。休日は家にいることが多いので、日中の発電ピーク時に合わせて充電するのが効果的です。一方、平日は多くの場合、日中は外出していてEVが自宅にないため、朝出かける前に少し充電しておき、帰宅後に残った発電量で追加充電するという方法が現実的です。

季節によっても最適な戦略は変わります。春や秋は比較的安定した発電量が期待できるため、日々の充電計画を立てやすくなります。夏は日照時間が長く発電量も多いので、余剰電力を活用するチャンスが増えます。冬は日照時間が短く発電量も減少するため、夜間の安い電力を併用する工夫が必要です。

EV充電スケジュールを自動最適化する方法

EV充電のスケジュールを毎日手動で調整するのは現実的ではありません。最近では、太陽光発電システムとEV充電器、家庭の電力消費を統合的に管理する技術が発達しており、自動で最適なタイミングでの充電が可能になっています。

特に進化しているのが、AIを活用した予測型の充電最適化です。これは、過去の発電データや気象情報、家庭の電力使用パターンを学習し、最適な充電タイミングを予測するものです。

スマート充電器とHEMSの活用

スマート充電器やHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を導入すれば、EV充電の自動最適化が実現できます。

スマート充電器は通常の充電器と異なり、インターネットに接続して遠隔制御ができる機能を備えています。太陽光発電システムと連携させれば、発電量に応じて充電出力を自動調整することが可能です。

HEMSはさらに高度な制御を可能にします。HEMSは家庭内のさまざまな電力消費機器と連携し、家全体の電力の流れを最適化します。例えば、「太陽光発電の余剰電力がXkWを超えたらEV充電を開始する」「電力会社からの買電が発生しそうな場合はEV充電を一時停止する」といった細かい設定が可能です。

充電管理アプリの機能と使い方

EVメーカーや充電器メーカーが提供する充電管理アプリを活用することで、スマートフォンからEVの充電状況を確認したり、充電スケジュールを設定したりすることができます。

主な機能としては、以下のようなものがあります:

  • リモート充電制御:外出先からでもスマートフォンを使って充電の開始・停止が行えます。
  • 充電タイマー設定:あらかじめ充電を開始する時間と終了する時間を設定できます。
  • 充電上限の設定:バッテリーの寿命を延ばすために、充電を80%や90%で停止するといった設定もできます。
  • 発電量連動機能:一部の高度なアプリでは、太陽光発電量と連動して充電出力を自動調整する機能があります。

V2H(Vehicle to Home)システムによる双方向の電力活用

V2H(Vehicle to Home)システムは、従来の「家からEVへの充電」だけでなく、「EVから家への給電」も可能にする双方向のエネルギー活用システムです。

V2Hシステムを導入すれば、EVを「走る蓄電池」として活用できるようになります。太陽光発電で作った電気をEVに蓄え、必要に応じてその電力を家庭で使うという循環が生まれるのです。

V2Hシステムの仕組みとメリット

V2Hシステムの主なメリットは以下の通りです:

電気代の削減:深夜電力などの安い時間帯にEVを充電し、電気料金が高い昼間にその電力を家庭で使用することで、電気代を大幅に削減できます。

非常時のバックアップ電源:災害や停電時には、EVのバッテリーを非常用電源として利用できます。一般的なEVのバッテリー容量は40kWh以上あり、これは平均的な家庭の3~4日分の電力消費量に相当します。

再生可能エネルギーの有効活用:太陽光発電と組み合わせることで、発電した電力を無駄なく活用できます。例えば、晴れた日の昼間に余った発電量をEVに充電し、夜間や曇りの日にその電力を家庭で使用することで、自給自足率を高められます。

充電スピードの向上:一般的な家庭用コンセントでの充電(3kW程度)と比べて、V2Hシステムは6kW程度の出力で充電できるものが多く、充電時間を約半分に短縮できます。

V2Hを活用した充放電スケジュールの最適化

V2Hシステムを導入すれば、より柔軟で効率的な充放電スケジュールの設計が可能になります。

基本パターン:日中充電・夜間放電 最も一般的なのは、太陽光発電が活発な日中にEVを充電し、夜間に家庭へ給電するパターンです。例えば、10時から14時頃の発電ピーク時にEVを充電し、夕方以降、電力需要が高まる時間帯にEVから家庭へ給電することで、電力会社からの買電を減らせます。

天気予報連動パターン 翌日の天気予報に基づいて充放電計画を立てる方法も効果的です。例えば、翌日が晴れる予報なら、夜間はEVの充電を必要最小限にとどめ、翌日の太陽光発電でしっかり充電する計画を立てます。逆に雨や曇りの予報なら、夜間の安い電力でEVをしっかり充電しておきます。

卒FIT後の太陽光発電を活かすEV充電戦略

固定価格買取制度(FIT)の終了後、売電単価が大幅に下がるため、発電した電力は売るよりも自家消費に回した方が経済的です。そこで注目されるのがEV充電への活用です。

卒FIT後の太陽光発電所有者にとって、EVは余剰電力の「受け皿」として理想的な存在です。大容量のバッテリーを持つEVに太陽光発電の電力を蓄えることで、発電した電力を無駄なく活用できます。

卒FIT後の電力活用のベストプラクティス

卒FIT後の太陽光発電システムの電力を最大限活用するには、「売電」から「自家消費」へと発想を転換することが重要です。

自家消費優先の考え方 卒FIT後の売電単価は8~10円/kWh程度と低く設定されています。一方、電力会社から購入する電気の単価は約20~30円/kWh程度です。この差額を考えると、発電した電力は売るよりも自分で使った方が明らかにお得です。

EVへの充電を優先 自家消費の中でも、EVへの充電を優先すると大きな経済効果が期待できます。ガソリン車の燃料代は年間10万円以上かかることも珍しくありませんが、これをEVに置き換え、さらに太陽光発電の電力で充電すれば、この燃料代をほぼゼロにできる可能性があります。

経済効果の試算例

卒FIT後の太陽光発電システムとEVを組み合わせた場合の経済効果を具体的に試算してみましょう。

前提条件

  • 太陽光発電システム:4kW(年間発電量約4,800kWh)
  • 家庭の年間電力消費量:4,000kWh
  • 太陽光発電の自家消費率:30%(EVなし時)
  • 卒FIT後の売電単価:8.5円/kWh
  • 電力購入単価:25円/kWh
  • 年間走行距離:10,000km
  • ガソリン車の燃費:15km/L、ガソリン価格:150円/L
  • EVの電費:6km/kWh

ガソリン車使用の場合(卒FIT後)

  • 自家消費による電気代節約:36,000円
  • 売電収入:28,560円
  • ガソリン代:100,000円
  • 年間収支:-35,440円(支出)

太陽光発電+EV+V2Hの場合(卒FIT後)

  • 自家消費による電気代節約:36,000円
  • EV充電による燃料代節約:100,000円
  • 余剰電力の売電収入:14,386円
  • 年間収支:150,386円(収益・節約)

この試算からわかるように、卒FIT後の太陽光発電システムにEVとV2Hを組み合わせることで、年間約18万円以上の経済効果が期待できます。これは、ガソリン代の削減と自家消費率の向上による効果です。

まとめ:持続可能な暮らしを実現するEV充電最適化

太陽光発電を活用したEV充電の最適化は、経済的なメリットと環境への貢献を両立させる素晴らしい方法です。卒FIT後の太陽光発電システムの新たな活用法として、また日々の電気代削減策として、ぜひ検討してみてください。

 

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