
FIT終了通知とは?まずは内容を確認しよう
FIT終了通知とは、固定価格買取制度による買取期間が終了することを知らせる、電力会社からの重要なお知らせです。一般的に買取期間満了の4~6ヶ月前に届きます。
この通知書には、以下のような重要情報が記載されています。
- 買取期間満了日:FIT契約が終了する具体的な日付
- 設備ID:太陽光発電設備の固有識別番号(アルファベット+数字の10桁)
- 現在の売電先:現在電力を買い取っている事業者名
- 発電設備の基本情報:設置場所、発電出力など
特に重要なのは「買取期間満了日」です。この日を過ぎると現行の高い固定価格での買取が終了します。また、「現在の売電先」が地域の一般送配電事業者(例:東京電力パワーグリッド)となっている場合は要注意です。このままでは満了後に余剰電力が無償引き取り(0円供給)になってしまいます。
通知書は今後の手続きに必要となる重要書類ですので、大切に保管しましょう。
通知書をなくした場合の対処法
FIT終了通知を紛失してしまった場合でも、慌てず以下の対処法があります。
- 再発行を依頼する:現在の売電先(電力会社)に連絡し、通知書の再発行を依頼できます。ただし再発行には時間がかかる場合もあるため、満了日が迫っている場合はすぐに連絡しましょう。
- 検針票で代用する:手元にある直近の「購入電力量のお知らせ」(検針票)でも代用できます。最近の検針票には「買取期間満了日」が記載されているケースが多く、設備IDなども確認できます。
- 電力会社のWebサービスで確認:一部の電力会社では、会員専用サイトで買取満了日や設備情報を確認できます。未登録の場合は、この機会に登録しておくと便利です。
これらの方法で必要な情報を確保し、期限内に次の手続きを行えるようにしましょう。
FIT終了後の選択肢を理解しよう
FIT終了後、大きく分けて次の選択肢があります。
- 売電を継続する:買取単価は下がりますが、新たな売電先と契約して売電を続ける
- 自家消費を増やす:蓄電池を導入して、発電した電力を自宅で使う割合を増やす
- 電気自動車と連携:EVを所有している場合、余剰電力をEVに充電して活用する
- 何もしない:特に手続きをせず、余剰電力を無償で送電網に流す
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、ご家庭の状況に合った選択をすることが大切です。
売電継続のメリットとデメリット
メリット
- 追加投資が不要で手軽に始められる
- 設備投資なしで収入が得られる(FIT期間中より下がるものの)
- 契約手続きも比較的簡単
- 昼間の不在が多い家庭に向いている
デメリット
- 売電単価がFIT期間中と比べて大幅に下がる(1kWhあたり7~10円程度)
- 市場連動型の場合、収入が安定しない
自家消費(蓄電池導入)のメリットとデメリット
メリット
- 昼間の余剰電力を夜間に使えるため電気代削減効果が大きい
- 売電単価より買電単価が高いため、経済的に有利になる可能性がある
- 停電時のバックアップ電源として活用できる
- 国や自治体の補助金が利用できる場合がある
デメリット
- 初期投資が大きい(蓄電池導入費用は100~200万円程度)
- 投資回収に時間がかかる
- 蓄電池の寿命(15~20年程度)も考慮する必要がある
FIT終了通知が届いたらすぐにやるべきこと
FIT終了通知を受け取ったら、以下の5つのステップを速やかに行いましょう。
通知内容を確認・整理する
買取期間満了日、設備ID、現在の売電先などを確認し、メモやコピーを取っておきます。特に「売電先」が送配電事業者名になっている場合は注意が必要です。
今後の方針を決める
売電を継続するか、蓄電池を導入するか、など今後の方針を家族と相談して決めましょう。それぞれの初期費用や経済性を比較検討します。
売電を継続する場合は売電先を選ぶ
資源エネルギー庁のウェブサイトや電力会社のサイトで買取事業者の情報を収集し、買取単価や条件を比較します。地域の電力会社だけでなく新電力も検討するとよいでしょう。
必要書類を準備する
新たな契約に必要な書類(通知書、検針票など)を準備します。紛失している場合は再発行を依頼するか代替手段を検討します。
期限に余裕をもって手続きを始める
新たな売電契約の手続きには時間がかかる場合があります。満了日の少なくとも1~2ヶ月前までには申込みを済ませるようにしましょう。
何も対応せずに満了日を過ぎてしまうと、余剰電力が無償で電力会社に引き取られてしまうため、必ず期限内に次の手続きを完了させてください。
設備情報を再確認する
新たな契約手続きを進める前に、ご自宅の太陽光発電設備の情報を再確認しておくことをおすすめします。特に以下の情報は重要です。
- 発電出力(kW):契約容量の確認に必要
- 設備ID:新規契約に必須の識別番号
- 設置年月:実際の運転期間の確認
- パネルやパワーコンディショナのメーカー・型番:不具合時の問い合わせに必要
これらの情報は以下の方法で確認できます。
- 設備認定通知書や工事完了書類
- 経産省の「再生可能エネルギー電子申請システム」(設備IDがわかる場合)
- 太陽光発電協会(JPEA)代行申請センターへの問い合わせ
- パワーコンディショナに貼付されている銘板での確認
また、設備の動作状況も確認し、発電量が大幅に低下していないか、異常がないかチェックしておくとよいでしょう。
スマートメーターの設置状況を確認する
卒FIT後も売電を継続する場合、スマートメーターの設置が必要です。すでに多くの家庭ではスマートメーターに交換されていますが、まだ従来型のアナログメーターを使用している場合は交換が必要になります。
スマートメーターの確認ポイント:
- 電力メーターがデジタル表示になっているか
- 「スマートメーター」や「通信機能付き」の表記があるか
もしスマートメーターが未設置でも心配はいりません。新しい売電契約を申し込むと、電力会社(送配電事業者)が無料でスマートメーターに交換します。交換工事は10~30分程度で終わり、多くの場合は立ち会いも不要です。
スマートメーターへの交換によって、30分ごとの電力データが自動で送信されるようになり、正確な売電量計測が可能になります。
新たな売電契約の手続き方法
FIT終了後も売電を継続したい場合、次のステップで新たな売電契約を結びます。
買取事業者を選ぶ
地域の電力会社や新電力各社の買取プランを比較します。買取単価だけでなく、契約期間や解約条件なども確認しましょう。資源エネルギー庁のウェブサイトでは買取事業者の一覧が公開されています。
申込書に必要事項を記入
選んだ事業者の申込書(ウェブフォームの場合も)に必要事項を記入します。不備があると手続きが遅れるため、正確に記入しましょう。
申込書を提出
郵送やウェブで申込書を提出します。添付書類が必要な場合は忘れずに同封してください。
契約内容の確認と同意
事業者から契約内容の案内が来たら、条件を確認して同意します。
スマートメーター交換(必要な場合)
未設置の場合は送配電事業者からスマートメーター交換の案内があります。
契約開始
FIT満了日翌日から新契約での売電が始まります。
手続きには2週間~1ヶ月程度かかる場合があるため、余裕をもって対応しましょう。
申込に必要な情報と書類
新たな売電契約に必ず必要となる情報は以下の通りです。
- 契約者情報:氏名、住所、連絡先電話番号
- 設備情報:設置場所住所、設備ID、発電設備容量(kW)
- FIT関連情報:買取期間満了日、現在の売電先名
- 計器情報:電力受給契約番号、受電地点特定番号
- 支払情報:売電代金振込先の口座情報
これらの情報は主に「買取期間満了のお知らせ」通知書や検針票に記載されています。通知書をコピーして提出するケースもあります。
特に「設備ID」は必須項目です。10桁のアルファベットと数字の組み合わせで、太陽光発電設備を特定するための識別番号となります。不明な場合は現在の電力会社や太陽光発電協会に問い合わせてください。
買取価格と経済性を比較しよう
卒FIT後の選択肢それぞれの経済性を具体的に見ていきましょう。
売電を継続する場合
- 買取価格は1kWhあたり7~10円程度が相場
- FIT期間中42円/kWhだった場合と比べると大幅な収入減
- 年間余剰3000kWhの場合、年間売電収入は約2.4万円程度
- 初期投資は不要でランニングコストもほぼゼロ
蓄電池を導入する場合
- 導入費用は補助金適用前で約100~200万円
- 電気代削減効果は大きい(売電の3倍程度の価値)
- 日中余剰10kWh/日を蓄電池に貯めて夜間利用すると
年間約7.3~11万円の電気代削減 - 投資回収に10~15年程度かかるが、長期的には経済的
- 停電時のバックアップ電源としての価値も
電気自動車と連携する場合
- EVが既にある場合は追加投資が少なく済む
- 日中余剰をEVに充電すれば燃料代節約
- V2H(Vehicle to Home)システム導入なら蓄電池と同様の効果
- EVの使用状況に左右される
どの選択肢が最適かは、各家庭の状況によって異なります。初期投資額、光熱費削減効果、非常時対応力などを総合的に判断しましょう。
家庭の状況に合わせた選択のポイント
ご家庭の状況に応じた最適な選択をするためのポイントです。
昼間の在宅が多い家庭
- 自家消費率が元々高いため、余剰電力が少ない可能性
- 蓄電池導入は費用対効果が低いかも
- シンプルに売電継続が向いている場合も
昼間不在が多い家庭
- 昼間の余剰電力が多いため、蓄電池導入の効果大
- 特に電気使用量が多い家庭なら、電気代削減効果も大きい
今後の居住予定
- 長期居住予定なら蓄電池導入も検討価値あり
- 短期の場合は初期投資の少ない売電継続が安全
停電対策の重要度
- 災害リスクが高い地域や停電時の電力確保を重視する場合は
蓄電池やV2Hの導入がおすすめ - 医療機器使用など電力が欠かせない家庭も同様
予算と投資回収期間
- 余裕資金で数十万円~200万円程度の投資が可能か
- 10~15年の長期投資として考えられるか
電気自動車所有(または購入予定)
- EVを所有/購入予定なら、V2Hシステム導入も検討
- 蓄電池より安価にエネルギー自給を実現できる可能性
最終的には、経済性だけでなく生活スタイル、将来計画、環境への配慮なども含めて総合的に判断するとよいでしょう。太陽光発電設備は卒FIT後も20年以上発電し続ける貴重な資産です。この機会に最適な活用方法を見つけてください。