
太陽光発電の普及とともに、多くの家庭が利用してきたFIT制度が終了する「卒FIT」の時期が近づいています。
卒FITを迎えると、太陽光で発電した電力の扱いについて新たな選択が必要になる場合があります。
本記事では、卒FITの時期や通知の仕組みをわかりやすく解説し、卒FIT後に選べる3つの電気の利用方法について詳しくご紹介します。
卒FIT時期はいつ?
FIT制度には、あらかじめ決められた買取期間があります。
この章では、買取期間がいつ終了するのかを確認するための基本的な情報を紹介します。
FIT制度とは
FIT制度は、2009年に「太陽光発電余剰電力買取制度」としてスタートし、2012年に「固定価格買取制度(FIT制度)」として整備されました。
この制度では、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーで作った電気を、電力会社が一定の価格で買い取ることが義務づけられています。
一定の価格で買い取ってもらえるため、発電した電気を売ることで安定した収入を得られるのが大きな特長です。
こうした背景から、太陽光発電を導入する家庭や企業が増加しました。
FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を後押しし、環境にやさしいエネルギーの利用拡大に貢献しています。
卒FITとは
卒FITとは、FIT制度で定められた売電期間が終了することを意味します。
FIT制度のもとで太陽光発電を始めた場合、通常10年間、決められた価格で電力会社に電気を売ることができます。
しかし、この売電期間が終わると、固定価格での売電はできなくなります。
その結果、売電価格が大きく下がったり、売電先の条件が変わったりする可能性があります。
そのため、卒FITを迎えるタイミングで、今後の電気の使い方や売電方法を見直すことが大切です。
早めに卒FIT後に関する情報収集を行い、準備を進めておくことで、電気料金の節約や売電収入の維持にもつながります。
卒FITの通知はいつ届く?
卒FITが近づくと、契約している電力会社から通知が届きます。
この通知は、電力会社によって異なりますが、満了日の約4〜6カ月前に送られるのが一般的です。
通知には、買取期間の満了日や発電設備のID、発電出力などの情報が詳しく記載されています。
これらの情報は、卒FIT後のさまざまな手続きで必要になることが多いため、大切に保管しておきましょう。
通知が届いたら内容をよく確認して、卒FIT後の対応を早めに準備することが大切です。
不明点があれば、通知の送り主である電力会社に問い合わせてください。
スムーズに手続きを進めるために、通知が来たら見逃さずに対応しましょう。
卒FITが家庭へ及ぼす影響
卒FITを迎えると、家庭にとって一番大きな変化は、売電による収入が少なくなることです。
その理由は、電力会社が買い取る電気の価格が、大きく下がるためです。
たとえば、2012年に太陽光発電を始めた場合、当時の売電価格は1kWhあたり42円でした。
しかし、卒FIT後は売電価格が8円前後まで下がる場合もあります。
このように、売電で得られる金額は、FIT制度の期間と比べておよそ80%も減少する可能性があります。
そのため、卒FITをきっかけに、家庭で発電した電気をこれからどう活用していくかを考えることが大切です。
卒FIT後の選択肢①:現在と同じ電力会社に売電を続ける
卒FITを迎えたあとも、これまで利用していた電力会社にそのまま売電を続けることは可能です。
この章では、その方法を選ぶ場合に知っておきたい基本的な情報や注意点を紹介します。
現在と同じ電力会社に売電を続けるメリット
卒FIT後も、これまで契約していた電力会社に売電を続ける最大のメリットは、手続きが少なくて済むことです。
通常、新しい売電先を探す場合は、情報収集や契約変更の手間がかかります。
しかし、現在と同じ電力会社を選べば、書類のやりとりや機器の変更などが最小限で済みます。
たとえば東京電力や関西電力などの大手電力会社では、契約が自動で継続されるケースが多く、書類の提出や機器の変更が不要です。
また、設備の追加や蓄電池の導入といった新たな費用も発生しないため、費用面でも安心できます。
このように、現在の電力会社に売電を続ける方法は、複雑な手続きに不安を感じる方にとって、最も手軽で安心できる選択肢といえるでしょう。
現在と同じ電力会社に売電を続ける場合の注意点
卒FITを迎えたあとに、これまでと同じ電力会社に売電を続ける方法には、注意しておきたい点があります。
一番の注意点は、電力の買い取り価格が大きく下がることです。
FIT制度が適用されていた期間に比べて、売電による収入はかなり少なくなります。
手続きが少なくて手軽な方法ではありますが、長期的な収支バランスを考えて選ぶことが大切です。
【2025年度最新】買取価格の目安
卒FIT後も同じ電力会社に売電を続けるかどうかを判断するには、電力の買取価格を知ることが欠かせません。
以下に、主要な電力会社が設定している基本的なプランの買取価格の目安をまとめました。
電力会社 | 買取価格(円/kWh) |
北海道電力 | 8.00円 |
東北電力 | 9.00円 |
東京電力 | 8.50円 |
中部電力 | 7.00円 |
北陸電力 | 8.00円 |
関西電力 | 8.00円 |
中国電力 | 7.15円 |
四国電力 | 7.00円 |
九州電力 | 7.00円 |
沖縄電力 | 7.70円 |
このように、買取価格は電力会社によって差があります。
特に、中部電力や四国電力、九州電力などは比較的低めに買取価格が設定されていることがわかります。
売電による収入を少しでも増やしたい場合は、買取価格を比較したうえで、他の選択肢も検討してみることが大切です。
卒FIT後の選択肢②:新しい電力会社に売電する
本章では、卒FIT後に新しい電力会社へ売電する場合のメリット、注意点について詳しく解説します。
また、相場の価格についても紹介します。
新しい電力会社に売電するメリット
新しい電力会社では、主要電力会社よりも高い買取価格を設定しているケースがあります。
これは電力の自由化により競争が進み、各社が独自のサービスや価格を打ち出しているためです。
たとえば、ENEOSのようにガソリンスタンドで広く知られる企業も、電気の売買を行う新電力の一つです。
また、携帯電話会社のKDDIも新電力に参入しており、KDDIのスマートフォンとセットで契約することで、電気料金の一部がPontaポイントで還元されるなどの特典があります。
このように、ガソリンや携帯電話など、日常的に利用しているサービスと組み合わせることで、コストを抑えられるのも、新電力を利用するメリットの一つです。
新しい電力会社に売電する場合の注意点
新電力会社と契約する際には、買取価格だけでなく、加入条件や会社の信頼性も確認する必要があります。
多くの会社が存在しますが、対象エリアが限られていたり、物件の条件が設定されていたりする場合があります。
また、近年はエネルギー価格の高騰などを背景に、経営が難しくなり撤退する会社も増えています。
また、新規受付を停止している会社も見られます。
そのため、契約前にはその会社の経営基盤やサービスの継続性をよく調べることが大切です。
長期的に安心して売電できるかどうかを見極めた上で、契約を進めましょう。
買取価格の目安
家庭で発電した電気を売る際の買取価格は、エリアによって異なりますが、東京電力管轄内では、高くても1kWhあたり14.5円程度です。
買取価格は契約する電力会社やプランによっても変わりますが、一般的に大手電力会社よりも新しい電力会社のほうが高めの価格を提示していることが多くなっています。
そのため、売電収入を少しでも増やしたい場合は、複数の会社の買取価格を比較してみることが大切です。
新電力の具体的な事業者については、以下の資源エネルギー庁のウェブサイトに詳しく掲載されています。
気になる方は、参考にしてみてください。
卒FIT後の選択肢③:自家消費に切り替える
本章では、卒FIT後に自家消費へ切り替える仕組みやメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
また、自家消費に切り替えた場合の節約効果についても紹介しています。
自家消費の場合は蓄電池の導入がおすすめ
卒FIT後は、太陽光で発電した電気を電力会社に売るのではなく、自宅で使う「自家消費」に切り替えるという選択肢があります。
この方法では、昼間に発電した電気を照明やエアコン、冷蔵庫など、家庭内の家電にそのまま使います。
ただし、太陽光発電は昼間しか発電できないため、夜間や雨の日など、発電できない時間帯には電気が使えません。
そこでおすすめなのが、蓄電池の導入です。
蓄電池があれば、昼間に発電して余った電気をためておき、夜間などにその電気を使うことができます。
無駄なく電気を使えるようになるため、自家消費の効率を高めるには、蓄電池の導入がおすすめです。
自家消費に切り替えるメリット
自家消費に切り替える最大のメリットは、電気代の節約につながることです。
売電価格が安くなっている現在では、発電した電気を電力会社に売るよりも、自宅で使ったほうが経済的に有利なケースが増えています。
さらに、太陽光発電と蓄電池を組み合わせれば、災害時にも電気を確保できます。
停電時の備えとして安心感があり、非常用電源としても役立ちます。
自家消費に切り替える場合の注意点
自家消費には注意すべき点もあります。
まず、蓄電池を導入する場合、初期費用が高額になることがあります。
製品や容量によっては、数十万円から100万円を超える費用がかかるため、導入には慎重な検討が必要です。
また、既存の太陽光発電設備と蓄電池の相性も確認しましょう。
たとえば、パワーコンディショナと蓄電池が連携できない場合、うまく運用できないことがあります。
さらに、蓄電池の寿命や保証内容、設置業者のサポート体制なども事前にチェックすることが大切です。
長く安心して使い続けるためには、信頼できるメーカーや施工業者を選びましょう。
自家消費に切り替える場合の節約効果
自家消費に切り替えることで、毎月の電気代を抑える効果が期待できます。
現在、電力会社に電気を売ると1kWhあたり約8〜12円程度ですが、電気を購入する場合は1kWhあたり約31円かかります。
そのため、発電した電気を売るよりも、自分で使うほうが1kWhあたり19円以上の節約になる計算です。
この差額が積み重なれば、年間では数万円の節約につながることもあります。
電気料金の高騰が続く今、自家消費は家計の負担を減らす有効な手段といえるでしょう。
まとめ
太陽光発電を導入しているご家庭にとって、FIT制度の終了である「卒FIT」は、今後の電気の使い方を考える大切なタイミングです。
卒FITを迎えると、これまでのように高い価格で電気を売ることが難しくなるため、ご家庭で発電した電気をどう活用するかが重要になります。
それぞれの活用方法にはメリットと注意点があり、ご自身のライフスタイルや経済状況に合わせて、最適な選択肢をじっくりと検討することが大切です。
ご家庭に合った選択をすることで、卒FIT後も太陽光発電を有効活用し、快適な暮らしを続けられるでしょう。