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太陽光発電の自家消費は、発電した電力を自宅で消費することで電気代を削減できる仕組みです。特に卒FIT(固定価格買取制度終了)後は自家消費がおすすめです。この記事では、自家消費による電気代削減効果の計算方法や実際の試算例、効果を高める方法などを解説します。

太陽光発電の自家消費とは?基本的な仕組みを解説

太陽光発電による自家消費とは、パネルで発電した電気を外部に売らずに自宅で使うことです。太陽光発電システムを導入している家庭では、発電した電気をまず自宅で使い、余った分を電力会社に売電します。

この自家消費には大きなメリットがあります。例えば、電力会社から電気を購入すると1kWhあたり約30円かかりますが、太陽光で発電した電気は発電コスト0円で使えます。つまり、自家消費すればするほど、電力会社から買う電気が減り、電気代を節約できるのです。

また、自家消費率という指標があります。これは発電した電力のうち、自宅で消費した割合を示しています。一般的な家庭では自家消費率は約30%程度といわれていますが、この数値が高いほど電気代削減効果は大きくなります。

自家消費による電気代削減効果の計算方法

自家消費による電気代削減効果は、以下の計算式で簡単に求められます。

電気代削減額 = 自家消費した電力量(kWh) × 電気料金単価(円/kWh)

例えば、月に300kWhの電力を自家消費できていて、電気料金単価が30円/kWhの場合: 300kWh × 30円/kWh = 9,000円の電気代が節約できる計算になります。

年間では、この月々の削減額を12ヶ月分合計します。例えば、年間3,600kWhを自家消費できれば: 3,600kWh × 30円/kWh = 108,000円の電気代節約になります。

実際には季節によって発電量が変わるため、月ごとに計算するとより正確です。また、電気料金は基本料金と従量料金に分かれていることにも注意が必要です。自家消費で減らせるのは主に従量料金の部分です。

自家消費での電気代削減シミュレーション例

実際に4kWの太陽光発電システムを設置した場合のシミュレーション例を見てみましょう。

標準的な家庭での自家消費シミュレーション

4kWの太陽光発電システムの年間発電量は約4,000kWhです。一般的な自家消費率30%とすると

  • 自家消費分:1,200kWh(30%)
  • 売電分:2,800kWh(70%)

電気料金単価を30円/kWhとすると

  • 自家消費による電気代削減額:1,200kWh × 30円/kWh = 36,000円/年
  • 卒FIT後の売電収入(8円/kWh):2,800kWh × 8円/kWh = 22,400円/年
  • 合計経済効果:58,400円/年

つまり、電気代が年間約3万6千円安くなり、さらに売電収入も得られるということです。

蓄電池導入時のシミュレーション

同じ4kWのシステムに蓄電池を追加し、自家消費率を70%まで高めた場合

  • 自家消費分:2,800kWh(70%)
  • 売電分:1,200kWh(30%)

この場合の経済効果は、

  • 自家消費による電気代削減額:2,800kWh × 30円/kWh = 84,000円/年
  • 売電収入:1,200kWh × 8円/kWh = 9,600円/年
  • 合計経済効果:93,600円/年

蓄電池なしの場合と比べると、年間約3万5千円の追加メリットがあります。蓄電池の価格によっては、長期的に見て投資回収できる可能性があります。

電気代ゼロは実現可能?実際の効果と限界

「太陽光発電で電気代をゼロにできるのか?」という疑問によく寄せられます。結論から言うと、完全にゼロにするのは難しいですが、大幅に削減することは可能です。

電気代ゼロの理論的可能性

理論上は、発電量が消費量を上回り、すべての時間帯で自家発電でまかなえれば電気代はゼロになります。しかし実際には、

  1. 昼と夜の時間差:太陽光発電は日中のみ発電するため、夜間は電力会社から電気を買う必要があります。
  2. 天候の影響:雨や曇りの日は発電量が大幅に減少します。
  3. 季節変動:冬は夏に比べて発電量が少なくなりがちです。

こうした理由から、太陽光発電だけで電気代を完全にゼロにするのは現実的ではありません。

現実的な電気代削減の目安

実際には、一般家庭で太陽光発電を導入した場合、電気代の50〜70%程度を削減できるケースが多いです。蓄電池を併用すれば、さらに削減率を高めることができます。

例えば、月々の電気代が15,000円だった家庭が太陽光発電を導入すると

  • 太陽光だけの場合:約7,500〜10,500円の削減(50〜70%減)
  • 太陽光+蓄電池の場合:約10,500〜13,500円の削減(70〜90%減)

ただし、基本料金や最低料金は発電していても発生するため、請求額がゼロになることはまれです。

自家消費率を高めて電気代削減効果を最大化する方法

自家消費率を高めれば高いほど、電気代削減効果は大きくなります。以下では、自家消費率を高める効果的な方法を紹介します。

電気の使用時間を太陽光発電時間に合わせる

太陽光発電は日中(特に10時〜14時頃)が最も発電量が多いため、この時間帯に電気をたくさん使うようにすると自家消費率が上がります。

具体的な方法としては

  • 洗濯機や食器洗い機などの家電を日中に使う
  • タイマー機能を活用して、日中に家電を自動で稼働させる
  • 在宅勤務の日は積極的に電気を使う
  • エアコンの予冷・予熱を日中に行う

蓄電池の導入で夜間も自家発電の電気を使う

太陽光発電の最大の弱点は、夜間には発電できないことです。蓄電池を導入すれば、日中の余剰電力を貯めておいて夜間に使えるようになります。

一般家庭向けの蓄電池は5〜10kWh程度の容量が一般的で、これがあれば夕方から夜間の電力使用をカバーできる場合が多いです。蓄電池があると自家消費率は平均して20〜40%ほど向上します。

蓄電池導入のメリット

  • 夜間も太陽光で発電した電気を使用できる
  • 停電時の非常用電源として活用できる
  • 電気料金の高い時間帯の電力購入を避けられる

ただし導入コストは高く、一般的な家庭用蓄電池(5〜10kWh)で100万円前後かかるため、補助金の活用も検討しましょう。

エコキュートを日中に稼働させる

エコキュートを導入している家庭では、お湯を沸かす時間を夜間から日中に変更することで、太陽光発電の電力を有効活用できます。

最近のエコキュートには「ソーラーモード」や「おひさまモード」といった機能があり、太陽光発電量が多い時間帯に自動的に稼働するように設定できます。これにより、熱エネルギーとしてお湯に変換して貯めておけるため、実質的なエネルギー貯蔵になります。

電気自動車(EV)との連携

EVを所有している場合、日中に太陽光で発電した電気でEVを充電することで、自家消費率を大幅に高められます。さらに、V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、EVのバッテリーに蓄えた電気を夜間に家庭で使うことも可能になります。

EVのバッテリー容量は一般的な家庭用蓄電池よりもはるかに大きいため(40〜100kWh程度)、数日分の家庭用電力をまかなえる可能性もあります。

卒FIT後こそ自家消費がお得になる理由

FIT(固定価格買取制度)の期間が終了した「卒FIT」後は、特に自家消費に注目すべき理由があります。

売電価格の下落と自家消費の経済的メリット

FIT期間中は1kWhあたり42円や38円といった高額で売電できましたが、卒FIT後は約7〜9円/kWhまで買取価格が下がります。一方、電力会社から買う電気は約30円/kWh程度です。

つまり、

  • FIT期間中:売電が有利(売電単価>電気代単価)
  • 卒FIT後:自家消費が有利(電気代単価>売電単価)

このため、卒FIT後は「売るより使う」方が経済的です。例えば1kWhの電気を自家消費すれば約30円のメリットがありますが、売電すると8円程度の収入しか得られません。差額は22円にもなります。

卒FIT後の選択肢と自家消費型への移行方法

卒FIT後の主な選択肢は以下の3つです

  1. 低い単価でも売電を続ける
  2. 自家消費型に移行する
  3. 設備を撤去する

多くの場合、2の自家消費型への移行が最もお得です。移行方法としては、

  • 電力会社との契約を見直す(余剰売電契約は継続)
  • 蓄電池やエコキュートなどを導入して自家消費率を高める
  • 家庭内の電気の使い方を日中中心にシフトする

これらの取り組みで、卒FIT後も太陽光発電システムを有効活用できます。

自家消費型太陽光発電のコストと投資回収期間

自家消費型の太陽光発電システムを導入する際のコストと、投資回収にかかる期間についても見ておきましょう。

初期投資と維持費の目安

太陽光発電システム(4kW程度)の導入費用は、現在では約80〜120万円程度です。これに加えて

  • 蓄電池:容量によって異なりますが、5kWhで約70〜100万円程度
  • パワーコンディショナーの交換:10年程度で必要になり、約20〜40万円程度
  • 定期点検・清掃費用:年間数千円〜数万円程度

投資回収期間の計算例

4kWの太陽光発電システムの場合、年間経済効果が約6万円(自家消費+売電)とすれば、初期投資100万円の回収には約17年かかる計算になります。

しかし、電気代が上昇傾向にあることを考慮すると、実際の回収期間はもう少し短くなる可能性があります。また、補助金を活用できれば、さらに回収期間は短縮できます。

蓄電池の投資回収について

蓄電池の場合、100万円の投資に対して年間の追加メリットが3〜4万円程度だとすると、単純計算で25〜33年かかる計算になります。蓄電池の寿命は10〜15年程度なので、経済的メリットだけでは元を取ることは難しいかもしれません。

ただし、以下の点を考慮する必要があります。

  • 停電時の非常用電源としての価値
  • 電気料金の上昇傾向
  • 蓄電池価格の下落傾向
  • 自治体などの補助金の活用可能性

補助金を活用して実質的な負担を減らせば、10〜15年程度で回収できる可能性もあります。

太陽光発電の自家消費を支援する補助金制度

自家消費型の太陽光発電や蓄電池の導入を支援する補助金制度が各地で実施されています。

国の補助金制度

現在、国の住宅用太陽光発電に対する直接的な補助金は終了していますが、以下のような支援があります。

  • 省エネリフォームの一環として太陽光発電や蓄電池を導入する場合の補助
  • ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)関連の補助金
  • 蓄電池の導入支援(環境省や経産省の事業)

具体的な補助額は年度や事業によって異なりますが、太陽光発電設備に一律約4万円/kW、蓄電池に1/3(上限4万円/kWh)といった例があります。

地方自治体の補助金

都道府県や市区町村レベルでも、独自の補助金制度を実施しているところが多くあります。例えば

  • 太陽光発電システム:数万〜数十万円の定額補助または設置費用の一部(例:1/3)
  • 蓄電池:容量に応じた補助(例:2〜5万円/kWh)または費用の一部(例:1/3)
  • 複数設備同時導入時の上乗せ

などがあります。

地域によって補助内容や条件が大きく異なるため、お住まいの自治体のホームページで確認するか、専門の業者に相談するといいでしょう。

補助金申請の注意点

補助金を申請する際には、いくつか注意点があります。

  • 事前申請が必要な場合が多い(工事着工前に申請が必要)
  • 申請期間が限られている(予算に達すると終了することも)
  • 設備や施工業者の条件がある場合がある
  • 自家消費率の条件がある場合がある(例:50%以上の自家消費が必要)

補助金を活用することで、初期投資を大幅に抑えられる可能性があるため、しっかり調査しましょう。

自家消費を最大化するための設備選びのポイント

自家消費型の太陽光発電システムを導入する際には、いくつかのポイントに注意して設備を選ぶと良いでしょう。

太陽光発電システムの選定

  • 適切な容量設計:電力使用量に対して適切な発電容量を選ぶ(過大すぎると余剰電力が増える)
  • 高効率パネルの採用:限られたスペースでより多くの発電を実現
  • 設置方向と角度の最適化:自家消費を重視するなら、朝・夕方の発電も考慮した東西設置も選択肢に
  • 遠隔モニタリングシステム:発電状況や消費状況を確認できるシステムがあると便利

蓄電池の選定

  • 容量選択:夜間の電力使用量に合わせた容量選択が重要
  • 充放電効率:効率の良い製品を選ぶとロスが少ない
  • 寿命と保証:サイクル寿命や製品保証が長いものを選ぶ
  • 拡張性:将来的に容量を増やせるかどうか
  • 停電対応機能:非常時にどの程度の電力が使えるか確認

HEMSの活用

HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を導入すると、発電量と消費量を見える化でき、効率的な電力利用ができます。特に以下のような機能があると便利です

  • リアルタイムでの発電・消費状況の確認
  • 家電制御機能(太陽光発電に合わせて自動制御)
  • 蓄電池の充放電制御の最適化
  • スマートフォンでの遠隔操作・確認

まとめ:自家消費で電気代を賢く削減するために

太陽光発電の自家消費は、特に卒FIT後において、電気代削減の有効な手段です。要点をまとめると、

  • 自家消費は「売るより使う」方がお得(特に卒FIT後)
  • 電気代削減効果は使用量や自家消費率によって変わる
  • 一般的な4kWシステムでは年間3〜4万円程度の電気代削減が期待できる
  • 自家消費率を高めるには、生活パターンの工夫や蓄電池の導入が効果的
  • 完全に電気代をゼロにするのは難しいが、50〜70%程度の削減は十分可能
  • 初期投資は補助金の活用で抑えられる可能性がある

自家消費型太陽光発電は、環境にも家計にも優しいエネルギー利用方法です。ライフスタイルや住居条件に合わせて、最適なシステム構成を検討してみてください。

電気代高騰が続く現在、自分で発電した電気を自分で使う「自家消費」の価値はますます高まっています。上手に活用して、快適な生活とコスト削減の両立を目指しましょう。

 

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公開日時

自家消費

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