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太陽光発電とEVの組み合わせでできること

卒FIT(固定価格買取制度の終了)後の太陽光発電を最大限に活用する方法として、電気自動車(EV)への充電が注目されています。これまで電力会社に売っていた電気を、自家消費に切り替えることで新たな価値が生まれるのです。

太陽光発電とEVを組み合わせると、主に次のようなことができるようになります。

  • 自宅で発電した電気でEVを充電:卒FIT後は売電単価が下がるため、発電した電気を自家消費する方が経済的です
  • EVを「走る蓄電池」として活用:V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、EVから家庭へ電気を供給することも可能に
  • 災害時のバックアップ電源:停電時にもEVのバッテリーから電気を取り出して家電製品を使用できる
  • ガソリン代を大幅削減:太陽光で充電すれば、燃料費がほぼゼロに

EVと太陽光発電の組み合わせは「エネルギーの自給自足」への第一歩。昼間に余った電気をEVに貯めて、夜間や必要なときに使うことで電気代も節約できる賢い選択なのです。

太陽光発電で作った電気でEVを充電するメリット

卒FITを迎えると、これまで1kWhあたり42円や38円などの高額で買い取られていた電気が、8~10円程度まで下がってしまいます。一方、私たちが電力会社から購入する電気は20~30円/kWh程度。この差を考えると、発電した電気は「売るより使う方がお得」なのは明らかです。

特にEVへの充電は、太陽光発電の電気を有効活用する最適な方法です。その理由は以下の通りです。

  • 電気の大量消費先になる:EVのバッテリー容量は40~100kWhと大きく、余剰電力の受け皿として最適
  • 電気代とガソリン代の両方を節約:太陽光で充電すれば、電気代もガソリン代も同時に削減
  • 自家消費率アップ:電気を売らず自分で使う率(自家消費率)が高まると、卒FIT後の経済性が大幅に向上

太陽光発電の価値は「売電収入」から「電気代の節約」に変わります。充電したEVで走れば「ガソリン代の節約」も加わり、二重の経済効果が生まれるのです。

太陽光発電とEVの相性が良い理由

太陽光発電とEVは技術的にも経済的にも相性が抜群です。これには次のような理由があります。

技術面での相性

  • どちらも「直流電気」を扱うシステム。変換ロスが少なく効率的にエネルギーを活用できる
  • V2Hシステムを導入すれば、太陽光→EV→家庭という電気の循環が可能になる
  • 最新のシステムでは太陽光の発電状況に合わせて自動的に充電制御ができる

経済面での相性

  • EVの燃費は一般的に5~10km/kWhと高効率。太陽光発電の余剰電力で走行コストを大幅に削減できる
  • ガソリン車と比べて維持費が安く、太陽光と組み合わせるとさらにランニングコストが下がる
  • 両方とも環境性能が高く、CO2削減による環境価値も大きい

このように太陽光発電とEVは「電気を作る側」と「電気を使う側」という関係だけでなく、V2Hを介することで「電気を相互にやりとりする関係」を築けるのが大きな特徴です。日中の余剰電力をEVに蓄え、必要なときに家庭で使うという循環システムが構築できます。

太陽光発電×EVによる経済効果

太陽光発電とEVを組み合わせると、どれくらい経済的なメリットがあるのでしょうか。具体的な数字を見てみましょう。

卒FIT後の太陽光発電の売電単価は約8~10円/kWhです。一方、電力会社から電気を買う場合は20~30円/kWh程度かかります。この差額分が「自家消費のメリット」となります。

さらに、EVへの充電に太陽光発電を活用すれば、ガソリン代も節約できるので経済効果は倍増します。例えば、年間12,000km走行する場合の比較を見てみましょう。

ガソリン車の場合

  • 燃費:12km/L
  • ガソリン価格:140円/L
  • 年間燃料費:約14万円

EVの場合(電力会社の電気で充電)

  • 電費:10km/kWh
  • 電気料金:17円/kWh(深夜電力を想定)
  • 年間充電コスト:約2万円

EVの場合(太陽光発電で充電)

  • 電費:10km/kWh
  • 電気料金:実質0円
  • 年間充電コスト:ほぼ0円

単純計算で、ガソリン車からEV+太陽光発電に切り替えると、年間約14万円の燃料費削減が期待できます。10年使用すれば140万円もの差になります。もちろん実際には太陽光だけでEVを100%充電するのは難しいため、部分的に電力会社の電気も使うことになりますが、それでも大きなコスト削減が見込めます。

ガソリン車との燃料代比較

ガソリン車とEVの走行コストを詳しく比較してみましょう。

一般的なガソリン車とEVの実走行コストは次のようになります(100km走行あたり)。

車種燃費/電費単価100km走行コスト
ガソリン車12km/L140円/L約1,170円
EV(買電)10km/kWh25円/kWh約250円
EV(太陽光)10km/kWh0円/kWh実質0円

この比較表からわかるように、同じ距離を走るのにガソリン車はEVの約4.7倍ものコストがかかります。さらに太陽光発電で充電すれば、走行コストはさらに下がります。

年間10,000km走行するとして計算すると:

  • ガソリン車:約11.7万円
  • EV(買電):約2.5万円
  • EV(太陽光):実質0円

この差額を10年間積み重ねると、100万円以上の差になります。家計への影響は非常に大きいと言えるでしょう。

電気代の節約効果

太陽光発電で作った電気をEVに充電することによる電気代の節約効果も見逃せません。

4kWの太陽光発電システムが1日に生み出す電力量は、季節や天候にもよりますが、晴れた日で平均15~20kWh程度です。仮に1日10kWhをEV充電に回せるとすると:

  • 電力会社から買った場合:10kWh × 25円 = 250円/日
  • 太陽光発電で充電した場合:10kWh × 0円 = 0円/日

年間で計算すると:

  • 電力会社からの購入:250円 × 365日 = 91,250円
  • 太陽光発電での充電:0円

卒FIT後に売電した場合の収入は:

  • 10kWh × 8円 × 365日 = 29,200円

つまり、卒FIT後に余剰電力を売電するよりも、EVに充電した方が年間約6万円以上お得になる計算です。

また、V2Hシステムを導入すれば、EV充電だけでなく家庭の電力ピークカットにも活用でき、さらに電気代の節約効果が高まります。例えば昼間の高い電気料金時間帯に、EVから家庭に給電することで、電力会社からの購入電力量を減らすことができます。

環境への貢献度

太陽光発電とEVを組み合わせることで、環境負荷を大幅に削減できます。特にCO2排出量の削減効果は顕著です。

平均的なガソリン車は1km走行あたり約120~150gのCO2を排出します。一方、EVは走行時のCO2排出がゼロ。もちろん発電所での発電に伴うCO2排出はありますが、それでもガソリン車の半分以下です。さらに太陽光発電で充電すれば、走行に伴うCO2排出は実質ゼロになります。

年間10,000km走行するガソリン車のCO2排出量は約1.2~1.5トン。これが太陽光充電のEVではゼロになるので、環境への貢献は非常に大きいと言えます。

走行時のCO2排出ゼロを実現

太陽光発電で充電したEVは、まさに「走るゼロエミッション」と言えます。

  • 太陽光発電:発電時にCO2を排出しない
  • EV:走行時にCO2を排出しない

この組み合わせによって、移動のためのエネルギーをクリーンに獲得し、クリーンに使用する循環が生まれます。

東京都の調査によると、都市部のCO2排出の約2割が自動車などの運輸部門から生じています。太陽光充電のEVが普及すれば、この部分の排出量を大幅に削減できる可能性があります。

環境への貢献は数値だけでなく、社会的な価値も持ちます。今後、カーボンニュートラル社会に向けた取り組みがさらに加速する中で、太陽光発電とEVを組み合わせたライフスタイルは、持続可能な社会づくりの一翼を担うことになるでしょう。

V2Hシステムの活用法

太陽光発電とEVの組み合わせをさらに効果的にするのが「V2H(Vehicle to Home)」システムです。V2Hがあれば、EVは単なる乗り物ではなく、家庭用の大容量蓄電池としても機能します。

V2Hとは何か

V2Hとは「Vehicle to Home」の略で、EVと家庭の間で双方向に電力をやり取りできるシステムです。つまり、家庭からEVへの充電だけでなく、EVから家庭への給電も可能になります。

V2Hシステムの主な機能は以下の通りです。

  • 太陽光発電からEVへの充電:余剰電力をEVに効率よく蓄えられる
  • EVから家庭への給電:電気料金が高い時間帯にEVの電力を家庭で使用できる
  • 停電時のバックアップ電源:災害時にはEVから家庭に電力を供給できる
  • 効率的な充放電制御:電力需給状況に応じて最適な充放電を自動制御

V2Hシステムは専用の機器(V2H対応パワーコンディショナ)を設置することで利用できます。設置場所は主に住宅の外壁や車庫など、EVを駐車する場所の近くに設けることが一般的です。

ただし、すべてのEVがV2Hに対応しているわけではありません。日本国内では日産リーフや三菱アウトランダーPHEVなどが対応していますが、購入前に必ず確認しましょう。

災害時の非常用電源としての活用

V2Hシステムの大きなメリットの一つが、災害時の非常用電源としての活用です。

一般的なEVのバッテリー容量は40~100kWhあり、これは家庭用蓄電池(5~16kWh程度)の数倍の容量です。例えば日産リーフ(40kWh)のバッテリーがフル充電されていれば、一般家庭の電力消費(1日約10kWh)を約4日分まかなえる計算になります。

災害時の活用例:

  • 照明・スマホ充電:LEDライトやスマートフォンの充電など、必要最小限の電力需要に対応
  • 冷蔵庫・テレビ:食料の保存や情報収集に欠かせない家電製品の電源確保
  • 医療機器:在宅医療機器など、生活に欠かせない電化製品の電源バックアップ

V2Hシステムの中には、停電を自動検知して瞬時にバックアップ電源に切り替わる機能を備えた製品もあります。これにより、停電時でもほぼ通常通りの生活を続けることができます。

また、太陽光発電と組み合わせれば、日中は太陽光で発電した電力を使用し、夜間はEVのバッテリーから電力を供給するという運用も可能です。長期停電時でも一定期間は電力を確保できるため、防災対策としても有効です。

太陽光発電でEVはどれくらい走れる?

「太陽光発電でどれくらいEVを走らせられるのか」は、多くの方が気になるポイントです。結論から言えば、一般的な家庭用太陽光発電(4kW程度)があれば、平均的な走行距離をカバーするのに十分な電力を生み出せます。

発電量と走行距離の関係

EVの走行可能距離は、発電量と電費(1kWhあたりの走行距離)から計算できます。

一般的なEVの電費は:

  • 小型EV(日産リーフなど):約6~10km/kWh
  • 中型EV(テスラModel 3など):約5~7km/kWh
  • 大型EV(テスラModel Xなど):約4~6km/kWh

4kWの太陽光発電システムがある場合の走行距離シミュレーション:

日常的なケース

  • 晴れた日の発電量:約20kWh
  • EVへの充電可能量(半分と仮定):約10kWh
  • 走行可能距離(電費7km/kWhの場合):約70km

年間ベース

  • 年間発電量(関東地方の場合):約4,000kWh
  • EVへの充電可能量(30%と仮定):約1,200kWh
  • 年間走行可能距離(電費7km/kWhの場合):約8,400km

日本の一般的な自家用車の年間走行距離は約10,000km程度ですので、太陽光発電だけでかなりの部分をカバーできることがわかります。もちろん、実際には天候や季節による発電量の変動、日中のEV不在(通勤など)といった要因があるため、100%太陽光だけでまかなうのは難しいかもしれません。

しかし、休日や在宅勤務の日に集中して充電するなど工夫すれば、走行距離の大部分を太陽光発電でまかなうことは十分可能です。余った電力は売電するか、家庭用蓄電池に貯めておいて夜間にEVに充電するという方法もあります。

EVと蓄電池の選択と比較

卒FIT後の太陽光発電システムを最大限活用するには、「EV+V2H」と「家庭用蓄電池」のどちらが良いのでしょうか。それぞれの特徴を比較してみましょう。

容量とコストの比較

蓄電容量の比較

  • EV:約40~100kWh(車種による)
  • 家庭用蓄電池:約5~16kWh

導入コストの比較

  • EV+V2H:V2H機器 約90~200万円(補助金適用前)
  • 家庭用蓄電池:容量10kWhで約180~240万円(工事費込・税込)

EVはすでに所有している(または購入予定の)場合、追加費用はV2H機器のみとなります。補助金を活用すれば、V2H機器の導入コストは大幅に下がります。2024年度の場合、国の補助金で最大45万円、自治体によっては追加の補助金も受けられる場合があります。

一方、家庭用蓄電池は容量あたりのコストがEVより高い傾向にあります。しかし、蓄電池専用の補助金もあるため、導入時にはこちらも確認しておくとよいでしょう。

コスト面で言えば、すでに車の買い替えを検討している場合は、ガソリン車ではなくEV+V2Hを選ぶ方が長期的には経済的です。家庭用蓄電池の4~10倍の容量を持つEVバッテリーを、発電・蓄電・走行の3役に活用できるからです。

生活スタイルに合わせた選び方

EV+V2Hと家庭用蓄電池のどちらを選ぶかは、ライフスタイルや優先事項によって異なります。

EV+V2Hが向いている人

  • 車の買い替えを検討している
  • 日常的に車を使用している
  • 停電時の長時間バックアップを重視する
  • 大容量の蓄電システムが欲しい

家庭用蓄電池が向いている人

  • 車をあまり使わない、または持っていない
  • 24時間自動で最適運用したい
  • 設置スペースや工事の簡便さを重視する
  • EV導入までの「つなぎ」として使いたい

理想的なのは、両方を組み合わせることです。例えば、日中のEV不在時も家庭用蓄電池で太陽光の余剰電力を貯めておき、夜にEVが帰宅したら蓄電池からEVに充電するといった連携が可能になります。また、災害時の備えとしても、家庭用蓄電池とEVの2つの電源があれば安心度が高まります。

ただし、初期投資が大きくなるため、まずは自分の生活スタイルに合わせて優先度の高い方から導入することをおすすめします。将来的な拡張も視野に入れて検討するとよいでしょう。

まとめ:卒FIT後の太陽光パネルを最大限活用する方法

卒FIT後の太陽光発電を最大限活用するには、「売る」から「使う」へと発想を転換することが重要です。その中でも、EV充電への活用は経済効果も環境貢献も大きく、特におすすめの選択肢となります。

ポイントをまとめると:

  1. 太陽光発電とEVの組み合わせで大きな経済効果:年間10万円以上の燃料費削減も可能
  2. V2Hシステム導入で電気の循環を実現:発電→蓄電→消費の流れを自宅で完結
  3. 災害時の安心感が大幅アップ:EVの大容量バッテリーで数日間の電力をバックアップ
  4. 環境にやさしいライフスタイル:再エネ電力で走るEVは、CO2排出ゼロの移動手段に
  5. 補助金活用で初期投資を軽減:国や自治体の各種補助金を賢く活用しよう

卒FIT後も太陽光パネルは20年以上発電し続けます。その電気を最大限有効活用することで、初期投資を回収し、さらに追加の経済メリットも得られるのです。

特に太陽光発電所有者にとって、次の車をEVに替え、V2Hシステムを導入することは、卒FIT後の最適解の一つと言えるでしょう。発電した電気を自家消費することで、電気代とガソリン代の両方を節約でき、さらに災害時の備えにもなるからです。

環境負荷低減と経済性、そして防災面での安心を一度に実現できる太陽光発電+EV+V2Hの組み合わせ。卒FIT後も太陽光パネルを有効活用して、サステナブルでスマートな生活を実現しましょう。

 

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