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FIT満了時期とは?基本を知っておこう

固定価格買取制度(FIT制度)は、太陽光発電などの再生可能エネルギーで作られた電気を、電力会社が一定期間・固定価格で買い取ることを国が約束した制度です。この買取期間には期限があり、住宅用太陽光発電(10kW未満)は設置から10年間、産業用(10kW以上)は20年間と法律で定められています。

期間満了を迎えることを「卒FIT(そつフィット)」と呼び、近年では2009年頃から太陽光発電を導入した多くの家庭が次々と満了時期を迎えています。2019年以降は毎年20〜30万件規模で買取期間が満了となっているため、あなたの設備も近いうちに卒FITを迎える可能性があります。

卒FITを迎えると、これまでの高額な固定買取価格での売電ができなくなります。しかし、太陽光パネルはその後も20年以上発電し続けるため、満了後のプランをしっかり考えておくことが大切です。何も対策をしないと、せっかく発電した電気が無駄になってしまう恐れがあります。

住宅用太陽光発電の満了時期はいつ?

住宅用太陽光発電の買取期間は、売電開始日から10年後が満了日となります。例えば2012年7月1日に売電を開始した場合、2022年6月30日が満了日です。

設置年度ごとの大まかな満了時期は以下のようになります。

設置時期買取価格(円/kWh)FIT満了時期
2009年48円2019年
2010年48円2020年
2011年42円2021年
2012年42円2022年
2013年38円2023年
2014年37円2024年
2015年33〜35円2025年

ただし、実際の満了日は設備ごとに異なりますので、必ず正確な日付を確認することが重要です。

自分のFIT満了時期を確認する3つの方法

自分の太陽光発電設備のFIT満了時期を知っておくことは、その後の対策を考える上で非常に重要です。満了の4〜6か月前には電力会社から通知が届きますが、前もって確認しておくと余裕をもって準備できます。以下では主な確認方法を3つ紹介します。

買取期間満了通知で確認する

最も確実な方法は、現在の売電先(電力会社)から送られてくる「FIT制度 買取期間満了のご案内」で確認することです。この通知は買取期間満了の4〜6か月前を目安に届きます。はがきや封書の形で送られてくることが多く、以下の重要情報が記載されています。

  • 買取期間満了日(卒FIT日)
  • 現在の売電先
  • 設備ID(10桁の識別番号)
  • 発電設備の出力(kW)
  • 満了後の選択肢に関する案内

この通知書は、今後の手続きで必要となる重要な書類です。受け取ったらすぐに内容を確認し、大切に保管してください。紛失すると後の手続きで手間がかかる場合があります。

契約書や検針票で確認する

買取期間満了通知が届く前に確認したい場合は、売電契約書毎月の検針票(購入電力量のお知らせ)でも確認できます。

売電契約書には契約開始日が記載されており、そこから10年後が満了日となります。もし売電契約書が見つからない場合は、毎月届く検針票にも「FIT買取開始年月日」や「買取期間満了日」が記載されている場合があります。特に満了が近づくと、検針票に「買取期間満了日:○年○月○日」と明記されることが多いので確認してみましょう。

電力会社のWebサービスで確認する

多くの電力会社では、会員向けWebサイト(マイページ)で買取期間満了日を確認できるサービスを提供しています。

未登録の方は、この機会に登録してみるとよいでしょう。インターネット上でいつでも確認できる上、検針票のペーパーレス化など他のメリットもあります。

FIT関連書類を紛失した場合の対処法

FIT制度に関連する書類を紛失してしまっても心配いりません。以下の方法で再取得や情報確認が可能です。

買取契約書の再発行方法

売電契約書を紛失した場合は、現在の売電先(電力会社)に連絡して再発行を依頼しましょう。多くの電力会社では、本人確認後に契約書のコピーや契約内容が記載された書面を発行してくれます。

ただし、一部の電力会社(特に東京電力など)では、2013年以降に契約した場合、正式な契約書ではなく申込控えで契約成立としているケースもあります。その場合でも、電力会社側に契約情報は保管されていますので、必要事項の確認ができます。

再発行手続きには時間がかかる場合があるため、卒FIT前には余裕をもって依頼することをおすすめします。

満了通知書の再取得方法

買取期間満了のお知らせ(卒FIT通知)を紛失した場合も、現在の売電先に問い合わせて再発行を依頼できます。電話やメールで「買取期間満了通知を紛失したので再発行してほしい」と伝えれば対応してもらえます。

万が一、満了日が近づいていて再発行が間に合わない場合は、以下の代替方法もあります。

  • 直近の検針票で確認(満了日が近い場合は記載されています)
  • 電力会社のWebサイト(マイページ)で確認
  • 電話で満了日だけ教えてもらう

新たな売電契約の申込みには「設備ID」や「満了日」の情報が必要になるため、いずれかの方法で必ず確認しておきましょう。

設備認定通知書の再発行手続き

太陽光発電設備の認定通知書(経済産業省発行)を紛失した場合は、一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)代行申請センターに連絡しましょう。住宅用太陽光(50kW未満)の場合は電話(0570-03-8210)で問い合わせができます。

また、「再生可能エネルギー電子申請システム」のマイページからも設備情報を確認できます。設備IDとパスワードがあれば、オンラインで設備情報参照画面を表示させ、設備の詳細情報を見ることができます。

もし設備IDやパスワードがわからない場合でも、太陽光発電協会の代行申請センターで設置者名と住所から検索してもらうことも可能です。

FIT終了通知を受け取ったときの対応

買取期間満了のお知らせ(卒FIT通知)が届いたら、すぐに以下の対応をしましょう。

通知内容の確認ポイント

まず通知書に記載された重要情報を確認します。特に以下の点は必ずチェックしてください。

  • 買取期間満了日:この日付を過ぎると現在のFIT契約は終了します
  • 現在の売電先:特に「一般送配電事業者」(例:東京電力パワーグリッドなど)と記載されている場合は注意が必要です。そのままでは満了後に余剰電力が無償引き取り(0円)になってしまう可能性があります
  • 設備ID:新たな契約手続きに必要な10桁の識別番号です
  • 発電設備の出力:新契約の際に必要な情報です

通知書は今後の手続きで必要になるため、内容を確認したら必ず保管しておきましょう。可能であれば、重要情報をメモやスマホの写真で控えておくことをおすすめします。

卒FIT後の選択肢を検討する

通知を受け取ったら、卒FIT後にどうするかを検討する必要があります。主な選択肢は以下の通りです。

  1. 新たな電力会社と契約して売電を継続する
    • 売電収入は下がりますが(約7〜10円/kWh程度)、追加費用なしで収入確保ができます
    • 電力会社ごとに買取単価や条件が異なるので比較検討が必要です
  2. 蓄電池を導入して自家消費を増やす
    • 日中の余剰電力を貯めて夜間に使うことで電気代節約効果が得られます
    • 導入費用(100〜200万円程度)はかかりますが、長期的な電気代削減や停電時の非常用電源としての価値もあります
  3. 電気自動車(EV)と連携する
    • すでにEVをお持ちの方は、余剰電力で充電することでガソリン代削減効果があります
    • V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、車から家へ電力供給も可能です
  4. 特に何もしない
    • この場合、余剰電力は無償で電力系統に流れてしまいます
    • 経済的メリットがないため、基本的にはおすすめできません

家族とも相談し、ライフスタイルや予算に合った選択をしましょう。何もしないと電気が無駄になるので、必ず何らかの対応をとることが重要です。

卒FIT前に準備しておくチェックリスト

FIT満了を控えた太陽光発電オーナーは、以下の項目を事前に確認・準備しておくと安心です。満了日の2〜3か月前までには対応を始めるのが理想的です。

設備状態の点検と確認

発電設備が正常に動作しているか確認しましょう。

  • パネルの汚れや破損がないか目視チェック
  • 発電量モニターで異常な発電量低下がないか確認
  • パワーコンディショナーの動作状態チェック(エラー表示がないか)
  • メーター(特に余剰電力計)がスマートメーターに交換されているか確認

設置から10年近く経過している場合、パワーコンディショナーの保証期間が切れている可能性があります。不具合があれば、メーカーや専門業者に点検を依頼することを検討しましょう。

新たな売電先の比較検討

売電を継続する場合は、複数の電力会社の買取プランを比較検討します。

  • 資源エネルギー庁のウェブサイトで卒FIT電力の買取事業者一覧を確認
  • 地域の電力会社の卒FIT向けプランをチェック
  • 新電力(PPS)各社の買取条件を比較

比較ポイントは、買取単価(円/kWh)だけでなく、契約期間、解約条件(違約金の有無)、支払方法なども重要です。地域の電力会社より新電力の方が1〜2円高い買取単価を提示していることもあります。

書類と情報の整理

卒FIT後の手続きに必要な書類と情報を整理しておきましょう。

  • 満了通知書:設備ID、設置場所住所、契約者名義、満了日などの情報があります
  • 売電契約書:現在の契約条件が確認できます
  • 検針票:受電地点特定番号や電力受給契約番号が記載されています
  • 振込口座情報:新しい売電収入の振込先として使用します

特に紛失しやすい書類は、デジタル写真で保存するか、重要情報をメモしておくと安心です。紛失した書類がある場合は、このタイミングで再発行を依頼しておきましょう。

卒FIT後の新たな売電契約手続き

FIT満了後も引き続き売電収入を得たい場合の手続きについて説明します。

申込みに必要な情報と書類

新たな売電契約を結ぶ際には、以下の情報や書類が必要になります。

  • 契約者情報
    • 氏名、住所、連絡先電話番号
    • 振込口座情報(銀行名、支店名、口座番号、口座名義)
  • 設備情報
    • 設備ID(10桁の認定ID)
    • 発電設備の設置場所住所
    • 発電設備の容量(kW)
    • FIT買取期間の満了日
  • 現在の契約情報
    • 現在の売電先名
    • 電力受給契約番号
    • 受電地点特定番号(22桁の数字)

これらの情報は満了通知書や検針票から確認できます。申込み方法は各電力会社によって異なりますが、多くの場合はウェブサイト、郵送、電話などから選べます。

申込書類に記入する際は、誤りがないように慎重に入力しましょう。特に設備IDや受電地点特定番号などの数字は間違えやすいため、注意が必要です。

スマートメーター設置と切替手続き

新たな売電契約には基本的にスマートメーターが必要です。まだスマートメーターが設置されていない場合は、申込みをすると自動的に交換工事の案内があります。

スマートメーターの設置は、管轄の送配電会社が無料で対応してくれます。工事自体は10〜30分程度の簡易なもので、多くの場合は立ち会いも不要です。交換日の案内があったら、指定された日時に停電があることだけ覚えておきましょう。

契約申込み後は、新しい電力会社が送配電事業者と連携して切替手続き(スイッチング)を行います。これはシステム上の処理なので、お客様側で特別な作業は必要ありません。

新契約開始後の確認事項

新しい売電契約が始まったら、以下の点を確認しておきましょう。

  • 買取単価の確認:契約書や明細書で買取単価が合意通りか確認
  • 売電量の確認:以前と同程度の売電量になっているか確認
  • 支払い方法と時期:売電収入がいつ、どのように支払われるか確認
  • 契約条件の再確認:契約期間、解約条件など

市場連動型の買取プランの場合は、毎月の買取単価が変動することがあります。明細をこまめにチェックし、必要に応じて他社への切替も検討しましょう。多くの卒FIT向けプランでは、違約金なしで解約できるようになっています。

卒FIT後の選択肢別メリット比較

卒FIT後の対応策にはそれぞれメリット・デメリットがあります。ご自身の状況に合った選択をするために、主な選択肢を比較してみましょう。

新電力会社での売電継続のメリット

費用面

  • 初期費用がほぼゼロ(契約変更のみ)
  • スマートメーター未設置でも無料で交換対応

経済効果

  • 売電収入が継続(FIT期間中より下がるものの収入は得られる)
  • 買取単価は地域や会社によって異なるが、一般的に7〜10円/kWh程度
  • 例えば年間3,000kWhの余剰がある場合、約2〜3万円の年間収入

メリット

  • 追加投資不要で手軽に始められる
  • 契約先を変えるだけで売電単価アップも可能
  • 昼間不在がちな家庭に適している
  • いつでも別の選択肢に切り替え可能

デメリット

  • FIT期間中と比べて売電収入が大幅に減少する
  • 市場連動型の場合は収入が安定しない

蓄電池導入による自家消費のメリット

費用面

  • 初期費用が高い(容量にもよるが約100〜200万円)
  • 国や自治体の補助金を活用できる場合あり(数十万円の補助)

経済効果

  • 自家消費による電気代削減(売電より約3倍の価値)
  • 例えば昼間に10kWh余剰がある場合、蓄電して夕方以降に活用すれば 1日あたり約200〜300円、年間で7〜11万円程度の節約効果
  • 長期的に見ると、売電継続より経済的メリットが大きい場合が多い

メリット

  • 電気代高騰のリスクヘッジになる
  • 停電時のバックアップ電源として使える
  • 自給自足感があり、エネルギー自立度が高まる
  • 夜間の電力使用量が多い家庭に適している

デメリット

  • 初期投資の回収に時間がかかる(補助金活用でも約10〜15年)
  • 蓄電池の寿命は約15〜20年のため、寿命と回収期間のバランスを考慮する必要がある

EV活用など他の選択肢の検討

電気自動車(EV)の活用

  • すでにEVを所有している場合、追加投資が少ない
  • 昼間の余剰電力でEVを充電すれば、ガソリン代節約効果が大きい
  • V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、車から家へ電力供給も可能
  • 日中の車の使用状況に左右される

エコキュートなどの活用

  • タイマー設定で昼間に湯を沸かし、余剰電力を有効活用
  • 比較的低コストで余剰電力の自家消費率を高められる
  • 蓄電池ほどの大きな効果はないが、初期投資も少ない

パワーコンディショナーの交換

  • ハイブリッド型パワコンへの交換で停電時対応力向上
  • 蓄電池導入も視野に入れている場合は連携しやすい
  • 設置から10年経過していれば、更新時期としても適している

それぞれの選択肢は、ご家庭のライフスタイル(昼間の在宅状況や電力使用パターン)や予算によって最適解が変わります。複数の対策を組み合わせることも検討しましょう。

まとめ:満了時期に合わせた最適な対応を

FIT契約の満了時期は、太陽光発電設備を所有する方にとって重要な転機です。10年間の固定価格での買取が終了しても、太陽光パネルは20年以上発電し続けるため、その後の活用法をしっかり考えることが大切です。

まずは自分のFIT満了時期を正確に把握し、必要な書類や情報を整理しましょう。満了通知が届いたら、放置せずに早めに対応することがポイントです。特に「何もしない」選択をすると、せっかく発電した電力が無駄になってしまいます。

新たな売電契約を結ぶにしても、蓄電池を導入するにしても、準備には時間がかかります。満了日の少なくとも2〜3か月前には行動を開始しておくと安心です。

卒FIT後の選択肢は、初期費用や経済効果、生活スタイルなどによって最適解が異なります。手軽さを重視するなら売電継続、長期的な電気代削減や非常時対応を重視するなら蓄電池導入、EVをお持ちならそれとの連携などが考えられます。

太陽光発電設備は適切に活用すれば、卒FIT後も家計と環境にプラスになる貴重な資産です。この記事が皆さんの最適な選択の一助となれば幸いです。

 

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卒FIT準備

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