
太陽光発電には買取制度(FIT制度)がありますが、いつまで買い取ってくれるのか気になるのではないでしょうか。
今回の記事では「買取制度の仕組みや期間」「現状の買取価格と今後の変化」「買取期間終了後の選択肢」について解説します。
太陽光発電の活用に興味がある方はぜひ参考にしてください。
太陽光発電の固定価格買取制度(FIT制度)とは?
太陽光発電の買取制度(FIT制度)は、太陽光設備で発電した電気の買取を保証する制度です。
この章では、太陽光発電の買取制度(以下・買取制度)の仕組みや期間について解説します。
固定価格買取制度の仕組み
買取制度では、太陽光発電によって作られた電気が電線によって電力会社に送られ、電力会社が一定の価格・期間で買い取ります。
買取費用の一部を賄うのは、電力会社の利用者から徴収される「賦課金(ふかきん)」です。
賦課金は月の電気料金に含まれ、1kWhあたりの単価は全国共通となります。
2025年5月から2026年6月までの賦課金は、1kWhにつき3.98円です。
このように、賦課金はコストの高い再生可能エネルギーの導入をサポートしています。
買取制度は「余剰買取制度」「全量買取制度」の2種類となります。
余剰買取制度は余った電力のみが電力会社に売れる制度で、全量買取制度は発生した電力を全て買い取ってもらえる制度です。
50kWより少ない太陽光設備は余剰買取制度のみ適用となり、50kWを超える設備であれば全量買取制度を利用できます。
固定価格買取制度の期間
太陽光発電の買取期間は、太陽光設備の発電量によって10年もしくは20年となります。
住宅用として使われる設備(出力10kW未満)は買取期間が10年で、事業に使用される設備(10kW以上)であれば20年です。
つまり太陽光発電の設置から10年間は一定の価格で電力を売却できるといえます。
なお、これから太陽光発電設備を設置するのであれば、買取制度が終わる年度は以下の通りとなります。
買取制度開始年度 | 買取制度終了年度 |
2025年度 | 2035年度(2045年度) |
2026年度 | 2036年度(2046年度) |
2027年度 | 2037年度(2047年度) |
※()内は10kW以上の場合
太陽光発電の固定価格買取価格の現状と今後の予測
買取制度の期間は最大20年間となりますが、買取価格の現状や見通しについても気になるのではないでしょうか。
今回の章では、2025年時点の買取価格と今後の予測について説明します。
2025年現在の買取価格
2025年度以降における太陽光発電の買取価格(1kWhあたり)は次の通りです。
設備の規模 | 区分 | 2025年度上半期 (4〜9月) | 2025年度下半期 (10〜3月) | 2026年度 (参考) |
10kW未満 | 住宅用 | 15円 | 24円(〜4年) 8.3円(5〜10年) | |
10kW以上 (屋根設置) | 事業用 | 11.5円 | 19円(〜5年) 8.3円(6〜20年) | |
10kW以上50kW未満 (地上設置) | 10円 | 9.9円 | ||
50kW以上250kW未満 (地上設置) | 8.9円 | 8.6円 | ||
250kW以上 (地上設置) | 最大8.9円 | 非公開 |
10kWを超える事業用の設備は買取期間が長い分、買取価格は低くなります。
250kW以上の事業用太陽光発電(地上設置のみ)については、入札により買取価格を決定します。
2025年度は4回入札が行われ、上限価格はそれぞれ8.9円、8.83円、8.75円、8.68円です。
今後の買取価格はどうなるか?
2026年度からは、地上に設置する事業用設備(10kW以上250kW未満)の買取価格が下落します。
一方、住宅用設備及び屋根設置の事業用設備は、2025年度下半期から初期導入後4〜5年間は買取価格が上昇します。
買取価格がアップするのは、2025年10月以降から「初期投資支援スキーム」が導入されるためです。
初期投資支援スキームは新規導入後しばらくは買取価格を高く設定し、初期投資(費用)の回収を早めるための仕組みです。
従来の買取制度(FIT)においては買取価格が年々下がり、投資の回収が長期間に及ぶ傾向にありました。
初期投資支援スキームが開始されれば、短期間で収益を出しやすくなります。
太陽光発電の固定価格買取期間が終了した後の選択肢
太陽光発電の買取期間が終わった後は、以下のような選択肢があります。
・売電契約を更新する
・電力の自家消費量を増加させる
・電力を全て自家消費する
・太陽光設備や土地を売却する
この章では、それぞれの選択肢について解説します。
売電契約を更新する
太陽光発電の買取期間が終了した後は、売電契約の更新が一般的となります。
電力会社と契約を更新すれば、期間が終わっても電力の売却が可能です。
買取期間が満了する3〜6ヶ月前には、電力会社から契約更新についての通知が届きます。
契約の更新が滞ると、残った電力が電力会社によって無償で引き取られる可能性があるため、期間までに手続きを行いましょう。
買取期間が終わった後は、売電価格が1kWあたり7〜10.5円(2025年現在)となります。
買取制度適用中の売電価格は8.3〜15円(住宅用設備)のため、制度の終了後は電力の売却で利益を出しづらくなるでしょう。
太陽光発電の安定運用を望むのであれば、売電を続ける以外の選択肢も考えるべきです。
電力の自家消費量を増加させる
太陽光発電の買取制度が終わった後は、売電よりも電力の自家消費量を増やす方がお得になるかもしれません。
一般的な家庭用の太陽光設備であれば、以下のように電力を活用することになります。
- 昼間:自家消費&余った電力を売電
- 発電しない時間帯:電気を電力会社から購入する
電力会社の電気料金が売電価格より高いケースでは、自家消費量を増加させた方が電気代の節約につながります。
自家消費量を増やすのにおすすめできる方法は以下の通りです。
・蓄電池の導入
・エコキュートの導入
・V2H(家庭用電力で電気自動車のバッテリーを充電する設備)の導入
・家をZEH住宅(省エネ住宅)にする
これらの設備は導入費用がかかるため、シミュレーションを十分に行う必要があります。
電力を全て自家消費する
全量自家消費型の太陽光発電に切り替えるのも、買取制度が終わった後の選択肢となります。
全量自家消費型は、発電した電力を全て太陽光設備のある建物で使用し、売電せずに電力の自給自足を図るものです。
全量自家消費型向きなのは、住宅のオール電化などによって電力を多く消費するケースです。
電力の購入量を削減できれば電気代が節約できるため、電力消費量を気にする家庭に適しています。
全量自家消費型へ切り替えする際には、電力会社へ契約変更を依頼する必要があります。
また、逆潮流(電力会社へ電気が流れ込むこと)の対策や制御装置を導入しなければなりません。
全量自家消費型では自家消費できない分の電力が無駄となってしまうため、蓄電池も一緒に設置することをおすすめします。
太陽光設備や土地を売却する
買取制度が終わった後に売電の収益が見込めない場合は、太陽光設備や土地を売却するのも選択肢の1つです。
買取期間が満了を迎えた後は、高値での売却が難しくなります。
しかし、CSR活動(環境保護などで社会的責任を果たす活動)に注力している企業であれば、期間終了後でも設備の需要があります。
需要が見込まれるのは、政府がカーボンニュートラル(温室効果ガスの削減)の実現を進めているためです。
これにより、太陽光発電の中古物件に注目する企業が増加すると予測できるため、設備の売却も選択肢となるのです。
太陽光設備や土地を売却する際は、複数の業者を比較し、高値で買い取ってくれる業者はどこかを見極めましょう。
設備を定期的にメンテナンスしていれば、査定金額が上がりやすくなります。
まとめ
今回の記事では、「太陽光発電の買取制度はいつまでか」「今後の買取価格や選択肢はどうなるのか」について解説しました。
買取制度の期間は、住宅用は10年、事業用は20年です。
買取制度が終了した後も電力の売却は可能ですが、買取価格が下がる可能性があります。
そのため、固定価格買取制度が終わった後は「売電契約の更新」「電力の自家消費」「太陽光設備の売却」が選択肢となります。
太陽光発電の設備を上手に活用し、経済的な暮らしを実現しましょう。