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太陽光発電のFIT制度(固定価格買取制度)の契約期間満了を迎えた方々にとって、蓄電池の導入は大きなメリットとなります。「卒FIT」後の余剰電力を有効活用し、電気代削減や非常時の備えを強化するため、蓄電池設置を検討される方も多いでしょう。本記事では、蓄電池導入をスムーズに進めるための設置工事の流れやチェックポイントについて解説します。

蓄電池設置工事の流れを知ろう

蓄電池は太陽光発電と組み合わせることで、昼間に余った電気を貯めて夜間に使えるようになります。とくに卒FITを迎えた太陽光発電所有者にとっては、売電価格が10円/kWh程度と大幅に下がる中、自家消費率を高められる蓄電池の価値は大きいといえます。しかし設置工事は専門的な電気工事を伴い、適切なプロセスを経る必要があります。

蓄電池設置工事の一般的な流れは次のとおりです。

  1. 現地調査・プランニング
  2. 設置場所の決定・基礎工事
  3. 機器設置・電気配線工事
  4. 試運転・初期設定
  5. 完了検査・引き渡し

工事期間は基礎工事の方法や設置条件によって異なりますが、通常1〜2日程度で完了します。機種や設置環境によっては、コンクリート基礎を打設する場合、養生期間を含めて数日を要することもあります。

工事前の準備と確認事項

スムーズな工事を進めるためには、事前の準備と確認が重要です。以下のポイントを工事の前に確認しておきましょう。

設置場所の検討

蓄電池本体は大きさや重さがあります。標準的な家庭用蓄電池はエアコン室外機より一回り大きく、重量も100〜200kg以上あるため、設置場所の床面強度やスペースに余裕があるか確認が必要です。また、直射日光や雨風を避けられる場所が望ましく、多くの場合は屋外の軒下や北側などが選ばれます。

電気配線の経路確認

蓄電池から分電盤までの配線経路も重要です。壁を貫通させたり、床下や天井裏を通したりする場合もあるため、住宅の構造や既存設備の位置関係を確認しておくと、工事当日がスムーズに進みます。

工事業者の選定

蓄電池工事には電気工事士の資格が必要です。また、多くのメーカーは自社製品の取り付けに関して専門の講習を実施しており、その修了者(指定工事店)に施工を依頼するのが安心です。業者選びの際には、施工実績、アフターサービス体制、工事保証内容なども重要な判断材料となります。

設置工事の標準的な所要時間

蓄電池の設置工事にかかる標準的な時間は以下のとおりです。

  • 基礎工事:2〜4時間
  • 蓄電池本体・パワーコンディショナーの取り付け:2〜3時間
  • 電気配線工事:1〜2時間
  • 試運転・初期設定:1時間程度

これらを合わせると、基本的には1日(5〜7時間程度)で完了することが多いですが、設置環境や機種によっては2日に分けて行われることもあります。特にコンクリート基礎を新たに打設する場合は、硬化時間が必要なため、基礎工事と機器設置が別日程になることが一般的です。

蓄電池設置の具体的なステップ

蓄電池設置工事は、いくつかのステップに分けて進められます。それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

STEP1:現地調査と設計

工事の第一歩は、設置場所や住宅環境の確認を行う現地調査です。業者が訪問し、以下のような項目をチェックします。

  • 蓄電池本体やパワーコンディショナーの設置場所
  • 分電盤の状態と空きブレーカーの有無
  • 配線経路や配管の必要性
  • 特定負荷(停電時に電力を供給したい回路)の選定
  • 既存太陽光発電システムとの接続方法

現地調査の結果をもとに、最適な設置プランと見積りが作成されます。この段階で工事内容や費用について不明点があれば質問し、納得してから契約に進みましょう。

必要に応じて、電力会社への系統連系申請も行われます。特に太陽光発電と連携させる場合、出力制御対応などの手続きが必要になることがあります。申請から許可までに時間がかかることもあるため、設置工事の日程調整にはこの点も考慮されます。

STEP2:基礎工事

蓄電池は重量物のため、安定した基礎の上に設置する必要があります。基礎工事には主に以下のような方法があります。

コンクリート基礎

地面にコンクリートを打設し、硬化させてから蓄電池を設置します。最も安定性が高く、多くのメーカーが推奨する方法です。施工には以下のような手順で行われます。

  1. 設置場所の整地
  2. 型枠の設置
  3. コンクリートの打設
  4. 養生(1日以上)
  5. アンカーボルトの固定

コンクリート基礎は養生期間が必要なため、通常は基礎工事と機器設置を別日に分けて行います。

置き基礎

既製のコンクリート平板やブロックを利用する方法です。地面の状態が良好であれば、短時間で基礎を完成させることができます。

  1. 設置場所の整地
  2. 水平を確認しながらコンクリート平板を設置
  3. 必要に応じて複数枚を組み合わせる

置き基礎の場合、同日中に蓄電池本体の設置まで進められることが多いです。

基礎工事は蓄電池を長期間安定して使用するための土台となる重要な工程です。地盤の状態や製品の仕様に合わせて、最適な基礎工事方法が選ばれます。

STEP3:機器の設置と配線工事

基礎が完成したら、いよいよ蓄電池本体とパワーコンディショナーなどの機器を設置し、配線を行います。

蓄電池本体の設置

重量物である蓄電池本体は、複数の作業員で慎重に運搬・設置します。基礎上に正確に配置し、アンカーボルトやベースを使ってしっかりと固定します。設置後は水平が保たれているか確認し、必要に応じて調整が行われます。

パワーコンディショナーの設置

蓄電池システムには、電力を制御するパワーコンディショナー(パワコン)が必要です。既存の太陽光発電と連携する場合、機種によって以下のようなタイプがあります。

  • ハイブリッド型:太陽光発電と蓄電池を一台のパワコンで制御
  • 単機能型(AC連系型):蓄電池専用のパワコンを太陽光発電とは別に設置

パワコンは通常、屋外の壁面に専用の取付金具を使って設置されます。

分電盤・特定負荷分電盤の設置

停電時にも使用したい回路を分離するため、特定負荷用分電盤が設置されることがあります。既存の分電盤近くに新しい分電盤を取り付け、選定した回路を接続します。全負荷型の場合は家全体をバックアップできるよう、専用の切替装置が設置されます。

電気配線工事

蓄電池、パワコン、分電盤を電気ケーブルで接続します。配線は以下のような経路で行われます。

  1. 蓄電池から専用ケーブルでパワコンへ接続
  2. パワコンから分電盤へ接続
  3. 特定負荷分電盤から各回路への接続
  4. アース(接地)線の敷設

屋外から屋内への配線には、防水性を確保するための配管工事が行われることもあります。壁に穴を開ける場合は、雨水の侵入や外観に配慮した処理が必要です。

配線工事の際には、一時的に停電作業が必要になることがあります。事前に施工業者から説明があり、日中の短時間(30分〜1時間程度)で行われるのが一般的です。

STEP4:試運転と動作確認

機器の設置と配線が完了したら、システムの初期設定と試運転を行います。主な内容は以下のとおりです。

初期設定

蓄電システムの設定には、使用目的に応じたいくつかのモードがあります。

  • 経済モード:電気料金の安い時間帯に充電し、高い時間帯に放電
  • 自家消費モード:太陽光の余剰電力を優先的に充電
  • グリーンモード:CO2排出量の少ない時間帯に充電

お住まいの生活パターンや目的に合わせて最適なモードが設定されます。また、設置したモニターやリモコンの時刻設定、ネットワーク接続なども行われます。

動作確認

設定後は正常に動作するか確認するため、以下のようなテストを行います。

  • 系統連系運転の確認(通常時の動作確認)
  • 自立運転の確認(停電時を想定した動作確認)
  • 充放電動作の確認
  • 保護機能(過充電防止など)の確認
  • モニターやアプリでの表示確認

すべての動作確認が完了し、問題がなければ施工業者から操作方法や注意点について説明を受けます。この際、取扱説明書やメンテナンス方法、保証書なども併せて受け取ります。不明点があれば、この段階で質問しておくと良いでしょう。

蓄電池の設置場所選びのポイント

蓄電池の性能を長期間維持し、安全に使用するためには、適切な設置場所の選定が重要です。屋外設置と屋内設置それぞれの条件と注意点を確認しましょう。

屋外設置の条件と注意点

多くの家庭用蓄電池は屋外設置が基本となっています。屋外に設置する際のポイントは以下のとおりです。

日当たりと温度

蓄電池は高温に弱い特性があります。直射日光が長時間当たる場所や、熱がこもりやすい場所は避けるべきです。南向きの壁際よりも、東・北・西側の壁際や軒下が推奨されます。特に夏場の温度上昇を考慮して、風通しの良い場所を選びましょう。

雨風からの保護

家庭用蓄電池は防水・防塵性能を備えていますが、長期間の使用を考えると、強い雨風を直接受ける場所は避けた方が無難です。軒下や庇のある場所、または専用のカバーを設置できる場所が望ましいでしょう。

浸水リスクの回避

蓄電池は水没に弱いため、大雨時に水たまりができる場所や、低地は避けてください。台風や集中豪雨による浸水リスクがある地域では、少し高い場所に設置するなどの対策が必要です。

屋内設置の可能性と条件

一部の蓄電池は屋内への設置も可能です。屋内設置を検討する場合は、以下の条件を確認しましょう。

換気と温度管理

屋内設置の場合、特に換気が重要です。使用中に微量の熱が発生するため、密閉された空間ではなく、空気の流れがある場所が適しています。ガレージや物置、ユーティリティスペースなどが一般的です。

設置スペースと床の強度

蓄電池の大きさと重量に耐えられるスペースと床の強度が必要です。一般的な家庭用蓄電池は幅70cm×奥行30cm×高さ120cm程度、重量100〜200kg以上ある場合もあるため、十分な強度を確保してください。

蓄電池設置工事の費用と内訳

蓄電池システム導入の大きな判断材料となるのが費用です。設置工事にかかる費用の内訳と追加費用が発生するケースについて確認しておきましょう。

基本工事費に含まれるもの

蓄電池の設置工事費は、一般的に20万円〜30万円程度です。基本工事費に含まれる内容は以下のとおりです。

基礎工事

蓄電池を設置するための基礎工事費用です。置き基礎の場合は比較的安価ですが、コンクリートを打設する場合はその分費用が増加します。

機器設置工事

蓄電池本体やパワーコンディショナーなどの機器を所定の位置に設置する工事です。

標準的な電気配線工事

機器間を接続するための基本的な電気配線工事です。

試運転・設定

設置完了後のシステム起動、初期設定、動作確認などの作業も基本工事費に含まれます。

追加費用が発生するケース

標準的な設置条件から外れる場合や、特殊な工事が必要な場合は追加費用が発生することがあります。主なケースは以下のとおりです。

特殊な基礎工事が必要な場合

地盤が弱い、傾斜地、特殊な形状の場所など、標準的な基礎工事では対応できない場合は追加費用が発生します。

長距離配線や特殊配線が必要な場合

設置場所と分電盤の距離が離れている場合や、特殊な配線経路が必要な場合は追加費用がかかります。

既存設備の改修が必要な場合

既存の電気設備の状態によっては、設置前に改修や調整が必要になることがあります。

優良工事店の選び方

蓄電池の性能を最大限に発揮し、長期間安全に使用するためには、信頼できる工事店選びが非常に重要です。

工事店に確認すべき資格と実績

信頼できる工事店かどうかを判断するための、確認すべき資格や実績は以下のとおりです。

電気工事士資格の保有

蓄電池の設置には電気工事士の資格が必須です。特に第一種電気工事士は高圧電気工事にも対応できる上位資格であり、より複雑な工事も安全に行えます。

メーカー認定の指定工事店か

多くの蓄電池メーカーは、自社製品の施工に関する専門研修を実施し、合格した業者を「指定工事店」や「認定施工店」として認定しています。

太陽光発電の施工実績

蓄電池は太陽光発電と組み合わせて使用されることが多いため、太陽光発電システムの施工実績が豊富な業者が望ましいです。

保証・アフターサービスの比較ポイント

長期間使用する蓄電池システムでは、導入後のサポート体制も重要な選定ポイントです。

工事保証の内容と期間

施工に関する保証期間とその内容を確認しましょう。一般的には1〜3年程度の工事保証が付されることが多いですが、業者によって異なります。

メンテナンスプランの有無

定期的な点検やメンテナンスサービスを提供している業者もあります。長期使用を考える場合、このようなアフターサービスが充実している業者を選ぶと安心です。

よくある質問と回答

Q: 既存の太陽光発電に後付けできる?

A: はい、既存の太陽光発電システムに蓄電池を後付けすることは可能です。ただし、いくつかの確認事項があります。

既存の太陽光発電のメーカーや型式によって、組み合わせ可能な蓄電池システムは異なります。特に古いタイプの太陽光発電システムの場合、最新の蓄電池との互換性がない場合もあるため、事前確認が必要です。

蓄電池の追加方法には、大きく分けて以下の2種類があります。

  1. ハイブリッド型(パワコン一体型): 既存の太陽光パワコンを蓄電池対応のハイブリッドパワコンに交換する方法
  2. AC連系型(単機能型): 既存の太陽光パワコンはそのままで、蓄電池専用のパワコンを別途設置する方法

停電時でも使える?使えるコンセントは?

A: はい、多くの家庭用蓄電池システムは停電時にも電力を供給できます。ただし、使用できるコンセントや回路には制限があります。
蓄電池システムには「特定負荷型」と「全負荷型」の2種類があります。

特定負荷型

停電時に電力を供給できるのは、あらかじめ指定した特定の回路(特定負荷)のみです。設置時に、冷蔵庫やリビングの照明など、停電時に優先して使いたい電気機器がある回路を選び、特定負荷分電盤に接続します。

全負荷型

停電時でも家中のすべてのコンセントや照明が使用可能です。ただし、蓄電池の容量には限りがあるため、使用する機器を適切に制限することが重要です。

まとめ:安心・安全な蓄電池設置のために

蓄電池設置工事は、専門知識と技術が必要な作業です。安全で効果的な設置を実現するためには、信頼できる業者選びから始め、設置場所や工事内容をしっかり確認しておくことが大切です。

工事の流れを理解し、事前の準備や確認を怠らないことで、スムーズな導入が可能になります。また、導入後のメンテナンスや使い方についても施工業者からしっかり説明を受け、長期間にわたって蓄電池のメリットを最大限に享受しましょう。

卒FIT後の太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、電気代削減や災害時の備えとして非常に有効です。本記事が皆様の蓄電池導入の一助となれば幸いです。

 

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