ニュースで電気代の高騰が報じられる中、太陽光発電を検討中の方や、設置して10年を迎える方にとって、「売電価格の行方」は最も気になるトピックではないでしょうか。
結論から申しますと、国が定める固定買取価格(FIT価格)自体は、今後も緩やかな下落傾向、もしくは横ばいが続くと予測されます。「待っていれば上がる」という性質のものではありません。
しかし、だからといって「太陽光発電のメリットがなくなった」わけではありません。むしろ、電気代高騰によって「発電した電気の価値」は過去最高レベルに上昇しています。
この記事では、2026年の売電価格の動向と、価格が下がるタイミング、そして「売電先を見直して収入を増やす」か「自家消費にシフトして支出を減らす」か、損をしないための2つの選択肢について詳しく解説します。
太陽光発電の売電価格は今後上がる?2026年の動向
まずは、これから太陽光発電を始める方、あるいは現在FIT期間中の方が知っておくべき「売電価格の基本トレンド」について解説します。
FIT制度とは?
FIT制度(固定価格買取制度)とは、太陽光発電などの再生可能エネルギーで作られた電気を、電力会社が「一定期間、固定価格で買い取ること」を国が約束する制度です。
住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合、買取期間は10年間です。この期間中は、市場価格が暴落しようと電気代が変動しようと、契約時の高い価格で買い取ってもらえます。これは、設置費用の回収を支援するために国が設けた優遇措置です。
FIT価格(固定買取価格)の推移
では、その買取価格は上がっているのでしょうか?
残念ながら、制度開始当初から見ると価格は年々下がっています。
・2012年度:42円/kWh(制度開始時)
・2020年度:21円/kWh
・2024年度:16円/kWh
・2025年度:11.5円/kWh
このように、太陽光パネルの普及と設置費用の低下に合わせて、買取価格も引き下げられてきました。
「電気代が上がっているのに、なぜ売電価格は下がるの?」と思われるかもしれませんが、FIT価格は「市場の電気代」ではなく「システムの導入コスト」を基準に決められているためです。
2026年の売電価格に関する変更
2026年度は、最初の4年間を24円/kWh、5年目以降は8.3円/kWhになりました。
最初の4年間は昨年度よりも高くなりますが、5年目以降は半額以下になります。
国の方針として、太陽光発電は「売って儲ける投資」から「自宅で使って脱炭素に貢献する設備」へと位置づけが変わってきています。
そのため、今後新たに設置する場合、「売電価格が上がるのを待つ」というのは得策ではありません。これまで10年間同じ価格だったのが途中で価格が下がるように変更されたように、さらにFIT制度が変わっていく可能性もあります。
重要なのは、「売電価格単体の金額」だけで判断せず、高騰する電気代をどれだけ削減できるか(自家消費メリット)で判断することです。
「上がる」タイミングと「下がる」タイミングがある
「売電価格が上がる」という噂がある場合、それは「FIT期間が終了した後の自由契約」の話か、もしくは「相対的な価値」の話である可能性が高いです。
太陽光発電には、価格が大きく変わるタイミングがあります。
FIT制度の固定買取期間
前述の通り、設置してから最初の10年間はFIT制度に守られています。
例えば数年前に設置した方であれば、現在も20円〜30円台という、今の電気料金相場と比べても遜色のない高い価格で売電できているはずです。この期間中は、無理に自家消費を考えるよりも、どんどん発電して余剰分を売ったほうが経済的にお得なケースもあります。
卒FIT後は価格が急落
問題は、10年間のFIT期間が終了した後です。
卒FITを迎えると、国による買取保証がなくなり、電力会社と自由に契約を結び直すことになります。
この際、一般的な大手電力会社の継続プランでは、買取単価が7円〜9円/kWh程度まで急落します。
・FIT期間中:16円〜48円(設置年度による)
・卒FIT後:7円〜9円
「売電価格が上がる」どころか、何もしなければ半分以下、場合によっては5分の1以下になってしまうのが現実です。
電気代高騰により「自家消費の価値」は相対的に上がっている
一方で、「価値」という視点で見ると話は変わります。
現在、電力会社から買う電気の価格は、燃料調整費などを含めると30円〜40円/kWh近くまで高騰しています。
・売る価格:7円〜9円
・買う価格:35円前後
つまり、発電した電気を7円で売るよりも、自宅で使って35円の支払いをなくす方が、「実質的に28円分も得をする」ことになります。
金額としての売電価格は下がっても、「自宅で使う電気としての価値(=節約額)」は、電気代の値上げに伴って実質的に上がっているのです。
【対策1】売電を継続するなら「売電先」を見直そう
卒FITを迎えた後、まだ蓄電池などを導入する予定がなく「余った電気は売り続けたい」という場合は、売電先の見直しが必須です。
何もせずに放置していると、最も安い価格で買い叩かれてしまう可能性があります。
大手電力会社の継続契約
FIT期間終了後、特に手続きをしなければ、現在契約している地域の大手電力会社(東京電力や関西電力など)の「卒FIT向けプラン」に自動移行されることが一般的です。
しかし、これらのプランは買取単価が7円〜9円前後と低めに設定されていることが多く、そのままでは売電収入が激減してしまいます。
「面倒だからそのままでいいや」と放置するのは、毎月入ってくるはずの収入を捨てているのと同じことになりかねません。
新電力への切り替え
そこで検討したいのが、「売電契約の切り替え」です。 現在は電力の自由化により、地域の電力会社以外にも、様々な「新電力会社(PPS)」などが太陽光の電気を買い取っています。
これらの会社は、自社の顧客に電力を供給するための電源として、家庭の余剰電力を必要としています。そのため、大手電力会社の標準プランよりも高い買取単価(+1円〜数円程度)を提示して、積極的に買い取っているケースが少なくありません。
また、電気の購入(給電)と売電を同じ会社にまとめることで、買取単価が大幅にアップしたり、ポイント還元が受けられたりする特典を用意している会社もあります。 手続きもWeb上で完結するものが多く、切り替えに伴う工事なども基本的には不要です。「売電価格を少しでも上げたい」と考えるなら、いくつかの会社の買取価格を比較し、より条件の良い売電先に変更することをおすすめします。
【対策2】売電価格低下に備える「自家消費」へのシフト
もう一つの対策、そして今後の主流となるのが、売電を卒業して「自家消費(自分で使い切る)」スタイルへ移行することです。
なぜ「売る」より「使う」ほうがお得なのか
先ほど触れた通り、現在は「売電単価(約7〜9円)」と「買電単価(約35円)」の価格差が非常に大きくなっています。
この状況下では、安い値段で電気を売って、夜間に高い電気を買うのは経済的ではありません。
発電した電気は「売ってお金にする」のではなく、「自宅で消費して、高い電気を買わないためのチケットにする」ほうが、家計全体の収支は圧倒的に良くなります。
蓄電池を導入して夜間の買電を減らす
自家消費を最大化するための最も効果的な設備が「蓄電池」です。
昼間に発電して使いきれなかった電気を蓄電池に貯めておき、発電しない夕方や夜間に放電して使います。
これにより、電力会社から買う電気を最小限に抑えることができます。
卒FITのタイミングで蓄電池を導入すれば、安くなった売電価格を気にする必要がなくなり、かつ災害時の非常用電源としても活用できるため、一石二鳥の対策となります。
エコキュートやEVでお昼の電気を使い切る
高価な蓄電池の導入が難しい場合でも、工夫次第で自家消費率は上げられます。
・エコキュートの昼間沸き上げ:
通常は夜間に沸かすお湯を、設定変更(お天気リンクなど)により、太陽光が出ている昼間に沸かします。
・電気自動車(EV)への充電:
「動く蓄電池」として、昼間にEVへ充電します。ガソリン代の節約にもなり、経済効果は抜群です。
ライフスタイルに合わせて「電気を使う時間」を昼間にシフトさせることが、売電価格低下への最大の防御策となります。
まとめ
「太陽光発電の売電価格は今後上がるのか?」という疑問に対しては、以下の3点が答えとなります。
1. 新規FIT価格:今後も下落または横ばいの傾向。上がるのを待つメリットはない。
2. 卒FIT後の価格:自由契約になると急落する(7円〜9円程度)。
3. 実質的な価値:電気代高騰により、「自家消費」の価値は上がっている。
10年間のFIT期間が終了した後は、何もしないと安い価格で売ることになってしまいます。
損をしないためには、ご自身のライフスタイルに合わせて以下のどちらかのアクションを起こしましょう。
・手間なく収入を確保したい
→ 売電先を変更して、FIT期間中と同等もしくはそれより高い価格で買い取ってもらう。
・電気代高騰に備えたい
→ 蓄電池やエコキュートを活用し、電気を買わない「自家消費生活」へシフトする。
まずは、ご自宅の太陽光発電が「あと何年でFIT期間が終わるのか」を確認し、早めの対策を検討してみてください。