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太陽光発電の売電制度「FIT(固定価格買取制度)」には、あらかじめ決められた買取期間があります。
FIT制度ですが「いつ満了になるのか分からない」「通知が来ないまま期限を過ぎてしまいそう…」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、FIT契約の満了時期を確認する方法や、期限切れ前にやっておきたい手続きや対応策をわかりやすく解説します。
卒FIT後の選択肢についても紹介しているので、太陽光発電を活用している家庭は参考にしてください。
FIT契約の満了時期はいつ?制度終了後はどう変わる?
FIT制度(固定価格買取制度)は、太陽光などの再生可能エネルギーで発電した電気を、一定期間・固定価格で電力会社が買い取ることを国が保証する制度です。
住宅用太陽光発電(10kW未満)では、FIT制度による売電開始から10年間が制度の満了時期となります。
期間満了を迎えることを「卒FIT」と呼び、2019年以降は毎年20~30万件の規模で契約が終了しています。
2012年に売電を始めた方であれば、2022年に満了を迎えており、今後はさらに多くの家庭が卒FITの対象となります。
太陽光パネル自体は20年以上発電を続けられるため、FIT制度終了後に電気をどう活かすかがポイントになります。
FIT制度満了後は高額な売電価格が適用されなくなるため、放置すると発電した電気を無駄にするリスクがあります。
FITの満了時期は「売電を開始した日」から10年後が基本となりますが、設置時期によって買取価格も異なるため、契約書類で正確な日付を確認するのがおすすめです。
卒FIT後の選択肢や対応策を知っておけば、発電した電気を有効活用し、光熱費削減にもつなげられます。
自分のFIT満了時期を確認する3つの方法
自分の太陽光発電設備のFIT満了時期を知っておくことは、その後の対策を考える上で非常に重要です。
FIT制度満了の4〜6か月前には電力会社から通知が届きますが、前もって確認しておくと余裕をもって準備できます。
買取期間満了通知で確認する
FIT制度の満了時期は、現在の売電先(電力会社)から送られてくる「FIT制度 買取期間満了のご案内」で確認できます。
買取期間満了通知は買取期間満了の4〜6か月前を目安に届きます。
はがきや封書で送られてくることが多く、以下の重要情報が記載されています。
- 買取期間満了日(卒FIT日)
- 現在の売電先
- 設備ID(10桁の識別番号)
- 発電設備の出力(kW)
- 満了後の選択肢に関する案内
FIT制度の買取期間満了通知書は、今後の手続きで必要となる重要な書類なので、受け取ったらすぐに内容を確認し、大切に保管してください。
通知書を紛失すると、以後の手続きで手間がかかる場合があります。
契約書や検針票で確認する
FIT制度の買取期間満了通知が届く前に満了日を確認したい場合、売電契約書や毎月の検針票(購入電力量のお知らせ)でも確認できます。
売電契約書に記載されている「契約開始日から10年後」がFIT制度の満了日となります。
売電契約書が見つからない場合、毎月届く検針票にも「FIT買取開始年月日」や「買取期間満了日」が多くのケースで記載されています。
特に満了が近づくと、検針票に「買取期間満了日:○年○月○日」と明記されることが多いので確認してみましょう。
電力会社のWebサービスで確認する
多くの電力会社では、会員向けWebサイト(マイページ)でFIT制度による買取期間満了日を確認できるサービスを提供しています。
会員サイト未登録の方は、この機会にWebサイトに登録してみるとよいでしょう。
インターネット上でいつでも確認できる上、検針票のペーパーレス化など他のメリットもあります。
マイページでは売電実績や検針履歴なども確認できるため、日々の発電状況の把握にも役立ちます。
FIT関連書類を紛失した場合の対処法
FIT制度に関連する書類を紛失してしまった場合、以下の方法で再取得や情報確認が可能です。
買取契約書の再発行方法
売電契約書を紛失した場合は、現在の売電先(電力会社)に連絡して再発行を依頼しましょう。
多くの電力会社では、本人確認後に契約書のコピーや契約内容が記載された書面を発行してくれます。
一部の電力会社(特に東京電力など)では、2013年以降に契約した場合、正式な契約書ではなく申込控えで契約成立としているケースもあります。
その場合でも、電力会社側に契約情報は保管されていますので、必要事項の確認ができます。
再発行手続きには時間がかかる場合があるため、卒FIT前には余裕をもって依頼することをおすすめします。
満了通知書の再取得方法
買取期間満了のお知らせ(卒FIT通知)を紛失した場合、現在の売電先に問い合わせて再発行を依頼できます。
電話やメールで「買取期間満了通知を紛失したので再発行してほしい」と伝えて対応してもらいましょう。
満了日が近づいていて再発行が間に合わない場合、以下の代替方法もあります。
- 直近の検針票で確認(満了日が近い場合は記載されています)
- 電力会社のWebサイト(マイページ)で確認
- 電話で満了日だけ教えてもらう
新たな売電契約の申込みには「設備ID」や「満了日」のような情報が必要になるため、いずれかの方法で確認しておきましょう。
設備認定通知書の再発行手続き
太陽光発電設備の認定通知書(経済産業省発行)を紛失した場合、一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)代行申請センターに連絡しましょう。
住宅用太陽光(50kW未満)の場合は電話(0570-03-8210)で問い合わせができます。
また、「再生可能エネルギー電子申請システム」のマイページからも設備情報を確認できます。
設備IDとパスワードがあれば、オンラインで設備情報参照画面を表示させ、設備の詳細情報の確認が可能です。
設備IDやパスワードがわからない場合、太陽光発電協会の代行申請センターで設置者名と住所から検索してもらえるケースがあります。
FIT終了通知を受け取ったときの対応
買取期間満了のお知らせ(卒FIT通知)が届いたら、すぐに以下の対応をしましょう。
通知内容の確認ポイント
まず通知書に記載された重要情報を確認し、以下の点をチェックしてください。
- 買取期間満了日:この日付を過ぎると現在のFIT契約は終了します
- 現在の売電先:特に「一般送配電事業者」(例:東京電力パワーグリッドなど)と記載されている場合は注意が必要です。そのままでは満了後に余剰電力が無償引き取り(0円)になる可能性があります
- 設備ID:新たな契約手続きに必要な10桁の識別番号です
- 発電設備の出力:新契約の際に必要な情報です
FIT終了通知書は今後の手続きで必要になるため、内容確認後は必ず保管しておきましょう。
可能であれば、重要情報をメモやスマホの写真で控えておくと安心です。
卒FIT後の選択肢を検討する
FIT終了通知の受け取り後、卒FIT後にどうするかを検討する必要があり、主な選択肢は以下の通りです。
- 新たな電力会社と契約して売電を継続する
- FIT期間中より売電収入は下がりますが(約7〜10円/kWh程度が相場)、追加費用なしで収入確保できます
- 電力会社ごとに買取単価や条件が異なるので比較検討が必要です
- 蓄電池を導入して自家消費を増やす
- 日中の余剰電力を貯めて夜間に使うことで電気代節約効果が得られます
- 導入費用(100〜200万円程度)はかかりますが、長期的な電気代削減や停電時の非常用電源としての価値もあります
- 電気自動車(EV)と連携する
- EVをお持ちの方は、余剰電力で充電することでガソリン代削減効果があります
- V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、車から家へ電力供給も可能です
- 何もしない
- 何もせず様子を見ることも可能ですが、余剰電力は無償で電力系統に流れてしまいます
- 経済的メリットがないため、基本的にはおすすめできません
卒FIT後の対策は家族とも相談し、ライフスタイルや予算に合った選択をしましょう。
卒FIT前に準備しておくチェックリスト
FIT満了を控えた太陽光発電設備の所持者は、以下の項目を事前に確認・準備しておくと安心です。
満了日の2〜3か月前までには対応を始めるのが理想的です。
設備状態の点検と確認
卒FIT前に発電設備が正常に動作しているか確認しましょう。
- パネルの汚れや破損がないか目視チェック
- 発電量モニターで異常な発電量低下がないか確認
- パワーコンディショナーの動作状態チェック(エラー表示がないか)
- メーター(特に余剰電力計)がスマートメーターに交換されているか確認
太陽光設備設置から10年近く経過している場合、パワーコンディショナー(太陽光で作った家庭用電気に変換する装置)のような設備の保証期間が切れている可能性があります。
不具合があれば、メーカーや専門業者に点検を依頼することを検討しましょう。
新たな売電先の比較検討
売電を継続する場合は、新たな契約先となる複数の電力会社の買取プランを比較検討します。
- 資源エネルギー庁のウェブサイトで卒FIT電力の買取事業者一覧を確認
- 地域の電力会社の卒FIT向けプランをチェック
- 新電力(PPS)各社の買取条件を比較
電力会社の比較ポイントは、買取単価(円/kWh)だけでなく、契約期間、解約条件(違約金の有無)、支払方法なども重要です。
地域の電力会社より新電力の方が1〜2円高い買取単価を提示していることもあるため、入念に比較検討すると高い経済効果を得られやすくなります。
書類と情報の整理
卒FIT後の手続きに必要な書類と情報を整理しておきましょう。
- 満了通知書:設備ID、設置場所住所、契約者名義、満了日などの情報があります
- 売電契約書:現在の契約条件が確認できます
- 検針票:受電地点特定番号や電力受給契約番号が記載されています
- 振込口座情報:新しい売電収入の振込先として使用します
紛失しやすい書類は、デジタル写真で保存するか、重要情報をメモしておくと安心です。
紛失した書類がある場合、このタイミングで再発行を依頼しておきましょう。
卒FIT後の新たな売電契約手続き
FIT満了後も引き続き売電収入を得たい場合の手続きについて説明します。
申込みに必要な情報と書類
新たな売電契約を結ぶ際には、以下の情報や書類が必要になります。
- 契約者情報
- 氏名、住所、連絡先電話番号
- 振込口座情報(銀行名、支店名、口座番号、口座名義)
- 設備情報
- 設備ID(10桁の認定ID)
- 発電設備の設置場所住所
- 発電設備の容量(kW)
- FIT買取期間の満了日
- 現在の契約情報
- 現在の売電先名
- 電力受給契約番号
- 受電地点特定番号(22桁の数字)
これらの情報は満了通知書や検針票から確認できます。
申込み方法は各電力会社によって異なりますが、多くの場合はウェブサイト、郵送、電話などから選べます。
申込書類に記入する際は、誤りがないように慎重に入力しましょう。
特に設備IDや受電地点特定番号などの数字は間違えやすいため、注意が必要です。
スマートメーター設置と切替手続き
新たな売電契約にはスマートメーターが必要となるケースが一般的なので、設置されていない場合、申込みをして自動的に交換工事の案内を受けましょう。
スマートメーターの設置には管轄の送配電会社が無料で対応してくれるケースがあり、工事自体は10〜30分程度の簡易なもので、多くの場合は立ち会いも不要です。
交換日の案内があったら、指定された日時に停電があることだけ覚えておきましょう。
新契約開始後の確認事項
新しい売電契約が始まったら、以下の点を確認しておきましょう。
- 買取単価の確認:契約書や明細書で買取単価が合意通りか確認
- 売電量の確認:以前と同程度の売電量になっているか確認
- 支払い方法と時期:売電収入がいつ、どのように支払われるか確認
- 契約条件の再確認:契約期間、解約条件など
市場連動型の買取プランの場合、毎月の買取単価が変動することがあるため、明細をこまめにチェックし、必要に応じて他社への切替も検討しましょう。
多くの卒FIT向けプランでは、違約金なしで解約できます。
卒FIT後の選択肢別メリット比較
卒FIT後の対応として挙げられる「新電力会社での売電継続」「蓄電池やEVを活用した自家消費」のメリット・デメリットを紹介します。
ご自身の状況に合った選択をするため、それぞれのメリット・デメリットの把握が大切です。
新電力会社での売電継続のメリット
卒FIT後、もっとも手軽に始められるのが「新たな電力会社との売電契約」で、初期費用がかからず、すぐに収益化できる点が魅力です。
費用面
- 初期費用がほぼゼロ(契約変更のみ)
- スマートメーター未設置でも無料で交換対応
経済効果
- 売電収入が継続(FIT期間中より下がるものの収入は得られる)
- 買取単価は地域や会社によって異なるが、一般的に7〜10円/kWh程度
- 例えば年間3,000kWhの余剰がある場合、約2〜3万円の年間収入
メリット
- 追加投資不要で手軽に始められる
- 契約先を変えるだけで売電単価アップも可能
- 昼間不在がちな家庭に適している
- いつでも別の選択肢に切り替え可能
デメリット
- FIT期間中と比べて売電収入が大幅に減少する
- 市場連動型の場合は収入が安定しない
蓄電池導入による自家消費のメリット
電気代の節約や災害時の備えを重視するなら、蓄電池の導入がおすすめです。
初期費用はかかりますが、その分長期的なメリットが期待できます。
費用面
- 初期費用が高い(容量にもよるが約100〜200万円)
- 国や自治体の補助金を活用できる場合あり(数十万円の補助)
経済効果
- 自家消費による電気代削減(売電より約3倍の価値)
- 例えば昼間に10kWh余剰がある場合、蓄電して夕方以降に活用すれば 1日あたり約200〜300円、年間で7〜11万円程度の節約効果
- 長期的に見ると、売電継続より経済的メリットが大きい場合が多い
メリット
- 電気代高騰のリスクヘッジになる
- 停電時のバックアップ電源として使える
- 自給自足感があり、エネルギー自立度が高まる
- 夜間の電力使用量が多い家庭に適している
デメリット
- 初期投資の回収に時間がかかる(補助金活用でも約10〜15年)
- 蓄電池の寿命は約15〜20年のため、寿命と回収期間のバランスを考慮する必要がある
EV活用など他の選択肢の検討
家庭のライフスタイルに合わせて、EVやエコキュートなどの設備を活用する方法もあります。
導入しやすく、手軽に自家消費率を上げられる点が魅力です。
電気自動車(EV)の活用
- すでにEVを所有している場合、追加投資が少ない
- 昼間の余剰電力でEVを充電すれば、ガソリン代節約効果が大きい
- V2H(Vehicle to Home)システムを導入すれば、車から家へ電力供給も可能
- 日中の車の使用状況に左右される
エコキュートなどの活用
- タイマー設定で昼間に湯を沸かし、余剰電力を有効活用
- 比較的低コストで余剰電力の自家消費率を高められる
- 蓄電池ほどの大きな効果はないが、初期投資も少ない
パワーコンディショナーの交換
- ハイブリッド型パワコンへの交換で停電時対応力向上
- 蓄電池導入も視野に入れている場合は連携しやすい
- 設置から10年経過していれば、更新時期としても適している
それぞれの選択肢は、ご家庭のライフスタイル(昼間の在宅状況や電力使用パターン)や予算によって適した方法が変わるため慎重な選択が大切です。
まとめ:卒FIT契約の満了時期に合わせた最適な対応を
FIT契約の満了は、太陽光発電を今後も有効に活用するための重要な分岐点となります。
FIT期間満了後も太陽光発電は続けられるため、「単価が安くなっても売電を続ける」、「蓄電池やEVなどで自家消費を増やす」など早めの判断が大切です。
まずは契約満了日を把握し、買取期間満了通知や契約書類の保管状況を確認しましょう。
卒FIT後の対策には時間がかかるため、満了の2〜3か月前には動き始めるのが理想です。
卒FIT後の選択肢は家庭の状況によって異なるため、まずは情報を整理し、自分にとって最適な対応を見つけましょう。