
蓄電池とは?家庭での役割を解説
蓄電池は電気を貯めておくための装置です。家庭用蓄電池は主に太陽光発電システムと連携して使われることが多く、昼間に発電した電力を夜間に使ったり、停電時のバックアップ電源として活用したりします。
基本的な仕組みはスマートフォンなどの充電池と同じですが、蓄えられる容量が数kWh~十数kWhと大きく、家庭の電力をまかなえる出力を持っています。太陽光発電と組み合わせることで、自宅で発電した電気を無駄なく活用でき、電気代の節約や環境負荷の低減につながります。
特に近年注目されているのが、FIT(固定価格買取制度)の期間が終了した「卒FIT」世帯での活用です。10年間の買取期間が終わると、余剰電力の買取価格が大幅に下がるため、蓄電池を導入して自家消費率を高める選択肢が注目されています。
現在の家庭用蓄電池は軽量で高性能なリチウムイオン電池が主流で、太陽光発電との連携方法によって「ハイブリッド型」と「単機能型(AC連系型)」に分かれています。
蓄電池を導入する5つのメリット
電気代の削減効果
蓄電池導入の最大のメリットの一つが電気代の削減効果です。太陽光発電と組み合わせると、余剰電力を蓄電池に貯めて夜間に使用することで電力会社からの購入を減らせます。卒FIT後は余剰電力の売電単価が10円/kWh前後と低くなるため、売電するよりも自家消費した方が経済的です。
また、夜間の電気料金が安い時間帯別プランを契約し、安い深夜電力で蓄電池を充電して、電気料金が高い時間帯に使うことでも電気代を抑えられます。
家庭の電力使用パターンや太陽光発電の規模にもよりますが、一般的には年間で3~5万円程度の電気代削減効果が見込めます。太陽光発電と蓄電池を併用した場合は、年間10万円以上節約できるケースもあります。
災害・停電時の非常用電源に
近年、自然災害による大規模停電が各地で発生しています。蓄電池があれば非常用電源として電気を使い続けることができます。太陽光発電だけでは停電時に昼間しか発電できませんが、蓄電池と組み合わせれば夜間も電気を使えます。
例えば、容量4kWhの蓄電池があれば、テレビ・冷蔵庫・照明・スマホ充電器などの必需品(合計約850W)を約4.5時間使用できます。11kWhの大容量蓄電池なら同じ負荷で約12.5時間稼働可能です。
多くの蓄電池システムは太陽光発電との連携により、停電時でも日中に発電した電気を充電できるため、停電が長期化しても電気を使い続けられます。
太陽光発電の自家消費率アップ
太陽光発電の余剰電力を有効活用できることは、卒FIT後の世帯にとって大きなメリットです。FIT制度では10年間の固定価格買取期間が終了すると、売電単価が大幅に下がります(当初の48円/kWhから10円/kWh前後に)。
蓄電池を導入することで、安く売っていた余剰電力を自宅で使えるようになります。通常、太陽光発電だけの場合の自家消費率は30~40%程度ですが、蓄電池を併用すると70%以上に高められます。
4kWの太陽光発電設備がある家庭の場合、自家消費率が30%から70%に上がることで、年間の電力購入量を約1,000kWh削減できる可能性があります。これは年間約3万円の電気代削減に相当します。
環境負荷の低減
蓄電池の導入は地球環境への貢献にもつながります。太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、再生可能エネルギーの自家消費率が高まり、化石燃料による発電への依存度を下げられます。
一般家庭の電力消費量の30~50%を太陽光発電と蓄電池でまかなえば、年間で約1トンのCO2排出削減に貢献できます。これは杉の木約70本が1年間に吸収するCO2量に相当します。
さらに、電力需要が集中する時間帯に蓄電池から放電することで、電力会社の供給ピークを抑える「ピークシフト」にも貢献します。
電気自動車との連携可能性
近年注目されているのが、蓄電池と電気自動車(EV)の連携です。「V2H(Vehicle to Home)」技術により、EVの大容量バッテリーを家庭用電源として活用できます。
最新の「トライブリッド型」蓄電システムでは、太陽光発電・家庭用蓄電池・EVの3つを連携させることが可能です。昼間の余剰電力をEVにも充電し、必要に応じてEVから家庭に電力を供給できます。
例えば日産リーフの40kWhバッテリーは一般的な家庭用蓄電池の4~8倍の容量があり、停電時には家庭の電気を数日間まかなうことも可能です。
蓄電池導入の4つのデメリット
高い初期費用
蓄電池導入の最大のハードルとなるのが高額な初期費用です。家庭用蓄電池の価格は容量やメーカーによって異なりますが、工事費込みで100万円~200万円程度が相場です。
容量別の価格目安は以下の通りです:
- 小容量(5kWh未満):総額約100万円前後
- 中容量(5~10kWh未満):総額130~160万円前後
- 大容量(10kWh以上):総額160~200万円程度
この高い初期費用を回収するのに10年以上かかるケースも多く、経済面だけで導入を判断するのは難しい側面があります。ただし、補助金を活用することで、実質負担額を軽減できる可能性もあります。
設置スペースの確保
蓄電池本体は比較的大きなスペースを必要とします。一般的な家庭用蓄電池はエアコンの室外機より一回り大きい箱型で、重量も100~200kg超と重いため、設置場所の確保が課題となる場合があります。
屋外設置が一般的ですが、直射日光や雨を避ける場所が望ましく、コンクリート基礎や壁面への固定が必要なケースもあります。屋内設置の場合は、換気や防火上の条件を満たす必要があります。
充放電による劣化と寿命
蓄電池は使い続けると徐々に劣化し、容量が減少していきます。家庭用蓄電池の寿命は一般的に10~15年程度です。
リチウムイオン電池の場合、充放電の回数に限りがあり、約4,000~6,000回の充放電サイクル後には、初期容量の60~70%程度まで容量が低下します。毎日充放電を行うと約10~15年で交換が必要になる計算です。
多くのメーカーでは10年程度の保証期間を設けていますが、保証内容は製品によって異なります。10~15年後には買い替えが必要になることを考慮する必要があります。
貯められる電力量の制限
蓄電池に貯められる電力量は容量によって決まっており、使える電気には限りがあります。一般的な家庭用蓄電池の容量は5~10kWh程度ですが、これは一般家庭の1日の電力消費量(約10~15kWh)のすべてをまかなうには不十分な場合もあります。
特に停電時には、使える電力量が蓄電池の残量に依存するため、長時間の停電や電力を多く使う家電を使い続けると、あっという間に蓄電池が空になってしまう可能性があります。
まとめ:蓄電池導入を成功させるポイント
蓄電池導入を検討する際は、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 目的の明確化: 電気代削減が目的か、停電対策が主目的かによって選ぶ蓄電池のタイプや容量が変わります。
- 適切な容量選び: 太陽光発電の余剰量や夜間の電力使用量に合わせて、最適な容量を選びましょう。
- 複数社から見積もり取得: 価格や提案内容を比較するために、複数の施工業者から見積もりを取りましょう。
- 補助金の活用: 国や自治体の補助金制度を活用して、初期費用の負担を軽減しましょう。
- メーカー保証の確認: 各メーカーの保証内容(期間や容量維持率など)を比較検討することも重要です。
蓄電池は単なる電気の貯蔵装置ではなく、自宅のエネルギーマネジメントを変える重要な設備です。経済面だけでなく、停電時の安心感や環境貢献など、総合的な価値を考慮して導入を検討しましょう。特に卒FIT世帯では、余剰電力の有効活用という大きなメリットがあります。
自宅の状況や生活スタイルに合った蓄電池を選ぶことで、長期的に満足のいく投資となるでしょう。