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太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)が終了する方へ向けた、対応準備と手続きの完全ガイドです。時系列で何をすべきか、わかりやすく解説します。

卒FITとは?基本を理解しよう

卒FITとは、太陽光発電の「固定価格買取制度(FIT)」による電力買取期間が満了することを指します。住宅用太陽光発電の場合、買取期間は法律で10年間と定められています。

この期間が終わると、今まで高額(24円~48円/kWh)で買い取ってもらえていた余剰電力の買取価格が大幅に下がります。これが「卒FIT」と呼ばれる状態です。

重要なポイント

  • 何も対策をしないと、余剰電力が「0円」で引き取られるだけになります
  • 満了日は発電を開始した日から10年後の同じ日です
  • 卒FIT後も太陽光パネルは発電し続けるため、活用方法の検討が必要です

FIT満了時期の確認方法

卒FITの時期を確認する方法はいくつかあります。

  1. 買取期間満了通知で確認する
    • 満了の4~6ヶ月前頃に「FIT制度 買取期間満了のご案内」が届きます
    • この通知に「買取満了日」が明記されているので必ず確認しましょう
    • 通知には設備IDなど、今後の手続きに必要な情報も記載されているため大切に保管してください
  2. 契約書や検針票で確認する
    • 売電契約書に「売電開始時期」が記載されています
    • 毎月の検針票(電力購入量のお知らせ)に「FIT買取開始年月日」や「買取期間満了日」が記載されています
  3. 電力会社のWebサービスで確認する
    • 電力会社の会員向けサイトで確認できる場合があります
    • 例えば東京電力管内では「購入電力量のお知らせ」のWeb画面で満了日が確認できます

卒FIT通知が届いたらすぐやること

買取期間満了の通知が届いたら、速やかに以下の3つのステップを実行しましょう。放置すると卒FIT後に発電した電力が無償で引き取られるだけになってしまいます。

ステップ1:通知内容の確認

  • 通知書に記載された「買取期間満了日」をメモしておきましょう
  • 現在の売電先も確認してください
  • 通知内容がわからない場合は、記載の問い合わせ先に電話で確認しましょう

ステップ2:書類の保管

  • 通知書はコピーを取るなどして必ず保管してください
  • 紛失すると再手続きが面倒になる場合があります

ステップ3:家族との方針相談

  • 卒FIT後の選択肢について家族で話し合いましょう
  • 「売電を続けるか」「蓄電池を導入するか」など方向性を決めます

満了通知を受け取ってから対策するまでには時間がかかります。特に蓄電池導入を検討する場合は、見積もり取得や工事日程調整に1〜3ヶ月程度必要なため、早めの行動が大切です。

重要書類の確認リスト

卒FIT後の手続きには以下の情報や書類が必要になります。あらかじめ確認・準備しておきましょう。

必要な書類と情報

  • 設備ID(10桁の英数字)
  • 買取満了日
  • 現在の売電先
  • 発電設備の容量(kW)
  • 設置場所住所
  • 契約者名義

これらの情報は主に以下の書類から確認できます。

  • 買取期間満了通知書
  • 売電契約書
  • 設備認定通知書(経済産業省発行)
  • 毎月の検針票(購入電力量のお知らせ)

書類を紛失した場合でも安心してください。現在の売電先(電力会社)に連絡すれば、多くの場合再発行や情報確認に対応してもらえます。設備認定通知書については、太陽光発電協会(JPEA)代行申請センター(電話:0570-03-8210)が再発行などに対応しています。

卒FIT後の3つの選択肢

卒FIT後には主に3つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを理解して、ご家庭にとって最適な方法を選びましょう。

1. 売電を継続する

  • メリット:追加費用がかからず、売電収入が続く
  • デメリット:売電価格がFIT期間中より大幅に下がる(7〜10円/kWh程度)

2. 蓄電池を導入して自家消費を増やす

  • メリット:電気代の削減効果が大きい、停電時の備えになる
  • デメリット:初期投資が高額(100〜200万円程度)

3. 何もしない(余剰電力を無償で提供)

  • メリット:手続き不要で手間がかからない
  • デメリット:発電した電力が有効活用されず、経済的メリットがない

近年は電気自動車(EV)と連携して余剰電力を活用する選択肢も注目されています。すでにEVをお持ちの方や購入予定の方は、このオプションも検討する価値があるでしょう。

売電継続のメリットと単価相場

売電を継続する場合のメリットは、何と言っても追加投資なしで収入が得られる点です。特に設備に問題がなく、昼間は外出していることが多いご家庭には適した選択肢と言えます。

売電継続のメリット

  • 追加投資や設備導入の必要がない
  • 契約手続きだけで完了し、手間が最小限
  • スマートメーターへの交換も無料で対応してもらえる

現在の買取価格相場

  • 一般的な相場は7〜10円/kWh程度
  • 地域や電力会社によって異なる
  • 新電力会社に切り替えると1〜2円ほど単価が上がるケースもある

例えば、年間3,000kWhの余剰電力がある場合、FIT期間中に42円/kWhで売電していた家庭では年間12.6万円の収入でしたが、卒FIT後に8円/kWhで売電すると年間2.4万円の収入になります。収入は大幅に減りますが、追加コストなしで得られる利益と考えれば悪くない選択肢です。

手続きも簡単で、多くの場合はWebサイトからの申込みだけで完了します。契約切替に伴う工事も基本的には発生しません。

蓄電池導入で自家消費を増やす

蓄電池を導入すると、昼間に発電した余剰電力を蓄えて夜間に使用できるようになります。電気代の節約効果が高く、長期的には経済メリットが大きくなる可能性があります。

蓄電池導入のメリット

  • 電気代削減効果が大きい(売電より自家消費の方が経済価値が高い)
  • 停電時のバックアップ電源として使える
  • 電気代高騰リスクに備えられる

蓄電池導入の費用相場

  • 容量にもよりますが、一般的に100〜200万円程度
  • 国や自治体の補助金を活用できる場合がある(数十万円の補助)
  • 工事費込みの価格になることがほとんど

電気代削減効果の例:昼間の余剰電力10kWh/日をすべて蓄電池に貯めて夜間に使用した場合、1日あたり約200〜300円の電気代節約になります。年間で7〜11万円程度の節約効果が期待できます。

投資回収には時間がかかりますが、補助金活用や電気代上昇を考慮すると、10〜15年程度で回収できるケースも多いです。また、非常時の電源確保という金額では測れない価値もあります。

卒FIT直前チェックリスト

卒FIT満了日が近づいてきたら、以下の5つのポイントを必ず確認しておきましょう。これにより、スムーズな移行が可能になります。

1. 太陽光発電設備の状態確認

  • 発電量に大きな低下がないかモニターでチェック
  • パネルの汚れがひどい場合は清掃を検討
  • パワーコンディショナの動作確認
  • 売電メーターがスマートメーターになっているか確認

2. 契約情報と書類の整理

  • 設備ID、発電容量、満了日などの情報をメモにまとめる
  • 契約書、認定通知書、満了通知書などをファイリング
  • 紛失書類がある場合は再発行を済ませておく

3. 今後のプラン最終決定

  • 売電継続か蓄電池導入か最終決定
  • 売電先を変更する場合は契約先を決定し申込み
  • 蓄電池導入の場合は機種選定と業者契約を進める

4. 現行契約の終了確認

  • 現在の売電契約が満了と同時に自動解約されるか確認
  • 自動継続プランがある場合、必要に応じて停止手続き
  • 新契約の開始日と現契約の終了日の整合性確認

5. 非常時への備え検討

  • 停電時の対応策を確認
  • 蓄電池導入しない場合でも、自立運転コンセントの場所と使い方を把握
  • 必要に応じて非常用電源の準備を検討

これらのチェックポイントを事前に確認しておくことで、卒FIT後もスムーズに太陽光発電のメリットを享受し続けられます。

太陽光発電設備の点検と確認

卒FIT直前には、設備の状態をしっかり確認しておくことが重要です。10年近く使用してきた設備ですので、不具合がないか点検しておきましょう。

パネルの点検ポイント

  • 発電量が極端に下がっていないか確認(経年劣化で10〜15%程度の低下は正常)
  • パネル表面の目視チェック(汚れ、変色、破損などがないか)
  • 屋根や架台に問題がないか確認(雨漏りの兆候、錆びなど)

パワーコンディショナの確認

  • 正常に動作しているか(エラー表示がないか)
  • 異音や異臭がないか
  • 保証期間が切れている場合が多いので、異常があればメーカーに相談

メーターの確認

  • 売電用メーターがスマートメーターになっているか確認
  • アナログメーターの場合は、卒FIT後の契約切替時に自動的に交換案内が来ます

設備に不安がある場合は、専門業者による点検を依頼することも検討しましょう。10年以上使用する資産ですので、適切なメンテナンスが長期的な発電効率維持につながります。

新たな売電契約の手続き方法

卒FIT後も売電を継続したい場合、新たな電力会社との契約手続きが必要です。手続きの流れは次の通りです。

1. 買取先を選ぶ

  • 資源エネルギー庁の一覧や各社Webサイトで買取プランを比較
  • 買取価格だけでなく、契約期間や解約条件も確認
  • 可能であれば複数社から見積もりを取ると良い

2. 申込み手続き

  • 選んだ会社のWebサイトや電話で申込み
  • 必要事項(設備ID、買取満了日、設備容量など)を記入
  • 満了通知書のコピーの提出を求められる場合あり

3. 契約内容の確認と契約成立

  • 買取事業者から契約内容の案内が届く
  • 買取単価や契約条件を確認して同意
  • 契約書への署名・捺印(電子契約の場合はWeb上で完結)

4. スマートメーターの設置確認

  • スマートメーターが未設置の場合、自動的に交換工事の案内が来る
  • 交換工事は送配電事業者が無料で実施(立会いは原則不要)
  • 10〜30分程度の停電を伴う簡易な工事

5. 売電開始と支払い

  • 契約開始日(FIT満了日の翌日以降)から新契約による売電開始
  • 買取金額は月ごとまたは一定期間ごとに指定口座へ振込み
  • 電力会社によってポイント付与などの独自の支払形態もある

多くの電力会社では違約金なしで解約できるプランを提供しています。もし買取条件に満足できなかった場合は、他社への乗り換えも検討できます。

スマートメーターについて知っておくこと

スマートメーターは、通信機能を備えたデジタル式の電力量計です。卒FIT後の売電契約には原則としてスマートメーターが必要になります。

スマートメーターのメリット

  • 30分ごとの電力量データを自動送信するため、正確な計量が可能
  • 検針員の訪問が不要になる
  • 発電・消費の「見える化」ができる(HEMSと連携する場合)
  • 将来的な電力サービス(ダイナミックプライシングなど)に対応できる

設置費用と手続き

  • 交換費用は電力会社(送配電事業者)が全額負担
  • お客様の初期費用は一切不要
  • 契約切替時に自動的に交換案内が来る
  • 交換工事は10〜30分程度の停電を伴う簡易なもの
  • 立会いは原則不要で、日中に実施される

注意点

  • メーター交換後は計器番号が変わるため、売電明細などで確認が必要
  • まれに通信環境の整っていない地域では別途対応が必要な場合あり
  • スマートメーターにはBルートと呼ばれる宅内向け通信ポートがあり、希望すれば自宅のエネルギーデータを詳細に把握可能

スマートメーター未設置でも心配はいりません。卒FIT後の契約切替にあたり必要な場合は、送配電会社が無償で対応してくれます。特別な申請は不要で、契約情報に基づき自動的に案内されます。

最適な選択肢の見つけ方

ご家庭のライフスタイルによって、最適な卒FIT対策は異なります。以下のような観点から、自分に合った選択肢を見つけましょう。

昼間留守がちな家庭におすすめ

  • 「売電継続」が最適な選択肢
  • 自家消費率が低いため、余剰電力を売電した方が有効活用できる
  • 電力会社を比較して少しでも高い買取価格を狙う

在宅時間が長い家庭におすすめ

  • 「蓄電池導入」でより多くのメリットを得られる可能性あり
  • 電気代が高い時間帯の消費を自家発電でまかなうことができる
  • 電気代削減効果が大きく、投資回収も比較的早い

防災意識の高い家庭におすすめ

  • 「蓄電池導入」で停電時の備えを強化
  • 太陽光発電と蓄電池の組み合わせで、長期停電にも対応可能
  • 経済性だけでなく安心感も含めた総合的な判断を

電気自動車をお持ちの家庭におすすめ

  • 「EV活用」で余剰電力を効率的に利用
  • 昼間のEV充電で燃料費削減
  • V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、さらに効果的

ご家庭の電気使用パターンや将来計画も考慮して、長期的な視点で選択することが大切です。迷った場合は、まずは費用のかからない「売電継続」から始め、後から蓄電池導入を検討するという段階的なアプローチも選択肢の一つです。

電気代削減効果の比較ポイント

卒FIT後の選択肢を経済面から比較する際のポイントをご紹介します。単純な売電収入だけでなく、総合的な経済効果を見ることが重要です。

売電と自家消費の価値の違い

  • 売電価格:7〜10円/kWh程度
  • 買電価格(電気代):20〜30円/kWh程度
  • 自家消費すれば、その分の買電代が節約できる(1kWhあたり約3倍の価値)

計算例

  1. 売電継続の場合
    • 年間余剰電力:3,000kWh
    • 買取単価:8円/kWh
    • 年間売電収入:24,000円
  2. 蓄電池導入の場合
    • 同じ3,000kWhを自家消費に回した場合
    • 電気代単価:25円/kWh
    • 年間電気代削減額:75,000円
    • 蓄電池導入費用(200万円)の単純回収年数:約27年
    • 補助金(50万円)利用時の回収年数:約20年

実際には、蓄電池の全容量を毎日使い切れるわけではなく、システム効率も100%ではないため、上記よりも回収期間は長くなることが一般的です。しかし、電気代の上昇や補助金の活用、停電時の安心感なども含めて総合的に判断することが大切です。

また、長期的に見れば蓄電池導入の方が経済的メリットが大きいケースも多く、ある試算では15年間で見ると「太陽光のみ継続」より「太陽光+蓄電池設置」の方が約245万円も得になるとの結果も出ています。

まとめ:卒FIT対策は早めの準備が鍵

卒FIT対策は、通知が届いてから満了日までの間に準備を進める必要があります。余裕を持って行動すれば、ご家庭に最適な選択肢を見つけることができます。通知が届いたらすぐに内容を確認し、早めの行動開始を心がけましょう。

 

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