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太陽光発電の自家消費とは

太陽光発電の「自家消費」とは、太陽光パネルで発電した電力を外部に売電せず、自宅内で使用することを指します。卒FIT(固定価格買取制度終了)後に特に重要になる選択肢です。

FIT期間中は高額な固定価格で売電できましたが、卒FIT後の買取価格は7~9円/kWh程度と大幅に下がります。一方、電力会社から購入する電気料金は約25~30円/kWhですから、自家消費に回した方が経済的です。

自家消費率の現状と効果

現在、太陽光発電設備を持つ一般家庭の自家消費率は平均して約20~40%程度です。例えば4kWシステムの年間発電量4,000kWhのうち、約1,200kWh(30%)を自家消費し、残りの2,800kWhを売電するというケースが一般的です。

この自家消費率を高めることで、電気代の削減効果は大きくなります。単純計算で、自家消費1kWhあたり約30円の節約になるのに対し、卒FIT後の売電では1kWhあたり7~9円の収入しか得られません。そのため「売るより使う方がお得」なのです。

さらに自家消費には、以下のようなメリットもあります。

  • 電力会社に依存せず、エネルギーの自給自足が進む
  • 災害時など停電の際に自家発電した電気を使える安心感
  • 環境負荷の少ないクリーンな自然エネルギーを直接活用できる

卒FIT後の太陽光発電を最大限に活用するためには、いかに自家消費率を高めるかが鍵となります。そのための効果的な方法の一つが、太陽光発電と相性の良い家電製品を上手に選び、活用することです。

太陽光発電と相性の良い家電製品

太陽光発電と家電を効果的に組み合わせるためには、発電のタイミングと消費のタイミングを合わせることが重要です。

太陽光発電は日中(特に晴れた日の10時から15時頃)に多く発電するため、この時間帯に電力を消費できる家電や、電気をエネルギーとして蓄えられる家電が相性良いといえます。

以下では、太陽光発電との相性が特に良い家電製品について詳しく見ていきましょう。

エコキュート(ヒートポンプ給湯器)

エコキュートは太陽光発電との組み合わせで最も効果を発揮する家電の一つです。従来、エコキュートは割安な夜間電力を利用してお湯を沸かすのが一般的でしたが、太陽光発電と組み合わせることで運用方法が変わります。

仕組みと太陽光発電との相性

エコキュートはヒートポンプ技術を使って効率的にお湯を作る給湯器です。空気中の熱を利用するため、投入する電気エネルギーの3~4倍のエネルギーをお湯として取り出せます。

太陽光発電との相性が良い理由は以下の通りです。

  1. お湯という形でエネルギーを貯蔵できる:日中の余剰電力でお湯を沸かし、それを保温タンクに貯めておけば、夜間や翌朝まで利用できます。これは電気を「お湯」という形でためることに相当します。
  2. 省エネ効果が高い:ヒートポンプの高効率性により、同じ電力量でより多くのエネルギーをお湯として得られます。
  3. 電力消費量が大きい:一般家庭の電力消費の約3割を給湯が占めており、この部分を太陽光発電でまかなえば大きな削減効果があります。

ソーラーモードの活用方法

最近のエコキュートには、太陽光発電との連携を想定した機能が搭載されています。この機能を使うと、日中の余剰電力を優先的に使ってお湯を沸かしてくれます。

主な設定方法や機能:

  • 天気予報連動機能:翌日の天気予報を参照し、晴れの日は夜間の湯沸かし量を減らし、昼間の太陽光発電時に沸かす割合を増やします。
  • タイマー機能:発電ピーク時間に合わせて沸き上げるよう設定できます。
  • HEMS連携:家庭エネルギー管理システムと連携し、太陽光発電の余剰状況に応じて自動的に運転を制御します。

具体的な電気代削減効果

一般的な4人家族の場合、エコキュートを日中運転に切り替えることで、年間約2~3万円の電気代節約効果があるとされています。卒FIT後に特に効果を発揮し、売電収入の減少を補うことができます。

例えば、従来の夜間沸き上げ中心から、昼間の太陽光発電時の沸き上げにシフトすることで、年間で使用する電力量自体は変わらなくても、その電力を高い料金で購入する必要がなくなります。

タイマー機能付き家電の活用法

太陽光発電の自家消費率を高めるもう一つの効果的な方法は、タイマー機能付き家電を使って家事のタイミングを日中の発電時間帯にシフトすることです。

日中に使用すると効果的な家電

以下の家電は、特に電力消費が大きく、タイマー機能を活用して日中に使うことで効果を発揮します。

  • 洗濯機:洗濯乾燥機は特に電力消費が大きいため、日中に稼働させると効果的です。最近のモデルにはタイマー予約機能が付いているものが多く、出勤前にセットしておけば日中のピーク発電時に自動的に稼働させることができます。
  • 食器洗い乾燥機:朝食後の食器を洗うのに日中の太陽光発電を利用できます。これも予約タイマー機能を使って、発電量が多い時間帯に合わせて運転開始できます。
  • 炊飯器:タイマー機能で昼過ぎに炊き上げるよう設定すれば、夕食用のご飯を太陽光発電で炊くことができます。IH炊飯器は特に電力消費が大きいため、効果的です。
  • 電子レンジ・オーブン:週末など在宅時には、電子レンジやオーブンを使った調理を日中に行うことで、太陽光発電の自家消費に役立ちます。

具体的な設定例と効果

例えば、以下のようなスケジュールで家電を使用するよう設定してみましょう。

  • 洗濯乾燥機:朝7時に洗濯物をセット、タイマーで11時(発電ピーク時)に運転開始
  • 食器洗い機:朝食後にセット、13時に運転開始するよう予約
  • 炊飯器:15時に炊き上がるようタイマーセット

このように家電の使用時間をシフトするだけで、自家消費率を5~10%ほど高められるケースが多いです。

スマート家電のさらなる活用法

最新のスマート家電では、スマートフォンアプリからリモート操作できるものも増えています。これにより、太陽の状態や発電状況に合わせて、外出先からでも家電の運転をコントロールできます。

例えば、予想よりも晴れて発電量が多い場合、スマホから洗濯機やエアコンの運転を開始するといった柔軟な対応が可能になります。

省エネ性能の高い家電選び

太陽光発電の自家消費を最大化するためには、消費する側の家電も省エネ性能が高いものを選ぶことが重要です。同じサービスをより少ないエネルギーで得られれば、太陽光発電だけでまかなえる家電の数も増えます。

省エネ家電の見分け方

家電を選ぶ際は、以下のような指標を参考にしましょう。

  • 省エネラベル:星の数が多いほど省エネ性能が高く、5つ星が最高評価です。
  • 年間消費電力量:同じ種類・サイズの製品でも、年間消費電力量に大きな差があります。
  • APF(通年エネルギー消費効率)値:エアコンの場合、この値が高いほど省エネ性能が高いことを示します。

特に効果の高い省エネ家電

  1. LED照明:従来の白熱電球と比べて約1/8、蛍光灯と比べても約1/2の電力消費で同等の明るさを得られます。家庭の照明をすべてLEDに置き換えると、照明の電力消費を60~70%削減できる可能性があります。
  2. インバーターエアコン:最新のインバーターエアコンは、10年前のモデルと比べて約30~50%省エネになっています。エアコンは家庭の電力消費の大きな部分を占めるため、この節約効果は大きいです。
  3. 高効率冷蔵庫:冷蔵庫は24時間稼働し続けるため、省エネ性能の違いが年間電気代に大きく影響します。最新モデルは、10年前の同サイズの冷蔵庫と比べて約40~50%の電力削減が実現しています。

例えば、容量400Lクラスの冷蔵庫の場合、10年前のモデルが年間約500kWhの電力を消費するのに対し、最新の省エネモデルでは年間約250kWhまで削減できます。この差250kWhは、1kWの太陽光パネルが年間に発電する電力量の約1/4に相当します。

冷蔵庫の電気代が年間約15,000円削減できるとすると、10年使用すれば15万円の節約になります。これは省エネ家電への買い替え費用を上回る可能性が高く、太陽光発電と組み合わせるとさらに効果的です。

太陽光発電の余剰電力を蓄える方法

日中発電した電力を効率的に使いきれない場合、余った電力を何らかの形で蓄えておくことが重要です。これにより、夜間や曇りの日など発電量が少ない時間帯でも太陽光で発電した電力を使うことができます。

電力を蓄える方法は大きく分けて2つあります。

  1. 電気をそのままの形で蓄える(蓄電池)
  2. 電気を別のエネルギー形態に変換して蓄える(温水や電気自動車のバッテリーなど)

ここでは、特に効果的な2つの方法について詳しく見ていきます。

家庭用蓄電池システム

家庭用蓄電池は、太陽光発電の自家消費率を高める確実な方法です。日中の余剰電力を貯めておき、夜間に使用することで、自給自足に近い電力運用が可能になります。

蓄電池の種類と選び方

家庭用蓄電池には主に以下のタイプがあります。

  • リチウムイオン電池:軽量でコンパクト、充放電効率が高い。耐久性も向上し、現在の主流。
  • 鉛蓄電池:価格が比較的安いが、重量が大きく寿命が短い。
  • ニッケル水素電池:安全性が高く寿命も長いが、容量あたりのコストが高い。

蓄電池を選ぶ際のポイント:

  1. 容量:一般家庭では5~10kWh程度が一般的。夜間の使用電力量を考慮して選びます。
  2. 充放電効率:高いほど電力ロスが少なく経済的です(90%以上が理想的)。
  3. 保証期間・サイクル数:一般的に10年以上の保証があるものが望ましい。
  4. 停電時の使用可否:完全停電時でも使用できる機能があると安心です。

導入コストと経済効果

家庭用蓄電池の価格は容量によって異なりますが、5kWhクラスで100万円前後、10kWhクラスで150~200万円程度が一般的です。補助金を利用できる場合は、このコストが数十万円下がる可能性があります。

経済効果の例:

  • 5kWhの蓄電池を導入し、これまで売電していた電力のうち毎日5kWhを自家消費に回した場合
  • 卒FIT後の売電単価8円/kWhに対し、電力購入単価30円/kWhとすると
  • 1日あたり(30円-8円)×5kWh = 110円の節約
  • 年間では約40,000円の電気代削減効果

また、蓄電池には経済面だけでなく、以下のようなメリットもあります。

  • 停電時のバックアップ電源として使える安心感
  • 電力使用のピークカットによる基本料金の削減可能性
  • 将来的な電気料金上昇リスクへの対策

補助金の活用方法

蓄電池導入時には、国や自治体の補助金を活用することで初期費用を大幅に抑えられます。

  • 国の補助制度:環境省などの補助事業では、蓄電池に対して導入費用の1/3程度(上限あり)の補助が出る場合があります。
  • 自治体の補助金:地域によって補助額や条件は異なりますが、多くの自治体で蓄電池導入に対する補助制度があります。例えば東京都では、蓄電池容量1kWhあたり2~5万円程度の補助が出るケースもあります。

補助金申請の際は、設置前に申請が必要なケースが多いため、購入前に確認することをおすすめします。また、太陽光発電と同時に導入する場合と、後から追加する場合で補助金額が異なることもあります。

電気自動車とV2Hシステム

電気自動車(EV)は大容量のバッテリーを搭載しており、これを家庭用の蓄電池として活用できるのがV2H(Vehicle to Home)システムです。太陽光発電との組み合わせで特に効果を発揮します。

V2Hシステムの仕組み

V2Hシステムは、電気自動車と住宅の間で双方向に電力をやり取りするための設備です。

  • 日中:太陽光で発電した電力で電気自動車のバッテリーを充電
  • 夜間:電気自動車から住宅側に電力を供給(放電)

一般的な電気自動車のバッテリー容量は40~60kWhと、家庭用蓄電池の数倍の容量があります。例えば、日産リーフは40kWh、テスラModel 3は50~75kWhの容量があり、一般家庭の1日分以上の電力需要をまかなえる可能性があります。

導入メリットとコスト

V2Hシステムの主なメリット:

  1. 大容量のバッテリーを活用できる:家庭用蓄電池よりも大きな容量で、長時間の停電にも対応可能。
  2. コスト効率が良い:すでに所有しているEVのバッテリーを活用するため、蓄電池を別途購入するよりも経済的。
  3. 走行用の充電コスト削減:太陽光発電の余剰電力で充電すれば、EVの燃料費(電気代)を大幅に抑えられる。

一方で導入コストとしては、V2H専用の機器や工事費用が必要です。V2H機器は現在のところ100~150万円程度ですが、補助金を利用できる場合も多く、実質負担額を下げられる可能性があります。

実際の活用事例

あるEVオーナーの例:

  • 日中の太陽光発電で電気自動車に充電
  • 夕方帰宅後、V2Hシステムを使って夜間の家庭用電力をEVから供給
  • 結果、電力会社からの購入電力をほぼゼロに抑えることに成功
  • 年間の電気代を従来比で約8割削減(約12万円の節約)

このケースでは、通勤などで毎日使用するEVであっても、日中の充電と夜間の放電を組み合わせることで、家庭の電力自給率を大幅に高めることができています。

スマートHEMSによる太陽光発電と家電の連携

HEMS(Home Energy Management System)は、家庭内のエネルギー使用状況を可視化し、最適化するシステムです。太陽光発電と家電を効率的に連携させるためには、このHEMSの活用が非常に効果的です。

HEMSの基本機能と導入メリット

HEMSの主な機能:

  1. エネルギーの見える化:太陽光発電量、電力消費量、売買電力量などをリアルタイムで表示。
  2. 家電制御:発電状況に応じて家電を自動制御(例えば発電余剰時にエコキュートを運転するなど)。
  3. 電力使用の分析:家電ごとの電力使用状況を分析し、節電アドバイスを提示。
  4. 遠隔操作:スマートフォンなどから外出先でも家電操作や電力状況確認が可能。

導入メリット:

  • 太陽光発電の自家消費率向上(平均10~20%程度の改善例あり)
  • 電力使用の無駄を発見しやすく、追加の省エネ効果
  • 発電・消費状況の詳細な記録により、さらなる改善点を発見可能

HEMS対応家電の活用法

主なHEMS対応家電と活用例:

  • エアコン:太陽光発電が多い時間帯に予冷・予熱を行い、発電が少ない時間帯の消費電力を削減。
  • エコキュート:天気予報と連動して発電量の多い日の昼間にお湯を沸かすよう自動制御。
  • 洗濯機・食洗機:発電余剰が発生したタイミングで自動的に運転開始。
  • 蓄電池:電力需給予測に基づいて最適な充放電制御を実現。

最新のHEMSでは、AI(人工知能)を活用して家族の生活パターンを学習し、より効率的な電力利用を提案するものも登場しています。例えば、天気予報と過去の使用パターンから翌日の電力需給を予測し、蓄電池の充放電や家電の使用タイミングを最適化します。

導入コストと費用対効果

基本的なHEMSシステムは10~20万円程度から導入可能です。太陽光発電システムと同時に導入する場合は、セット割引が適用されるケースもあります。

導入効果の例:

  • 自家消費率が従来の30%から50%に向上
  • 電気代の追加削減効果が年間約3万円
  • 投資回収期間は約5~7年

HEMS本体だけでなく、スマート家電への買い替えなど追加コストが発生する場合もありますが、長期的に見れば電気代削減や快適性向上のメリットが大きいでしょう。

まとめ:太陽光発電の効果を最大化する家電の選び方

卒FIT時代を迎え、太陽光発電の活用方法は「売電中心」から「自家消費中心」へと大きく変わりつつあります。自家消費を増やせば増やすほど、経済的メリットは大きくなります。

太陽光発電と家電の組み合わせポイント

  1. 発電と消費のタイミングを合わせる
    • タイマー機能付き家電で使用時間を日中のピーク発電時に合わせる
    • スマートHEMSを活用して自動制御を実現する
  2. 余剰電力をためる
    • エコキュートで「お湯」という形でエネルギーを貯蔵
    • 蓄電池やEV(電気自動車)のバッテリーに電気をためる
  3. 省エネ家電で無駄を減らす
    • 最新の高効率家電に更新して、同じ太陽光発電量でもより多くの家電をまかなう
    • 特に消費電力の大きい冷蔵庫やエアコンは効果が高い

経済効果を高めるための工夫

平均的な太陽光発電所有家庭(4~5kWシステム)が上記の工夫をすべて実践すると、自家消費率を従来の30%から60~70%程度まで高められる可能性があります。

これにより、年間電気代は約5~8万円削減できるケースが多く、蓄電池やV2Hなどの追加投資をした場合でも、長期的には投資回収が可能です。

さらに、今後予想される電気料金の上昇や、将来的な蓄電技術の進化、V2H価格の低下などを考慮すると、自家消費型の太陽光活用はますます魅力的な選択肢となるでしょう。

最後に

太陽光発電と相性の良い家電を選び、上手に活用することは、単なる経済的メリットだけでなく、エネルギー自給率の向上による安心感や、環境負荷の低減にもつながります。

卒FITを迎えた、あるいはこれから迎える太陽光発電所有者の方々は、この機会に自宅の電力消費パターンを見直し、太陽光発電の恩恵を最大限に受けられる家電選びを検討してみてはいかがでしょうか。

 

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公開範囲 一般公開
公開日時

自家消費

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