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太陽光発電設備を設置しているご家庭では、パワーコンディショナーの寿命や電気代の高騰、卒FIT(固定価格買取制度終了)などを機に、蓄電池の導入を検討される方が増えています。

 

蓄電池には「ハイブリッド型」という種類があるのをご存じでしょうか。

 

本記事では、ハイブリッド型蓄電池の仕組みや従来型との違い、メリット・デメリットを詳しく解説します。蓄電池の導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

 

ハイブリッド型蓄電地とは

ハイブリッド型蓄電池とは、太陽光発電用のパワコン(パワーコンディショナー)と蓄電池用のパワコンが一体化したシステム形態を指します。

 

ハイブリッド型蓄電池の仕組みや単機能型(従来型)蓄電池との違いを解説します。

 

ハイブリッド型蓄電池の仕組み

家庭で使う電気は交流(AC)ですが、太陽光パネルで発電される電気は直流(DC)です。

そのため、パワーコンディショナー(パワコン)でDCとACを変換して使います。

 

単機能型(従来型)蓄電池では、太陽光と蓄電池を別々のパワコンで制御するため、合計3回の変換が必要になり、そのたびにロスが発生します。

  • 家庭で使うとき:DC→AC
  • 蓄電するとき:AC→DC
  • 蓄電した電気を使うとき:DC→AC

 

一方、ハイブリッド型は太陽光と蓄電池を1台のパワコンで制御でき、発電した直流電気をそのまま蓄電池に充電可能です(DC→DC)。

家庭で使うときはDC→ACと1回変換するだけで済むため、変換ロスを大幅に減らせて効率的です。

 

ハイブリッド型と単機能型(従来型)との違い

ハイブリッド型と単機能型(従来型)との違いを表にまとめました。
 

比較項目ハイブリッド型単機能型(従来型)
パワコンの数1台(一体型)2台(太陽光用+蓄電池用)
変換ロス少ない(DC→ACの1回の変換で使用可能)多い(DC→AC→DC→ACの合計3回の変換が必要)
設置スペースコンパクトやや大きい
停電時の機能太陽光と蓄電池を連携制御可能連携が限定的な場合がある
既存システムとの互換性メーカーや容量の制約あり比較的自由に組み合わせ可能
初期費用やや高いやや安い

ハイブリッド型は、1台のパワコンで太陽光発電と蓄電池を制御できる点が従来型との大きな違いです。

変換ロスが少ないため、電力を効率的に利用できます。

 

また、設置面でもハイブリッド型は1台でパワコン機能を統合しているため省スペースとなり、配線工事も簡略化できるメリットがあります。

 

ハイブリッド型蓄電池のメリット

ハイブリッド型蓄電池を導入することで得られる3つのメリットについて詳しく解説します。

 

変換ロスを抑えて電気を効率よく使える

ハイブリッド型蓄電池の最大のメリットは、変換効率の高さです。

 

従来型では、太陽光で発電した直流電気を蓄電池に充電してから使う場合、合計3回の変換が必要となり、その分ロスが大きくなります。

一方、ハイブリッド型は太陽光で発電した直流電気をそのまま蓄電池に充電できるため、変換ロスは使用時の1回に抑えられます。

 

近年のパワコンの変換効率は95%前後が主流です。

これを基準に計算すると、従来型では「0.95×0.95×0.95=約0.86」となり、使用までにおよそ14%のロスが発生します。

一方、ハイブリッド型では、変換が1回だけなので、ロスは約5%にとどまります

 

停電時でも太陽光が使える

災害時や計画停電の際にも、ハイブリッド型蓄電池は大きな威力を発揮します。

 

従来型の蓄電池では、太陽光発電と連携していても、停電時に太陽光パワコンが停止してしまい、発電した電気を使えないケースがあります。
 

一方、ハイブリッド型は太陽光発電と蓄電池を一括制御するため、停電発生時でも自動的に自立運転に切り替わり、太陽光で発電した電気を使いながら、同時に蓄電池への充電も可能です。

これにより、停電時でもより快適な生活環境を維持できるのは大きなメリットです。

 

省スペースで設置できる

機器の台数が少なくなるため、設置スペースを有効活用できるのもハイブリッド型の利点です。

従来型では太陽光パワコンと蓄電池パワコンの2台分のスペースが必要でしたが、ハイブリッド型は1台で済むため、限られた設置場所を有効活用できます
 

また、機器が少ない分、工事も簡略化されるため工事費用も抑えられる傾向があります。

特に新規に太陽光発電と蓄電池を同時に設置する場合や、既存の太陽光パワコンの更新時期に合わせて蓄電池も導入する場合は、ハイブリッド型が合理的です。

 

システム導入費用全体でみると、工事費の違いで数十万円程度の差が出る場合もあります。

 

ハイブリッド型蓄電池のデメリット

メリットがある一方で、ハイブリッド型蓄電池にはいくつかのデメリットも存在します。

導入前に以下の点もよく検討しましょう。

 

初期費用が高い

ハイブリッド型蓄電池は、一般的な単機能型と比較すると初期費用が高い傾向にあります。

これは高度な制御技術が必要なパワコン部分のコストや、一体型ならではの専用設計による部分が大きいためです。

 

一般的な相場として、同じ容量で比較した場合、ハイブリッド型は単機能型よりも10〜20%程度高くなることが多いです。

たとえば、10kWhクラスでは単機能型が150万円前後、ハイブリッド型は170〜180万円程度になるケースもあります。

 

ただし、国や自治体の補助金制度を活用することで負担を軽減できる場合もあります。

補助金は年度や地域によって内容が変わるため、最新の制度を事前に確認することをおすすめします。

 

既存の太陽光パネルの規格に合わない場合がある

既存の太陽光発電システムにハイブリッド型蓄電池を後付けする場合、最大の注意点は接続の互換性です。

 

ハイブリッド型は太陽光発電と蓄電池を一体で管理するため、既存の太陽光パネルの種類や容量、電圧などとの適合性を確認する必要があります。

 

具体的には以下の点を確認しましょう。

  • パネル容量とパワコンの定格容量が適切に合っているか
  • パネルの開放電圧がパワコンの許容範囲内か
  • パネルの種類(片面型、両面型、HIT型など)にパワコンが対応しているか

 

場合によっては、既存の太陽光パネルとハイブリッド型蓄電池のパワコンが接続できないこともあります。

その場合、太陽光パネルの一部交換や追加工事が必要になるケースもあるため、導入前に専門家に相談することをおすすめします。

 

パワコンの交換が必要になる

すでに太陽光発電システムを設置済みのご家庭が、ハイブリッド型蓄電池を後付けする場合は、既存のパワコンの交換が必要です。

 

パワコンの寿命(一般的に10〜15年)を迎えて交換を考えている方にとっては負担になりませんが、設置から年数が浅い場合は、従来型の蓄電池を選んだ方が価格を抑えられます。

 

ハイブリッド型蓄電池がおすすめな家庭の特徴

ハイブリッド型蓄電池は多くのメリットがありますが、すべての家庭に適しているとは限りません。

以下のような条件に当てはまる方は、特にハイブリッド型蓄電池の導入がおすすめです。

 

太陽光発電設備のパワコンが10年以上経過している

パワコンの一般的な寿命は10〜15年と言われています。

すでに設置から10年以上経過している場合、近い将来パワコンの交換が必要になる可能性が高いです。

 

そのタイミングでハイブリッド型蓄電池を導入すれば、パワコン交換と蓄電池導入を一度に行えるため効率的です。

 

停電対策を重視している

自然災害が多い地域や、在宅医療機器を使用している家庭など、停電対策を重視する場合はハイブリッド型が向いています。

停電時に太陽光発電と蓄電池を連携させて長時間の電力確保が可能なため、より安心した生活を送れます。

 

設置スペースが限られている

都市部の住宅や狭小地の住宅では、設置スペースの確保が課題になることがあります。

ハイブリッド型は機器の設置スペースを最小限に抑えられるため、限られたスペースを有効活用できます。

 

自家消費を最大化したい

卒FIT後の太陽光発電の余剰電力を最大限自家消費したい場合、変換効率の高いハイブリッド型が適しています

特に日中に不在が多く、夜間の電力消費が多い家庭では、昼間の余剰電力を効率よく蓄えて夜に使用できるため、電気代の削減効果が高まります。

 

ハイブリッド型蓄電池を設置する流れ

ハイブリッド型蓄電池の設置には、一般的に以下のような流れで工事が進められます。

 

1.現地調査・見積もり

専門業者が自宅を訪問し、設置場所や既存設備との接続方法などを確認します。

太陽光パネルの種類や容量、設置環境などをチェックし、最適なシステム構成を提案してもらいましょう。

 

2.設置工事(1~2日)

一般的な工事期間は1〜2日間です。

蓄電池本体の設置、パワコンの交換・設置、配線工事、分電盤の改修などが行われます。

重量物の設置や電気工事が伴うため、専門業者による施工が不可欠です。

 

3.系統連系手続き

工事完了後は、電力会社への連系申請手続きが必要です。

通常は施工業者が代行してくれます。

 

4.運転開始・操作説明

すべての工事と手続きが完了したら、システムの運転が開始されます。

この際、業者から操作方法や運転モードの説明を受けましょう。

 

ハイブリッド型蓄電池を設置する際の注意点

ハイブリッド型蓄電池の設置に関する主な注意点は以下の通りです。

 

設置場所を確保する

蓄電池本体は製品にもよりますが、一般的にエアコンの室外機より一回り大きいサイズのものが多いです。

防水性能はありますが、直射日光や雨風を避けられる場所(軒下など)への設置が望ましいとされています。

 

容量にもよりますが、本体重量は100kgを超える製品が一般的なので、床の耐荷重性も確認が必要です。

 

施工業者に相見積もりを取る

蓄電池工事には電気工事士の資格が必要です。

安全で適切に施工してもらうには、メーカー認定の施工店や実績が豊富な業者を選ぶことが大切です。

 

複数の業者から相見積もりを取り、価格や施工内容を比較検討しましょう。

 

既存の太陽光発電設備との兼ね合いを確認する

すでに太陽光発電を設置している場合、ハイブリッド型パワコンへの交換が必要になります。

その際、既存のパネルとの互換性や、接続方法について確認が必要です。

 

販売店や施工業者に相談しておくと安心です。

 

停電時の対応について説明を受けておく

停電時の動作や使用可能な電力量は、製品によって異なります。

 

とくに、特定負荷型(一部のコンセントで使用可能)か全負荷型(家全体で使用可能)かによって使い方が大きく異なります

 

停電時の対応について事前に詳しく説明を受けておきましょう。

 

人気のハイブリッド型蓄電池メーカーと製品比較

現在、国内で人気のあるハイブリッド型蓄電池メーカーと主要製品を比較してみましょう。

メーカー

製品名

蓄電容量

特徴

保証期間

ニチコントライブリッド蓄電システム ESS-T3

4.9kWh/

7.4kWh(最大14.9kWhまで拡張可能)

EV充放電も可能な先進システム。後から容量増設可能本体15年、リモコン5年、ケーブル10年
オムロンKPBP-Aシリーズ6.3kWh~16.4kWh停電時の高出力が特徴。小型設計で置き場所に困らない。15年
シャープクラウド蓄電池6.5kWh/7.7kWh/9.5kW、(最大15.4kWhまで拡張可能)AI制御による最適充放電、COCORO ENERGYモニタリングでスマホへ通知サービスあり10年(無償)、15年(有償)
長州産業スマートPV6.3~16.4kWh大容量モデルが充実。安心の長期保証制度。15年
パナソニック創蓄連携システムS+3.5kWh/5.6kWh/6.3kWh(最大37.8kWh)HEMSとの連携に優れ、他の家電と連動制御可能10年または15年

例えば、ニチコンのトライブリッドシステムは、EVをお持ちの方や将来購入予定の方に特におすすめです。
太陽光・蓄電池・EVの3つを一元管理できる先進的なシステムです。

 

オムロンのKPBP-Aシリーズは、停電対策を重視する方に適しています。
停電時の出力が大きく、多くの家電を同時に使用できる点が強みです。

 

シャープのクラウド蓄電池は、AIによる自動最適化機能が充実しており、効率的な蓄電・放電制御を実現します。

※詳しい仕様や最新情報は各メーカーの公式サイトをご確認ください。

 

価格面では各メーカーとも蓄電容量によって大きく変わりますが、7kWh程度のモデルで140〜170万円前後、10kWh超のモデルで170〜200万円程度が一般的な相場です(工事費込み)。

 

ただし、メーカーによる販売施策や補助金の適用状況によって実質負担額は大きく変わり、200万円を超えることもあります。

複数社から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

 

まとめ

ハイブリッド型蓄電池は、太陽光発電と蓄電池を効率的に連携させる便利なシステムですが、選び方にはポイントがあります。

 

既存の太陽光システムの状況や導入目的(電気代の削減、停電対策、EV連携など)、生活スタイルに合った容量、保証やメーカーのサポート体制を確認することが重要です。

 

とくにパワコン交換のタイミングが近い方、停電対策を重視する方、省スペースで設置したい方には適しています。

導入の際は、複数の業者から見積もりを取り、補助金の活用も忘れずに検討しましょう。

 

太陽光と蓄電池の組み合わせは、これからの持続可能な暮らしを支える大切な設備です。

本記事が検討の参考になれば幸いです。

 

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