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太陽光発電を設置してから10年が経ち、固定価格買取制度(FIT制度)による売電期間が満了する「卒FIT」を迎える方が増えています。本記事では、卒FIT後も有利な条件で売電を継続するために知っておくべき契約条件や注意点を分かりやすく解説します。

卒FIT後の売電契約とは?基本を理解しよう

「卒FIT」とは、太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)の買取期間が満了することを指します。FIT制度は再生可能エネルギーの普及を目的に2012年7月にスタートし、住宅用太陽光発電(10kW未満)は10年間、電力会社が固定価格で買い取る仕組みです。

このFIT期間が終わると、法律で定められた高い固定価格での買取義務が終了します。しかし、多くの方が誤解されていますが、卒FIT後も発電した余剰電力を売ることは可能です。ただし、売電の条件や買取価格は大きく変わります。

卒FIT後も太陽光パネルは発電し続けますので、その電気を無駄にせず、適切な売電先を選ぶことが重要です。実際に卒FIT後の選択肢は増えており、従来の電力会社だけでなく、新電力など様々な事業者が買取サービスを提供しています。

卒FIT後の売電価格はどうなるの?

FIT期間中は42円/kWh(2012年度設置)、38円/kWh(2013年度設置)などの高額な固定価格で買い取られていました。しかし、卒FIT後はその価格が大幅に下がります。

現在の卒FIT後の売電価格相場は、大手電力会社の場合は7~9円/kWh程度、新電力(電力自由化後に参入した電力会社)では8~13円/kWh程度が一般的です。地域や電力会社によって差があり、キャンペーンなどで一時的に高い買取価格を提示する会社もあります。

FIT期間中より大幅に下がりますが、ゼロになるわけではありません。また、電力会社によって買取価格に差があるため、比較検討することでより有利な条件で売電できる可能性があります。

大手電力会社と新電力会社、どちらを選ぶ?

卒FIT後の売電先として、主に「大手電力会社(東京電力・関西電力など)」と「新電力会社」の2つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、自分のニーズに合った選択をしましょう。

大手電力会社は安定性と手続きの簡便さが魅力ですが、買取価格は比較的低めです。一方、新電力会社は買取価格が高めで多様なプランがありますが、契約条件をよく確認する必要があります。

大手電力会社のメリットとデメリット

メリット:

  • 手続きが簡単:FIT期間中から契約があるため、多くの場合は自動的に卒FIT後のプランに移行します
  • 安定性と信頼性:長年の実績がある企業なので、倒産リスクや急な契約変更の心配が少ないです
  • 全国どこでも対応:地域を問わずサービスを提供しています

デメリット:

  • 買取価格が低め:一般的に7~9円/kWh程度と新電力に比べて低い傾向があります
  • 付加サービスが少ない:シンプルに買い取るだけのプランが多く、特典などが限定的です
  • 選択肢が少ない:基本的に地域の電力会社1社しか選べません

新電力会社のメリットとデメリット

メリット:

  • 買取価格が高め:10円/kWh以上の単価を提示する事業者もあり、売電収入アップが期待できます
  • 多様な特典やプラン:電気料金プランとのセット割引や、ポイント還元など特典が豊富です
  • 選択肢が多い:多数の事業者から自分に合ったプランを選べます

デメリット:

  • 契約条件の確認が必要:自社の電気購入契約とセットが条件のプランもあります
  • 事業継続性の不安:新興企業の場合、将来的な買取価格の変更や事業撤退のリスクもあります
  • 地域限定のケース:サービス提供エリアが限られている場合があります

売電契約の種類を知ろう

卒FIT後の売電契約には様々な種類があります。大きく分けると「固定価格型」と「市場連動型」に分かれますが、他にもユニークなプランが各社から提供されています。

電力会社によって提供されるプランは異なりますので、自分の状況に合ったプランを選ぶことが重要です。

固定価格型と市場連動型の比較

固定価格型は、契約期間中は一定の単価で買い取られるプランです。例えば「10円/kWh」と決まっていれば、契約期間中はこの価格で買い取られます。

メリットは、収入の見通しが立てやすく、価格が下落しても最低限の収入が確保できることです。デメリットは、市場価格が上昇しても契約単価は上がらないため、高騰時に損をする可能性があります。

市場連動型は、電力市場の取引価格に連動して買取単価が変動するプランです。日本卸電力取引所(JEPX)の価格などを基準にして売電価格が決まります。

メリットは、電力需給がひっ迫して市場価格が上昇すると高い売電収入が得られる可能性があることです。デメリットは、価格変動リスクがあり、市場価格が低迷すると売電収入も下がる可能性があります。

一般的に安定した収入を求める方には固定価格型、多少のリスクを取っても高い収入を狙いたい方には市場連動型が向いています。

その他のユニークなプラン

通常の買取プラン以外にも、各社が工夫を凝らした特別なプランを提供しています。

仮想蓄電サービス:大手電力会社が提供するサービスで、余剰電力を「預かり」、後で必要な時に返す形で電気代を節約できるプランです。例えば東京電力の「再エネおあずかりプラン」や関西電力の「貯めトクサービス」があります。月額利用料がかかりますが、うまく使えば売るよりもお得になる場合があります。

ポイント還元プラン:現金ではなくポイントや商品券で還元するプランです。例えば中部電力ミライズでは、Amazonギフト券やWAONポイントでの還元があり、現金換算でやや単価が高めになる場合があります。

セット契約プラン:電気・ガスの購入契約とセットで買取価格がアップするプランです。例えば大阪ガスでは電気・ガスのセット契約で売電単価が1円アップします。

売電契約で確認すべき5つのポイント

売電契約を結ぶ際には、以下の5つのポイントをしっかり確認しましょう。

1. 買取価格 単に「○円/kWh」という数字だけでなく、税込・税抜の区別や、将来的な価格変更の可能性についても確認しましょう。また、キャンペーン価格の場合は適用期間を確認することも重要です。

2. 契約期間と更新条件 一般的には1年ごとの自動更新が多いですが、契約期間中の解約条件や、更新時の価格変更の有無も確認しましょう。

3. 支払い方法 売電収入の受け取り方として、「現金振込」と「電気料金との相殺」があります。現金振込は収入として明確ですが、確定申告が必要な場合があります。相殺は電気代負担が減りますが、現金で受け取れません。

4. 対応エリア 電力会社によってサービス提供エリアが異なります。自宅がサービス対応エリアかどうか確認しましょう。

5. セット契約の有無 売電のみの契約か、電気購入契約とのセット契約が必要かを確認しましょう。セット契約で買取価格が上がる場合もありますが、電気料金が割高になる可能性もあります。

見落としがちな契約条件とは?

契約書の細部には、見落としがちな重要な条件が記載されていることがあります。特に以下の点に注意しましょう。

買取価格の変更条件:「市場価格の変動により買取価格を変更する場合があります」といった条項があれば、将来的に価格が下がる可能性があります。

最低利用期間:キャンペーン適用条件として最低利用期間が設定されており、その期間内に解約すると違約金が発生するケースがあります。

自動更新と更新拒否の期限:多くの契約は自動更新ですが、更新を拒否する場合の申し出期限(例:更新月の1か月前まで)が設定されていることがあります。

支払いサイクル:売電収入の支払いが毎月なのか、数か月分をまとめて支払うのかも確認しましょう。

出力制御への対応:太陽光発電が多い地域では、電力系統の安定のために出力制御(発電抑制)が行われる場合があります。その場合の買取条件も確認しておくと安心です。

売電先の変更手続き方法

卒FIT後に新たな売電先へ変更する際の手続き方法を解説します。基本的にはオンラインでの申し込みが可能で、特別な工事なども必要ありません。

変更手続きは複雑ではありませんが、必要な情報を準備し、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。

変更手続きの流れとタイミング

1. 準備するもの

  • 「受給地点特定番号」(検針票や買取満了通知書に記載、22桁の番号)
  • お客様番号
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 銀行口座情報(売電収入の振込先)

2. 手続きの流れ ①新しい売電先を選ぶ:各社の買取価格やプランを比較検討 ②申し込み:選んだ電力会社のWebサイトや電話から申し込み ③切り替え完了:申込後、約1か月程度で切り替わります ④売電開始:新しい契約先との買取がスタート

3. 手続きのタイミング FIT期間満了の通知は通常4~6か月前に届きます。切り替えには約1か月かかるため、FIT満了の1~2か月前までには手続きを開始しておくことをおすすめします。

注意点:自分で旧契約の解約連絡をする必要はありません。新しい電力会社が必要な手続きを代行してくれます。また、スマートメーターへの交換が必要な場合もありますが、基本的に無料で対応してもらえます。

人気の売電プラン比較

卒FIT向けの主要な売電プランを比較します。各社の特徴やサービス内容を理解して、最適な選択をしましょう。

丸紅新電力:売電契約のみでOK(電気購入契約は任意)。13円/kWh前後の買取価格で、契約手数料や工事費も無料。

ENEOSでんき:売電契約のみで加入可能。首都圏で10~11円/kWh程度の買取価格。現在の電力会社を変えずに売電だけ変えたい人に向いています。

出光興産・idemitsuでんき:スタンダードプラン9.5円/kWh、電力購入契約セットで11.5円/kWhと上乗せあり。

東京ガス:蓄電池導入者向けに半年間限定で23円/kWhという高額買取キャンペーンも実施。蓄電池購入を検討している方にメリットがあります。

みんな電力:支援したい企業や地域を選べる「顔の見える電力」の仕組みがあり、環境や社会貢献を重視する方に向いています。

地域別・会社別の買取価格比較

地域によって利用できる電力会社や買取価格は異なります。以下は主要地域の買取価格例です(2024年時点、変動する可能性があります)。

関東エリア(東京電力管内)

  • 東京電力:8.5円/kWh
  • 丸紅新電力:13円/kWh前後
  • ENEOSでんき:10~11円/kWh
  • 出光興産:9.5円/kWh(電気購入セットで11.5円/kWh)

関西エリア(関西電力管内)

  • 関西電力:8円/kWh前後
  • 大阪ガス:8円/kWh(電気・ガスセットで+1円)
  • 丸紅新電力:10円/kWh前後

九州エリア(九州電力管内)

  • 九州電力:7円/kWh
  • エネクスライフサービス:9円/kWh前後
  • ENEOS:8~9円/kWh前後

最新の買取価格は各社の公式サイトや、資源エネルギー庁のウェブサイトで確認できます。また、キャンペーンなどで一時的に価格が上がることもあるため、定期的に情報をチェックすることをおすすめします。

卒FIT後に何もしないとどうなる?

卒FIT後に特に行動を起こさず、新たな売電契約も結ばない場合はどうなるのでしょうか。

実は、何も手続きをしないと、余剰電力は電力系統に流れるものの、無償で引き取られてしまうことになります。つまり、せっかく発電した電気をタダ同然で電力網に垂れ流してしまうことになるのです。

例えば、年間3,000kWhの余剰電力を8.5円/kWhで売電できれば年間約25,500円の収入になりますが、無契約状態ではこれがゼロになってしまいます。10年間では25万円以上の損失です。

ただし、多くの大手電力会社では、特に連絡がなければ自動的に自社の卒FIT向け買取プランに移行させる措置をとっています。例えば中国電力では、FIT満了後に申し込みがなければ自動的に7.15円/kWh程度の買取プランに移行します。

最低限の対策としては、何らかの売電契約に加入することをおすすめします。低単価でも契約しておけば、無収入よりはマシです。また将来的により良い条件が出てきたら改めて乗り換えることもできます。

まとめ:卒FIT後も賢く売電しよう

卒FIT後も太陽光発電は貴重な資産です。売電価格はFIT期間中より下がりますが、上手に活用すれば継続的な収入源となります。

重要なポイントをまとめると:

・卒FIT後も様々な電力会社に売電できます ・大手電力会社は安定性、新電力は高単価が魅力です ・固定価格型か市場連動型か、自分に合ったプランを選びましょう ・契約条件(価格、期間、支払方法など)は必ず確認しましょう ・何もしないと無償で電気を取られてしまうので、必ず何らかの売電契約を結びましょう

また、電力業界のサービス内容は頻繁に変わります。定期的に最新情報をチェックし、より有利な条件に乗り換えることも検討しましょう。

卒FITはゴールではなく新たなスタートです。この機会に太陽光発電をより効果的に活用していきましょう。

 

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