no image管理者

再エネ100とは?基本概念と意義を理解しよう

「再エネ100」とは、使用する電力の100%を太陽光や風力などの再生可能エネルギーでまかなうことを目指す取り組みを指します。企業や自治体、そして一般家庭においても注目されている概念です。

世界的に見ると、気候変動対策としてCO2排出削減の重要性が高まる中、エネルギー源を従来の化石燃料から再生可能エネルギーへと転換する動きが加速しています。特に日本では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一環として、再エネ100%の普及が推進されています。

再エネ100を目指す意義は単なる環境保護だけではありません。エネルギー自給率の向上、電気代節約、災害時のエネルギー確保など、私たちの生活に直結するメリットがあります。また、卒FIT(固定価格買取制度終了)を迎えた太陽光発電設備を持つご家庭にとっては、その後の有効活用法として再エネ100を目指すことは大きな意味があります。

RE100とRE Actionの違いとは

「RE100」と「再エネ100宣言 RE Action」は、どちらも再エネ100%利用を目指す枠組みですが、対象や参加条件に違いがあります。

RE100は国際的な企業連合で、グローバル企業を対象としています。年間消費電力量が10GWh以上(一般家庭約3,000軒分)という大規模な電力消費が参加条件となっており、Apple、Google、マイクロソフトなどの世界的企業が加盟しています。

一方、再エネ100宣言 RE Actionは日本独自の取り組みで、中小企業や自治体、教育機関など比較的小規模な組織でも参加できます。RE100に参加できない規模の団体が、再エネ100%に取り組むためのプラットフォームとして2019年に設立されました。

参加条件も、「使用電力を100%再エネに転換する意思と目標年限を設定すること」とシンプルで、すでに多くの中小企業や地方自治体が参加しています。

再エネ100に参加するメリット

再エネ100への参加は、環境貢献だけでなく、様々なメリットをもたらします。

企業イメージの向上:消費者の環境意識が高まる中、再エネ100%に取り組む企業は社会的評価が高まります。ESG投資の対象にもなりやすく、企業価値の向上につながります。

企業間の情報交換と協力:再エネ100宣言の参加団体間では、再生可能エネルギー導入に関する情報交換や協力が活発に行われています。これにより、効率的なエネルギー転換が可能になります。

長期的なコスト削減:再生可能エネルギーの価格は年々低下しており、特に自家発電設備を導入すれば、電力会社からの購入に頼らないエネルギー調達が可能になります。

エネルギーリスクの軽減:地政学的要因による燃料価格の高騰や供給不安に左右されない、安定したエネルギー調達が可能になります。

個人や家庭においても、電気代の削減や災害時の電力確保など、再エネ100%に近づくことで得られるメリットは大きいと言えるでしょう。

家庭で実現する再エネ100%生活

一般家庭でも再エネ100%、つまり使用する電力の全てを再生可能エネルギーでまかなう生活は、現在の技術で十分に実現可能です。特に太陽光発電設備を持つ家庭では、その活用が再エネ100%への第一歩となります。

家庭での再エネ100%実現には主に二つのアプローチがあります。一つは自宅に太陽光発電などの設備を設置して自家発電する方法、もう一つは電力会社の再エネ100%プランを利用する方法です。

理想的なのは、自家発電と再エネ電力プランを組み合わせることです。日中は太陽光で発電した電力を使い、夜間や発電量が少ない日は再エネ由来の電力を購入するという方式です。

特に卒FITを迎えた太陽光発電設備をお持ちの方は、売電収入は減少しても、自家消費に回すことでより大きな経済的メリットを得られるようになります。電気料金の高騰が続く中、自家発電した電力を最大限活用することが、家計の助けにもなるのです。

太陽光発電が果たす中心的役割

家庭における再エネ100%生活の中心となるのが太陽光発電です。日本の一般的な家庭用太陽光発電システム(4~6kW)は、年間で約4,000~6,000kWhの電力を生み出します。これは一般家庭の年間電力消費量と同程度か、それ以上の量です。

太陽光発電による環境貢献も見逃せません。太陽光発電協会によると、結晶シリコン系の太陽光パネル1kWは年間約0.53トンのCO2削減効果があります。つまり、4kWのシステムでは年間約2トンのCO2排出を削減できる計算になります。これはスギの成木約226本が1年間で吸収するCO2量に匹敵する量です。

卒FIT後の太陽光パネルは、初期投資回収が終わった「純利益」の再生可能エネルギー源とも言えます。FIT期間終了後も、パネルは発電能力を保持しており、自家消費に回せば電気代削減効果は継続します。また、余剰電力は新たな買取プランで売電することも可能です。

太陽光で発電した電力を自宅で使用することは、家庭のカーボンフットプリント(CO2排出量)を大幅に削減することにもつながります。環境省の調査によれば、一般家庭の電力消費に伴うCO2排出量は年間約1.6トンとされていますが、太陽光発電でこれをカバーすれば、その分のCO2排出をゼロにできるのです。

蓄電池との組み合わせで自給率アップ

太陽光発電の最大の課題は、発電が天候に左右され、夜間は発電できないことです。この問題を解決し、自給率を高めるのが蓄電池です。

蓄電池を導入すると、日中の余剰電力を貯めておき、夜間や天候不良時に使用することができます。これにより、自家発電した電力の自家消費率を大幅に向上させることが可能です。

例えば、5kWの太陽光発電設備と10kWhの蓄電池を組み合わせた場合、晴天時には日中の余剰電力を蓄電し、夜間の電力需要をカバーできます。場合によっては、1日の電力需要を100%自家発電でまかなうことも可能になります。

蓄電池には他にも多くのメリットがあります。

  • 電気代の節約:電力会社からの購入を減らし、自家発電電力の活用を最大化
  • ピークカット効果:電力需要のピーク時に蓄電池から放電することで、最大需要電力を抑制
  • 停電時のバックアップ電源:災害時や計画停電時も太陽光と蓄電池で電力を確保

蓄電池は価格も下がりつつあり、今後ますます家庭への普及が進むと予想されています。卒FIT太陽光と組み合わせることで、再エネ100%生活への大きな一歩となるでしょう。

再エネ100%を実現している事例紹介

再エネ100%は理想論ではなく、すでに実践されている現実的な取り組みです。ここでは、実際に高い再エネ自給率を達成している事例を紹介します。

先進的な家庭の取り組み

環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏のご自宅では、太陽光パネル約10kWと電気自動車(EV)、そしてV2H(Vehicle to Home)システムを組み合わせることで、年間の電力自給率80%以上を達成しています。

天候の良い月には自給率86~87%という高い数値を実現し、雨の多い月でも約67%の電力を自家発電でまかなうことに成功しています。この事例は、適切な設備設計と運用によって、一般家庭でも高い再エネ比率が達成可能であることを示しています。

また、住宅メーカーが提供するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)では、高断熱・省エネと太陽光発電の組み合わせにより、年間の一次エネルギー収支をゼロ以下にすることを目指しています。セキスイハイムの「スマートパワーステーション100% Edition」のように、理論上は電力自給率100%を実現できるモデルハウスも登場しています。

自治体の再エネ100の取り組み

自治体レベルでも再エネ100%を推進する動きが活発化しています。例えば、東京都港区の「MINATO再エネ100」プロジェクトでは、区内で使用される電力の再生可能エネルギー割合100%を目指しています。

このプロジェクトでは、区民向けと事業者向けの両方で取り組みを展開しています。区民向けには「みんなでいっしょに自然の電気」キャンペーンや「みんなのおうちに太陽光」キャンペーンを実施し、家庭での再エネ導入を支援しています。

事業者向けには「MINATO再エネオークション」や「再エネ100電力利用事業者認定」制度を設け、区内事業者の再エネ電力導入を促進しています。さらに、再エネ電力導入サポート事業として、再エネ100%電力プランに切り替えた個人や中小企業に対して支援金を交付する取り組みも行っています。

このような自治体の取り組みは、地域全体で再エネ100%を目指す動きを加速させ、個人や企業の参加を促進する重要な役割を果たしています。

再エネ100%実現のための補完技術

太陽光発電だけで再エネ100%を達成するのは難しいケースもあります。そこで役立つのが、他の再エネ技術や効率的なエネルギー利用システムです。

他の再生可能エネルギーとの組み合わせ

太陽光発電を補完する再生可能エネルギー技術として、以下のようなものがあります。

小型風力発電:屋根や庭に設置できる小型の風車で、特に夜間や悪天候時にも発電できるため、太陽光発電を補完する役割を果たします。設置には地域の規制や風況の確認が必要ですが、適した環境であれば有効な選択肢です。

太陽熱温水器:太陽の熱を利用してお湯を沸かすシステムで、電気を使わずにお湯を得られるため、給湯用のエネルギー消費を削減できます。太陽光発電と併用することで、より高い再エネ率を達成できます。

地中熱利用システム:地下の安定した温度を利用して、冷暖房効率を高めるシステムです。ヒートポンプと組み合わせることで、冷暖房用のエネルギー消費を大幅に削減できます。

これらの技術を組み合わせることで、天候や時間に左右されにくい安定した再エネ利用が可能になります。また、家の断熱性能を高めたり、高効率家電に切り替えたりする「省エネ」の取り組みも、再エネ100%達成には不可欠です。

EV・V2Hシステムの活用法

電気自動車(EV)と家をつなぐV2H(Vehicle to Home)システムは、再エネ100%生活を支える強力なツールです。

EVのバッテリーは容量が大きく(一般的な家庭用蓄電池の3~10倍程度)、V2Hシステムを導入すれば、この大容量バッテリーを家庭用の蓄電池として活用できます。日中に太陽光で発電した電力でEVを充電し、夜間はその電力を家で使用するという運用が可能になります。

V2Hシステムの主なメリットは以下の通りです。

  • 大容量蓄電池としての活用:一般的なEVのバッテリー容量は40~100kWh程度で、これは家庭の1日分以上の電力消費量に相当します
  • 災害時の非常用電源:停電時にもEVのバッテリーから電力を供給できるため、防災面でも有効です
  • 経済的メリット:夜間の安い電力でEVを充電し、日中の高い時間帯に家で使うことで、電気代の節約につながります

V2Hシステムは導入コストがかかるものの、EVを所有している家庭にとっては、再エネ100%に近づくための強力な選択肢となります。

再エネ100%推進のための補助金・支援制度

再エネ100%生活の実現に向けて、様々な補助金や支援制度が用意されています。これらを活用することで、導入コストを抑えることができます。

国の補助金制度:経済産業省や環境省が実施する太陽光発電や蓄電池導入への補助金があります。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)への補助や、蓄電池導入支援などが代表的です。

自治体の支援制度:都道府県や市区町村レベルでも独自の支援制度を設けているケースが多いです。例えば東京都港区の「MINATO再エネ100電力導入サポート事業」では、再エネ100%電力プランへの切り替えに対して補助金を交付しています。

電力会社の再エネプラン:多くの電力会社が再エネ100%電力プランを提供しています。これらのプランを利用すれば、自宅に設備を導入しなくても再エネ100%を達成できます。

PPAモデル:初期費用ゼロで太陽光発電設備を導入できる「第三者所有モデル(PPA)」も普及しつつあります。設備は専門業者が所有し、発電した電力を購入する形になります。

これらの制度を組み合わせることで、再エネ100%への移行コストを抑えることができます。特に卒FIT後の太陽光発電設備を持つ家庭では、蓄電池導入への補助金を活用することで、より効率的に電力を自家消費できるようになります。

まとめ:卒FIT太陽光で再エネ100%生活を目指そう

卒FITを迎えた太陽光発電設備は、再エネ100%生活への大きな一歩です。売電収入は減少しても、自家消費によって電気代を節約し、環境にも貢献できます。

蓄電池やEV・V2Hシステムを組み合わせれば、さらに高い自給率を達成できます。完全な自給自足は難しくても、高い再エネ率を目指すことは十分可能です。

再エネ100%は環境貢献だけでなく、経済的メリットや災害時の安心にもつながります。卒FIT太陽光を活かし、持続可能なエネルギー生活を実現しましょう。

 

売電先の変更をご検討の方はこちら

蓄電池の導入をご検討の方はこちら

公開範囲 一般公開
公開日時

環境貢献

environmental-impact