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卒FIT世帯が蓄電池を検討すべき理由

FIT(固定価格買取制度)の契約期間が終了を迎えた太陽光発電設備をお持ちの方にとって、これからの電気の有効活用は大きな課題です。2009年以降に設置された住宅用太陽光発電は10年間の売電期間を経て、2019年以降順次「卒FIT」を迎えています。

FIT期間中は1kWhあたり42円や38円という高額な固定価格で電力会社に売電できていましたが、期間終了後は市場価格での買取となり、多くの場合10円/kWh前後まで大幅に下落します。これまで年間10万円以上あった売電収入が数万円に激減するケースも少なくありません。

余剰電力買取価格の現状

卒FIT後の買取価格は電力会社によって若干の違いはありますが、概ね7〜12円/kWh程度です。一方で電力会社から購入する電気の単価は25〜30円/kWh以上となっており、この差は今後も広がる可能性があります。

つまり、これまで売っていた電気を自宅で消費した方が経済的に有利になるのです。特に昼間発電した電力を夜間に使えるようにする蓄電池の導入は、自家消費率を高める効果的な手段となります。

災害時の備えとしての価値

近年、大型台風や地震など自然災害による大規模停電が各地で発生しています。2018年の北海道胆振東部地震や2019年の台風15号による千葉県での大規模停電は記憶に新しいところです。

太陽光発電だけでは夜間や悪天候時に電気を使うことができませんが、蓄電池を併用することで停電時も電気を使い続けることが可能になります。スマートフォンの充電や照明、冷蔵庫など最低限の生活を維持するための電源確保は、非常時の大きな安心につながります。

蓄電池選びで失敗しないための5つのポイント

蓄電池の導入は決して安い買い物ではなく、100万円を超える投資になることがほとんどです。後悔しない選択をするために、以下の5つのポイントをしっかり押さえましょう。

  1. 家庭の使用目的に合った適切な容量を選ぶ
  2. 信頼できるメーカーと十分な保証内容を確認する
  3. 価格相場を把握し、適用可能な補助金を活用する
  4. 設置場所と工事条件を事前に確認する
  5. 目的に合った機能と性能を選択する

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

容量は使用目的で決める

蓄電池の容量選びでよくある失敗は「とにかく大容量」と考えてしまうことです。確かに容量が大きければそれだけ多くの電気を貯められますが、購入コストも高くなります。最も重要なのは、ご家庭の実際の電力使用状況に合った容量を選ぶことです。

まずは太陽光発電の余剰電力量を把握しましょう。4kWの太陽光発電システムなら、晴れた日には20kWh前後発電しますが、そのうち昼間に自家消費される分を差し引いた余剰分が蓄電池に貯められる量です。一般的な家庭では5〜8kWh程度が日中の余剰電力量となることが多いため、それに近い容量の蓄電池を選ぶと効率的です。

また夜間の電力消費量も重要です。夕方から翌朝までに使用する電力量が多い家庭では、それをカバーできる容量が必要になります。各ご家庭の電気使用量は電力会社のWEBサービスなどで確認できますので、平均的な使用パターンを把握しておきましょう。

メーカー選びは実績と保証で判断

蓄電池は10年以上使う製品です。メーカーの信頼性や実績、アフターサポート体制は非常に重要な選択基準となります。

国内市場では以下のメーカーが高いシェアを持っています。

  • ニチコン:電子部品メーカーとして高い技術力、トライブリッドタイプの先駆的存在
  • 長州産業:太陽光発電と蓄電池の一体提案に強み、コストパフォーマンスが高い
  • シャープ:太陽光発電の老舗としての実績、クラウド連携機能が充実
  • パナソニック:住宅設備との連携に強み、幅広い容量ラインナップ
  • 京セラ:高耐久・長寿命設計が特徴

メーカー選びで特に注目すべきは保証内容です。蓄電池の保証は通常10年程度ですが、その期間内でも使用による劣化は避けられません。初期容量に対して何%維持されることを保証するのか、修理・交換の条件はどうなっているのかなど、詳細を確認しましょう。

価格と補助金の最新情報

蓄電池の価格相場は年々低下傾向にありますが、依然として大きな投資です。2025年現在の家庭用蓄電池の相場は、容量1kWhあたり約13〜15万円(工事費込み)が目安となります。

容量別の価格帯としては以下のようになっています。

  • 小容量(5kWh未満):総額約100万円前後
  • 中容量(5〜10kWh未満):総額130〜160万円前後
  • 大容量(10kWh以上):総額160〜200万円程度

こうした初期費用を抑えるためには、国や自治体の補助金制度を活用することが重要です。2024年度からは「DR対応蓄電池補助金」という新制度がスタートし、対応機種を導入する場合、1kWhあたり最大37,000円(上限60万円)の補助が受けられます。

また自治体独自の補助制度も各地で実施されており、国の制度と併用できる場合もあります。ただし予算には限りがあり、申請は早い者勝ちのケースが多いので、導入を検討したらすぐに最新情報を確認することをおすすめします。

設置場所と工事の条件

蓄電池ユニットはエアコンの室外機より一回り大きいサイズで、重量も100kg以上あります。設置場所の確保は意外と悩ましい問題です。

屋外設置の場合は、直射日光や雨を避けられる場所が理想的です。特に夏場の高温は蓄電池の劣化を早める要因となるため、できるだけ日陰に設置することをおすすめします。また水はけの良い場所を選び、浸水の心配がある低地は避けましょう。

屋内設置を検討する場合は、十分な換気が確保できることと、床の耐荷重性を確認する必要があります。一般的にはガレージや物置スペースが選ばれることが多いですが、消防法などの規制で設置できない場合もありますので、事前に施工業者と相談しましょう。

工事は通常1〜2日で完了しますが、コンクリート基礎工事が必要な場合は乾燥を待つため日数がかかることもあります。また分電盤の工事中は一時的に停電作業が発生しますので、工事日程の調整も必要です。

性能を左右する機能の違い

蓄電池システムには様々なタイプがあり、機能面での違いを理解することも重要です。主な選択ポイントは以下の通りです。

  1. ハイブリッド型と単機能型 ハイブリッド型は太陽光発電用と蓄電池用のパワーコンディショナーが一体となったタイプで、変換ロスが少なく効率的です。特に卒FIT時にパワコンの寿命も近づいている場合はこちらがおすすめです。一方、単機能型は既存の太陽光発電システムをそのまま活かせるメリットがあります。
  2. 全負荷型と特定負荷型 全負荷型は停電時に家中のほぼすべてのコンセントが使えるタイプで、より日常に近い電気の使い方ができます。特定負荷型は重要な回路(冷蔵庫や照明など)のみをバックアップするタイプで、導入コストは抑えられます。
  3. 最大出力と持続力 定格出力(kW)が大きいほど、一度に多くの電力を供給できますが、価格も上がります。エアコンや電子レンジなど消費電力の大きい機器を使う場合は、出力も重要な選択基準となります。

蓄電池本体の性能として、サイクル寿命(充放電回数)も重要です。高品質なリチウムイオン電池では6,000回以上のサイクル寿命を持つものもあり、長期的な費用対効果を考えるならこの点も比較しましょう。

家庭の電力使用パターン別おすすめ容量

実際の電力使用パターンに基づいた容量選びについて、具体的に見ていきましょう。

4人家族の標準的な電力消費と必要容量

一般的な4人家族の電力消費量は、1日あたり10〜15kWh程度といわれています。このうち夜間(17時〜翌朝8時頃)の消費量は約60%を占めることが多く、6〜9kWh程度が夜間消費の目安となります。

したがって、夜間の電力をすべて蓄電池でまかなうには、8〜10kWh程度の容量が理想的です。ただし経済性を考えると、完全に自立するのではなく、ピーク時間帯(電気料金が高い時間帯)の電力をカバーする方法も有効です。その場合は5〜7kWh程度の容量でも十分な効果が得られます。

また停電対策を重視する場合は、冷蔵庫(1日約1kWh)、照明(LED照明数箇所で1日約0.3kWh)、テレビ(1日約0.5kWh)、スマホ充電(1回約0.01kWh)などの必須機器の消費電力を合計し、どの程度の期間持たせたいかを計算すると良いでしょう。

日中不在が多い家庭の選び方

共働き世帯など日中に家を空けることが多い家庭では、太陽光発電の自家消費率が低く、余剰電力が多くなりがちです。このような場合、夜間の電力消費をカバーできる容量の蓄電池があると効果的です。

例えば4kWの太陽光発電設備があり、晴れた日の発電量が20kWh、そのうち日中の自家消費が2kWhとすると、18kWhもの余剰電力が発生します。この全てを蓄電池に貯めることは現実的ではありませんが、7〜10kWh程度の蓄電池があれば、夜間の主要な電力消費をカバーできます。

また日中不在の家庭では、経済性を重視して深夜電力(安い時間帯の電力)を蓄電池に充電し、夕方以降の高い時間帯に放電するという使い方も効果的です。この場合、7kWh前後の容量があれば十分な経済効果が期待できます。

主要メーカーの特徴とおすすめモデル

現在の蓄電池市場では、様々なメーカーから特色ある製品が登場しています。それぞれの特徴を踏まえて、ご家庭に最適な製品を選びましょう。

メーカー名代表的な蓄電池製品容量ラインナップ特徴おすすめポイント
ニチコントライブリッド蓄電システム4.2kWh〜12kWhEV連携可能、V2H対応、高い安全性EV所有者、将来的にEV購入予定の方
長州産業スマートPVマルチ5.8kWh〜11.6kWhコストパフォーマンス高い、全負荷型対応経済性重視、停電対策重視の方
シャープクラウド蓄電池6.5kWh〜12kWhAI制御、クラウド連携で自動最適化自動で最適運用してほしい方
パナソニック創蓄連携システム5.6kWh〜16.8kWh住宅設備との連携に強み、幅広い容量他の住宅設備と連携したい方
京セラEnerezza(エネレッツァ)5.0kWh〜12.0kWh高い耐久性、屋外設置に強い設置環境が厳しい場所、耐久性重視の方
テスラPowerwall13.5kWh大容量、スリムなデザイン大容量志向、デザイン性重視の方

ニチコンは家庭用蓄電システムで国内シェアトップを誇り、単機能型からハイブリッド型、さらにはEV連携可能なトライブリッド型まで幅広いラインナップを持ちます。特にEVをお持ちの方や将来購入予定の方には、車と家をつなぐV2H機能を持つトライブリッド蓄電システムがおすすめです。容量は4.2kWh〜12kWhまで選択可能です。

長州産業は太陽光発電との一体提案に強く、コストパフォーマンスの高さが魅力です。「スマートPVマルチ」シリーズは全負荷型にも対応しており、停電時の利便性も高いのが特徴です。5.8kWh〜11.6kWhまで、容量バリエーションも豊富です。

シャープはクラウド連携機能に優れ、AIを活用した充放電制御で効率的な電力活用が可能です。天気予報データも活用して充放電計画を立てる「クラウド蓄電池」は、自動で最適運用してくれる手軽さが魅力です。6.5kWh〜12kWhの容量から選べます。

パナソニックは住宅設備との連携に強みがあり、HEMSやエコキュートなど他の設備と組み合わせた総合的なエネルギーマネジメントが魅力です。5.6kWh〜16.8kWhまでの幅広い容量ラインナップを持っています。

京セラは高い耐久性と長寿命設計が特徴で、厳しい環境下での使用にも適しています。「Enerezza(エネレッツァ)」シリーズは屋外設置型で設置の自由度が高く、デザイン性にも優れています。容量は5.0kWh〜12.0kWhから選択可能です。

海外メーカーではテスラの「Powerwall」が注目を集めています。13.5kWhという大容量ながら比較的コンパクトで、デザイン性にも優れています。日本でもヤマダ電機などで販売されるようになり、選択肢が広がっています。

蓄電池導入の経済性シミュレーション

蓄電池導入の費用対効果を具体的に見てみましょう。

一般的な4人家族で、4kWの太陽光発電と7kWhの蓄電池を導入した場合を考えます。蓄電池導入費用が140万円、そこから補助金40万円を差し引いた実質負担額は100万円とします。

この家庭の年間電力消費量は5,000kWh、太陽光発電量は4,000kWh、うち自家消費は1,200kWh(30%)、余剰電力は2,800kWh(70%)だったとします。

蓄電池導入前は、余剰電力2,800kWhを8円/kWhで売電していたため、年間売電収入は約22,400円。一方、夜間などで購入していた電力3,800kWh(5,000kWh - 1,200kWh)を30円/kWhで購入していたため、年間電気代は約114,000円でした。

蓄電池導入後は、余剰電力のうち1,800kWhを蓄電池に貯めて夜間に使用できるようになり、売電量は1,000kWhに減少。売電収入は約8,000円に減りますが、購入電力量も2,000kWh(3,800kWh - 1,800kWh)に減少し、電気代は約60,000円になります。

差し引きすると、蓄電池導入前の年間コストは 114,000円(電気代)- 22,400円(売電収入)= 91,600円

蓄電池導入後の年間コストは 60,000円(電気代)- 8,000円(売電収入)= 52,000円

年間の節約額は約39,600円となります。この金額で実質負担額100万円を回収するには、100万円÷39,600円/年≒25.3年かかる計算です。

ただし、電気料金の上昇傾向を考慮すると回収期間は短くなる可能性があります。また停電時のバックアップ電源としての価値や、蓄電池と組み合わせた省エネ行動の効果なども加味すると、総合的な価値はさらに高まります。

投資回収にかかる期間の目安

蓄電池導入の投資回収期間は、様々な要因によって大きく変わります。回収期間に影響する主な要素は以下の通りです。

  1. 初期費用と補助金の有無 補助金を最大限活用できれば、実質負担額を大きく減らせます。国と自治体の補助金を併用できる場合、50万円以上の補助を受けられるケースもあります。
  2. 電気料金と売電価格の差 買電単価と売電単価の差が大きいほど、自家消費のメリットは増します。今後も電気料金の上昇が予想される中、この差はさらに拡大する可能性があります。
  3. 太陽光発電の余剰電力量 余剰電力が多いほど、蓄電池で活用できる電力量も増えます。特に卒FIT後は売電収入が激減するため、余剰電力を自家消費に回すメリットが大きくなります。
  4. 生活パターンと電力消費傾向 日中に電力消費が少なく、夜間に集中している家庭ほど蓄電池の効果は高まります。在宅勤務が増えて日中の電力消費が増えた家庭では、効果が薄れる可能性もあります。

一般的には、補助金を活用し最適な容量を選んだ場合、投資回収期間は12〜15年程度が現実的な目安となるでしょう。これは多くの蓄電池の保証期間(10年)をやや上回りますが、実際の耐用年数はさらに長いケースが多く、長期的には十分経済効果が見込めます。

回収期間を早めるコツとしては、時間帯別料金プランの活用や、蓄電池の充放電タイミングを工夫するなど運用面での最適化が効果的です。

まとめ:後悔しない蓄電池選びのために

蓄電池導入を成功させるための重要ポイントをまとめます。

  1. ご家庭の電力使用状況に合った容量を選ぶ 大きければ良いわけではなく、実際の余剰電力量と夜間消費量を考慮した適切な容量選びが重要です。多くの家庭では5〜10kWh程度が最適です。
  2. 長期的な視点でメーカーと保証を選ぶ 10年以上使用する製品ですので、メーカーの実績や保証内容、アフターサポート体制をしっかり確認しましょう。
  3. 補助金制度を最大限活用する 国や自治体の補助金をうまく組み合わせれば、初期費用を大きく抑えられます。申請時期や予算には注意が必要です。
  4. 設置場所と工事条件を事前確認 蓄電池の大きさと重量を考慮し、適切な設置場所を選びましょう。特に屋外設置の場合は、直射日光や雨水対策も重要です。
  5. 導入目的に合った機能を選ぶ 経済性重視なら余剰電力を効率的に貯められる機種を、非常時対策重視なら全負荷型や大容量タイプを選びましょう。

蓄電池は決して安い買い物ではありませんが、卒FIT後の太陽光発電の価値を最大化し、災害時の安心も手に入れられる有益な投資です。本記事で紹介したポイントを押さえ、慎重に比較検討することで、後悔のない選択ができるはずです。

信頼できる業者から複数の見積もりを取り、実際の設置条件や生活スタイルに合った提案を比較検討することをおすすめします。また補助金情報は常に最新のものを確認し、申請に必要な書類や条件を事前に把握しておくことも大切です。

蓄電池の導入で、より自立的で経済的、そして安心なエネルギーライフを実現しましょう。

 

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